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13・うかつな事はしゃべらないように

( ・ω・)書き終えた後で、今回こそ『アンカー』を

出そうとしていた事を忘れる(新章4ヶ月目)


天界・フィオナの神殿じっか―――


そこで一匹の猫が主人である女神を前に、

前足を揃えて座っていた。


女神の隣りには黒髪・褐色の青年がおり、

それがロングのブロンドヘアーを持つ、

モデルのような美女との対比を見事に作る。


「……と、今はこんな感じですね。

 モデルになるのを除けば、私もフィオナ様も

 特に問題はないかと」


ナヴィ(猫Ver)の報告に、夫婦の神2人は

お互いに目線を会わせ、


「印刷業、か……


 本も普通にある世界みたいだし、介入し過ぎて

 いる、という事にはならないかな?」


「別世界から持ち込んだわけじゃないし、

 そこまで神経質になる必要は無いと思うわ」


ユニシスとアルフリーダは、神という視点から

娘の行動について分析と確認を行う。


「まあそんな事より……ね?」


女神が報告書と思われる1ページを取り出し、


「ここに書いてある貴方が女装させられ、

 なおかつ胸も作られた件について詳しく

 説明して欲しいんですけど……♪」


「何でキミはそこまで書くかな?

 エサを与えるのは止めなさいとあれほど」


それをナヴィは前足で顔を洗いながら、


「だって記憶や視界は共有されているん

 ですから……

 下手に隠し事しても後でバレますし、

 その時は何倍もの『お叱り』があるので」


達観したようにその場から動かない彼へ、

アルフリーダは手を伸ばし、


「よいしょっと」


小動物の胴を持ち上げるようにして抱えると、

その姿はシルバーの短髪を持つ少年へと変わり、


そしてもう一方の腕には、褐色・黒髪の少年が

抱えられていた。


「……あの、ママ。

 何で僕まで?」


「え? だって―――

 ホラ、1人より2人の方がいろいろと

 比べられるし、幅も広がると思って」


そのまま部屋の奥へと連れて行かれる彼は、

中空で足をバタバタと動かし、


「いやちょっと待ってママ!

 僕は別にいいっていうか展開に

 ついていけない!」


「諦めましょうユニシス様。

 最後までお供しましゅよ」


「そんな忠誠心いらないー!!」


大人しい従僕と暴れる夫を抱えながら、

女神は鼻歌混じりで歩いていき―――


「さー今回は気合い入れてやるわよー♪


 あ、そろそろ本編の方、スタートしますね」




│ ■シフド国・首都バーサー   │

│ ■メルリア本屋敷       │




「初めまして、ラムキュールさん。

 マービィ国では儲けたそうね?」


「『新貴族』や『枠外の者』の意図や目的とは

 違った結果になったがね。


 我々としては儲けた者が『正義』だ」


ピンクのロングヘアーの女性は、四角いフレームの

眼鏡をクイ、と上げて軽口で話し掛け―――


不健康そうな細面の20代後半と思われる男性は、

事実を淡々と述べる。


「それでそっちのは何?

 従者? 使用人?」


「俺……

 い、いや私はマービィ国の商人、ファーバと

 申します。


 今はラムキュール氏に従事しております」


ダークブラウンの短髪を、まるでどこかの

営業マンのように綺麗にまとめた―――

恐らく3人の商人の中では一番若い青年は、

緊張しながら答える。


「あの、それで……」


彼は同業者から目をある一点へ移す。

その先は、獣人族と思われる兄妹。


銀髪の巻き毛の少年は、赤茶のツインテールの

少女を取り押さえるようにして、彼女の両肩に

手を置いている。


なぜかその妹は鼻息荒く、獲物を凝視するかの

ごとく視線を向けてきており、


「あ、獣人族のキーラです。

 こちらは妹のカガミ。

 気にしないでください」


「どうぞ気にしないで続けて

 くださいゲフゲフゲフ♪」


「いや、これほど気になる光景もめったに

 ないと思うのですが……」


本能的なものか、危険を感じ取ったファーバは

抗議にも似た声を出す。


「いえ大丈夫です。

 妄想を刺激しない限りカガミは安全です。


 だから! 絶対に! 決して!

 うかつな事はしゃべらないようにお願いします」


「絶対大丈夫じゃないヤツでしょそれ!?」


兄の言い分に混乱した言葉を返しつつ―――

そんな彼を置いて、メルリアとラムキュールは

交渉を開始した。




「う~ん……

 ちょっと今ウチには必要なさそうねぇ」


「そうですか?

