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11・おじいちゃんのバカッ♪

( ・ω・)初期は結構キャラ設定を細かく作って

いたけど、今はかなり雑になっている(今さら)


日本・とある都心のマンションの一室―――


一人の少女が、室内にあるTVモニターを前に

たたずんでいた。




―――アタシの名前はフィオナ。

フィオナ・ルールー。


果樹の豊穣を司る女神だ。


人生とは何が起こるか分からない……

アタシはその事を、ここ数日で嫌というほど

教えられた。


しかし、まだ完全には理解していなかったらしい。


運命の悪戯いたずらか、それとも必然か―――

全てはあらかじめ決められていたのかもしれない。

今思えば、伏線と思われる箇所はあった。


アタシが何に対し、そしてどのような理由で

こんな気持ちでいるのか……


予想はしていた。予感はあった。

いや、心のどこかではそれを期待していたのかも

知れない。

だからこれは『裏切り』などではないと―――


「……んで、結局ゲームの話なんですよね?

 別にたいした事じゃないのでは」


お目付け役(猫Ver)が、いつの間にか彼女の

足元でツッコミを入れる。


「いやだってわかりますか!?


 双子キャラで弟の方を攻略していたのに、

 終わってみれば兄を攻略してしまっていた

 アタシの気持ちが……!!」


「申し訳ありませんが全くちっとも微塵も

 わかりません」


そしてナヴィは画面を見て首を傾げ、


「……ていうか双子キャラってコレ、

 どっちが兄でどっちが弟なんですか?

 私の目には区別がつかないのですが」


「何でわからないんですか!

