19・全部自分で言う事じゃないぞー
( ・ω・)更新前に気付いた。
3周年だったわ(ホント無駄に長い)
日本・とある都心のマンションの一室―――
住人の少女が、ペットと思われる猫を背中に
乗せたまま、端末を操作しつつ話す。
「そういえばナヴィ。
アタシが神様の修行中に、ママの従僕に
なったって聞いているけど―――
いつくらいの時になったの?」
その問いにお目付け役(猫Ver)は、ピョンと
飛び降りて
「いつから、というのは?」
「あ、いえ。
何がきっかけでママと出会ったのかなあって」
フィオナがうつ伏せ状態から姿勢を横にして、
彼と向き合う。
「お母さまから聞いていないのですか?」
「ちゃんと聞いた事は無いのよねー。
聞き辛いってわけじゃないんだけど。
あ、でもナヴィが言いたくないん
だったら―――」
気を使って話す女神に彼は、
「ん~……
そもそも記憶が無いんですよ。
まだ目も明いていない頃に拾われたらしくて。
気付いたらアルフリーダ様のところにいた、
という感じでした」
「ありゃ。
じゃあ本当に赤ちゃんの時に拾われたん
ですね」
ナヴィは後ろ足で頭をかき始めると、
「しかし、どうして今さらそのような事を」
「いやーアタシがいたら、今頃―――
性に目覚める時を見計らって、あんな事や
こんな事やある事無い事吹き込んだりして
自分好みにしていたかなあってゲヘゲヘゲヘ」
とてもいい笑顔で話すフィオナに、
「はあ、でも……
一通りの事はご主人様にされたような。
いえ一線は越えなかったですけれど」
「ソーデスネ。
ウチの家庭環境舐めてたわ。
ていうか大丈夫だったのそれ?」
その回答に心配になって聞き返す女神に、彼は
「まあその時はたいてい……
同志とセットでしたし」
「あーうん。
それ以上は聞かなくてもいいっていうか、
聞きたくないっていうか。
それじゃそろそろ、本編スタートしまーす」
│ ■シフド国・首都バーサー │
│ ■ボウマン子爵屋敷 │
「実在していらっしゃったんですかー」
「実在していらっしゃいます」
「実在していらっしゃいました」
前回、ナヴィとキーラの登場に失神した
ボウマン家の女性陣は―――
何とか意識を取り戻し、再びメルリア一行と
向き合っていた。
茶色に近いブロンドのツインテールをした、
外見は幼い屋敷の主と、
ライトグリーンの髪をショートボブにした
年相応の少女、
そしてメイドらしき女性がため息をつき、
改めて2人の少年を凝視していた。
シルバーの短髪と、肩まで伸びた髪を持つ
2人の少年は……
ジロジロと見て来る視線に耐えながら、
「そろそろ、落ち着いて欲しいのでしゅが」
「鼻息が怖い……」
ナヴィもキーラも、戦闘能力は人間と
比べ物にならないくらい高いのだが、
それとは別の危機感に、本能が警鐘を鳴らす。
「この反応は、見たんですね」
「見てしまったんですね」
「見たな―」
何かの三段論法のように、ピンクのロングヘアーを
した眼鏡の女性、黒髪ミドルショート、そして
ブラウンのツインテールをした獣人族の妹が
目を線のようにして感想を口にする。
「いやまあ、何を見たのか知らんが……
若い者を前に、そんなに食い入るほど
見つめる事もあるまい?」
ほとんど白髪の頭を撫でながら、真っ白な口ヒゲを
たくわえた紳士が―――
ボウマン子爵家当主をたしなめる。
「ふっ……
まだほとばしるこの熱い情熱、すっかり
落ち着いてしまった貴方にはわからない
のであろう」
「ワシは君の幼馴染なんだがなあ」
ベーラの指摘にグローマー男爵が答え、
室内の空気が微妙になりながらも、ようやく
落ち着いてきた。
「それで、あの―――
ワタシとしてはこうして絵を回収出来たし、
もう目的は達成したので帰りたいんですけど」
おずおずと口を開くメルリアに、
「別に構わぬぞ」
「この2人だけ置いていって頂ければ」
いつの間にか、ナヴィの隣りにベラが、
キーラの隣りにはアーユがいて腕を
つかんでいる。
「ダメです!
ナヴィはアタシのママの従僕で、
そしてアタシのお目付け役で、
ドS毒舌ツッコミ担当なのです!」
「最後の説明必要なくないでしゅか?」
女神の否定に彼が答え、
「キーラ兄だってダメだよ!
