38・この続きは結婚式で
( ・ω・)今回で7章終わり。
8章へ適当に進みます(ザ・無計画)
日本・とある都心のマンションの一室―――
「ナヴィ、どこに……
って、また掘り炬燵の中ね?」
黒髪セミロングの女神が従僕を呼びに行くと、
姿が見えず―――
視界に入った、室内に設置された一段高い
スペースに目をやる。
「それじゃまあ、アタシも入りますかー。
今朝からめっちゃ寒いし」
そう言いつつ、フィオナはコタツの中へと
足を突っ込んだ。
―――30分後―――
「あだだだだだだだ」
「何をしてらっしゃるんですか……
ええもう、本当に」
コタツの横のリビングで、体を奇妙な方向へ
曲げたポーズを取りながらうなる女神と、
それを呆れた目で見つめる従者(猫Ver)
がいた。
フィオナは下着姿になっており、
そこでナヴィはシルバーの毛並みを持つ猫から、
白銀の短髪の人間Verへと姿を変え、彼女の
着替えを差し出す。
「いやちょっと待って。
足が、背中がつって……」
「コタツに全身入ってきたと思ったら、
中でいきなり脱ぎ始めた時は何事かと
思いましゅたよ。
ていうか、確かに普通の掘り炬燵よりは
広いと思いましゅけど―――
どう考えてもあの中で脱ぐのは無理で
しょうに」
中で起きた事を事細かに説明する従僕に、
女神は着替えを受け取りながら、
「いやー、イケると思ったんですけどね」
「最後の方はヨガのポーズみたいに、
手足がおかしな方向に曲がっていましゅた
からね。
イヤもう何しているんでしゅか本当に」
何とかフィオナはまともな方向に手足を戻し、
それらをくるくると回して、
「で、でも驚いたでしょう?
いきなり美少女が目の前で服を脱ぎ始めたん
ですから―――」
「ええ、そりゃあもう。
面白いポーズで体が固まって助けを求めて
きた日にゃ、どうしてくれようかと。
ていうかせめて、人の昼寝を邪魔しないで
くれましぇんかね……」
そこで女神はぐぐーっ、と伸びをして、
「そうですね!
次からは脱いだ後に入る事にします!」
「どうしてこう余計な事には全力で前向き
なんでしゅかね。
しょれではそろそろ、本編スタートしましゅ」
│ ■フラール国・バクシア国代官館 │
バーレンシア侯爵様がいた執務室から離れ、
館の中では一応、それなりに広く整えれらた
部屋へと移動した女性陣は、それぞれ席に着く。
「さて、では……
レイシェンさん、何か案があるとか?」
そして女神が、ロングの金髪を持つ長身の
伯爵令嬢に問いかけ、
「はい。
とは言っても、いささか陳腐な策では
あるのですが」
その言葉に―――
ロングのレッドヘアーを片手で抑えながら、
グラノーラ令嬢が先を促す。
「どんな策でも言って頂ければ幸いです。
こちらに対案が無い以上、全力でそれを
支援する所存ですので」
「ではこういうのはいかがでしょうか……
あの、例の本と一緒に出すのは変わりないの
ですが―――」
そこでヒソヒソと密談のように内容が告げられる。
それを聞いたフィオナとマルゴットは、
目だけで妖しく微笑み、
「いいですねえ、それ」
「商人でありながら―――
それを思いつかなかったのが悔しいくらい
ですわ……!」
彼女の意見に賛同し、3人は次の方針に入る。
「では、送り先ですけど」
「次回に結婚式の招待状を送る予定ですので―――
今回はその奥方から、というのは妥当でしょう」
「そうなりますと……
一応、バーレンシア侯爵様の許可も
得てからにした方が」
意見がまとまると、3人は侯爵の待つ執務室へ
向かう事にした。
「ん? 人選は任せるよ。
ただリストがあると嬉しいけど」
青みがかった短髪に、フォックスタイプの
眼鏡の裏から視える三白眼とは裏腹に、
気の抜けた声が彼から返ってきた。
「あ、それはもう。
こちらに用意してありますので」
レイシェンが数枚の紙を見せると、
「ありがとう。
それじゃ、後で確認するからその辺に
置いてって」
バーレンシア侯爵の返答&同意を得た
彼女たちは、
「では、わたくしたちは―――
書面の作成と、同封させる物の選定に
入りますねっ」
「やったるでー!!」
「気合い十分ですね、女神様」
と、そのままの勢いで退室していった。
後に残されたのは、館の主の他に―――
ビューワー伯爵とナヴィの男性陣で、
「まあ、慶事の予告みたいなものですし……
問題は無いでしょう」
シルバーの短髪をした青年が、女性陣が
置いていった書類に目をやる。
「というか、そろそろ侯爵様も休んでは
どうでしゅか?
