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02・お願いだから早く会話切り上げて

( ・ω・)今回はちょっと長め。

みんな大好きバーレンシア侯爵が

大活躍だよ(誤解)


日本・とある都心のマンションの一室―――


そこでコタツに入る家主と思われる少女と、

その膝の上で眠るペットらしき猫がいた。


黒髪・セミロングの少女は優しく猫をでながら、


「いや~、こう寒い日はコタツが一番ですよね、

 ナヴィさん」


「そうですねえ反省してください」


「どこに?

 今のアタシに、反省する余地

 見当たらなかったんだけど?」


いつも通りのやり取りをしながら、フィオナと

ナヴィはくつろぐ。


従僕のシルバーの長毛に、背中に生えた羽を

女神は指先で揃えるように触れ、


「しかし本当に寒くなりましたね。

 今年の冬は寒波だと聞いてますけど」


「ガマンしろよ」


「だから0.5秒で会話終わらせるの

 止めてくれません?」


素っ気ないツッコミを入れるナヴィに、

フィオナは抗議の声を上げる。


「ていうか冷暖房完備で、さらにコタツに

 足突っ込んでいるフィオナ様が、どうして

 寒さを気にするんですか?」


「いや、それはまあ……

 確かに家の中は暖かいですが。


 しかしいずれ外に行かなければならない

 時が来るわけで―――

 それを思うとですね」


それを聞いたナヴィはくぁあ……と

大きくあくびをして、


「つまり外に出たくない、出ないでいい理由を

 何とか考えていると」


「何でわかったんですか!?

 (そこまでうがった見方をしなくても……)」


お約束で本音と建て前を逆に答えた女神に、

従僕は膝の上で向きを変える。


「……そういえば、何だかんだ言って買い物は

 普通にしているじゃないですか。


 お弁当とか総菜とか、いつの間にか食べて

 いますし―――」


「え、え~とぉ、あれは……

 アタシじゃないっていうか」


彼女の言葉にナヴィは首を傾げ、

『もしや出前か配達でも?』と聞き返そうと

した時、女神のスマホから着信音が鳴った。


「はいもしもしー、フィオナです。

 あ、堕天使ちゃん?


 あ、そーなんだ今近くのコンビニ?

 別にいいですよウチに来ても。

 ついでと言っては何ですけど、そこで

 いくつか買って来て欲しい物が」


納得と呆れの相半ばの目で、女神を見上げる従僕。

それに気付いたフィオナが視線を落とし、


「あ、ナヴィ。

 あなたも何か買ってきて欲しいものあります?」


「……

 鮭ハラミひとつお願いします」


するとスマホからひと際大きな声がして、


『はーいっ!!

