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18・(鼻)血が出るほどの過激な物

( ・ω・)暑くなくなったのはいいけど、

寒くなるのは聞いてない。


日本・とある都心のマンションの一室―――


家主と思われる黒髪・セミロングの少女が、

ペットらしき飼い猫を前にリビングでくつろぐ。


「あー、何かアタシにも必殺技とかあればなあ」


「急にどうしたんですか。

 というか、何と戦うつもりなんですか」


フィオナの言葉にナヴィが聞き返し、


「いえね、アタシってそもそも―――

 『果樹の豊穣を司る優しき女神』

 じゃないですか。


 何ていうか、この……

 異世界っぽくないっていうか、特殊能力が

 地味過ぎだと思うんですよ」


「まあ確かに、ご主人(アルフリーダ)様や軍神ユニシス様、

 ご両親と比べますと―――

 派手ではありませんよね」


同意するナヴィに、反発するように女神は続ける。


「眷属を通して、果物をすごく美味しくする事は

 出来ますけど……

 だから何だって話ですし、敵に襲われでもしたら

 何の役にも立ちませんし」


「戦闘向けではありませんからねえ。

 そもそも果物なんて、平和な時じゃないと

 味わえないものですから」


女神とお目付け役(猫Ver)が話し合っていると、

不意に室内に声が響いた。


『あ、フィオナちゃん、ナヴィ。

 元気にしてた?』


「あ、ママ」


「アルフリーダ様。

 お疲れ様でございます。


 本日はどのようなご用件で―――」


娘と従僕に対し母親は、


『いえ、ただの様子見よ。

 何も無ければいいんですけど』


「そーいえばママ。

 ちょっと聞いて欲しい事が……」


『フィオナちゃんが? 何かしら』


そこでフィオナは―――

それまで話していた事を相談した。




『必殺技、ねえ……

 でも果樹の神様の必殺技と言っても。


 毒でも入れてみる?』


「いえそういう方向ではなくてですね……」


火の玉ストレートで切り込んでくる母親に、

娘は消極的に答える。


「でもフィオナ様は確か……

 ぱんつぁーふぁうすととか、植物で出来た

 魔物とかを生成する能力がありますし。

 可能性はなくはないかと」


「そういう方向もちょっと無いと言いますか……

 第一アレは間接的なものですし、アタシが

 言っているのは手からビーム! とか、

 そういう直接的なものが欲しいんですよ!」


フォローかどうか判断しかねるナヴィの言葉に、

フィオナは自ら具体的な方法を提案する。


『……目に入れたら染みる液体とかじゃダメ?』


柑橘系かんきつけい全般に言える事じゃないですかー!!

 そんな事したらアタシの呼び名は明日から

 『みかん女神』ですよヤダー!!」


即座に反発する女神にお目付け役は、


「愛媛のゆるキャラにいそう。

 というか、やろうと思えば出来るんですか……」


『まあ、近代兵器作ったり生物兵器作ったり

 するよりは』


「も、もういいです!

 取り敢えず本編スタートしましょう!!」




│ ■シフド国・首都バーサー   │

│ ■ボウマン子爵屋敷      │




「ふぅ……」


「ふぅ……」


茶髪のような輝きを持つ、ブロンドの

ツインテールをした少女らしき外見の

屋敷の主と―――


ライトグリーンの髪をショートボブにした

年相応の外見の少女が、テーブルに突っ伏す。


「ベラ様、お嬢様もどうかそのような

 はしたない姿勢はお止めくださいませじゅる」


「メイド長こそヨダレが出ていますよずずっ」


周囲には同じ屋敷内の、身分は違えど女性陣が

集まり―――

ドス黒く輝くオーラをそれぞれがまとう。


「しかし、この絵の技法はすごいものじゃな……

 描写もさる事ながら、髪も顔も服も―――

 今まで見た事のない技術じゃ」


「仕事は女性で構成されているって仰って

 おりましたよね、グローマー男爵様。


 もしかして、モデルも女性なんじゃない?

 それで男性の格好をさせて……」


アーユが自分なりの分析を語ると、


「そんなはずはなかろう、アーユ!」


「ベラ様の言う通りです!!」


「こんなに可愛い子が女の子のはずは

 ありません!!」


みんなで力を一つにして、彼女の言葉を否定する。


「あっハイ。


 でも、女性向けと男爵様は仰っていましたけど、

 確かにこれは……

 シフド国はおろか、連合国内どこでも流行る気が

 するよね」


メイド・侍従・当主全員でうなずき―――


「じゃが、問題はそこではない。


 まだ商売になってはおらんし、今のところ

 動きがあるのはこのシフド国のみ。


 という事は―――」


室内の人間の視線がベラに集まる中、彼女は続けて


「恐らく、この絵のモデルとなった人物が今、

 シフド国内にいる事じゃ……!


 これだけの美形であり特徴ある人間なら

 捜索も容易たやすいはず。


 商売敵としてその顔は一目、この目で

 確認しておかねばならぬ!

 そうは思わぬか!?」


異様な熱気を帯びる女性陣の中、ただ一人

(比較的)冷静なアーユが、


「それで本音は?」


現物げんぶつを見た方が妄想がふくらんだりはかどったり

 するとか決してそんな事ではなく!

