29・いやある意味腐っているかも
( ・ω・)休日があると執筆ペースが
落ちるのは何とかしたい(締め切り
ギリギリまで動かないタイプ)
日本・とある都心のマンションの一室―――
ペットと思われる猫と、家主であろう少女が
並んで寝転ぶ。
「そういえばナヴィ。
せっかく掘り炬燵買ったのに、そちらには
あまり入らないわね?」
女神は黒いセミロングの髪を揺らして上半身を
起こし、お目付け役(猫Ver)へ頭と視線を
向ける。
「日中はまだ暖かいですし―――
今はまだ、このホットカーペットで十分
ですから」
彼は思う存分体と手足を伸ばして、主筋の質問に
答える。
「ところで……その掘り炬燵の中に、何か怪しげな
超小型撮影機器とかあるんですがそれは」
「えーそれはさいきんかじとかおおいしー、
ねんのためじゃないかしらー」
ナヴィの質問にフィオナは180度視線を反転し、
声だけで回答する。
「いや別にいいんですけど……
どんな目的であろうと……
ていうか、私がコタツに入る時って猫の姿に
なっている時ですよ?
それを盗撮して何になるんですか?」
首を傾げる彼に、女神はぐるん! と
思いっきり体を回転させて向き直り、
「何言っているのよ!
猫の姿でも可愛いし、しかも美少年になるって
わかっているんですからね!
猫の時の姿を愛で、さらにそこから人間の姿に
なった時を想像して妄想する……!
それくらいの事が出来なくてどうするん
ですか!? ええ!?」
「どうするっていうか、どうしてくれようって
いうか……
まあ当人が幸せならいいんですけどね。
というか、猫の姿でどんな想像を?」
呆れながらも興味本位で、自分をどのような目で
見ているのか、彼は聞いてみる。
「え? だって、その、ホラ……
猫の姿の時の貴方ってぜ、全裸、じゃない?」
「いやずっと私、猫の時は全裸でしたが。
むしろ何か着ている時なんて無いでしょうに」
するとフィオナはうつ伏せになってピクピクと
震えながら、
「ぜ、全裸……♪
ぐふふ、いつも自分が全裸って認めている
美少年……♪
こいつぁスゲェや……♪」
「どこに病気のスイッチがあるのか
わかりませんね……
とにかくもう、本編スタートしますよ」
│ ■シフド国・首都バーサー │
│ ■メルリア本屋敷 正門 │
「大丈夫でしゅかフィオナ様。
歩けましゅか?」
シルバーの短髪の少年が、主筋である女神を
気遣いながら進む。
「と、取り敢えず馬車までたどり着く事が
出来れば……」
ヨロヨロとした足取りで、フィオナは用意された
馬車へと歩み寄る。
ピンクのロングヘアーをした、眼鏡の女性が
心配しながら語り掛け、
「馬車に入ったらすぐ横になってください。
乗る人数は限られておりますが、馬車は
何台もありますので―――」
「あ、じゃ、じゃあ~……
出来ればアルプとファジーと一緒の馬車で……
もし座席が足りなければアタシの上に乗って、
それでもうぎゅっとお尻で」
それを聞いた―――
名指しされたグリーンとブラウンの、同じくらいの
短さの髪をした少年が、困惑しながら口を開く。
「あ、ああ……フィオナ様……!」
「意識が朦朧としているんですね!?
自分で何を言っているのかもわからず……」
「悲しい事に―――
これでまだ限りなく正常でしゅこの女神。
むしろ本音を隠さなくなってきたという
線まであり得ましゅ」
とにかく4人で馬車に乗り込み、向かい合う座席に
それぞれが座る。
フィオナは1人で横たわり、その前にアルプ・
ナヴィ・ファジーが3人で並んで腰掛ける。
「行先はもちろん印刷工房でしゅが……
それまで持ちましゅか、フィオナ様?」
「す、少し寝るから着いたら起こして―――
というのは?」
女神の提案に彼は首を左右に振り、
「フィオナ様が爆睡したら……
私でも起こせましぇんよ。
なので頑張って意識を保ってくだしゃい」
「そ、そんなぁ~……
何かこの馬車すごく高級っぽいですし、
このゴトゴト揺れる子守歌のような揺れに
耐えろと……」
そこでナヴィは顔をフィオナの耳元に近付け、
「(ふおぉおおお何なんですかナヴィ!?
今アタシは体力ほとんど使い切って精神力だけで
持っている状態ですから抵抗出来ないっていうか
むしろバッチ来いってでもギャラリー付きは)」
小声で焦り散らしながら語る女神に、彼も小声で
「(言っておきましゅけど―――
ゲームやネット見た後に疲れ果てて寝オチした
フィオナ様って……
イビキと寝言のオンパレードでしゅからね。
もしここで寝たら、しょれをアルプ君と
ファジー君に披露する事になりましゅよ)」
そこで彼女はビクンと一瞬小さく体を揺らし、
「じゃ、じゃあ……
適当にちょっと話してもらえるかしら。
目的地に着くまで」
「しょれが無難だと思いましゅ。
あ、栄養ドリンクやエナジードリンク、
まだありましゅからね」
こうして彼ら一行が乗る馬車は―――
メヒラとカーレイの待つ、印刷工房へと向かった。
│ ■職人ギルド街・印刷工房 │
「おお、コイツぁ……!
