24・アタシの時代が来ましたよおぉおお!!
( ・ω・)5章40話って、10ヶ月かけて
いるんだなあ(遠い目)
日本・とある都心のマンションの一室―――
住人と思われる少女がベッドで布団に入りながら、
部屋に入ってきたペットらしき猫と向き合う。
「ふおぉおお~……
何か急に寒くなってきましたね。
秋どこいった。
このままじゃ布団から出られない……」
「別にいいじゃないですか。
地球の世界では何もしていないんですから。
いくらでも寝ていたって」
グレーの毛並みをしたお目付け役(猫Ver)の
言葉に、彼女はガバっと起き上がって、その
セミロングの黒髪を前へ垂らし、
「いや何を言っているんですか!
こう見えてもアタシ結構忙しいんですよ?」
「ネット見ているかスマホかPCかゲーム機で
ゲームしているところくらいしか、見た事が
無いんですが」
フィオナの反論にナヴィは事実を突きつけ―――
それに対し彼女は、肩をすくめて
「ハァ……わかっていませんね、ナヴィ。
アタシは何も遊んでいるだけではないのですよ?
ぱんつぁーふぁうすと君やパック君は……
この世界で生み出された事を忘れたのですか?
そして彼らがあちらの世界を救った事も」
「そのおかげでアルフリーダ様やユニシス様が、
方々へ頭を下げる事態になっておりますが」
女神の言葉にすかさずカウンターを放つ
お目付け役。
「い、いいのよ。
信者を救うためだもの。
たたた多少の犠牲は構わないわ」
「そのおかげでフィオナ様の実家は多額の
事後処理という名の罰金を支払っておりますが。
というかあのお二人がいるからこそ、
その程度で済んでいるんですからね」
ベッドの上で沈みこむ彼女に、その布団へピョンと
ナヴィは飛び乗って、
「まあ結果的には良い方向へ行ってますので―――
今後気を付けて頂ければ。
……ところで何をしているんですか、
フィオナ様?」
落ち込んでいるのかと思いきや、彼女は
手元のスマホを操作していて、
「あ、いえ。
今いる場所、現在地でボーナスが変わるゲームが
あるんですけどー。
これ異世界に持って行ったらどうなるかなーって
思って」
「言ったそばから第三世界またいで
問題起こそうとするな。
つーか電波通ってないからエラーになるだけ
ですよ。
それじゃそろそろ、本編スタートしますね」
│ ■シフド国・首都バーサー │
│ ■メルリア本屋敷 │
「落ち着きましゅたか?」
「うへ~い……何とか」
シルバーの短髪を持つ少年が、主筋である少女を
ソファーに寝かせながら介抱する。
「いえまあ……
確かに、彼に密着したまま迫られたら」
ピンクのロングヘアーをした女性が、眼鏡を
直しながら擁護するように話す。
そこに、赤茶のツインテールをした獣人族の
少女が割って入ってきて、
「それにしても女神様ってメンエキ無さ過ぎない?
一緒に暮らしているんでしょ?」
「いやそんな事を言われましてもですね。
破壊力が桁違いと言いますか」
パタパタとナヴィから下敷きのような木の板で
あおられながら、フィオナは力無く答える。
「あのなカガミ、あんまり無礼な物言いは」
白銀の巻き毛を持つ獣人族の兄が、妹を
たしなめるが、
「だってさー。
カガミはよくキーラ兄やリオネル兄が
寝ている間にこっそりベッドに入って、
全部脱がしたりするけど―――
別段、動けなくなったりはしないかなー」
「ちょっと待て今なんつったカガミ?」
それを聞いた女性陣はアイコンタクトを取り、
(カガミ・サン。
アトデソノ・ハナシ・クワシク)
(ホウシュウ・ハ・ヨウイ・イタシマスワ)
(この人たち、脳内へ直接……!)
それを見ていた少年2人は、
「そう簡単に人間を超えられると困るの
でしゅが」
「何かわからないけど―――
絶対やめておけよ、カガミ」
兄の言葉に頬を膨らませる妹。
そして従者は主筋の女神に向かい、
「しゃて、フィオナ様。
話を元に戻しまして―――
信者5千人を超えた事で得た力でしゅが」
「あ、そ、そうでした。
それってどんな能力なんですか?」
そこでようやく本題に入り、全員で情報共有が
行われた。
「へ!?
信者や眷属を移動させられるんですか!?
それってママと同じくらいスゴイじゃ
ないですか!
来た来た来たあぁああ!!