 すぐに我がお届けいたしますので、

 お待ちくださいナヴィ様っ!!!』


その大音声を至近距離で聞いた女神は、

頭を抱え―――

従僕は細目でそれをながめつつ、


「はぁ、では……

 そろそろ本編スタートしましょう」




│ ■フラール国・バクシア国代官館  │




「リーゾット・マイヤー伯爵が……?」


ブロンドの長髪を持つ長身の女性が、思わず

聞き返す。


彼女の元婚約者であり―――

マービィ国でも『新貴族』として敵対した、

因縁浅からぬ相手である。


「グレイン国の伯爵、ね……

 でも、出席名簿にその名前は無かったような?」


フォックスタイプの眼鏡と、頬にクロスの傷を持つ

青みがかった短髪の侯爵が―――

確認するようにレイシェンの後に続く。


「いかがなされますか?」


使用人が確認を促すと、彼は声に向かって、


「取り敢えず応接室にお通しして。

 後で僕が対応するよ」


「あの、わたくしも同行を―――」


レイシェンが申し出るが、バーレンシア侯爵は

手を振って、


「いや、いいよ。

 僕だけなら、結婚式の責任者って事で対外的な

 立場もあるし、何かあってもそうそう悪い事には

 ならないと思う。


 デザートを食べ終えたら行くよ。

 みんなはくつろいでいてくれ」


こうして彼は場を抑え―――

単独で序列一位の国の貴族と話し合う事に

なった。




「……お待たせしました。

 マイヤー伯爵殿」


館の主が室内に入ると―――

頬が目立ち、顔は痩せているかのように細く、

白髪交じりの短髪の男が席から立ち上がった。


顔とは対極的に筋肉質の体が、歴戦の戦士を

思わせ、鋭い眼光が飛んでくる。


「いや―――

 いきなり押しかけてきた無礼はこちらにある。


 会う機会を頂き感謝する。

 バーレンシア侯爵様」


マイヤー伯爵は貴族の序列に従い、頭を下げる。

もっとも序列一位の国の伯爵としては―――

実質上、下位国の王族くらいの権力を有していた。


「グレイン国からはグレイシア王妃様にご出席して

 頂き、感謝の言葉もありません。


 フラールは元より―――

 バクシアを代表して、心よりお礼申し上げます」


両国の婚礼の責任者として……

また貴族の儀礼として彼は感謝の意を伝える。


そして両者、対峙して座り―――

それを物陰からジッと見つめる2つの目があった。




「あーあー、ナヴィ。

 どう、侵入成功?」


別室で女神が神託カイセンを通して、従僕に伝える。


『大丈夫です。

 ここはあちこちボロ……古いのか、猫くらいなら

 ところどころ出入り出来る穴がありますので』


ナヴィの言葉に、同室の人間の注目が集まる。


「い、いけない事だとは思いますが」


「でもやっぱり気になります」


グリーンとブラウンの短髪の―――

第一眷属と第二眷属の少年2人が女神の両隣りに

位置取り、


褐色肌・黒髪短髪の商人の少年が率直に疑問を

口にし、


「このような時に……

 不審な動きをするとは思いませんが」


「直接乗り込んで来たという事は、何か目的が

 あっての事でしょう」


真っ赤なロングヘアーの豪商の娘と、シルバーの

短髪の貴族の青年が続く。


「ナヴィ様、無理はしないでくれよ……」


「猫の姿ですから―――

 見咎みとがめられる事はないでしょうが」


ブラウンの髪を首まで伸ばした第二眷属の姉と、

グリーンの長髪をした第一眷属の母が不安そうに

彼の身を心配する。


またそこにレイシェンと、同じロングウェーブの

銀髪をした、第三眷属の少女とその妹が、事の

成り行きを見守っていた。




「それで、どのようなご用件でこちらへ

 参られたのでしょうか?

 確か伯爵の名は、出席名簿には無かったと

 思うのですが……」


一方、応接室ではバーレンシア侯爵が―――

まず話を聞く姿勢を見せる。


―――心の声・バーレンシア侯爵side―――

(うっわーもしかして名簿から見落としていた?

 いやでも何度も確認したし……

 もしそうならもっと怒っているはずだから、

 多分大丈夫だよね?)


心中焦る侯爵を前に、一方の伯爵は、


「こちらに来る予定はありませんでした。

 ただ―――

 昨今の世の中の動きについて、侯爵様のお話を

 聞いて、見識を深めたい……

 というところですかね」


―――心の声・マイヤー伯爵side―――

(この私を待たせた上、最初から皮肉混じりの

 対応とはな……


 しかも、王家同士の結婚式は激務であった

 だろうに―――

 今の彼からは疲れた様子が微塵みじんも感じられない。


 若いとはいえ、心身共にタフのようだ)


実際には、フィオナが持ってきた栄養ドリンクの

タウリンと、アルプの果実による超回復によるもの

なのだが……

それを彼が知るはずもなく。


「世の中の動き……ですか?


 確かにここ最近、いろいろと起きている

 ようですが、婚姻の準備で忙しく―――

 僕に聞いても、面白そうなお話は無いと

 思いますよ?」


(本っっっ当に無茶苦茶忙しかったんだよ

 こっちは!

 だから近頃のお話とか聞かれても困るの!

 お願いだから無茶ブリはしないでください)


「そうですかな?

 むしろ私は侯爵こそ、最近の動きの中心と思って

 いたのですがね」


(そう簡単に話に乗ってはくれないか。

 だが……『新貴族』『枠外の者』は、

 主だった者が離反したり、一線を退いたり

 している。

 それに対する警告はしておかねば)


微妙に食い違うマイヤー伯爵の心中をよそに、

彼はきょとんとして、


「はあ、僕がですか?


