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34・そこの若いのは『調教済み』

皆様、明けましておめでとうございます。

本年が皆様に取って、良いお年になります

ように……


( ・ω・)連載4回目の新年。

今年も初笑いをお届けします。


日本・とある都心のマンションの一室―――


そのリビングで―――

ホットカーペットの上でゴロゴロと、数人の

少女がくつろいでいた。


「おー、そういえばアケオメですー」


家主である、黒髪・セミロングの女神が

他の少女たちにあいさつする。


「もう12時を回りましたか……

 明けましておめでとうございます……」


「おっめー」


女神と同じく黒髪の、後ろで髪をポニーテールに

まとめた和装の少女と―――

ブラウンのワンカールロングで、悪魔のような

シッポとコウモリのような翼を持つ少女が

それぞれあいさつを返す。


彼女たちは悪霊とサキュバスであり……

クリスマス後、『年末年始の予定は?』と

話が出た時……

再びフィオナの家に集まったメンバーである。


「邪神ちゃんと堕天使ちゃんと―――

 ワーフォックスちゃんは予定があるん

 でしたね」


女神がスマホ画面をポチポチ操作しながら、

確認のように話すと、


「あの半人半獣の方はともかくとして―――

 あとの2人、邪神さんと堕天使さんは、

 新年初めての日に信者がいる神殿へ、いったん

 戻らなければならないそうで……」


「ワーフォックスちゃんは一族で集まる日

 だからって」


和装の悪霊の少女はホットカーペットの上に

正座し、サキュバスの方はあぐらをかいて

上半身を起こす。


「あー、あの2人って信者がいるんですか。

 でもそれなら、クリスマスの日にその中から

 何人か調達しても良かったのでは?」


フィオナが疑問を口にすると、

悪霊&サキュバスが、


「邪神さんは、神殿が山奥にありまして……

 『犬と老人しか外歩いてない』とか言って

 ましたっけ……」


「堕天使ちゃんはそこそこ都市部の方に、

 隠れた集会所があるみたいなんだけど―――


 『堕天使なんぞをあがめる異性ヤローに、

 顔面レベルを期待出来るか? あ”?』


 だって」


それを聞いた女神は微妙な表情で、


「な、なかなか世知辛いですね……」


「でもそういうフィオナ様は……?」


「アルフリーダ様やユニシス様と、別に仲悪いって

 わけじゃないんでしょ?

 年末年始くらい家に帰らないの?」


当然の返しをされた女神は、能面のように

無表情になり、遠い目をしながら


「いやまー、聖戦クリスマスからこっち元旦まで、

 『帰ってくんなよ』ってママに釘刺されて

 いるんですよね。


 多分今帰ったらスゴい事になっていると

 思うわ。

 どのくらいスゴいかって、産卵のため

 遡上そじょうしてくるサケの群れよりもスゴいと

 思うわよ」


「こ、言葉の意味はよくわかりませんが……」


「ウン。何かスゴさだけは伝わってきた」


そこへ、シルバーの短髪を持つ少年―――

お目付け役が部屋へ入って来た。


「まあ、あの状況下へ割って入る事の出来る

 勇者はいないと思いましゅ。


 お汁粉でしゅが、食べましゅか?」


ナヴィの申し出に、少女たちは歓声を上げる。


「はいはい。

 ちゃんと席について食べてくだしゃいね。


 それではそろそろ、本編スタートしましゅ」




│ ■シフド国・首都バーサー   │

│ ■職人ギルド街・印刷工房   │




「おはよう。

 みんないるかしら?」


ピンクのロングヘアーの女性が、眼鏡をくいっと

直しながら声をかける。


「お?」


「ん?」


工房のメイン担当者である、グリーンに近い

茶色の短髪と―――

赤い長髪を後頭部でハーフアップにまとめた

女性2人が同時に声を上げる。


カーレイとメヒラが出迎えたのは……

貴族の女性と財閥令嬢、そして『枠外の者』の

男性2名。


「ここが絵を描く場所か……」


痩せ過ぎとも思えるライトイエローの短髪の、

アラサーの男が口を開く。


「でも意外ですね、ラムキュールさん。

 女性ばかり……と言うか女性しか見えません」


次いで、部下であるダークブラウンの短髪をした

まだ20代前半と思われる青年が周囲を見渡す。


「誰だい、この人たちは。

 子爵様かメルリアの知り合いかい?」


カーレイが頭をかきながら、同行者である

茶色に近いブロンドのツインテールをした

少女に問い質す。


「私のところに出入りしている商人じゃ。

 あの『からくり』を売りに来た―――」


「へー、そうなんだ。

 コレすっげー役立ってるぜ」


メヒラが例のカメラ・オブスキュラの箱を

コンコンと叩きながら答える。


「これは失礼……

 初めまして。

 私はルコルアの商人、ラムキュールです」


「マービィ国の商人、ファーバです」


彼らが頭を下げると、そこで女性陣が本題に入る。


「それで、ボウマン子爵様。

 この人たちは何でここへ?」


「新しいスポンサーか何かかい?

