33・理想1割妄想9割
( ・ω・)更新したら評価ptが下がるって
どうなん(爆)
日本・とある都心のマンションの一室―――
そのリビングに、家主である黒髪・セミロングの
女神を中心に、少女たちが集まっていた。
「いやーメリクリっす!」
「いいッスねこの掘り炬燵……」
「とろけるわぁ~」
メンバーは全員人外で―――
悪霊・邪神・サキュバス・堕天使・半人半獣で
構成され……
それぞれが飲み物や料理に舌鼓を打っていた。
「いやーホントすいませんねフィオナさん」
「人情が身に染みるぜい」
顔の片方がストレートの黒髪で隠れている、
いわゆるワンレングスの少女が邪神。
ブラウンのワンカールロングで、いかにも
小悪魔っぽいシッポとコウモリのような翼を
持っている少女がサキュバスである。
「身も心も温まるわぁ~」
「ちゃんとお出汁が取ってある……
きちんとした料理は久しぶり……」
ブロンドのロングウェーブをした髪の―――
天使のような羽を持った少女が汁物をすする。
その羽の色はカラスのように黒い、いわゆる
堕天使であり、
対照的に黒髪ロングのポニーテールで、
和装に身を包んだ少女、悪霊がホッと一息つく。
「しかもこの料理は、あのお方の……!」
室内とはいえ、露出の多い衣装の―――
首までの長さの髪をウルフカットにした半人半獣の
少女が、卓上の品々に視線を送る。
そこへ、シルバーの短髪をした少年が姿を現し、
「次の料理でしゅよ。
食べ終わったのは下げましゅから」
その手に、新たに作られたであろう数種類の
手料理が運ばれてきた。
少女たちの歓声が沸き起こる中―――
主筋である女神がナヴィに声をかける。
「それにしても、ナヴィ。
あなた、料理が出来たんですね?」
「最初はご主人様や、軍神様のお酒のツマミ
程度でしゅたが……
段々と要求されるハードルが上がりましゅて」
実際、彼が出してきたのは―――
揚げ物から始まり、肉巻きポテトや
ベーコンとほうれん草のサラダ……
タコとワカメとキュウリの酢の物、
アジの南蛮漬け、ツナとササミ、カット野菜の
マリネなど、お酒のアテである品が多かった。
「ぶーぶー。
こんな物が作れるのなら、どーして
普段料理してくれないのよ」
「あんまり健康に気を使ったものでは
ありましぇんし―――
揚げ物とかは比較的簡単なんでしゅけど、その」
そこで言い淀むナヴィに、邪神とサキュバスが
割って入り、
「あー……確かにこりゃ太るわ」
「マリネとかも一見サッパリしてて、
ヘルシーそうだけど―――
油すっごく使うのよね」
だが、堕天使と悪霊が次々と箸を伸ばし、
「でも美味しい止まらない♪」
「今日はリミッター解除……♪」
洋装と和装の対照的な2人が食べまくる中、
「あの、ナヴィ様ー?
まだ料理ってあるんですか?」
おずおずとワーフォックスの少女がたずねると、
「そろそろ鍋に移ろうかと思ってましゅ。
シメはウドンで」
その答えに、女性陣が沸き立つ。
「じゃあ私は向こうで料理の続きを」
「「「お願いしまーすっ!」」」
空になった皿をまとめるナヴィを横に、
女性陣のみで会話を再開する。
「そういえば―――
邪神ちゃんたちはこれで良かったの?
いやまあ、人の事は言えませんが……
こういうクリスマスで」
そこでピシッ! と空気に緊張が走る。
「いやいやいや……
何を仰いますやら」
「美少年のご奉仕手料理ですよ?
こんなの、むしろこちらから土下座して
参加させて頂くレベルです」
邪神とサキュバスと呼ばれる少女が、
肯定で答える。
「あ、ベーコン巻きが残ってましゅね。
誰か食べてくれましゅか?」
巻いた形に爪楊枝が刺された一品。
彼がつまんで不意に差し出したそれを、
一番近くにいたフィオナがパクッ、と
口に入れ―――
「「「あっ」」」
周囲の女性陣が声を上げるも、そのまま
モグモグと噛み締める。
「じゃあ私はこれで―――」
ナヴィが去っていくのを見届けると、
フィオナに視線が集中し、
「今のはちょっとぉ~」
「無いんじゃないですか?
だいたい、いつも一緒の家にいるんですから
食べさせてもらう機会はあるでしょうに」
堕天使と悪霊から抗議され、フィオナは首を
左右に振り、
「そ、そんな事も無いんですよっ。
料理を作ってもらうのだって初めてで」
その後、彼女たちの間で瞬時にアイコンタクトで、
・必ず料理は一皿に一品残す
・順番に一人ずつ食べさせてもらう
という取り決めが0.5秒で行われた。
一方、料理の続きをしに台所へ行ったナヴィは、
「忙しいでしゅが、こういうクリスマスも
悪くはないでしょう。
それではそろそろ、本編スタートしましゅ」
│ ■シフド国・首都バーサー │
│ ■メルリア本屋敷 応接室 │
「これはこれは―――
ボウマン子爵様もいらっしゃるとは」
「お、お久しぶりです。
メルリア・カトゥ様」
病的な、痩せ過ぎの科学者を思わせる……
ライトイエローの短髪の男と、その従者のように
低い姿勢のダークブラウンの短髪をした、
『主人』よりやや年下の青年が―――
うやうやしくあいさつする。
「よいよい。
ちょうど私も会いたいと思っておってな」
「ラムキュールさんにファーバさん、
でしたね。
一応、そちらからお話を聞くとしましょうか」
茶色に近いブロンドのツインテールをした
貴族の少女と―――
この屋敷の主である、ピンクのロングヘアーをした
眼鏡の女性が対応する。
彼らが、やけにスムーズに話が進む事に顔を
見合わせていると、
「ここには関係者しかおらぬゆえ」
「気にせず、用件を言ってください」
そして2人の女性と2人の男性は―――
『商談』に入った。
「……アレ?