 買いかぶり過ぎじゃないですか?

 今でこそ、そこそこ有名になったようですけど、

 ほんの少し前まで借金で首が回らないような、

 名前だけの貧乏貴族だったんですよ?」


(いやもうホントにカンベンして欲しい。

 流れとはいえ『女神の導き』と関わった事で、

 『新貴族』とか『枠外の者』に目を付けられて

 いるんだから!

 僕は穏やかに生きたいの!!)


「ははは、ご謙遜を。


 そうそう、そういえば―――

 シフド国のグローマー男爵ですが、隠居した

 そうですよ。

 やはり、歳にはかなわなかったようで」


(ミイト国のトーリ財閥や、シッカ伯爵令嬢……

 シフド国のカトゥ財閥、グローマー男爵しかり。

 どれだけこちら側の勢力が削がれた事か。

 知らぬ存ぜぬでは済まさん……!)


いくら何でもグローマー男爵の名前を出せば、

平静ではいられまい―――

そう思った彼の前で、侯爵は表情を崩さず


「そうなんですか。

 お名前は聞いた事がありますが……


 マイヤー伯爵殿は、グローマー男爵と

 親しかったのですか?」


(うーわー、もしかしてあの人?

 確かに、男爵が絡んでいた事に何か助言を

 求められた事はあったけど……

 (6章34話

  きょうもおしごとがんばるかー 参照)


 でも別に敵対したわけじゃないと思うし、

 何か関わっていたらお詫びの品でも送って

 許してもらおう)


「……いや、親しいというほどでは。


 ただ幼馴染と一緒に引退したそうですよ。

 それもあってか、印象に残っておりましたので」


(く……!

 とぼけるどころか、逆に探りを入れてきただと?


 この若さで『新貴族』『枠外の者』―――

 双方を敵に回すだけの度胸はあるということか。


 ……いや、ここに来た目的を思い出せ。

 別に彼と戦いに来たわけではない。

 従属が無理なら、対等な関係をチラつかせれば

 よいのだ……!)


お互いに噛み合わない心中ではあったが、

会話は普通に交わされ続け、


「なるほど、それはうらやましいですね。

 いつまで経っても変わらない仲というのは、

 何物にも代えがたい。


 僕は誰であれ―――

 そういう関係を築いていきたいものです」


(ああ良かった、あんまり関係の無い人で。


 でも世間話をしに来ただけなら、早く帰って

 くれないかなあ。

 本当にここ最近の出来事なんて、僕は知らないん

 だってば)


「そうですな。

 私もそれを望んでおります。


 今をときめくバーレンシア侯爵様とも、

 そういう関係になれたらと思います。


 そうそう、一度グレイン国に来られては?

 その時は是非とも歓迎いたしますよ」


(よし、何とか交渉の糸口はつかめた。


 しかし、ところどころに皮肉と嫌味を

 込めてくるのは―――

 やはり私の目的に気付いているのか?


 だが言質は取った。

 序列一位の国の伯爵の私が言う言葉は―――

 お願いであってもそれは命令と同義。

 ましてや、たかが序列四位の国の侯爵など……


 本国に呼びつけ、連れてさえくれば……

 そして接待と説得、硬軟両面で当たれば

 どうにでもなるだろう……)


本心とは裏腹に、微笑むマイヤー伯爵。

だがバーレンシア侯爵は、


「そうですねえ。

 しかし、序列一位の国の伯爵ともなれば、

 いろいろとお忙しいでしょう。


 おりを見てこちらから出向く事にしますよ。

 グレイシア王妃様ご訪問のお礼も、しなければ

 いけませんし」


(仲良くしたいっていうのは一般論だってば!

 社交辞令だってば!!

 お願いだから早く会話切り上げてー!!

 終わってー!!)


「なるほど。

 確かにその方がよろしいでしょう。


 では、その日を楽しみにしております」


(くく、こ、この……!

 呼びつけるつもりが、あちらに主導権を

 奪われてしまった……!


 しかも王妃様への返礼を絡められては、

 これ以上の無理強いは出来ん。


 ここは引き時か……)


心の中で叫ぶ侯爵と―――

苦々しい感情を抱く伯爵の会談は、一応の

終わりを迎えた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在6181名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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