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14・何も言い返せねえ

( ・ω・)そういえばそろそろ3年目に突入

するなー(超遠い目)


日本・とある都心のマンションの一室―――


外出から帰ってきた少女を、一匹のペットらしき

猫が出迎える。


「ふっへー、あっちー」


「お帰りなさいませフィオナ様。

 ……何ですかそれは?」


たたまれた紙の板のような物を前に、

お目付け役(猫Ver)は首を傾げる。


「んー? これはまあ、ちょっと」


セミロングの黒髪の少女は、それを床に

敷くように置く。


「……ダンボール箱?」


「いやー、最近テレワークとか流行って

 いるでしょ?


 でもその際、家に猫がいるとパソコンの前で

 邪魔されちゃうとかで……

 そこで箱を置くと、猫がそちらに入って

 大人しくなるというのを聞きまして」


フー、とナヴィは大きくため息をつきがなら、


「別にフィオナ様はここで働いてもいないし、

 邪魔される事自体が無いでしょうに」


「い、いいんですよ!

 気分の問題ですから!」


そして女神は折りたたまれたそれを、箱の形に

戻していく。


「さあ、どうです!?」


フィオナは箱の形になったダンボールを

ナヴィの前に差し出す。


「どうって言われましても……」


ゆっくりとナヴィは近寄っていき、


「別にこれと言って」


箱の中に片足を突っ込み、


「何の変哲へんてつもないただの箱では―――」


そのままスッポリと箱に収まるお目付け役を

女神は目を丸くして見ていた。


しばらく箱を堪能するようにして、体の位置を

変えていたナヴィはその視線に気付き、


「し、しまった! この私とした事が!


 いくら巧妙かつ際立っていたとはいえ、

 こんな罠に引っ掛かるとは……!」


「まあお約束といえばそうですけど、

 貴方も猫だったんですね、ナヴィ。


 それじゃそろそろ、本編スタートしましょう」




│ ■シフド国・首都バーサー   │

│ ■メルリア本屋敷       │




「それじゃあ本来、前回やるはずだった

 『アンカー』を行うとしますか」


与えられた一室で、女神が大きく伸びをしながら

お目付け役に話す。


「いきなりメタりゅな。

 しょれで、何を相談するのでしゅか?」


シルバーの短髪をした少年に聞き返され、

そこでフィオナは考え込み、


「えーとですね。


 まずは現状をかんがみ様々な要因を踏まえた上で

 今後我々が取るべきスタンスを慎重に検討

 しようかという所存」


どこから取り出したのかわからない眼鏡をかけ、

それっぽい言葉を並び立てるも


「つまり何を相談するのか決めていないという事

 でしゅねわかります。


 まあ、近況報告も兼ねてましゅので―――

 取り敢えずやってみてくだしゃい」


「は、はぁ~い」


全てナヴィに見抜かれていた彼女は、

観念したように地球のPCから回線を繋げた。



【 おう、久しぶりだな本当に 】


【 今は何してるんだ? 】



しばらく会っていなかった『アンカー』たちに、

フィオナは今の状況を伝える。



【 本かー。まあ文化的な物なら伝えても

 いいのか? 】


【 強烈なキャラも出てきたようだが……

 何か問題でも? 】



「い、いえ。特に問題らしい問題は無いんですが、

 今後の方針とかどうしようかなって」



おずおずと切り出す彼女に、ネット上は



【 また何かふわふわした相談だなー 】


【 それはそうとさ。

 お前さん、眷属やら攻略対象とやらは

 どうなってる? 】


【 もう2年以上経つんだぜ恐ろしい事に。

 ちったあ誰かとそろそろ進展をだな……】



「アーアー!!

 何か回線の調子がおかしいんでー!!

 今日はここまでとしまーす!!」



そこで回線は切られ―――

女神の意識は地球経由で、異世界のシフド国へと

戻った。


「……で、どうなったんでしゅか?」


「イヤーナンデモアリマセンデシタコトヨ?」


「…………」


「…………」


ナヴィからの質問の後、生返事をしたまま

2人はしばらく沈黙していたが、


「どうせ情報共有の後―――

 いい加減誰かとくっついたのかどうかツッコミを

 受けて、それで退散したんでしゅよね?」


「鋭い観察眼をお持ちのようですねボーイ。


 ていうか何、あの小姑こじゅうとのような反応は!?

 人の恋愛話なんて放置でいいでしょうに!!」


半ば逆ギレの様相を見せるフィオナに、ナヴィは

ふぅ、と一息ついて


「そりゃあ下手したらもう3年近くになるって

 いうのに、どこの誰ともなかなか進展が見られ

 ないんでしゅから。


 『アンカー』たちとも長い付き合いでしゅし、

 ツッコミの一つや二つあるというものでしゅよ」


「クソッ!!

 何も言い返せねえ!!」


こうして超が付くほどの『アンカー』たちとの

会合は終わり―――

結局は様子見という名の現状維持で、今後の

方針は落ち着いた。




│ ■ボウマン子爵屋敷       │




メルリアとの商談から数日後……


『枠外の者』2名は、ある貴族の屋敷を

訪問していた。


「ラムキュール・ジン……

 そしてハモス・ファーバ……


 ルコルアとマービィ国の商人にして―――

 『枠外の者』ね。


 私に何の用じゃ?」


序列上位国のシフド国、その子爵家当主相手に、

アラサーと思われる男は、その病的とも思える

青白い顔を、より白くさせる。


『主人』の緊張はそのまま『従者』にも伝わって

いるようで……

ダークブラウンの短髪をした20代前半の青年も

恐れを何とか隠そうと身を固くしていた。


「(さすがにシフド国の貴族……

 その幼女のような外見を揶揄やゆしようものなら、

 ただではすまないだろうな)」


ラムキュールの思う通り―――

目の前の彼女はローティーンのような見た目を

しているが……


良く言えばおとぎ話、悪く言えば人外の圧というか

雰囲気をかもし出す。


「……聞いておるのじゃが?

