08・女が強くなるのは男次第
( ・ω・)8章2・3・6・7話を修正。
シモンの存在を完全に忘れていた(核爆)
日本・とある都心のマンションの一室―――
女優のようなモデル体型の金髪ロングの女性が、
黒髪セミロングの少女と、シルバーの長毛種の
猫を前にお互いに座っていた。
「え~とぉ、それはぁ……
不可抗力と言いますかぁ~」
フィオナは母・アルフリーダに対し、視線を横に
反らしながら語る。
7章でモデルの確保を行う際―――
転移で力を使い果たした時のエネルギー補充の
ため、栄養ドリンク・エナジードリンクを地球から
異世界へ持ち込んだ事がばれ、
さらに現地の人間にも使用した事が発覚。
(8章1話 証拠は残さず隠蔽するでしゅ参照)
その事で一人と一匹は、お小言をくらっていた。
「まったくもう……
しかも今回はナヴィ、あなたが推奨したそうじゃ
ないの」
「め、面目ございませんアルフリーダ様……」
主人の叱責に、ナヴィは深く頭を下げる。
「でも結構微妙なラインだったわね。
フィオナちゃんやナヴィが自分で持ち込んで
自分で使い切る分には―――
お役所もいい顔はしないでしょうけど、
それほど問題は無いのよ。
協力者や眷属に使ったのがギリギリって
ところかしら」
「??
それは問題じゃないんですかママ?」
娘が聞き返すとアルフリーダは一息ついて、
「眷属と言っても人間だから、加護は受けられても
普通に病気にもケガにもなるわ。
だから眷属を持つ神の裁量で、そういう人の
治療や治癒は認められているの」
「し、しかし……
バーレンシア侯爵様やシモン君は眷属では
ありませんでしたけど」
生真面目なナヴィは正直に事実を指摘するも、
「そこは、ホラ。
眷属『候補』とか、重要な協力者としておけば
いいのよ。
原則として人間の世界には介入出来ないけど、
眷属や眷属『候補』なら、後で神様に昇格する
可能性もあるの。
そういう理由で、健康や生命維持に関しては
まあ―――
役所もそこまで厳しくは無いわ」
それを聞いてフィオナとナヴィは、口には出さない
ものの『結構ザルだなあ……』という表情になる。
すると娘が『ン?』と声を発した後、
「でもママ、やけに詳しいですね?
ママの眷属って、元人間だったパパしか
いないはずじゃ」
「そういえばそうですね。
私もご主人様の眷属はユニシス様ただ一人で、
他にはいなかったと聞いておりますが。
そういう事に詳しいのは、少し違和感が」
しばしの沈黙が流れた後……
母である女神の顔は焦りの色で埋まり、
「え、え~っとね?
違うの、眷属や眷属候補がいっぱいいたとか
そういうのじゃなくてね?」
疑惑の視線を向ける一人と一匹に、
アルフリーダは顔を真っ赤にして、
「あぁあっ、もうっ!! だからね!!
まだ眷属だったころの少年に、
『どうにかならないんですか!?』
『お願いします、女神様!!』
ってウルウルした瞳で無茶ブリを言われて、
それを聞き続けていたらそういう抜け穴って
いうか近道っていうか、そのテのごまかし方や
方法に詳しくなっちゃっただけなのよー!!」
女神の叫びにも似た釈明に、ナヴィはすっと
人間の姿になって立ち上がり、
「あ、何かお菓子持ちしますね。
私とフィオナ様はブラックコーヒーのみで。
アルフリーダ様のお菓子だけ、インド産の
グラムジャムンドーナツでいいですか?」
「それって地球で世界一甘いって言われている
お菓子よね?
