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32・いるじゃないですか……

( ・ω・)仕事が忙しい時に限って

シナリオもノリがいい(逆セルフスターター)


日本・とある都心のマンションの一室―――


「親方ぁ!! 空から美少年が!!」


「何を言い出した?」


いつも通りのやり取りを、黒髪セミロングの

女神と―――

シルバーの毛並みと鳩のような羽を持つ猫が

交わしていた。


「いやもー、この時期になるとですね。

 ソシャゲーもクリスマスイベ一色に

 なりやがりますし……

 否が応でも現実というものを見せつけられて」


フィオナは文句を言いながらもスマホの画面を

ポチポチと操作し続ける。


「いったんそれを止めて、現実の攻略をした方が

 いいと思うんですけど」


「それが出来ていれば苦労しませんー!!

 攻略だって誰からしていけばいいのか……!」


お目付け役のツッコミに、半ば逆ギレしなから

答える女神。


「以前、好感度とか妙な数値を出していたような

 気がするんですけど、アレは?」

(3章9話 信頼度とか好感度とか 参照)


ナヴィの質問にフィオナは目を反らし、


「いやだってホラ、あれはアタシの主観だったし」


「そういえばそうでしたね……」


思い出せばしょうもない事だったわと、彼は

顔には出すが言葉にはせず―――


「まあまだ時間はあるわ。

 それまでに調達出来るかも知れないし」


「調達ゆーな。

 ……でも確かに今回は、眷属や候補の方々が

 忙しいですし―――

 厳しいというのはわかります」


実際、モデルになるという事でミイト国に

来ている彼らは、現在動かせる状況では

無いという事実があった。


「でしょでしょ!?

 今回は不可抗力なんですよ!

 仕方ないんです!」


勉強や宿題をしない言い訳を見つけた

小学生のように、女神はお目付け役の

言葉に飛び付く。


そして一息吐いた後、フィオナの方から

口を開き、


「まーいろいろやってダメだったら、

 家で大人しくしているから。

 その時は邪神ちゃんたちでも呼ぶわー」


「一応、予定はそのように……

 ではそろそろ、本編スタートしましょう」




│ ■シフド国・首都バーサー   │

│ ■メルリア本屋敷 応接室   │




「では、フィオナ様―――

 『物語』についてはひとまずこれで」


「ええ、メルリアさん。

 とても有意義で素晴らしい会議でしたわ」


女神・フィオナと……

屋敷の主である、ピンクのロングヘアーをした

眼鏡の女性が、何かに同意の視線と言葉を交わす。


「この絵は模写させてもらった後、

 家宝にして、門外不出にするぞ、アーユ」


「ベーちゃん、どっちにしろこちらの方の絵は

 閲覧厳禁にならざるを得ないよ。

 女性以外……」


茶色がかった金色のツインテールの伯爵家当主と、

ライトグリーンのショートボブの同家の令嬢が

次に続く。


「ていうか、その~……ソニアさん」


「ミモザさんも、お身内の人なのに

 いいんでしょうか」


お揃いの、銀のウェーブの髪の姉妹、

ポーラとメイが、第一眷属と第二眷属の、

母と姉にたずねる。


「まあ、創作ですしねえ」


「これが女相手なら断っていたけどさ」


グリーンの長髪をしたアルプの母と、

ブラウンの、首までの長さの髪を指先で

いじりながら、ファジーの姉が答える。


「そういう貴女はシモン君の事……

 って、カガミちゃんは―――」


「聞くまでもなく! だよ。

 グラノーラさん。


 リオネルにい、キーラにいの事はよく

 知っているモン。

 すみずみまでね!

 妄想バッチ来ーい、だよ!」


質問をした赤髪のロングヘアーの豪商の娘は、

両目を閉じて額に人差し指を当て、

赤茶のツインテールの獣人族の少女は、

握りこぶしでガッツポーズのような姿勢を取った。


「してメルリア殿。

 今後の予定としてはいかなる所存で?」


「滞在はそれほど長く伸ばせないと聞いて

 おりますので―――

 今日は英気を養い、明日に備えて欲しいと

 思っております、フィオナ様」


熱気冷めやらぬ中、他の付いてきたメイドや

女性陣の口元が歪み、黒い笑みを作る。


「当然それには……

 私たちも参加出来るのであろうな?」


「となると今から―――

 『あんなポーズ』や『こんな絡み』を

 考えておかないと……!」


ボウマン子爵家の女性2名が、妖しく目を

光らせ、


「明日は、他の出資者の方々も……

 当然、女性限定で来られますわ。


 是非ともお楽しみに―――」


屋敷の主が答えると、そこでようやく

他の男性陣へ予定を伝えるため、

メイドたちが部屋を出て行った。




「―――しょれでいきなり地球あちらからいなくなった

 わけでしゅか。


 いや別にいいんでしゅけどね」


その後……

メルリア本屋敷で与えられた自室で、フィオナは

シルバーの短髪の少年を前に正座していた。


「い、いやそのぉ~……

 居ても立っても居られなくなったと

 言いますかあ~……」


別世界で妄想膨らまそう会議をキャッチした

女神は、本能のままその地へ『降臨』し、


話し合いが全て終わった後―――

ナヴィを置いて単独で来てしまった事にようやく

気付き、


結果としてお目付け役に説教されていたのである。


「一応、私は―――

 フィオナ様のボディガードでも

 あるんでしゅからね?


