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35・イェッサー、マム!!

( ・ω・)そろそろ8章の事も考えないと

(何とかなるだろうの精神)



日本・とある都心のマンションの一室―――


「ただいまー」


家主と思われる黒髪セミロングの少女が、

玄関から入ると、誰も答える者はなく……

リビングに行くと、そこも無人で―――

ただシャワーの音が聞こえてきた。


「ありゃ、ナヴィ。

 もしかしてお風呂?」


洗面所から声をかけると、


「そうでしゅよ。

 ちょっと今日は朝から寒かったので……

 暖まろうかと思いましゅて。


 後でフィオナ様もいかがでしゅか?」


曇りガラスの戸の向こうから従僕の声がして、

存在を確認する。


「そーですかーそれはそれは。

 じゃあアタシが今入って体洗ってあげましょうか

 ゲフゲフゲフ♪」


女神が欲望が脳に直結しているような

提案をすると、


「そうでしゅね。

 では入ってきてくだしゃい」


肯定で答えられ、フィオナは一瞬硬直する。

しかし脳内では緊急会議が開かれ、


『フィオナ様!

 相手の意思表示を確認しました!』


『これは合意ですか!? 合意ですね!!』


『いやしかしこれは罠という可能性も』


『罠ならば乗ってやるのが筋です!

 むしろ言質は取ってある!』


『ここで行かずにいつ行くのだ!!

 戦え!! 果樹の女神フィオナ!!』


そしてダッシュで服を脱ぎ、しかし一応タオルは

体に巻いて、


「そ、それでは失礼します……ね?」


恐る恐る戸を開けて浴室に入る。

すると湯けむりの中に―――


長毛種の、シルバーの毛並みと鳩のような

羽を生やした猫が湯舟にかっていた。


「あ、じゃあお願いします」


「わかっていたぜ信じてましたよ!!

 コンチクショー!!」


女神はそのまま猫用シャンプーを取り出し、

従僕の体を洗い始める。


「……ていうかナヴィ、あなた水に濡れるのは

 平気なの?」


「んー、子供の頃からよくご主人(アルフリーダ)様に、

 お風呂には入れられていましたから……


 あと時々は猫の体の方も、洗わないと

 落ち着かないんですよ」


洗われながら、時折体をブルッとさせて水気を

飛ばし、従僕は答え……

彼は続けて、


「ていうか文句を言いつつも洗ってくれるのが

 フィオナ様ですねえ」


「いやこれはこれで……

 人間の姿の時のあなたを知ってますので、

 妄想がはかどると言いますか何と言うかハァハァ」


「本当にブレませんね貴女は。

 それではそろそろ、本編スタートしましょう」




│ ■シフド国・首都バーサー   │

│ ■メルリア本屋敷 応接室   │




ラムキュールとファーバがモデルとして参加した

翌日……


改めて『枠外の者』と―――

『新貴族』が集まり、会合が持たれていた。


痩せ過ぎとも思える細身の、ルコルア国の

商人からまず口を開く。


「あの貴婦人たちが―――

 我々の支援に回る、という事ですか?」


ピンクのロングヘアーを持つ女性が、クイッと

眼鏡を直しながら、


「そういう事みたいね。


 シフド国の豪商・貴族問わず―――

 お二人の各国でのバックアップを約束したわ」


「大変だったのじゃぞ?

 侯爵位まで話を通すのはのう」


茶髪に近いブロンドのツインテールの少女……

実際は初老と言ってもいいほどの年齢の子爵が、

小さな胸を張って語る。


「しかし、その……

 カトゥ財閥とボウマン子爵家に、それほどの

 利があるとは思えないのですが」


実年齢的にはこの中で一番若いであろう、

ダークブラウンの短髪の青年がおずおずと

たずねる。


「そこはまあ、商売だからのう。


 しかし、あのご婦人方は―――

 利益にならない事に、ましてや大金など

 払うはずは無い。


 当然、条件もあるのだろう?」


すっかり白くなった頭に、真っ白な口ヒゲを持つ

男爵が視線を、幼馴染おさななじみのベラ子爵当主に向ける。


「そうね、まず―――


 あの『商品』は男子禁制じゃ。

 決して男には見せてはならぬ。


 それと、ラムキュールと……

 ファーバじゃったか?