疑問に答えただけなのに何この仕打ち。
ま、まあいいわ。
そろそろ本編スタートしましょう」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家の玄関前 │
「それじゃ、行ってくるわね」
「……ひと足、お先に……」
パープルのウェーブが掛かった長髪を持つ姉と、
それに勝るとも劣らないくらいのロングの髪を持つ
妹―――
シンデリンとベルティーユがあいさつする。
「シンデリン様、ベルティーユ様。
すでにバーレンシア侯爵様はじめ、他の方々は
馬車に搭乗済みです。
どうかお早く」
短髪の黒髪黒目の少年―――
姉弟の従者が少し離れた場所で、先を急がせる。
フラールに残る一行に見送られ、彼女たちは
馬車へと乗り込んだ。
シンデリンから馬車での同行を申し出られ、
それから3日後……
ビューワー伯爵やグラノーラ令嬢にそれが
伝えられ、準備が整った後で合流。
眷属であるポーラ、カガミとバーレンシア侯爵、
シモンがグレイン国へ出発する運びとなった。
「とにかく、こちらも家の中へ戻りましょうか」
「そうですね」
グリーンの長髪を持つ第一眷属の母・ソニアの
声で、フィオナはじめ他のメンバーも家の中へと
入っていった。
「……しょういう事で、いったんバクシアへ
向かった後―――
シモン君とポーラさんが関係者に説明、
その上でシフド国経由でグレイン国へ入る
事になっていましゅ」
残ったメンバーはリビングへ集まり……
シルバーの短髪を持つ女神の従者が中心となって、
確認を兼ねて説明する。
ナヴィの言う通り―――
先行組はバクシアへ寄ってシモンやポーラの家族、
ボガッド家へ事情説明。
そこで何かあればポーラ・カガミを通して、
相談する予定である。
「じゃあ僕たちはそれまで」
「当面の間、ここで待機ですね」
グリーンとブラウンの短髪の―――
第一眷属と第二眷属の少年が相槌を打つ。
「向こうから連絡が付き次第、あたいらも
グレイン国へ『移転』するんだっけか。
ホントに便利な能力だよなー。
眷属の出身地か、眷属がいればすぐそこへ
飛べるんだろ?」
第二眷属の姉が、首まで伸びた同じブラウンの髪を
なでながら、フィオナに視線を向ける。
「まあめっちゃ疲れますけどねー。
どなたか空気を読んで辞退してくだされば
もっと楽になるんですけどー」
銀のロングウェーブの髪を持つ、第三眷属の
妹を見ながら女神は語るが、
「お義母さま、ミモザさん、聞きました?
眷属の身内たる方々になんて事を……」
「おぉっとお?
何か自分だけは無関係って顔してる人が
いるぞぉ?」
いつも通りフィオナとメイの力比べが始まるのを、
アルプ・ファジーは困惑した表情で、ソニアと
ミモザは涼し気な面持ちで見つめる。
「ふぐぬぬぬぬ……!
いえわたくしだってですねぇ?
第三眷属たるポーラ姉さまの妹なんですしぃ?」
「ぬおぉおおお……!
それならどうしてお姉さまについて
いかなかったんですかねえぬぐぐぐぐ」
がっぷりよっつで両手を互いに組む2人を、
ナヴィは引きはがし、
「しょんなに元気が余っているのなら―――
グレイン国からお呼びがかかるまで、農園の
手伝いをしたらどうでしゅかね」
「そうですねえ。
そろそろ果実を食べに来る鳥や獣が
気になりますし。
出来れば見回って来て頂ければ……」
すると両手をつかんだまま、フィオナとメイは
顔だけアルプの母親の方を向いて、
「一時休戦ですわメイさん。
お義母さまの言う事は絶対ですわよ」
「ではさっそく行ってまいりますわ。
果樹園を荒らす者許すべからず!
もし何かいたら仕留めてまいりますのでっ!」
2人はダンスでも踊るかのように手を
つなぎながら、外へと出ていった。
「ねぇミモザ姉……
前、メイさんってイノシシ倒して
きたんだけど」
「メイさんって眷属じゃないですよね?
姉のポーラさんが眷属なんですよね?
いえ、眷属だからってあそこまで強くなるとは
思いませんけど」
ファジーとアルプが疑問をそのまま口にするが、
「まあなんだ、ファジー。
女が強くなるのは男次第って事だぜ」
「逆もまた然り、ですけどね。
また何か狩ってくるような気がしますから、
お料理の準備でもしましょうか。
アルプも手伝って」
ファジーの姉とアルプの母親が答え、
「ソニアさん。アタイらはどうする?」
「お風呂の準備をお願い出来ますか?
この前返り血を浴びてきた事がありますので、
すぐ洗えるようにしておいた方が……」
「(とても果樹園の会話とは思えねえ)」
ナヴィはその会話に心の中でツッコミを入れつつも
スルーして、
「では私も、ちょっと様子を見てきましゅね」
そう言って主筋とメイの後を追う事にした。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6233名―――
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