 今、本を作って売ると聞いていたのですが、

 それにはピッタリかと」


テーブルの上に小物やら書類やらを出して

話し合ってはいるものの―――

どうやら不調のようで、


「要はコストの問題よ。

 確かに色付きの製本は考えていたけど、

 それはお金持ち、貴族様向けであって」


「そ、それならば―――

 余計に必要な物なのでは?」


途中で、ファーバが口を挟む。


彼やラムキュールが持ってきたのは、いわゆる

絵具であった。


メルリア・カトゥ財閥の当主が、内容は不明だが

印刷・製本業に手を出すと聞いて―――

それらサンプルを持ってやってきたのだが、


「……第一ねえ、絵具なら我が国でもあるわ。


 それをわざわざ、序列下位国の物を使うなんて、

 自らブランドを落とすような物よ。


 せいぜい、貴方たちの国へ売りに出す時に、

 お世話になるくらいかしら」


メルリアの言葉は道理であり、説得力があった。


彼女の財閥が作る物で、それが上流階級向けで

あるならなおさら―――

他国から安物を買って使う必要はない。


「……仕方ありませんな。


 では、ルコルアやマービィでお考えの本を

 売り出す時は、是非お声をかけてください。


 失礼します。

 行くぞ、ファーバ」


「えっ? い、いえ……はい」


今は『主人』であるラムキュールに従い、

彼は大人しく席を立つ。


「ずいぶん従順ねえ。


 マービィ国の『枠外の者』に―――

 有望かつ有能な若いコがいるって話は、

 耳に挟んだんだけど」


「はは……

 『有能』であればこうはなっておりませんから」


メルリアの微笑に対し、マービィ国の商人は

苦笑で返す。


「そういじめてやるな。

 何せあの『女神様』相手だったからな。


 同国に来ていたマイヤー伯爵様さえ、

 対応出来なかったのだ。

 彼には酷というものだよ」


『手下』を擁護するように語るラムキュールに、

ファーバは視線を下げる。


「学ぶ事を恥じない性格さえあればいい。

 全て上手くいく事などあり得ないのだからな」


「本当に大人しいわね。

 『調教済み』ってところかしら?」


ガタッ、と立ち上がろうとするカガミを、

キーラは上から押さえつける。


「まだまだこれからだよ。


 とはいえ、一度痛い目にあっているからか、

 いろいろと覚えてもらう分には―――

 素直である事は助かっているよ。


 私にも彼にもな」


「今後とも、お手柔らかにお願いします……」


半ば諦め気味の彼が力無く話す。

同時に力いっぱい床で転がりまくる獣人族の

少女と、それを止めようとする兄の攻防が彼らの

注目を集め―――


微妙な空気のまま、商人の男性2人は部屋を

退室した。




│ ■メルリア本屋敷前      │




「も、申し訳ありません。

 交渉のサポートをうまくやれずに」


メルリア本屋敷の門から馬車までの道のり、

ファーバが頭を下げて謝罪する。


「交渉は私がしていたのだ。

 それに、商談自体は成功したのだぞ?」


きょとんとする彼を前に、『主人』は話を続ける。


「あのな、ファーバ。

 我々がシフド国相手に取引出来る商品など

 そうそう用意出来るはずはないだろう」


「で、では―――

 どうしてここまで?」


困惑するマービィ国の商人に、ルコルア国の

同業者は、


「あんな物……

 絵具はただの口実だ。


 そもそもいくら序列下位国の物が安いとはいえ、

 輸入費用もあるのだ。

 決定的なコスト削減にはならず、中途半端な

 取引にしかならなかっただろう」


「そ、そんな……

 では口実とは?」


聞き返す20代そこそこの青年にアラサーの男は、


「メルリア様も言ってただろう。

 『せいぜい、貴方たちの国へ売りに出す時に、

 お世話になるくらいかしら』

 と―――


 つまり他国へ今の商売を広げる際に、我々が

 真っ先に話を通した形になる」


「ですが、今日のお話―――

 果たしてメルリア様が、その時まで覚えて

 おられるでしょうか?」


しょせんは口約束、書面も交わしたわけでない。

不安を口にする青年に、


「少なくとも顔は売った。

 覚えていなければ、我々がそのタイミングで

 会いに行けばいいだけだ」


「な、なるほど」


感心して頭を下げる『手下』が持っている

荷物に、ラムキュールは視線を落として、


「それより話す機会が無かったが……

 まだ残っている『オモチャ』はどうしたものか」


「アレですか。

 確かに珍しくはありますが―――


 どこか新規で商売を考えているところに

 持っていった方がいいのでは」


そこで馬車に到着した彼らは乗り込みながら、


「そうだな。

 お前の言う通り、既存の商売をしている

 ところでは買ってはくれまい。


 少しこの国で相手を探してみるか」


2人を乗せた馬車は扉を閉め、メルリア本屋敷から

離れ始めた。




│ ■メルリア本屋敷・廊下      │




「ほぉほぉ、いいですね。

 Sっ気のある指導者とその従者―――

 先輩と後輩、上司と部下……!」


セミロングの黒髪をした少女が、広大な屋敷の

人気の無い廊下の片隅でヨダレを拭く。


「若い方は何か昔イケイケで、今は『調教』で

 すっかり大人しくなったみたい」


嬉々として語る獣人族の少女は、もう一方の少女と

同じ妖しい光を目に宿し、


「それで? それで?

 アタシ一方は知っているんですけど、

 そのファーバさんとやらは直接会った事は

 なくて」


「カガミの頭にバッチリ記憶したよ!

 後で描いてあげるね!」


その会話を、一方の従者と一方の兄は遠巻きの

位置に立って、


「どうしたモンかね、ナヴィさん」


「性も基準も考えも違うんでしゅ。

 私たちに出来る事は、遠くから見ている

 だけでしゅ」


2人は同意してうなずき、異性2名を残して

その場を後にした。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5641名―――



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