もしいなくなったりしたら、誰がカガミの
面倒とか後始末とか暴走を止めるのさ!」
「うーん。
全部自分で言う事じゃないぞー」
妹の言葉に、兄は達観した表情で返す。
それを見ていたグローマー男爵が、場を仕切り直す
ように、ボウマン子爵家当主に問い質す。
「そもそもじゃな、ベラ。
どうして彼らが必要なのだ?
同じ商売でもするつもりなのか」
「え!? あ、えーとね。
まあ参考というかその」
「とにかく、考えをまとめてくれ。
もし商売敵のままであるなら、当然その申し出は
断らねばならん。
参考までにと資料は渡してきたが、人員まで
出すわけにはいくまい。
ひとまず協力関係を結ぶ―――
という事でいいのだな?」
老人の言葉に、屋敷の女性陣は顔を見合わせ……
同意を得たようにコクコクとうなずく。
「まあ、この期に及んで……ですわねゴクリ」
「ベラちゃん、カッコつけてもヨダレを
飲み込む音で台無しだよーゴクリ」
少し前まで妄想の中にいた彼女たちの切り替えは
不十分だったようで、あちこちで喉を鳴らす音が
聞こえてきた。
「こちらとしては、いきなり競争相手というか
敵にされてしまったので―――
それがなくなるのなら別にいいんですけど。
でも、手を組むとしても……
こちらのメリットは何なのかしら?」
ビジネスの顔に戻ったメルリアは、基本にして
当たり前の要求を出す。
「確かにそれはそうだな。
ワシやカトゥ財閥に対し、どのような協力が
出来るのか」
グローマー男爵もそれを後押しする。
「いや、まあ、えーと……
アーユ! 何か無いか何か!?」
「きゅ、急に言われたって!
そうだ!
お二人にピッタリの衣装とかあるよ!
それだけ細いならきっと女性用の服でも
大丈夫なはずで―――」
それを聞いた当人たちは冷ややかな目で、
「いきなり欲望に走るなでしゅ」
「ていうか、それ―――
ボクたちを使う前提じゃないか。
それに衣装なら多分間に合っていると思う」
2人に取っては直結している問題でもあるので、
甘い顔はしそうにない。
「……確かに、今まで一方的に目の敵に
してきたからのう。
それでいて無条件とはムシのいい話だとは思う。
だが、もう敵対するつもりが無いのは事実じゃ。
少し考えさせてくれぬか?」
そこでようやくトーンダウンし―――
メルリア一行は帰り支度を始める。
「そういえば、絵描きの数は揃っておるのか?」
眼鏡の女性にボウマン子爵家当主は声をかける。
「女性限定ですから―――
決して多いとは言えませんが、それなりに」
「ふむ、そうか。して―――」
ベラはメルリアに密着するかのように接近すると、
「(あの素晴らしく芸術性の高い絵を
描いたのは誰じゃ?)」
「(あ、あれは……
それが……)」
言い淀みながらも、彼女は視線をカガミへと移す。
「(なんと……!
将来が楽しみのよう)」
「(楽しみと言いますか、末恐ろしいと
言いますか)」
ボソボソと小声での会話は続き、
「(では、引き続き交渉をお願いする。
こちらでも必ずや、何か役に立つ物を
用意するでのう……!)」
「(わかりました。
楽しみにしております……)」
こうして誰にも知られないようにした
トップ同士の会話が終わった後―――
グローマー男爵を始め、メルリア・フィオナ・
カガミといった女性陣と、ナヴィ・キーラの
モデル組もまた、ボウマン子爵家を後にした。
そして残された子爵家では男性陣を追い出した後、
女性のみで緊急会合が開かれ、
「しかし、どうしたものかのう」
「カトゥ財閥だよね?
さらにグローマー男爵様の後ろ盾―――
お金も権力も有り余っている感じ。
そんじょそこらの条件じゃ無理だよー」
ベラとアーユは現状を認識するためにあえて
口に出し、それを聞いた周囲も眉間にシワを
寄せる。
「かと言ってのう。
絵描き、それも女性のみでなんて……
商売でも人脈でも見た事は無いわ。
あるのはせいぜい、辺境の商人が
売りつけに来た、オモチャみたいな
アレくらいしか……」
数日前、ラムキュールとファーバが商談にと
持ち込んだ、原始的なピンホールカメラ……
そこへ話が飛んだ時、
「……でもあれって、景色を映すんですよね?
それも正確に」
「恐らく絵は敷き写しでしょうから……」
「使い方によっては、あのモデルさんを……!」
周囲から声が上がる度に―――
室内の熱気が増していった。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5726名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
基本、土曜日の午前1時更新です。
休日のお供にどうぞ。





