28・もうマヂふざくんなよお前♪
( ・ω・)最近は熱いお茶が手放せない(老人)
天界・フィオナの神殿―――
そこで一匹の猫が一組の男女を前にして、
ピシッと前足を揃えて立っていた。
「フム―――
信者5千人を超えた事により、眷属や信者を
瞬間移動させられる能力を得た、と」
まず目前の黒髪・褐色の青年から口を開き、
「果樹の豊穣を司る神として、こうまで
『力』を得たのは前例が無いんじゃ
ないかしら」
ブロンドのロングヘアーを持つ、モデルのような
体型の美女が続く。
「やっぱり珍しいんですか?」
ナヴィ(猫Ver)の質問に―――
夫婦の神2人は同時にうなずく。
「そもそも各国をまたいで信仰される、
果樹の神様だからねえ」
「普通ならあり得ないわよ。
さすが、私とパパの娘だわー♪」
従僕からの報告を聞いて、主人である
アルフリーダと、その夫であるユニシスは
満足そうな表情を浮かべる。
「まあ確かに……
ぱんつぁーふぁうすと君による解決(物理)、
パック君の討伐による解決(自作自演)、
眷属を使ってBL文化を推し進め、敵を味方に
引き入れようとする神様って、今までいなかった
でしょうし」
それを聞いた神様夫婦は慌てふためきながら、
「ま、まあ、ホラ。
それは最初、ハードモードだったって
いうのもあるし?」
「そ、そもそも普通の解決方法じゃダメだった
わけでねっ!?
それを乗り越えて信者や眷属を救ってきたん
だから、さすが私とパパの娘だわー」
ユニシスとアルフリーダの応答にナヴィは
両目を閉じて、
「確かに―――
偶然と流れ、好意的な解釈の結果とはいえ、
全てよい方向で終わっていますからね。
あれはフィオナ様でなければ出来なかった
でしょう」
従僕の回答に軍神と女神は顔をパアッと
明るくして、
「そ、そうだよ!
何より結果良ければそれで良し!」
「う、運も実力のウチってね!
それじゃそろそろ本編入りましょう! ね!」
│ ■シフド国・首都バーサー │
│ ■メルリア本屋敷 応接室 │
それぞれの国から眷属&信者を呼び寄せると
正式に決まった3日後……
黒髪・セミロングの女神は顔をバシバシと
叩いて気合いを入れていた。
「うーっし……
タウリン・カフェイン・アミノ酸、
ビタミン群―――
アタシに力を貸してくれ!!」
目の前にはずらりと、地球・日本で購入した
栄養ドリンクが並べられ、ひときわ異彩を
放っていた。
(※良い子は真似しないでください。
悪い子も真似しないでください。
大人は節度を守って適量で)
「あれは……
神の飲み物でしょうか?」
銀髪の巻き毛を持った獣人族の少年が質問する。
「まあ、普通の状態なら手を出さない類の
ものでしゅね」
シルバーの短髪を持つ従僕がそれに答え、
「ふふふ……
これは決して諦めない者にしか許されない
飲み物―――
一時的に『力』をブーストさせ、
その後の何倍もの疲労と引き換えに
全力を出す業……!」
フィオナの言葉に、赤茶のツインテールをした
獣人族の少女も反応し、
「おおー、何か神様っぽい」
「まあ確かに、いろいろとプレイしている様は
生物辞めているっぽいでしゅけど」
カガミの後にすかさずナヴィのツッコミが入る。
それを屋敷の主人である、ピンクのロングヘアーを
した眼鏡の女性も、心配そうに口を開き、
「確かに何かこう、効きそうな雰囲気を醸し出して
おりますが……
大丈夫なのですか?」
メルリアの質問にフィオナはガッツポーズをして、
「今までにも何度か使った事があるから平気よ。
よっぽど追い詰められた時にしか使わないけど」
「えーと―――
そんなに追い詰められた状況でしたっけ?」
困惑する彼女に、ナヴィは目を細くして、
「今はそういう事にしておいて欲しいでしゅ。
ではそろそろ……」
実はこの3日間で―――
フラール・バクシア・ルコルアと連絡を取り合い、
各国とスケジュール・人員の確認を行っていた。
オリイヴ国だけは眷属が現在シフド国におり、
連絡が取れない状態だったので―――
これは最後にして、ぶっつけ本番でリオネルを
連れてくる事に。
そして眷属+付き添いの信者は予定通り―――
順番で転移させる事に決定したのである。
「では行ってきます!!
