07・私たちに出来る事はただ見守るだけ
( ・ω・)前回、6話を7話と書き間違えたため、
慌てて修正(見直しして見落とすタイプ)
日本・とある都心のマンションの一室―――
飼い猫と思しきシルバーの長毛種と、家主と
思われる黒髪セミロングの少女が、炬燵を前に
向き合う。
「ねーねー、もう別にいいでしょ?
それ片付けたって……」
「そこは命を懸けて戦おう」
「何がアンタをそこまでさせるのよ」
フィオナとナヴィは炬燵の去就を巡って、
話し合っていた。
「だって、もうこんなに暖かくなったんですよ?
必要ないっていうか、暑いくらいじゃないの?」
「布団をもっと薄い物に変えて、
電気を点けなければ何とか……」
「そこまで努力して使いたくないんだけど」
その話し合いは平行線のまま、時間が
過ぎていき―――
「そうだ!
エアコンを冷房にすればいいんじゃ
ないですかね?」
「そうだじゃないわよ。
本末転倒って言葉知ってる?」
なおもお目付け役(猫Ver)は食い下がり、
そこで室内に声が響く。
『あなたがワガママ言うなんて珍しいと
思ったら……
何しているのよ、ナヴィ』
「あ、ママ!?」
「アルフリーダ様……!」
女神と従僕は天井を見上げて答える。
「もー聞いてくださいよママ。
ナヴィがどうしても片付けるのを
認めなくて」
『甘いわね……フィオナちゃん。
ピンチはチャンス、災い転じて福となす……
逆に考えてみるのよ』
母親の言葉に女神は首を傾げ、
「どゆこと? ママ」
『暖かくなっても炬燵の中にいるという事は……
その中で汗だくで寝ているナヴィがいると
いう事……!
その中には水も滴る美少年が汗びっしょりで
寝ていると知ったら……?』
フィオナはそれを聞いてガッツポーズを取り、
「それは……最高ですねママ!」
『フフ……私もよくパパをわざと汗だくに
するような環境に置いていろいろと楽しんだ
事があるわ……
健康的なあのむせ返るような匂いがまた
コーフンして♪』
母娘の会話を横で聞いていた猫は片手を
招き猫のように上げて、
「あ、じゃあ片付けて頂いて結構です」
『「何で!?」』
アルフリーダとフィオナはナヴィの答えに、
同時に抗議にも似た声を上げるが、彼は構わず
涼し気な表情で、
「さてと、それじゃそろそろ―――
本編スタートしましょう」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「まったくお前は……
姿が見えないと思ったら」
「どこか行く時は、ちゃんと声かけてから
行けって言ってただろ、カガミ」
首まで伸びた銀髪と、一方は巻き毛の―――
獣人族の兄弟が妹を叱る。
「だって、リオネル兄もキーラ兄も、
ぐっすり寝てたし」
彼らより年下の、赤茶のツインテールをした
10才くらいの少女があっさりと答え、
「すると―――
あの人たちが、噂のトーリ財閥の……」
褐色肌の少年が、同じ商人としてさすがに
気後れしたのか緊張した面持ちになる。
「ええと、いらっしゃっていたんですね」
「お久しぶりです」
グリーンと、ブラウンの短髪を持つ少年2人……
第一眷属と第二眷属が『彼女たち』に向かって
挨拶する。
「お久しぶり~♪
アルプちゃん、ファジーちゃん♪」
少しウェーブのかかったバイオレットの長髪を
片手でさらりと流しながら、シンデリンが
駆け寄り―――
それを両側からフィオナと、肩上まで同じ
ブラウンの髪を伸ばした第二眷属の姐が
ガードするように立ちはだかる。
「……シンデリンお姉さまは少し……
がっつき過ぎ……」
「取り敢えず落ち着きましょう」
姉と同じ紫の髪を身長と同じくらいにまで
伸ばした少女と、少し伸ばした黒髪・黒目の
従者の少年が、彼女を引き離した。
「ベルティーユさんとネーブルさんも……
マービィ国以来でしょうか」
アルプの言葉通り、2人に対しては面識があり、
懐かし気に語り掛ける。
(5章 マービィ国編参照)
「そうね。
ナヴィさんも女神様もお久しぶり。
ここへはちょっと、シッカ伯爵令嬢に
あるブツを届けに……」
シンデリンの言葉に女性陣がピクッと反応し、
まずはフィオナが
「ほう……ブツですか。
それはどこに?」
そして、ベルティーユとミモザが、
「……ちょっと……ここでは……
あれはナマモノ……」
「もしファジー使ってんなら、まずアタイに
見せろよ」
いつの間にかグリーンの長髪の第一眷属の母と、
銀のロングウェーブを持つ姉妹も集まり、
「母としては……ええと。
当人に見せなければ別に」
「わかっていますね、お義母さま……!」
「シモン君は!?