上玉がいっぱい来たねぇ!」
目的地へ到着すると……
緑に近い、短い茶髪をした端正な顔立ちをした
男装の麗人といった風の女性と、
「スゲェな。
俺っちもモデルさん相手にして長いが―――
どこにこんな美形さん隠れていたんだよ」
顔の両側に赤いウェービーヘアーを垂らし、
後頭部にハーフアップで長髪をまとめた、
メインの担当者2名が待ち構えていた。
「他国からのお客様だからね。
貴族様もいらっしゃるので、失礼の
無いように」
メルリアが眼鏡をくい、と直しながら語り……
さらにけん制するかのように、他の女性陣も
先頭に立ってあいさつする。
「フラールから来ました、マルゴット・
グラノーラです。
どうぞよろしく」
真っ赤なロングヘアーを垂らすようにして、
まず豪商の令嬢が頭を下げ、
「ええと、今はバクシアの……
ボガッド家のソニアと申します。
今日は我が子・アルプをよろしくお願い
いたします」
礼儀正しく、第一眷属の母が一礼する。
「バクシアのポーラ・ネクタリンと―――」
「同じくメイ・ネクタリンです。
よろしくお願いします。
アルプとシモンの付き添いで来ました」
銀のロングウェーブをした姉妹が、貴族位では
ないものの、上品に会釈し、続いて
「カガミでーす!
今日もよろしくー!
リオネル兄とキーラ兄も一緒だよー!」
赤茶のツインテールの獣人族の少女が、元気よく
あいさつする。
「んでアタイがルコルアのミモザだ。
ファジーの姉だけどヨロシク」
首筋まで伸びた、弟とお揃いのブラウンの髪をした
幼顔の女性が軽く頭を下げる。
最後の女性を除いて、通り一遍の出会いの仕草を
済ませたが……
彼女たちの間では目に見えない火花が散っていた。
そこへ、風が吹くように一番年上であろう
男性が一歩前に出て、
「メヒラさんとカーレイさんですね。
初めまして―――
バートレット・ビューワー伯爵です。
話はメルリア令嬢から聞いております。
今回のご協力、感謝いたします」
軽く会釈するホワイトシルバーの短髪の貴族に、
代表の2名は一瞬後ずさり、後ろの女性職人たちは
黄色い声を出して盛り上がる。
「貴族様なんだろ?
ずいぶんと礼儀正しいな、アンタ」
「平民に頭を下げるたあ、気に入ったぜ!
任せておきな、魅力を完全に引き出してやる!」
そして恐る恐る、第一眷属と第二眷属の少年が
やって来て、
「は、初めまして。
フラール国出身、アルプといいます」
「ルコルア国から来たファジーです。
本日はよろしくお願いしますっ!」
そこでまた一層黄色い歓声が沸き―――
「何かよー、ポーラとメイ姉妹と同じ空気が
するんだが……
バクシアから来たシモンだ。よろしく」
褐色肌で、黒髪・短髪の少年が頭をガシガシと
かきながら周囲を見渡す。
「おー、こっちは生意気系って感じだね♪」
「いーねー♪
あの2人との対比に使えるよ」
続いて獣人族の兄弟も一礼する。
「オリイヴ国から来たリオネルです」
「同じくキーラだ。よろしくな」
銀髪で、その口元から牙がのぞく兄と―――
それを一回り幼くした、銀の巻き毛の弟が
あいさつする。
もはや工房はどこかのイベント会場のように
熱気を帯び、そこに女神の従僕が現れると
さらにヒートアップした空気になるが、
「ではフィオナ様もあいさつを、ホラ」
ナヴィが女神をエスコートし―――
それまで歓声を上げていた室内の空気は一変する。
「アンデッドの少女モデルって話あったっけ?
すごく気合い入っているのは認めるけど……」
「えっとさ、あの―――
コレ生きてる?」
カーレイとメヒラが目を丸くして驚いていると、
ナヴィが口を開き、
「んーまあ、生きているかどうかは……
社会的にか生物学的にかで答えが真逆に
なりましゅが」
「いやアタシはモデルじゃないです違います。
まだ死んでませんし腐っていませんいや
ある意味腐っているかも知れませんが一応」
ゾンビのようにヨロヨロとした足取りで出てきた
女神の言葉に―――
職人たちやメルリア一行も困惑した空気に
包まれた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5844名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
基本、土曜日の午前1時更新です。
休日のお供にどうぞ。