アディオスアミーゴ!!」
そして女神は光に包まれ、他の4人はそれを
固唾を飲んで見守った。
「本当に一瞬で移動するんですね……
お、お邪魔します」
「ご厄介になります、メルリア様」
グリーンの短髪をした第一眷属の少年と、
ミドルの長さの同じグリーンカラーの髪をした
母親が、まず家主にあいさつし、
「さすがにシフド国の財閥……
何もかもレベルが違いますね」
真っ赤なロングヘアーをなびかせながら、
マルゴットが周囲を見渡す。
「お久しぶりです、メルリア・カトゥ殿。
バートレット・ビューワー伯爵です」
ホワイトシルバーの短髪をしたモデル候補の
一人が、貴族として一礼する。
それぞれに屋敷の女主人が応対しているところ、
フラールからやって来たもう一人の少女が、
フィオナと対峙し、
「あ、ちょっと忘れ物したかもー♪」
「もうマヂふざくんなよお前♪」
銀のロングウェーブの髪をした第三眷属の妹が、
笑顔と殺気を混合した表情の女神と、言葉を
交わしていた。
そこへナヴィがうやうやしく片膝をついて
しゃがみ―――
小さなビンをフィオナへと差し出す。
すでに箱から開封され、ストローも差し込まれた
それを彼女は受け取ると、口を付ける。
「―――次っ!!」
「はっ」
女神の要請に、従僕はすかさず再び小ビンを
彼女に捧げ……
その作業を数回繰り返した後、フィオナは
ボディビルダーのようなポーズを取り、
「フハハハハハッ!!
馴染むっ!! 馴染むぞっ!!
見よ! この体内でうごめくビタミンB!!」
「では続いてバクシアから―――
シモン君とポーラさんを」
ハイテンションになる女神と、事務的に事を
進める従僕。
「行ってきまーす!!
全軍出撃!! 目標! 敵勢力の殲滅!!」
「敵って誰だよ。
寄り道しないで帰ってきてくだしゃいね」
そしてフィオナはまた光に包まれ―――
他国へと旅立った。
「うおー……
こんな感じなのか」
「本当に一瞬ですのね。
驚くヒマもありませんでしたわ」
褐色肌で黒髪・短髪の少年と、妹と同じ
ロングウェーブの銀髪をした少女が、
室内を見渡しながら話す。
その横で―――
腰に片手をあてながら、缶のエナジードリンクを
見上げるようにして飲む女神がいた。
「今回は比較的、疲労は少なそうでしゅね?」
「移動は2人だけで―――
フラールの半分以下だもん」
少し冷静さを取り戻したフィオナは、空き缶を
ナヴィに渡す。
「次はルコルアから……
ファジー君とミモザさんでしゅ」
「ナヴィ、今度アタシが戻ったら―――
炭酸系とそうじゃないヤツ、両方揃えておいて。
んじゃちょっくら行ってきまーす」
そう言うと同時に彼女の姿は光に包まれ、
強烈な明るさが通常に戻ると、そこに
女神の姿は無かった。
「うひょっ、またスゲー広い家」
「ミ、ミモザ姉っ。
確かにそうだけど、もう……」
血のつながりは無いが―――
同じブラウンの髪を持つ姉弟が、転移後の
光景を見て驚きの声を上げる。
「ファジー君、ミモザさん。お久しぶりです」
「これで眷属の方は揃ったかしら」
アルプと母・ソニアが2人を出迎え―――
「ぷはー……
まずは炭酸でガツンと喉に気合いを入れて」
「こっちは炭酸の入っていないものでしゅ」
フィオナはナヴィから空になったビンと
栄養ドリンクを交換して受け取ると、一気に
口に流し込む。
「おお~……いいですねえ。
背中から体全体に伝わっていくこの感覚」
「残りはオリイヴ国のリオネルさんだけでしゅが、
大丈夫でしゅか?」
そこで彼女は飲み干したビンを渡し、
「何かイケそうな感じですよ。
この感覚は、攻略の最後の隠しキャラを見つけた
ぶっ通し48時間プレイくらいの感覚と
同じで―――」
「何がどう同じなのかはよくわかりませんが、
とにかく後一人でしゅので頑張ってくだしゃい」
そこで彼女は再び光に包まれると―――
転移を開始した。
「ここが、シフド国……」
銀髪に、口元から肉食獣のような牙がのぞく
獣人族の少年が、感想を口にする。
「「リオネル兄!」」
駆け寄る弟妹に、リオネルは思わず微笑む。
「元気にしていたか、キーラ、カガミ。
しかし、いきなりフィオナ様のご命令で
連れて来られたけど……
いったい何が?」
彼が、自分を転移させた女神に視線を向けると、
「よーしよしよし……
アタシはまだ立っているわ。
後は構図を考える脳と指示を出す口、
それを焼き付ける目さえ覚めていれば十分……!
さあ、早く行きましょう……!」
まるで熾烈な最前線を生き残った兵士のように、
フィオナは疲労困憊の姿のまま立っていた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5839名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
基本、土曜日の午前1時更新です。
休日のお供にどうぞ。