ほとんど手を止めていましぇんけど」
ナヴィの言葉に、侯爵は片手を天井に向けて
ぐぐーっ、と伸びをして、
「そうだねえ。
ちょっと休もうか。
お茶でも運ばせよう」
そこで侯爵は使用人を呼び出し―――
少し休憩を入れる事にした。
「でもそんなに忙しいのでしゅか?」
小さな丸テーブルを囲みながら、女神の従僕が
ふと疑問を口にする。
「一国だけならいいんだけどね。
今回はフラール・バクシア両国が関わるから……
それぞれの国の仕来りとか、いろいろと面倒な
事が多いんだよ」
「しかも双方王族ですからね。
かなり神経を使っているのでは」
心配そうに伯爵も侯爵を気遣うが、
「まあ、驚く段階は過ぎたから……
後は準備だけだし、気が楽だよ。
いつの間にか借金が消えているとか、
いつの間にか『枠外の者』『新貴族』と明確に
敵対しているとか、
いつの間にか祖国の英雄になっているとか、
いつの間にか序列上位国で評価されているとか、
いつの間にか勇者になっているとか。
それに比べればよっぽど」
それに対し、かける言葉が見つからないナヴィと
ビューワー伯爵は、しばし沈黙する。
しかしそこへ、静寂を破る声が乱入し、
「侯爵様!
書面が出来上がりましたわ!」
「ではこれを、ある送付物を添えて発送
したいのですが」
レイシェンとマルゴットが部屋に入るなり、
彼に確認を求める。
「早いね。
じゃあそれもお願いしていいかな?」
バーレンシア侯爵から同意を得ると、女性陣は
それぞれ肩を組んで、
「バクシア・ルコルア・オリイヴならアタシが
直接運べます!
じゃあ序列上位国へはバクシアから送って
もらうべや!
イクで2人とも!!」
「「応っ!!」」
女神の掛け声と、それに答える声と共に―――
3人の姿はその場から消えた。
「転移か。
便利な力だねえ、ホント」
以前も見ているためか、それとも疲れのせいか、
屋敷の主の反応は薄く―――
「でもいいんでしゅかね?
まだ送る先のリスト、確認していないのでは」
ナヴィの言葉に、ビューワー伯爵がその書類に
近付き、座ったままの侯爵もそちらへ目をやり、
「大丈夫だと思うよ?
さすがに、いきなりトップに送りつけるとか
無ければ……」
その書面に目を通した伯爵は、
「あの、確かに国王宛てはありませんが……
序列上位の三ヶ国、グレイン・シフド・ミイトの
王妃・王女宛てに上から順に」
「え?
止めて? 止めて?」
思わず差し止める声を上げる侯爵だが―――
すでに彼女たちは出発してしまっていた。
一週間後―――
│ ■グレイン国・王宮 │
「あの、グレイシア王妃様。
バクシアのバーレンシア侯爵様名義の書状と、
本が届いておりますが」
メイドの報告に、プールと思えるような広い
浴室で、ちょうど湯浴みをしていた彼女は、
「バーレンシア侯爵……
時折名前を聞く御仁だが、わらわに?
後で読もう。
部屋に置いておくがよい」
その豊かな黒髪を手ぐしですきながら、
湯気の向こうのメイドへ伝えた。
│ ■シフド国・王家宮殿 │
「わたくしに?
バーレンシア侯爵殿から?」
「はい、スカーレッド王女様。
本国のカトゥ財閥から推薦された
本も同封されているとの事ですが」
侍女から、送られた一式の手紙と本を渡され、
シフド国の王女はペーパーナイフで封を切る。
丸眼鏡に淡いピンクヘアーの、アラフォーの
貴婦人は、慣れた手付きで荷を解きながら、
「しかし、バーレンシア侯爵殿と言えば、
高潔で名の知られた人物と聞いています。
それが、『枠外の者』のカトゥ財閥と……?」
疑問を感じながらも、彼女はまず書面に
目を通した。
│ ■ミイト国・王城 │
「ここ、この続きは結婚式で……
ですってぇええええ……!?
ししし、しかもしかも!
この絵物語に出てくる人物の、モデルになった
人と会えるかも、ですとおぉおお……!?」
両腕で本の両端を破らんばかりに持ちながら、
アラフィフの、厚化粧のパープルヘアーの女性が
わなわなと震えていた。
「お、落ち着いてくださいませ、
シャロレー正妃様!!」
「取り敢えず本を下ろしてください!
それじゃ読めません!!」
彼女の周囲を女官や女性の使用人が囲み、
熱気と興奮を共有する。
彼女は本をテーブルの上に置き、肩で呼吸しながら
息を整えると、
「……バクシアとフラールの結婚式は―――
万難を排してでも行くわ。
それを最優先にして、今後の予定を調整
するよう、伝えなさい!!」
「承りましたっ!!」
女性騎士のような警備兵が敬礼すると、
室内はまた異様な熱気に包まれた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5967名―――
―――8章へ続く―――
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