 左側のカッコ良く可愛い方が兄で、

 右側の可愛くてカッコ良い方が弟です!」


それを聞いたナヴィはなおも首を傾げ、


「いえあの……

 髪型目の色顔の形に至るまで、違いが

 見つけられないのですが」


「そりゃ双子ですから外見は同じですよ。

 むしろ変わっていたらクレーム入れますね」


『理不尽過ぎる』とは思っても彼は口には出さず、


「いやそんなの、どうやって区別を」


「設定とかセリフとか、シナリオ・ルートは

 別途ありますからそれで判断を」


するとナヴィは両目を閉じて眉間にシワを寄せ、


「プレイ中でしか区別出来ないというのは……

 いえ、フィオナ様を始めプレイヤーの方々が

 それでOKならいいんですけど」


「え? いえ見た目でもわかりますよ」


どうやって? とナヴィは当然の疑問を抱いたが、


「あ、でもフィオナ様は女神ですから―――

 人間とは異なる識別方法や力があるのかも

 知れませんね」


「別にそれほどのモノじゃないですよ。

 どっちが受けでどっちが攻めか、心の中で

 設定していれば案外見分けはつくもので」


その回答を聞いた彼は、フー、と一息ついて、


「そこまでいくと病気を飛び越えてもはや

 特殊スキルの域ですね」


「いやぁそれほどでも」


「あぁすいません褒めてるわけではでも

 フィオナ様が幸せならそれでいいか。


 それじゃそろそろ、本編スタートしましょう」




│ ■シフド国・首都バーサー   │

│ ■メルリア本屋敷       │




―――前回までのあらすじ。


グローマー男爵がカガミに殺されかけた。




「はー……もう、カンベンしてよ。

 ワタシの屋敷でこの国の『新貴族』の重鎮が

 死んだら―――

 最悪、シフド国ごと敵に回りかねないわ」


「反省してま~す……」


ピンクのロングヘアーの女性が疲れた表情で語り、

茶髪のツインテールをした少女が、兄と思われる

少年につかまれながら深々と頭を下げる。


「あ、あのー、そういえば……

 男爵様はどうしてこちらへ?」


「準備が終わったから、しょれを聞いて―――

 みたいな事を言ってましゅたが」


黒髪の女神とシルバーヘアーのお目付け役の少年が

話題を変えるように話を振る。


「……まあ、当然―――

 それだけの用件で来たわけじゃないんで

 しょうけど」


メルリアがふぅ、とため息をつきながら先をうながす。


「相変わらずカンが良いのう。

 若いのに―――いや、若いからこそか。

 嗅覚きゅうかくするどいのは良い事じゃて」


カラカラ、と真っ白な口ヒゲの紳士は笑う。

そしてそのまま続けて、


「まあ、何じゃ。

 もしかしたらお前さんたちの『仕事』が、

 ちょっとやりにくくなるかも知れん、

 という話じゃ」


周囲は同じようにポカンとした表情を浮かべる。


「へ!? だ、だって男爵様は―――

 この国でも名門の方で、『新貴族』の

 お偉いさんなんですよね?」


「敵対する人がいるという話でしゅか?」


フィオナとナヴィがほぼ同じ疑問を口にすると、


「いっそ敵の方がまだマシじゃわい。


 だがのう、この年になると―――

 断りきれんというか、いろいろなしがらみが

 あってのう」


それを聞いたメルリアが、『あー』という

表情になる。


「どゆ事? キーラ兄」


「んー……まあ後で説明するから」


キーラとカガミの反応をよそに、男爵が説明を

継続する。


「ボウマン子爵の名前を聞いた事があるかね?」


「聞くも何も―――

 グローマー男爵と並ぶ、シフド国古参の

 名門貴族ではないですか。


 そこの若い人たちが、ワタシの新しい商売に

 関わらせろ、と言ってきているとか?」


聞き返された男爵は、片目を閉じてもう片方の

眉をつり上げ、


「当主じゃよ。

 ボウマン子爵その人じゃ」


「は……??」


困惑するメルリア、そしてそれ以上に状況を

飲み込めない一行を前に―――

男爵は改めて説明する事にした。




「はあ、なるほど……

 つまり周囲はもう隠居、引退を勧めて

 いるんですけど」


「そのボウマン子爵当人は、まだまだ引退する

 つもりは無い、という事でしゅか」


男爵の話によると―――

ボウマン子爵は女性当主であり、また

グローマー男爵とは旧知の仲であったが……


年齢を考え、そろそろ一線を退いて欲しいと

周囲が勧告しているが、本人はまだまだ現役だと

拒否しているらしい。


「んー、でもー」


「それがメルリアの商売と何の関係が?」


カガミ・キーラが当然の疑問を口にする。

すると男爵はばつが悪そうに、


「実はのう、隠居を迫られているとはワシは

 知らず―――

 新しい商売について、一応話を通しておこうと

 つい口にしてしまったんじゃ。


 そうしたら、思いがけず飛び火してしまっての」


「と言いますと?」


屋敷の主である女性が聞き返すと、


「ちょうどワシもボウマン子爵と同じくらいの

 年齢であったし……


 それで彼女が、ワシの新しい商売に負けない

 くらいの何かを考え付けば―――

 周囲を考え直させる事が出来る、と」


「あー……

 つまりは新しい商売として、メルリアさんに

 立ち向かうと」


「しょれが出来れば―――

 まだまだ若い、と証明出来るとその人は

 思っているって事でしゅね」


ようやく一通り納得した空気が広がる中、

男爵は改めて頭を下げる。


「いや、スマンのう。

 旧知の仲だったとはいえ、つい口が軽くなって

 しもうて」


「もー、おじいちゃんのバカッ♪」


と、無邪気な獣人族のチョップが振り下ろされると

同時に―――

兄がソファーから老人を無言で両手で持ち上げる。


次の瞬間、轟音と共にソファーは真っ二つになり、

『ソファーだった物』になった。


「お前『バカッ♪』って出す攻撃力じゃ

 ないだろ!!」


「ごめーん♪

 いつもは手加減しているんだけど、つい」


床に降ろされた男爵に、慌ててメルリアが

駆け寄り、


「だ、大丈夫ですか男爵様!」


「あぁ問題ないこの程度……

 でも念のためその子引き離してお願いだから」


グローマー男爵が新たに用意されたイスに座り、

ひとまず会談をやり直す。


「それでしょの、今回来られたのは『忠告』の

 ためでしゅか?」


ナヴィがたずねると彼は苦笑し、


「まあそれもあるのじゃが……

 『要望』もあるな」


「要望?」


フィオナの疑問の言葉に、男爵はフー、と

いったんため息をついて、


「今回の事を利用してしまう形になるが……

 ワシとしても、ボウマン子爵には一線を退いて

 欲しいのじゃよ。


 こう言っては何だが彼女とは腐れ縁でな。

 もう少しその、落ち着いて余生を過ごして

 もらいたいのだ。


 とはいえワシも現役だから……

 あまり強くは言えんでのう」


「ちなみに、どんな商売をするつもりなんですの?

 子爵様は」


メルリアの問いに男爵は首を左右に振り、


「まったくわからん。

 もしかしたら、ワシがまた何か新しい商売に

 関わると言った事で―――

 あいつの対抗心に火を付けたのかも知れん。


 昔からあいつ、負けず嫌いだったし」


過去に思いをはせるように、彼は両目を閉じる。


「どちらにしろ―――

 こちらはこちらの仕事を進めるだけですわ。


 ご協力はいたしますけれど、情報収集と

 その提供はお願いしますね」


「―――もちろんだ。


 では、ワシはこれで失礼するとしようかの」


ゆっくりと男爵が席を立つと、その見送りのために

メルリアが先導として先を進む。


「あ、じゃあカガミも」


と立ち上がろうとした少女を、2人の少年が

押さえつけ、


「カガミしゃんの役目はこの部屋にいる事でしゅ」


「大人しくしてろ、いやもう本当に」


そしてカガミの動きが封じられる中、屋敷の

女主人と老齢の客は、逃げるように部屋を

後にした。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5607名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。

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