27・好きな事とお仕事は違う
( ・ω・)前回メタっぽい事を書いたら
同情票のように評価ptが上がりました
(そんな読者様が好き)
日本・とある都心のマンションの一室―――
「あ、もうちょっとこっちの方がいいかしら」
「そうでしゅね。
客人も増えたので、結構大きいのに
しましゅたし」
黒髪セミロングの少女と、シルバーの短髪の
少年が、協力して何かを用意していた。
「8人用の掘り炬燵でしゅか。
マンションだからどうなるかと思ったの
でしゅが―――
段差を作って設置するんでしゅね。
よく考えてありましゅ」
「まあその分準備するのが大変なんですけど……
冬が終わってもそのままテーブルとして使える
のは嬉しいですね」
いそいそと取り付ける女神と、手伝うお目付け役。
「でも本当にあの人たちと仲良くなったん
でしゅね。
このコタツも彼女たちからの提案でしゅか?」
「え? そ、相談はしたけど……
自分のウチの事だし、大きいコタツにしようと
思っていたのは前々からだから!
別に他意は無いわ」
目が泳ぐフィオナを見て、確実に何かあったと
ナヴィは確信したものの―――
自分のためでもあるし、取り立てて害は無さそう
なのでスルーした。
(まあコタツですし……
何か仕掛けてくる事はないでしょう。
猫の姿ならいくらでも逃げられますし)
のんびりと楽観的に彼が考えている一方で―――
女神はコタツを見ながら先日、彼女たちとの事を
思い出していた。
―――フィオナ回想中―――
「というわけでコタツは発注しました。
後は届くのを待つのみです」
それを聞いた、ナヴィに挑んでは退けられ
続けている、悪霊・邪神・サキュバス・堕天使
その他が色めき立つ。
「こちらは準備万端ですわ……!」
「このために通販で手に入れた高級黒スト、
2万円―――」
「こっちは生足にミニスカートとおパンツ……
勝負服と思えばこの程度の出費、痛くも痒くも
ありません!」
互いに発表し、またけん制し合い―――
彼女たちは気合いを入れる。
「掘り炬燵とは盲点でしたわ。
そう、彼は猫……
そして彼が入ったコタツに私たちが入れば!」
「我々の下半身がナヴィ様から見放題……!
いや、見て頂く!
むしろ見せつける!!」
「そして見られている事を想像しながら
コタツに入る至福の時間が……
ああ、待ち遠しい……!」
口々に欲望全開で見えないヨダレを垂らしながら、
各自その時を待つ事にしたのであった。
―――フィオナ回想終了―――
「何か今寒気が……
おかしいでしゅね、日中はまだ暖かい
はずなんでしゅけど」
さすがにそれが伝わったのか、ナヴィは
背筋に寒い物を感じるが、
「まあ多分これから、楽しい事が待って
いるんですよゲフゲフゲフ♪」
「どう考えても楽しさとはかけ離れた
気がするんでしゅけどね」
「考えるな! 感じろ!!」
「考えてもわからないでしゅし、
嫌な予感しかしないんでしゅけどね。
まあそろそろ、本編スタートしましゅ」
│ ■シフド国・首都バーサー │
│ ■メルリア本屋敷 別室 │
「そういう場合―――
『課金』を使うものでしゅよね?」
「……へ?」
与えられた個室の中で2人きり―――
ナヴィの申し出に、フィオナは意図がわからず
間の抜けた声を出す。
「い、いえブーストと言われましても……
あ、そうだ!
またママから信仰を分けてもらうとか?」
「どんな理由ででしゅか。
あの時は神の資格はく奪という緊急事態が
迫っている事もあって、例外的に認められたん
でしゅよ?
アレだって後で役所に事後承諾で通したん
でしゅから……」
初期の頃の話を持ち出す女神を、彼はあっさり
否定する。
「じゃ、じゃあどうするんですか?」
ずい、と身を乗り出すようにナヴィに近付く
フィオナ。
すると彼は、1本の栄養ドリンクを取り出して
主筋の少女に見せる。
「あ! ナヴィ―――
こういうのって持ち込んじゃダメなんでしょ」
優等生が悪い事をしているのを見つけた、
不真面目学生のように問い詰める。
「ええ。その通りでしゅ。
本来これは地球にある物……
こちらで使ったり流通させたりしゅれば、
間違いなく問題になるでしゅ」
「そ、それならどうして」
フィオナの疑問に答える事なく、彼はその
キャップを回して外し、
「飲むでしゅ」
「はい?」
目が点になる女神を前に、従僕は続けて
「どうしたんでしゅか?