 決してそんな事ではなく!!」


握りこぶしを作りながら力説する、

ボウマン子爵家当主に、


「いや別にそれでいいよベーちゃん。

 多分ここにいる人誰も反対しないだろうし」


「そうですね、後は取り敢えず……

 別室でお待たせしている、グローマー男爵様に

 一度モデルの方の事を聞いてみれば」


アーユとメイド長の提案に、ベラは我に返ると、


「そ、そうじゃのう。

 この『資料』も返さねばならぬし……


 グローマー男爵をお呼びしてまいれ」


彼女の命令に、メイドの一人が早足で部屋を

退室した。




「ずいぶんと長かったが……

 そんなに気になるものだったのか?」


白髪交じりの―――

というより、ほとんどが白髪になった頭と、

白い口ヒゲをたくわえた老紳士が、幼馴染の

当主を前に席に着く。


「ええ、おかげで―――

 絆や連帯感その他もろもろが上がったわ」


「?? まあそれはそれとして……

 『資料』は借り物だから返してもらうぞ」


何重にも封印されたような、紐で巻かれた

書物を男爵は受け取る。


「ところで、その……

 こちらの絵には何人かの人物が描かれて

 いたんだけど―――


 もしかしてモデルっているかしら?」


ベラ子爵の質問に、周囲の女性陣の空気は

ピリッと張り詰める。


「モデル?

 オリイヴ国でも、絵描きの練習のために

 何人か集まったと聞いておるし―――

 今でもどこぞの工房でやっておるみたいだが」


グロオーマ男爵がヒゲを撫でながら答えると、

無言の熱気が室内に舞い上がる。


「しかし、モデルの事なんぞ聞いてどうする

 つもりだ?

 そちらの商売に使うつもりかの?」


「い、い、いや……

 絵の技法が見た事もないものだったから~、

 どう描けばこうなるのか、実物を見てみたい

 なーなんて」


目が明後日の方向に泳ぎながら、何とか理由を

付ける彼女に、アーユも加勢して、


「そ、そうです。

 もしかしたら敵対ではなく―――

 より良い協力関係が築けるかも……!」


「まあ、こちらとしても商売敵になられるよりは、

 一緒に儲けてもらう方が嬉しいがのう」


目が血走る女性陣とは対照的に、男性陣は

涼し気な表情で―――

一種異様な空気を醸し出す。


そこで不意にノックがされ、全員がそちらへ

振り向いた。


「あの、ベラ当主様。お客様が……」


「今ロック男爵様を迎えているのよ?

 どこの命知らずじゃ?」


申し訳なさそうに語る従者らしき男に、

子爵家当主は返すが、


「いえ、そのロック男爵様に……


 メルリア・カトゥが来たと言えばわかると。

 火急の用件と仰っておりまして」


その言葉に、貴族の男女は顔を見合わせる。


「メルリアがここへ?」


「カトゥ財閥の令嬢よね?

 あなたと今の商売を画策している―――


 へえ、私も一度お会いしたかったのよ。

 通してもらえるかしら?」


その言葉に従者は頭を下げ、急ぎ足で

退室した。




「あ、ああ……!

 良かった、ありましたわ!」


テーブルの上に置かれた封印されたかのような

書物を見て―――

ピンクのロングヘアーの女性は安堵の

ため息をつく。


「ム? 何かマズかったかのう?」


「い、いえ……

 別に危険という事とかは無いのですが。


 一応、差別化を考えて―――

 普通の物と、(鼻)血が出るほどの過激な物の

 2通りがあったのですが……

 その過激な方がここに混ざってしまい……」


男爵の問いにあわあわとメルリアは言い訳し、

事情を知る女性陣は納得の表情で、男性陣は

首を傾げていた。


「メルリアー、あったー?」


そこで室外からキーラの声が聞こえ、


「ん? 他にまだ人がいるの?」


「はい。他に4人ほどおりましたが」


アーユの問いに、メルリアを案内してきたであろう

従者が答える。


「呼べばよいではないか。

 別に、その程度入れぬほど狭くはなかろう」


「あ、あ、その~……

 男子禁制でもありますので」


ベラ子爵の問いに、メルリアは視線を反らす。


「でもその書物はもう、厳重に縛って

 見られないんだから」


「もしかしたら、この商売で競争をしなくても

 良くなるかも知れん。

 いい機会だから、子爵様にあいさつするといい」


アーユ、そして男爵に勧められ、メルリアは

同行者に呼びかける。


「……わ、わかりました。

 お許しが出ましたので、入ってきてください」


そこでまず、黒髪セミロングと赤茶ツインテールの

女神・獣人族の少女が、


「お、お邪魔いたします」


「あー、おじいちゃんもいたんだー!」


そこでまず女性陣は同性を見定め、


「黒髪黒目とは珍しいですわね」


「それに獣人族の少女も、ですか」


その後に―――

白銀の短髪、そして銀髪を首まで伸ばした

少年2人が続く。


「例の物があったのなら何よりでしゅ」


「カガミ! こっちのお屋敷では大人しく

 しているんだぞ」


ナヴィとキーラ、女神の従僕と獣人族の兄が

部屋に入ると、女性陣の視線が集中し……


「……お……?」

「……え……?」

「……はい……?」


それに気付いた2人が視線で返すと同時に、

何名かの女性が失神した。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5720名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。

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