 まあ今回はシフド国でも指折りの財閥の

 お屋敷でしゅし、危険は無かったと思い

 ましゅけど……

 今後は気を付けてくだしゃい」


「は、はぁ~い」


さすがにシュンとなる女神に、お目付け役は

フー、と一息付いて、


「で、どうしましゅ?

 また地球へ戻りましゅか?

 それともここで待機を?」


「一応休息は出来ましたから……

 あと明日の予定で、自由指定希望の

 お客様(スポンサー)が来るみたいなんですよ。


 だから、今日明日はここで過ごします」


そうして2人は今後の詳細を共有しつつ、

明日を待つ事にした。




―――翌日、夕方。


『モデル』の仕事を終えた一行は、

メルリア本屋敷に戻ってきたのだが……


「……大丈夫かあ、アルプ、ファジー」


黒髪、褐色肌の少年が、身内が抱きかかえて

運ぶ眷属たちを心配そうに見つめる。


グリーンの髪の少年は母親に―――

そしてブラウンの短髪の少年は姉に運ばれていた。


「ソニアさん、ミモザさん―――

 重くはありませんか?」


シルバーの短髪の貴族の青年が、2人の女性に

『代わりましょうか』と問いかける。


「ありがとうございます、ビューワー伯爵様。

 でももう寝てしまっているので―――

 このまま部屋へ運びますわ」


「アタイもそうさせてもらうよ」


お姫様抱っこのように運ばれる2人の少年を、

ボウマン子爵家の当主と令嬢が見つめ、


「おうおう、寝顔も可愛いものよのう」


「尊いですわぁあ……♪」


その横では、ここの屋敷の主が銀髪・巻き毛の

獣人族の少年を―――

そして同じく獣人族の妹が、もう一人の兄である

銀髪の少年をおんぶしていた。


「ね、ね。シモン君、疲れてない?」


「お、お部屋まで運んであげましょうかぐふふ」


「いや、俺はいい。

 何かイヤな予感がするし」


第三眷属であるポーラとその妹がシモンを気遣い、


「ナヴィはお疲れではないですか?

 精神とか心とか気持ちとか」


「絶対に体力は残っているの、わかっていて

 言ってましゅよね?」


女神も従僕に対し、欲望にまみれた言葉を

心配しているフリをして投げかける。


「……確かにすごい熱気であった。

 何かを削られていくような。

 質は違うが、若い頃戦場に初めて行ったような

 緊張感であった」


薄くなった白髪と立派な白い口ヒゲをたくわえた

老紳士が、深く息を吐きながら告げ、


「だらしがないのう。

 今後はまあ、私に任せておくがよい」


「う、うむ……

 そうさせてもらおうかの」


そこで男性陣は各自、割り当てられた

自室へ―――

女性陣は再び応接室へと集まった。




「さて、また妄想の糧が増えたところで―――

 会議を行います。

 今後の課題とその検討について……」


メルリアの指揮の下……

改善点・問題点について議論が交わされようと

していた。


「しかし、課題と言ってものう。

 商売としては大成功の類ではないのか?」


「そうですよ。

 特に『指示付き』の絵は―――

 とんでもない価格で売れたんですから」


ベラとアーユの指摘通り……

すでに今日の『売上』だけで、計画上の利益を

上回るほどであった。


「確かに予想外の売上でしたけど―――

 ワタシの言っている事はそうではありません。


 先日話し合った、大人のモデルの不足……

 これは避けて通れないものです」


それは欲望をアップデートさせた女性陣から見た、

『さらなる高み』への欲求でもあった。


「しかし―――

 あの伯爵様に匹敵するほどとなりますと」


「そこはまあ多少目をつむっても……

 そんな事(モデル)を引き受けてくれるかどうかも」


ソニアとマルゴットの言葉に、全員が悩み込む。


「口止めも必要ですよね」


「ヘンな噂を立てられても困るから、

 自ら口外する可能性は低いと思いますけど」


メルリア家とボウマン子爵家のメイドが

意見を出す。


「メルリアさんかベラ様にはいないのかい?

 弱みを握っている、そんな連中とか」


情報屋でもあったミモザが黒い意見を出すと、


「いるにはいるけど~……」


「どいつもこいつも腹の出たオッサンじゃ。

 あのモデルに混ぜるのは断固拒否する」


財閥令嬢と子爵家当主が否定する。


「どこかにいないもんですかねー。

 カップリングが見込めそうな二人組で」


「例え妄想の餌食になっても、口止めが

 容易そうな人材は―――」


ポーラとメイ姉妹が両腕を組んで、

吐き出すように語り、


「出来れば商売ビジネスで縛り付けたいですね。


 どこかで出た損害を取り戻そうと、

 金のためならプライドも捨てる、

 くらいの気概の若い商売人とか」


フィオナが続き、段々と都合の良い人物像が

出来上がってきたところで、部屋がノックされ、


「……何?

 ここは今、男子禁制よ?」


不機嫌そうに答えるメルリアに、使用人が

扉の向こうから、


「も、申し訳ございません!


 あの、ルコルア国のラムキュール殿と、

 マービィ国のマイヤー殿がお見えになって

 おりますが……」


そこで、彼らを知る女性陣が顔を見合わせると、


「「「「「いるじゃないですか……」」」」」


彼女たちはニヤリと口元を歪めた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5883名―――


( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。

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