 商人が手ぶらで来たわけでもなかろう?」


ライトグリーンの髪をしたショートボブを

揺らし、詰問のように問いかける。

その声にファーバはビクッと肩を震わせるが、

何とか持ちこたえた主人の方が答える。


「無論の事、売り込む商品をお持ちしております。


 ですが、恐らくまだ見た事の無い物もあり、

 お目汚しにならないかと」


「ほぉ?


 この私が、序列下位国の物でまだ見た事が

 無い物があると申すか?」


ダラダラと滝のように油汗を流す青年を置いて、

アラサーと見かけ10代の女性は話を続ける。


「下位国であるからこそ、です。


 どんな既存の物をお持ちしたところで―――

 上位国と比べ、勝てるところなどありますまい。


 そんな退屈な物を、ボウマン子爵様に持ってきた

 わけではありませぬ」


「ふ……言うのう。


 では見せてみるが良い。

 言葉通りである事を期待するぞ?」


そこでラムキュールが取り出したのは―――

大人の膝に乗る程度の大きさの箱だった。


「何じゃこれは?」


「出来れば、窓の外の『風景』の方が

 いいでしょう。


 これをこうして……

 こちらからのぞいて見てください」


テーブルの上に置かれたその箱―――

片方には布がかけられ、その布に頭を突っ込む

ようにして、彼女が中を見る。


「む、これは……!」


「いかがでしょうか。


 これはまだ『商品』にした事はございません。

 もしお買い上げくださるのであれば―――

 ボウマン子爵様が第一号という事で」


ルコルアの商人の言葉に、彼女は視線を一人の

メイドへ向けると、手招きし―――

そのツインテールの少女に中をのぞかせる。


「おー、すごーい!

 こんな風に見えるんだねー、へー!」


はしゃぐメイドを横目に、当主は話を続け、


「確か、ここへ来る前……

 お主らはカトゥ財閥(メルリアの家)へ行って

 おるのう。


 私が第一号、というのは本当か?」


どこでそれを―――という言葉を飲み込み、

ラムキュールは喉から声を絞り出して、


「確かに、こちらへ来る前にカトゥ財閥には

 立ち寄っておりますが―――


 新しい商売をする、という事を聞きつけました

 ので、もし我が国で商売する際にはより安い

 素材をと売り込みに上がったまで。


 こちらの『商品』は、見て頂く機会も

 ございませんでした」


ツー、と冷や汗一筋流しながらも、彼は何とか

『事実』を答え切り、


「良かろう。

 ちょうど何か新たな商売はないか、

 考えておったところでのう。


 言い値で買おう。いくらじゃ?

 全部で何個持っておる?」


「……は?」


彼に取ってみれば、珍しい玩具で何らかの興味を

引き出せればと思っていたので、予想外の言葉に

戸惑う。


「なんじゃ、売るつもりで来たのではないのか?」


「は、はあ……

 それはその通りではありますが。


 一応、予備を含め数は4個ほどで」


困惑の色を隠せない商人に、ローティーンの

外見をした当主は部屋の中を見渡し―――

居並ぶメイドや使用人たちの中から、

側にいた執事らしき初老の男性へ手をかざす。


「面倒じゃ。

 そのまま渡してやれい」


「はい。仰せのままに―――」


そこでテーブルの上に、細やかな装飾を施した

小さな箱が、コトリ、と置かれる。


「あ、あの―――」


「金貨一千枚分の証書が入っておる。

 箱ごと持ってゆくがよい。


 かついでいけるのなら、現物を渡してやるが」


その言葉に、主従の男性2人は口をあんぐりと

開けたままになる。


「なんじゃ、まだ足らぬと申すか?

 『枠外の者』は強欲よのう。


 おい、証書はまだあるか?」


追加を催促する当主に、若い主従の男性2名は

ぶんぶんと首を左右に振る。


商談を終え、箱を手にした彼らは―――

何度も頭を下げて退出し、満足そうな当主が

部屋に残された。


そこへツインテールの髪をしたメイド風の

少女が、ついっと彼女へ近付く。


そして当主と彼女はニッ、と笑い合い、


「べーちゃんもいい趣味してるねー。

 私を当主にして、自分はメイドたちに

 紛れ込んで観察するなんてさ」


「そういうアーユもノリノリだったではないか。

 しかし、なかなか良い玩具を手に入れたものよ」


箱を触ったり位置を動かしたりして、メイド姿の

『当主』は評価する。


「そんなにイイ物なの? それ」


「確かに単純な構造じゃが、取り付けられて

 いるガラスは『レンズ』と呼ばれるものじゃ。


 それを小さな穴を通す事で箱の中へ投影し、

 上下逆になって外の景色が写されるが……

 それは鏡の使い方次第で何とかなろう。


 何、商売にならずともそれはそれ……

 良い刺激にはなろうて」


ククク、と少女らしからぬ笑いをする

ボウマン子爵当主にアーユは、


「……しかし、本当にベーちゃん、

 家のメイドたちに混ざっても何の違和感も

 無いよねー」


「まったく、年寄りをからかうでないわ。

 それに化粧をすれば、小柄な私など

 いくらでも化けられるであろう?」


ベラは同意を求めて周囲を見渡すが……

全員が視線を反らす事で意思を表明した。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5660名―――


( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。

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