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05・問題と解決策と



とある都心部のマンションの一室。


苦悩の表情を浮かべながら、机の上を見つめる

少女が一人―――


「何をしているんですか?」


お目付け役兼サポート役のナヴィは、

疑問に思い声をかける。


「いいところに来てくれた聞いてくれ

 マイリトルラバー。

 また、我が部屋で大切にしまっていた

 薄い本が、なぜか机の上にテレポート

 していたのだが」


「私がマイリトルラバーかどうかは

 ともかく―――


      お母さま

 やはり、アルフリーダ様では

 ないですか?」


それはフィオナも想定・覚悟していたのか、

諦めのようなため息をつく。




「どこに隠しても見つけてしまうん

 ですからねえ。

 仕方ない、いい加減飽きてきた本に

 関してはこの機会に、リリースすると

 しましょう(この世から)」


「処分するのであれば、

 最寄りの自治体とかに電話ですかね」


「うーん、さすがにコレはですねえ……

 燃やすとか埋めるとかじゃダメ?」


「では私が、天界の神殿じっかの庭に

 埋めておきますか。


 タイムカプセルにでも入れて」


「時間差殺人はやめろォ!


 も、もういいですから本編入ってください!」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │




「はい、説明はこれで一通り終わりです。

 何かご質問は?」


「あ、ああ。バッチリだよ」


「それで、あ、あの……

 いつから働きに来ればいいですか?」


アルプから、作業の内容を一通り再確認した後、

ぎこちなく返事をするミモザとファジー。


その横、少し距離を置いたところに、

邪魔をしないようにナヴィが立っていた。


「そうですね。出来れば明日からでも―――


 そういえば、ルコルア国から来たと

 仰いましたけど、フラールではどちらに

 泊まっているんですか?」


「あー、安宿にいるよ。

 ここから距離は少しあるけど、

 通えないほどじゃないし」


「そうですか。

 ……あの、出来ればこちらに泊まっては

 いかがですか?


 以前から、忙しい時に雇う方たちのための

 宿泊小屋はあったのですが―――

 今は広く改築して、お客様も泊められるような

 部屋にしてあります。


 ウチの方にお風呂もありますし」


臨時雇いの労働者としては破格の条件を提示され、

2人は思わず息を飲む。




「い、いやいいのかい?

 アタイらは宿代が浮いて大助かりだけど」


「今は、ウチは僕一人なんですよ。

 母もバクシアに出かけていて。


 宿代の代わりに、食事の支度とか手伝って

 もらいますけどね」


「別にそれくらい―――

 むしろこっちからお願いしたいくらいだ」


「それじゃあ決まりですね。

 あ、すいませんナヴィさんお待たせして

 しまって」


2人との話が終わり、今度はナヴィへアルプは

目を向ける。


「いえ、構わないでしゅよ。

 フィオナしゃまからも、人間の生活を

 最優先しろと言われていりゅので」


「じゃあ3人ともこちらへ。

 ナヴィさんにも部屋を用意いたしますので。


 あ、そうだ。

 今まで泊まっていた宿屋に荷物とかは」


「そんな荷物なんてありゃしないさ。

 ほとんど着の身着のままだからね」


こうして―――2人と神の使いは、宿泊小屋へと

向かった。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■宿泊小屋の部屋        │




「うわー……

 ボク、こんな部屋泊まった事ないよ!

 すごいね、ミモザ姉!」


「あんまりはしゃぐんじゃないよ。

 当初の目的を忘れたわけじゃないだろう?


 ここには、長くいられないかも知れないんだ」


臨時雇いの労働者の小屋というには、

簡素ではあるが広く綺麗な室内で―――

ベッドの上でゴロゴロと転がる弟分を

ミモザはたしなめる。


「でもミモザ姉、ボクたちの名前、

 正直にしゃべってたけど……

 良かったの?」


「こーゆーのは、下手にウソつかない方がいいのさ。

 隠そうとすると返ってボロが出る。


 それに、どうもバーレンシア侯爵とは仲がいい

 ようだし、紹介してくれたのはあの代官様

 だからね。

 むしろ本名名乗ってなけりゃマズかった」


「あと、あの―――

 ナヴィ様?

 ボクたちの事、気付いてたかな」


「そりゃないんじゃないか?

 もし気付いていりゃ、眷属の子の近くに現れた

 アタイらを放置はしないでしょ」


ミモザとファジーはお互いに、ふぅ、と

安心のため息をついた。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「あの2人が、ですか?」


「先日、マルゴットしゃんのお屋敷で感じた

 気配と同じでしゅ。

 間違いないでしゅよ」


増築こそされていないものの―――

ボガッド家の跡取りとなったアルプにふさわしく

立派になった内装の室内で、彼とナヴィは先日の

件の事で話し合っていた。


「でも、どうして今その事を?」


「あの2人も話しゅていないみたいでしゅた

 からね。

 事情があったと推測しゅるでしゅよ」


「うーん……

 僕の果樹園で雇って欲しかったのに、

 言い出せなかったとか?」


「しょんなところじゃないでしゅか?

 ま、恥じゅかしかったとか、話しにくかったとか

 そういう事は考えられましゅよ」


「じゃあその事については触れない方が

 あの2人に取ってもいいですね」


ミモザとファジーが例の中庭に現れた

人物という事実は―――

それは内密にするという事で、アルプと

ナヴィの話はまとまった。




「あと、言いそびれてしまいましたが―――

 多忙な女神・フィオナ様に代わって僕の

 視察に来てくださった事を感謝いたします」


「しょんな大層な事じゃないでしゅよ。

 こちらこそしばらくご厄介になりましゅ。


 私で出来る範囲であるのなら、相談にも

 乗りましゅので」


「相談事、ですか……


 あの、ちょうど良かったというのは失礼かも

 知れませんが、聞いて頂きたい事が」


「何でしゅ?」


「今回、臨時雇いとして来たファジー君ですが、

 着の身着のままと言っておりましたので、

 僕のお下がりか僕の服を貸そうと思っているんです。


 でも―――」


「?? でも?」


言いよどむ彼に、ナヴィは先を促す。


「ミモザさんの分が……

 お母さんの服はありますけど、さすがに

 大きさが違いますし、どうしようかと」


「そうでしゅね……

 さしゅがに女性の服は用意出来ましぇんね。


 マルゴットしゃんなら貸してくりぇしょう

 でしゅけど」


「いえ、あの……

 実はあるにはあるんですが……」


「あるんでしゅか?

 でも、どうしゅて」


「ええと、バクシアでの初めてのお客様である

 ポーラさん、メイさんの姉妹が、この前僕に

 送ってきてくださったんです。


 でも、女性用の服でしたので、間違って

 送ってきたのかと。

 ですが、それを指摘したり質問するのも

 失礼かと思いまして、そのままに」


2人同時に「んー」とうなり、ナヴィが先に

提案を出す。


「まあ、しょれでいいんじゃないでしゅか?

 ちょうどあるのなら、使わせてもりゃえば」


「まあ、そうですね。

 他に着る人もいないですし。


 それを持っていく事にしましょう」


眷属と神の使いはお互いに納得する答えを出し、

落ち着いた様子で話を終えた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在1092名―――




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