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12・後で情報共有お願いしますね

( ・ω・)やっぱり会社の冷房は効くなあ

(出来るなら会社でシナリオやりたいタイプ)


日本・とある都心のマンションの一室―――


「そーそー、最初はねー」


「へえ、そんな事があったんですか。

 もっとお話を聞いても?」


「ン、ちょっと待って。

 アタシ飲み物持ってくるからー」


「あ、お構いなく」


リビングで、年齢が10代半ばから20代と

思われる女性が5、6名―――

家の主の少女と共に談笑していた。


「……何しているんでしゅか、フィオナ様」


そこへお目付け役(人間Ver)が現れると、


「あ、ゴメン。

 ちょっと飲み物用意するから後でー」


女神が冷蔵庫へ向かうと同時に、客と思われる

女性陣は一礼して、


「お邪魔してます」


「いいところですね、ここ」


ナヴィは返礼として頭を下げると、彼女たちに

向き直って、


「あの、いつの前にフィオナ様と仲良く

 なられたので?」


彼の前にいるのは―――

かつて何度も返り討ちにした、悪霊・邪神・

サキュバス・堕天使その他であった。


「いえ、共通の目的というか目標に向かって」


「後はいろいろと情報収集とか……うん」


「しかしフィオナ様はフトコロが広いですねー。

 私どもを部屋に上げてくれるなんて」


それに対しナヴィはうなずき、


「そうでしゅね。

 従僕である私から見ても、ひいき目無しで

 良い主人だと思いましゅ。

 いくら顔見知りとはいえ人外まで連れ込み

 やがったのは後で説教の必要がありましゅが」


そこへフィオナが戻ってきて、


「まーまー、いいじゃない。

 こういうのって女子会みたいでステキやん?」


「フィオナ様がそうおっしゃるのなら

 いいでしゅけど……」


空気を読んだナヴィは水を差すような事はせず、

取り敢えず現状を追認する。


そこで席に着いていた女性陣が姿勢を崩しながら、


「リアルな女子会だと、結構ドロドロしている

 からねー……」


「二次元じゃなく三次元の女子会なんて、

 文字通り惨事会ですよ」


「まーホントに女性比率が多くなると、

 どこもロクな事にならないのは世の常

 人の常ってかゲハハハハ♪」


下品な声で笑い始める女性陣の前で、彼は

『メンドイんで離れよう』と本能が訴えかけて

きたので、それに従って姿を消した。


「あ、ナヴィ様!?」


「イケニ……じゃなくてメインディッシュが!」


「ホラもー、あんたらがバカな事を言うから!!」


ガッカリする女性陣を前に、フィオナが改めて

座ると―――

それぞれがアイコンタクトを取って、


「……行きましたか?」


「ええ、予定通りですよ女神様」


「さ、さあ。

 それでは目的のブツをさっそく……!」


すると女神は一つのアルバムを全員の前で開く。


「お、おお……!」


「これは何と至福な……!」


「ママの秘蔵の写真集だからねー」


フィオナが披露したのは―――

かうてアルフリーダがナヴィを着せ替え人形にして

コスプレさせまくった、フォトアルバムであった。


「全て焼き増しを所望する」


「是非私にも!

 あと言っておくが門外不出だぞ!

 これ以上競争率が増えても困るからな」


「わかってるわかってる♪

 あくまでも『個人用』にね……!」




―――その頃―――

―――現場からダッシュで逃走したナヴィは―――


「この猛暑の中、ヤケに背筋が寒いような

 しょうでないような……


 それではそろそろ、本編スタートしましゅかね」




│ ■シフド国・首都バーサー    │

│ ■ボウマン子爵屋敷       │




「まったくどいつもこいつも!

 この私を年寄り扱いしおってからに……!」


貴族―――とは思えない、質素かつシンプルな

家具が配置された部屋に……

頬を膨らませて怒る女性が一人。


その姿はどう見ても10代前半と見られ、

童顔かつ低身長で―――

周囲の使用人含め、誰よりも若く見えた。


頭の両端に分けられたやや茶色に近い金の

ツインテールが、その幼い外見に拍車をかける。


「まーまー。

 ベーちゃんは年寄り扱いされているんじゃ

 なくてー。

 別の意味で心配されているだけだと思うよ」


読んでいた本を閉じると同時に、友達らしい

軽口で女の子が語り掛ける。


ライトグリーンのショートボブで、ボーイッシュな

少女は、本をテーブルの上に置くと、ベーちゃんと

呼んだ人物へと近付く。


「ベーちゃんは止めい、アーユ!

 ベラ様、もしくはおばあ様と呼べといつも

 言っているじゃろうが!」


「そんな事言われても。

 第一、ベーちゃんと一緒に歩いていても、

 祖母と孫なんて誰も思っちゃいないし」


注意されても、アーユと呼ばれた少女は

平然と返す。


実際、地球でも貴族が実験を握っていた

中世は―――

女性は10代前半で結婚し、30代に

なる前に祖母となるケースも珍しくは

無かったが……


仲の良い友達としか思えない2人の少女は、

どう見ても同年代のように見えた。


「まったく、孫とはいえ少し甘やかし過ぎたか。

 じゃからこそまだまだ隠居出来んのじゃ」


「いやだってお医者様からも言われているでしょ?