アタシの時代が来ましたよおぉおお!!」
本来、フィオナが降臨して移動出来るのは、
別世界を介してのみである。
すなわち地球か天界、そこをいったん
経由しなければならなかった。
それはこの異世界でも、誰かを連れて自由に
瞬間移動出来る事を意味していたのだが、
「アルフリーダ様なら、自分に同行させなくとも
自由に移動させられましゅけどね。
しょれでも、かなり制限は取り払われたはず
でしゅよ」
ナヴィに追認され、フィオナはガッツポーズを
決める。
「え~っとじゃあじゃあ、さっそく候補を
決めないと……♪
アルプにファジーにバートレットさんに、
シモンやリオネル、バーレンシア侯爵も……
デュフフ♪」
「おお……
あの時のメンバーですね」
(6章37話 イイデスヨーその調子です!参照)
「前回は急だったけど、今回はいろいろと衣装とか
用意出来るしー」
女神の選定に、屋敷の女主人と獣人族の少女が
食い付き、妄想を加速させる。
そこでナヴィがフィオナに近付いて、クイクイ、と
フィオナの袖を引っ張り、
「えーとですね、盛り上がっているところ
申し訳ないのでしゅが……
確かに連れてくる事は可能になりました。
でも、その分すごく力を使うんでしゅよ?
わかっておりましゅか?」
「大丈夫大丈夫!
今のアタシは誰にも止められない!
そう! 神ですらも!!」
貴女も神様なんでしゅけどねえ、という指摘を
彼は喉元で飲み込み、
「……まあ、取り敢えずアルプ君あたりから
やってみたらどうでしょうか」
「そうね。予定とかもあるだろうし―――
能力テストも兼ねてやってみましょうか」
―――10分後―――
「ぐえぇえええ……」
およそ女性らしからぬ声を上げる女神に、それを
心配しながら見つめる母子。
「だ、大丈夫ですかフィオナ様」
グリーンの短髪をした小学校高学年くらいの
少年が、彼女に声をかける。
「本当に一瞬で移動しましたわね。
でも、相当お疲れのようで……」
見た目は20代後半くらいの、アルプと同じ
ロングのグリーンの髪をしたソニアも、息子と
同様に心配してフィオナに付き添う。
「ふーん、ここがシフド国なんだ……」
それとは別に―――
銀のロングウェーブがかかった髪を揺らしながら、
少女が部屋の中を見渡す。
「メイさん!
どうしてアナタまで付いてきたんですか!
余計に疲れましたよ!?」
「こっそりアルプ君とお義母さまだけ
連れて―――
わたくしを置いていこうとしたからですわ!
例え神様でも抜け駆けは許しませんわよ!!」
言い争いを始める2人から、母子は離れ……
「メイさん、外で作業していたはずなのに、
いつの間にか来てたよね」
「遠くの区域だから、急いでも15分くらい
かかるはずですのに」
おろおろした表情のアルプと、あらあら、という
表情でその光景を見ているソニア。
「わたくしの耳はアルプ君専用……
1km以内であればどんな異常も
聞き逃しません!」
「順当に人間を辞めていって何よりで
ございますわねえ!!」
メイとフィオナは両手をプロレスの力比べのように
がっちりと極め―――
「……しょれだけ元気なら、一度に何人か
運んでも大丈夫そうでしゅね」
ナヴィのツッコミに、ようやく疲れ果てていた事を
思い出したのか、フィオナは体勢を崩した。
「あ~……
ようやく体力が回復してきましたよ」
30分ほど横になった後、女神は口を開き、
周囲が安堵のため息をつく。
「やっぱり、出来るようになっただけで―――
そう何度も連続して使えるものではなさそう
でしゅね」
ナヴィが水を用意して、フィオナに渡す。
「まあ、テストでもあったから……
こうなるのがわかっただけでも」
女神が上半身を起こして水を飲み干すと、
眷属の少年がチラチラと彼女に視線を送り、
「?? どうしたんですか、アルプ」
「あ、い、いえ―――
お疲れのようですから」
遠慮がちに話す彼に、ナヴィが振り向いて
「別にいいでしゅよ。
話すだけならこのダ女神でも聞けましゅから」
さらに困ったようになるアルプ。
それに代わり母親が意を決したように
「じ、実は―――
今日明日と、果樹園での作業が残って
おりまして。
それが結構重要で……
バクシアや、バーレンシア侯爵様の工場へも
出荷する分ですから、それに影響が」
「う……そ、そうですか。
でもアタシは今結構グロッキーでして。
出来れば明日にならないかなーなんて」
目をそらしながら話すフィオナに対し、
温かい視線を向ける少女が一人。
メイは女神に近付き、微笑みながら肩をポン、
と叩いて
「フィオナ様?
無理はなさらないで結構ですよ?」
「ぐあわぁああムカつく!!
絶対フラールに送り届けて
差し上げますわぁああ!!」
「あ、その時に出来れば、ビューワー伯爵様や
バーレンシア侯爵様の予定も聞いてきて
くだしゃい」
こうして、アルプとソニア、メイはいったん
フラールへとんぼ返りする事になった。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5784名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
基本、土曜日の午前1時更新です。
休日のお供にどうぞ。