こりぇは、いつもフィオナ様が―――
期間限定イベントとか周回コンプリートとかで、
食事代わりに常時飲んでいる物でしゅよね?」
「よく見てらっしゃっていやがりますね。
いやまあそーなんですけど……
だからそれを異世界で使うわけにはむぐっ!?」
「い・い・か・ら・飲・む・で・しゅ」
無理やり栄養ドリンクを飲まされると、
フィオナは袖で口をぬぐい、
「……カーッ、効くぜこれは―――
このタウリンといかにも薬用っていう甘い
味付けがたまらねぇなあ!?
じゃなくて!
いきなり何するんですかナヴィ!!」
「だから、こういう事でしゅ」
空になったビンを、ナヴィは自分の手荷物の
中へと仕舞う。
なおもわからず首を傾げる女神に、
お目付け役は自分の服を人差し指と親指で
つまみながら、
「でしゅから―――
確かに地球の物とかは持ち込む事は
出来ましぇん。
でもこういう服とか身に付けている物は
別でしゅ。
さらに言えば―――
今みたいに、何か持ち込んでも自分で飲んで
消費する場合は、そこまで厳しく言われないん
でしゅよ」
「まあ確かにそうですね……
味が合わない時もありますし、単純に食べ物を
持ち込んで自分で食べたところで―――
こちらの世界に影響は無いわけですから」
ふむふむとうなずくフィオナにナヴィは続けて、
「もちろん、こちらで売ったり他の人に飲ませたり
しゅれば―――
それは問題になりましゅが。
こうして自分だけで使う分には、何も違反して
いないはずでしゅ。
ギリセーフと言いましゅか、詭弁もいいところ
でしゅけどね」
「そ、それはわかりましたけど……
課金に何の関係が?」
そこでお目付け役は聖母のように微笑むと―――
「でしゅから、『アンカー』の言う通り……
『根性』で乗り切るため、これでブーストを
かけようという話でしゅ。
スタミナが無ければ課金に頼る―――
しょれはフィオナ様がリアルで証明済み
でしゅよね?」
「あ、いや、それ~……
精神力ブーストは確かにかかるんですけど、
体力ブーストはどうだったかなあ……?」
「大丈夫でしゅよ。
フィオナ様も言ってたじゃないでしゅか。
1週2週は当たり前、3週目から本番だと」
「そそそれは言葉のアヤと言いますかね!?
好きな事とお仕事は違うと言いますかー!?」
それからしばらく、主従で押し問答が続いたが……
どちらに軍配が上がったかは記すまでもなく―――
30分ほど後、今後の方針と対応を話し合うため、
女神とお目付け役は応接室へと向かった。
│ ■メルリア本屋敷 応接室 │
「……と、ゆーわけですね―――
フラール国からはアルプ君にビューワー伯爵。
そしてソニアさんとメイさん、グラノーラさん。
バクシア国からシモン君にポーラさん。
ルコルア国からファジー君にミモザさん。
オリイヴ国からリオネルさん。
合計10人を呼び寄せます」
フィオナの発表に、ピンクのロングヘアーを持つ
眼鏡の女性と、そして赤茶のツインテールをした
獣人族の少女が心配そうに、
「それはそうと……」
「フィオナ様ダイジョーブ?
まだ疲れ取れてない?」
銀髪の巻き毛を持つ獣人族の少年も、
同性の方を向いて
「そういえば、何やら少し騒がしかった
ように思うのですが……
あ、盗み聞きしていたわけではないんですけど、
獣人族は人間より耳が良いので。
何かありました?」
「いえ、ちゃんとこれからの事を実現に向けて
話し合っていただけでしゅよ」
そこで女神はわざとらしくよろめいて、
「えー、だってナヴィがいきなりアタシの頭を
つかんで……
それで無理やり口の中にねじ込んできて」
「オイ言い方」
それを聞いたメルリアは顔を真っ赤にし、
カガミの方は目を丸くして輝かせ―――
「えっ!? あ、い、いえ。
別にワタシはキーラなら乱暴でもいいって
いうかむしろ」
「ほほう、それでそれで?
2人きりの時はどのようなケダモノに?」
ナヴィは眉間にシワを寄せながら、
「やましい事は何もしてないでしゅ。
単に飲み物を飲ませただけでしゅよ」
「ええ……とっても濃い味がしたわぁ♪」
「だから言い方ー!!」
さらに顔を紅潮させる妙齢の女性。
好奇心丸出しの少女。
事情は察するが困惑しつつも、屋敷の女主人と
妹を何とか止めようとする少年。
彼らを中心に混乱はしばらく続いた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5807名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
基本、土曜日の午前1時更新です。
休日のお供にどうぞ。