 メルリア」


両腕を組みながら彼女たちが問う。

すると、子爵より先にアラサーの男が口を開き、


「大人のモデルの数が足りないという事で、

 ご協力を」


「数合わせ程度でいいとの事でしたので、

 よろしくお願いします」


ファーバも補足するように話すと、

いったん場が沈黙した後―――


「え!? マジで!?」


「いいのか!?」


「やっべ、ここに来て追加ってあり得ん」


色めき立つ彼女たちを前に、若干引く姿勢を

見せるラムキュールだが、


「顔は役者と比べるべくも無いですが、

 構図や姿勢で必要という事なので―――

 いろいろと使ってくれて構いません」


彼はあくまでも、数合わせの協力のため、

というポーズで接するが、そこへ財閥令嬢が

スッ、と前に出てファーバを指差し、


「あ、そこの若いのは『調教済み』らしいから、

 どんな扱いでも構わないわよ」


すると、ドス黒い光を帯びた視線が一斉に

彼の方を向き―――


「えーと?」


「そ、それはどういう……ゴクリ」


女性陣がヨダレを飲み込みながら問い質す。

それに対し、ラムキュールは悪役っぽい笑みを

浮かべながら、


「まあ、彼とは『いろいろ』ありましたから。


 先輩としてきちんと『教育』してあげている

 ところですよ。

 一応優しく……ね」


それを聞いた室内から、『ブッフォ!!』

『おっおうw』『どうえぇえええええい!!』

と、まるで獣のような咆哮ほうこうが―――


「あの……何が……」


さすがに青年が危機感を覚え、おずおずと

たずねるが、


「それと―――

 アーユに、すでに他の貴族・豪商の『客』と、

 他のモデルも呼んでもらっておるから」


最後にベラが着火した事で―――

女性陣の盛り上がりは最高潮に達した。




│ ■メルリア本屋敷 応接室   │




―――その日の夕方になって……


モデルを終えた一行が、屋敷へと戻って来た。


「あの、大丈夫ですか?

 ラムキュールさん」


「ファーバさんも相当お疲れでは……」


グリーンの髪を持つ第一眷属と、ブラウンの

短髪をした第二眷属の少年が―――

新規のモデル2人組をいたわる。


「だ、大丈夫だ……

 それにこれで、各国への販路の伝手つて

 出来たと思えば」


「俺、途中目隠しされたんですけど……

 何を描いていたんですかね、あの人たち?」


『枠外の者』2名がよろよろとソファに

倒れ込むように腰掛けると、


「……ん?

 シモン君、ソニアさんやミモザさんを

 見なかったか?


 グラノーラ令嬢は商談があるので残ると

 言っていたが」


シルバーの短髪の青年貴族が、短い黒髪の

褐色肌の少年へ問いかける。


「あ~……

 何かそのまま、印刷工房で話があるとかで。


 ポーラやメイも向こうに残ってるみたいです」


ビューワー伯爵に彼が答える。


「カガミもあっちに残ったな」


「メルリアも遅れるってさ」


銀髪の髪とシッポを持った獣人族の兄弟も、

ややグロッキーになりながら話に加わる。


「フィオナ様もあちらに残ったようでしゅし……

 あれ? しょういえばグローマー男爵様は?」


ナヴィが男爵の不在に気付くと、


「工房までは一緒にいたはず―――」


「確か他の貴族さんや金持ちと話していたぜ。


 しかし、あの中で男一人で大丈夫かね」


ビューワー伯爵とシモンが理由を説明する。


「前にも増して、いっぱい来てましたから……」


「目が血走っている人たちばかりでしたけど、

 寝不足だったんでしょうか?」


アルプとファジーも、その時の状況を思い出す。


その会話の横で、ラムキュールに対しファーバが

小声で語り掛ける。


「(これでもうお役御免やくごめんですよね?

 次は無いですよね?)」


「(それはお前が決める事ではない。


 ……と言いたいが、何か私も疲れた。

 とにかく伝手を作る事にも成功したし、

 後はすぐこの国を離れれば―――)」


ヒソヒソと2人が話す一方で、ナヴィは

フィオナに神託カイセンをつなげていた。


「(しゃてフィオナ様。今はいったい)」


何を―――

と彼は状況確認のため質問を続けようとしたが、


『ほぉい!』『ヘアッ!!』『フアァアアッ!!』

『┗(^ο^)┛wwwwwww』

『┌(^ο^)┐ドコドコドコドコwwwwwwww』


などと原始人が火の回りで踊っていそうな

騒ぎの中、解読不能・意味不明の叫び声が

向こう側で飛び交っており……


ナヴィは無言で神託を閉じた。


と、ここで薄くなった白髪頭に、立派な口ひげを

たくわえた初老の男が入って来て、


「あ、グローマー男爵様」


「お帰りなさい。他の方々は……」


アルプとファジーが孫のように彼を迎え入れると、

『どっこいしょ』と席に着いて、


「あ、ワシだけ先に逃げ……

 じゃなくて帰らされた。


 後これが―――

 今回の『モデル代』じゃと。


 リオネル君とキーラ君の分はメルリアが、

 ナヴィ君の分はフィオナさんが預かっておると」


と、リオネルとキーラを除き……

一人一人に長方形の紙を手渡していく。


それはラムキュールとファーバにも配られ、


「……感謝状かな?」


「アレ? これ証書じゃないですか?

 ほら、ボウマン子爵家で渡された―――

 ン?」


そこでアルプとファジー、シモンが動き、

3人はビューワー伯爵の元に集まる。


「あの、こ、これ……」


「また預かって頂けますか?」


「ウン、やっぱ心臓に悪いわこの金額」


ふぅ、と軽くため息をついて伯爵が受け取る。


「私に取っても見慣れない金額ですけどね……

 いったい領の税収の何割分やら」


そんな彼らを他所に―――

『枠外の者』の2人は、金額を見たまま

固まっていた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5907名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。

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