 また常備薬が増えたって話じゃない」


「おおそうじゃった、薬を飲む時間じゃ。

 誰ぞ水を持ってきてくれ」


『当主』の言葉にいそいそと、使用人であろう

メイドの一人が、水を差し出す。


「(こういう、なまじ年寄りって自覚がある分、

 ベーちゃんは性質が悪いんだよねー……)」


アーユは腰をトントンと叩きながら薬を飲む

ベラ『当主』様を見つつ、ため息をついた。




│ ■シフド国・首都バーサー   │

│ ■メルリア本屋敷       │




グローマー男爵が訪問した日から4・5日が

経過した頃―――


特にする事もなく待機していたフィオナ・

ナヴィの主従コンビだが、珍しく屋敷が

慌ただしくなった事に気付いた。


「何か騒がしいでしゅね」


「また誰か来たんでしょうか」


2人が用意された部屋から廊下へと出ると―――

何やら木箱が2、3個置かれ、それを前に男が

確認作業らしき事をしていた。


不健康そうな、病的な科学者を思わせるその

細身の顔は、見覚えがあり……


「(アレ、ラムキュールさんじゃないですか?)」


「(ルコルア国の『枠外の者』でしゅたよね。

 メルリアしゃんも同じ『枠外の者』でしゅから、

 彼と付き合いがあっても別におかしくは)」


フラール、ルコルア、そしてマービィ国と

因縁のあった人物で―――

ただしフィオナとは直接会った事があるものの、

名乗った事はなく……

(3章11話・12話参照)


ナヴィも探りを入れた事はあるが面識はなく、

そのまま身を潜めていた。


「ファーバ、たかがサンプルの取引くらいで

 緊張するな。

 もっと堂々としろ」


「いえ、そう言われましても……

 だってこっちは同じ『枠外の者』でも、

 序列は下から数えた方が早い弱小国の者ですよ?


 よくラムキュール様は落ち着いてますねえ……」


よく見ると、従者らしき男もいて―――

そちらは20代前半、ダークブラウンの短髪を

綺麗にまとめた青年が、やや落ち着かない様子で

周囲を見回していた。


「(ン? ファーバって確か)」


「(マービィ国にいた『枠外の者』でしゅね。

 以前見た時はもっとボサボサの頭をしていた

 ような気がしましゅけど)」


マービィ国の主力商品であるクルーク豆を意図的に

暴落させ、利益を得ようとしていた男で……

それをフィオナたちによって防がれ、莫大な負債を

抱えた彼は、今は借金の肩代わりをしてくれた

ラムキュールに従属していた。

(5章参照)


「(まー通常の取引なら、アタシたちが出る幕では

 ないのでは?)」


「(しょれもそうでしゅね。

 ではここはこのまま黙って―――)」


2人が振り返ると、そこには別の男女の姿があり、


「何してるのさ」


「面白いものでもあったのー?」


そこで女神と従僕は指を口に立てて、しー、と

静寂を促した後、少し離れた場所で事情を説明する

事にした。




「へー、そうなんだー」


「なるほど。

 でもその人たちがここへ来たという事は、

 何かメルリアと取引に来たのかな」


以前は敵対関係にあったとはいえ、キーラの

言う通り、今回の件に必要な関わりであれば、

あえて口を出す事も無い。


「もし印刷や製本に必要な物だと―――

 邪魔しちゃうのはマズイわよね」


「まあ様子見でしゅね」


フィオナとナヴィの言葉に、キーラはウンウンと

うなずくが、


「じゃあカガミが行ってくるねー」


『何を言い出した?』という表情で3人が

獣人族の少女へ視線を向ける。


「……話聞いていたか? カガミ」


銀髪の巻き毛と同じく、シルバーのシッポを

警戒心MAXで揺らす兄に対し妹は、


「え? だって……

 若い男が2人来たんだよ?

 それも主従関係にある人たちが」


その答えにキーラとナヴィ、少年2名は

首を傾げるが、カガミは赤茶のツインテールを

上下に揺らすように跳ねながら、


「だから行くしかないじゃん!!」


「その『だから』がわからないんだが?」


それまで無言だった女神が、獣人族の兄の肩に

ポン、と手を乗せて、


「えーとまあ……

 ここは別に行かせてもいいかと。


 心配ならキーラさんが付き添いをすれば」


「そう?

 女神様がそう仰られるのであれば……」


キーラが折れたところで、カガミとフィオナは

視線を交わし、


「(後で情報共有お願いしますね)」


「(お任せあれ♪)」


男性陣にはわからない合意をして、獣人族の

兄妹は廊下の奥へと消えた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5636名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。

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