 お主らは今後、我らとのビジネスの時は

 二人一組で事にあたれ。


 モデルも継続してくれれば助かる」


それを聞いたアラサーとまだ20代そこそこの

青年は顔を見合わせ、


「はあ……

 望外とも言えるモデル料でしたので、

 そこは全く問題は無いのですが」


「私とラムキュールさんが常に一緒にいなければ

 ならない理由は無いと思うのですが……

 は、反対しているのではなく、効率的に、その」


年上の『枠外の者』は、値段を不審がりながらも

受け入れ、年下の方は消極的に聞き返す。


同性としてグローマー男爵が助け船を出すように、


「そういえばそうじゃのう。

 モデルなど、別に常に一緒でなくても

 良いのでは―――」


彼の疑問に、無言で合意を得るようにメルリアと

ベラはうなずき合った後、


「そもそも、当初は男子禁制の商売だったの

 ですよ。

 当然、この事は他の男性に口外しないで

 頂きます」


「二人一緒であれば―――

 どちらかが秘密を洩らした時、『責任』を

 取らせられるからのう。

 いわゆる連帯責任じゃ」


その答えに、若い男性陣はゴクリと喉を鳴らす。


「用心深い事よな。

 そんな事、考えもするまい。のう?」


ペコペコと2人は答える代わりに首を振る。


「(この私もまだまだ甘かったか……!


 莫大ばくだいなあのモデル料は口止めも込みで。

 そして利益独占のため、これ以上の情報拡散は

 認めない、と―――)」


「(うかつにラムキュールさんと離れたりすると、

 どんな疑いをかけられるか、わかったもんじゃ

 ないって事ね……


 あのモデル料とやらで、借金も一括返済

 出来たってのに―――

 世の中うまくはいかないなあ)」


心の中で、彼らは今後の付き合いと報酬と、

そのリスクについて飲み込み……

観念したように軽くため息をついた。


それを前にして2人の異性は、


「(な、何とかうまくごまかせましたね。

 ベラ様……)」


「(まったくぞ。

 しかし人間、極限まで追い詰められれば

 却って頭がフル回転するのじゃなあ。


 お主にも礼を言うぞ、メルリア)」


彼女たちは小声で冷や汗を隠しつつ会話し―――

無事に話を進められた事に安堵した。




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




一方その頃……


フィオナ一行は『商売』が一段落した事について、

まずバクシアへ報告をしていた。


「なるほど。

 男子禁制、女性限定とはいえ、

 かなりの利益が見込めるという事ですな?


 そこはグラノーラ令嬢にも協力して

 頂きましょう」


太っている、というほどでないが、その

恰幅の良い体を頭に合わせて動かし……

ローン・ボガッドがうなずく。




│ ■メルリア本屋敷 別室   │




「そうですね。

 後、ミイト国にもトーリ財閥の姉妹と、

 シッカ伯爵令嬢という強力な味方が

 いますから―――


 ルコルアには、ファジー君と一緒に働いた

 事のある、女性陣に協力をお願いしようと

 思っています」


女神が一行を代表して神託を通し、今後の

方針について意見を交わす。


グリーンの短髪の少年とロングの母、アルプと

ソニア母子が―――

その横でお揃いのブラウンの髪の、ファジー・

ミモザ姉弟が聞き入っていた。


「フラールに戻ったら、私もお手伝い

 いたしますわ」


「ルコルアならアタイだな。

 きちんとファジーの魅力……もとい、

 商売のサポートしてくるぜ!」


母と姉の積極的な態度に、少年2人は誇らしげに

顔を見上げる。


「でもさー、これって『枠外の者』に

 協力しているって事になるんでしょ?

 そのヘンどうなってるのー?」


赤茶のツインテールの獣人族の少女が、

真正面からツッコミを入れる。


「まあ……」


「何かと引き換えじゃなかったっけ?」


銀髪の短髪と巻き毛を持つ獣人族の

兄2人が、その疑問に答えようとし、


「そもそもの話―――

 オリイヴ国での奉公労働者オークションと、

 獣人族の森への手出しを止めさせる。


 それとバーターで、新たな利益を提供する―――

 という条件だったはず」


シルバーの短髪を持つ貴族が、両目を閉じて

真剣な声で説明する。


「ああ、そうだぜ。

 それなら別に、『枠外の者』と協力していたと

 しても、非難される事は無いと思う。


 フィオナ様があくまでも人間の世界の枠組みで、

 被害を食い止めようとした―――

 そういう理由なら、『女神の導き』の信者たちも

 納得するはずだ」


シモンの説明を聞いて、銀のロングウェーブの

姉妹が、神妙な顔つきでうなずく。


「まあ、そこは今後の展開次第だと思いましゅ。


 しょれにこれまでの情報から、『枠外の者』も

 一枚岩ではないようでしゅし―――

 むしろ切り崩す手始めにもなると考えれば」


ナヴィが〆(シメ)のように語り……

これで一通りの同意が得られた―――

そう思った時、フィオナが口を開く。


「えっ? は、はあ……はい?

 クレアさんが?

 ええと、何て仰って……


 はあ、はあ……ええと……?


 『是非とも最初のサンプルは私に』


 ―――だそうです」


それを聞いた女性陣はフィオナ以外立ち上がり、


「「「イェッサー、マム!!」」」


直立不動で敬礼しながら、同時に返答した。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5917名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。

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