シモン君のがあったら……その……
チェックします!」
最後にカガミがその輪の中心に頭を出し、
「ちらっと見たけど質は保障するよー。
味のある絵柄だったし」
それを遠目で眷属の少年たちと、バクシアの
商家の跡取り……
女神とトーリ財閥の従者が遠目で見つめ、
シルバーの短髪のお目付け役は他の男性陣に
向かって口を開く。
「理解しようとしてはいけないでしゅ。
文化・風習・精神構造が違いましゅ。
私たちに出来る事はただ見守るだけ」
ナヴィの言葉に、アルプ・ファジー・シモン・
ネーブルは静かにうなずいた。
「……なるほど。
まずはポーラさんとカガミさんが先に、
グレイン国へ向かうんですね」
あの後、いったん落ち着いた後―――
一行は夕食の支度を行い……
食事の後、情報共有をするとソニアが
確認のように言葉を発した。
「バーレンシア侯爵様と一緒に向かいますので、
安全は問題無いと思います。
アルプやファジーは後から、アタシと一緒に
向かう事になるかと」
フィオナがアルプの母親、ファジーの姉へ
不安を払拭するためか気遣って話す。
「えーでもフラールに戻る時どうするんですかあ?
確か眷属がいないとダメなんですよね?
アルプ君だけでも留守を任せた方がよくない
ですかあ?」
「戻る時は何かしら事が済んでからなので、
急ぐ必要は無いと思いますよ~?
そんなに不安でしたら、メイさんだけでも
お残りになられた方が~♪」
女神と第三眷属の妹は、見えない火花を笑顔で
散らし―――
女性陣はそれを生暖かい目で、
アルプとファジー、シモンは困惑した面持ちで、
ナヴィとネーブルは半ば達観したような
視線を送っていた。
「とにかくでしゅね。
侯爵様に同行するのは、ビューワー伯爵様、
シッカ伯爵様、マルゴットしゃん、さきほど
言ったお二人……
そしてシモン君が考えられているでしゅ。
多分、準備が出来次第呼ばれるでしょうから、
それまで待機していて欲しいでしゅよ」
まとめるように、ナヴィが説明する。
そこですっとシンデリンが手を上げて、
「あー、私と一緒にグレイン国へ行くって
いうのはどうかしら?
ちょうど馬車もあるし―――
10人・20人増えたところで変わりは
ないわよ?」
突然の申し出に、彼女たち一行以外の目が
点になり……
「そういえば、バーレンシア侯爵様を
シフド国へ招待した時……
『馬車代』として金貨1千枚送金して
きたとか、聞いた事が」
「ね、願ってもない事です!」
「でもいいんですか?
こちら側としては助かりますけど」
アルプとシモン、ファジーが立て続けに話すと、
「もちろん、私たちに利益が無い話じゃ
ないわ。
今を時めくバーレンシア侯爵様と同行して
序列一位の国へ行くのよ?」
「ん……
宣伝や広報と考えたら、安いくらい……」
トーリ家の姉妹がビジネスライクに答える。
「へー、人間の馬車かあ。
それってミイト国で乗ったヤツよりも
スゴイのかなー」
興味津々に獣人族の少女が割って入り、
「カガミの場合は大人しくしているかどうかが
心配だな……」
「いきなり自分で引っ張ろうとか考えるなよ?」
兄二人が不安そうにたしなめる。
「しかし、この光景を前にして―――
意外と冷静ですね。
シンデリン様もベルティーユ様も」
感心しながらネーブルが主筋の姉妹に
目を向けると、
「……今それに触れてはいけないわ、
ネーブル」
「……この楽園を前にして……
……何とか維持している砂の理性が……
……壊れる……!」
よく見ると小刻みに震えている姉妹を前に、
何とか話題を変えようとミモザが口を開き、
「ま、まあ確かにここは、美少年率高過ぎ
だもんな。
そこいくと、女神様はさすがだねえ」
その言葉にフィオナは余裕そうに微笑み、
「今すぐにでも極端に露出の多い衣装に着替え、
踊り出したいくらいです!!
(これでも一応、女神ですからね。
この程度で精神は揺らぎませんよ)」
「お約束で本音と建前が逆になってましゅよ」
その後、しばらく混乱が続き―――
周囲はそれを何とか落ち着かせるため、
奔走した。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6220名―――
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