ワシ、関係者じゃないのかのう」
個別に割り当てられた別室で―――
すっかり白くなった頭髪と立派な
同じ色の口ヒゲを持つ男爵がつぶやく。
「いやまー、そうなんだけどね。
この交渉は女性だけでやった方がいいと
思って」
首を傾げるグローマー男爵を、ライトグリーンの
ショートボブの髪の少女がなだめる。
「そーいえば男爵様。
あんな美形さん、どこで見つけてきたの?」
「初めて会ったのはオリイヴ国だ。
しかし、ビューワー伯爵殿といい、全員
他国の出身者と聞いておったが……
いつの間にシフド国まで来たのだろう?」
まさか女神による転移とは想像も出来ず、
疑問に思うも答えは出てくるはずもなく……
貴族位の老人と少女は、商談が終わるのを
待つ事にした。
「はあ……
絵の『モデル』ですか?
私とファーバ君が」
「いやー、それなら―――
俳優や役者を呼んだ方が」
彼らは、例の装置……
カメラ・オブスキュラを新しく仕入れてまた
シフド国へ戻ってきており、その買い取りを
交渉しに来ていたのだが、
ボウマン子爵家当主・メルリア財閥令嬢から
『全て言い値で購入する』と言われ、あっさり
決まってしまい―――
さらにその後に出された『提案』に、
戸惑いを隠せないでいた。
「―――ふむ。
協力は出来ない、と?」
貴族の少女から問われた彼らは、ビクッと
肩を震わせる。
「いい、いえ……
ただ我々のような―――
どこにでもいる、人並みの顔でいいものかと」
「絵のモデルとしましては、その。
満足頂ける顔では」
釈明と言い訳をアラサーの男と20代の青年が、
何とか振り絞るように答え、
「まあ、そこまで深刻に考えなくても結構よ。
今、モデルを7人ほど用意出来たのですが、
その中の6人が子供でね。
構図とかポーズとか、大人の数が足りて
いないのよ」
メルリアの説明に、ルコルアとマービィ国の
『枠外の者』は顔を見合わせ、
「な、なるほど。
要は数合わせという事ですか」
「驚きましたよ。
最初からそう言って頂ければ」
ホッと一息つく彼らに、さらに追い打ちを
かけるように、
「もし引き受けてもらえるのであれば―――
シフド国において、各貴族にお前たちを
紹介してやろう」
ベーラの申し出に、ラムキュールは息を飲み、
「それと―――
連合各国における我がカトゥ財閥の商売ルート、
その便宜を図ってもよろしいですわ」
メルリアの提案に、ファーバが目を白黒させる。
「そ、それは……!」
「ね、願ってもいない話で」
深く頭を下げる2人の商人。
そして、顔を下げたまま小声で会話が交わされる。
「(ラムキュール様。
どうして彼女たちはこんな破格の条件を?
この条件、飲んだら……
自分たちも商品に加えられている事って
ないですかね?)」
「(覚悟を決めろ。
連合の上位国家の貴族と財閥にこれほどの
伝手を作る機会など、二度と来ないと思え。
それに、商人は―――
自分自身も含めて『商品』だ)」
彼らが頭を上げると同時に、メルリアから
「じゃあ、さっそくだけど明日……
ある工房に付き合ってもらうわ。
それでいいかしら?」
「ではその時に、私も何人か知人を連れて来ると
しよう。
せいぜい、顔を売っておくが良い」
続けてベーラが発した言葉に、2人は直立不動の
体勢から腰を直角に曲げた。
そして―――
その応接室の窓の上から、頭を下げるようにして
のぞく獣人族の少女が一人。
赤茶のツインテールの彼女は、その姿勢のまま、
「こちら『供給は身内』、
こちら『供給は身内』―――
『獲物は沼に落ちた』、繰り返す。
『獲物は沼に落ちた』、オーバー」
一方―――
フィオナとナヴィに与えられた自室では……
「こちら『理想1割妄想9割』、
こちら『理想1割妄想9割』―――
情報、確かに受け取りました。
もう諜報は大丈夫です。
気付かれないうちに帰還してください」
それを横で見ていた女神の従僕は、
「眷属との神託まで使って、あなたは一体
何をしていらっしゃるんでしゅか」
「こ、これも情報収集の一つですよ!
ここで商売を成功させるため―――」
フィオナの反論に、ナヴィはフー、と
ため息を付き、
「どうせ後で情報共有はするでしょうに」
「情報はスピードが命です!
1秒でも早く手に入れる事が重要なんですよ!」
ハイハイ、と彼はスルーし―――
改めて呼び出しが来るまで、部屋で過ごす
事にした。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5890名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
基本、土曜日の午前1時更新です。
休日のお供にどうぞ。