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03・しょんなの今さらでしゅ

( ・ω・)やっとお仕事がリテイク地獄から

脱した・・・


日本・とある都心のマンションの一室―――


一匹のペットと思われる猫と、家主の少女が、

金髪・ロングヘアーの妙齢の女性を前に

話を聞いていた。


「で、ママ。

 何で地球こっちに来てるの?」


「何があって不機嫌なのかはわかりませんが、

 理由くらいは話して頂けませんか?」


お目付け役(猫Ver)のナヴィと、娘である

フィオナは―――

母であり女神であるアルフリーダに、苦心しつつ

対応する。


「だぁって、ねぇ~……」


テーブルに上半身を乗せて、ふてくされるように

答える彼女に―――

娘はため息をつきながら、


「どうせパパと何かあったんでしょ。

 何? 夫婦ゲンカ?」


「何が原因だったんですかね?」


従僕の質問も加わり、アルフリーダは冷静を

装いつつ答える。


「……まあ、よくある話よ。

 ちょっとお互いに生活が忙しくて、

 すれ違いが続いちゃって―――」


「絶対ウソね。

 そんなまともな理由であるはずがないもの」


「くだらない理由である事は確実―――

 さあ、真実を言ってください」


即断で母・主人の言葉を否定する彼らに、


「で、でもでもだって―――


 パパが悪いのよ!

 私の前で、ずっと他の女の話ばっかり

 するから!!」


「ウソね。

 パパにそんな度胸は無いわ」


「だいたいそんな事をしたら、アルフリーダ様の

 怒りがその程度のはずはないでしょう」


娘と従僕に立て続けに否定され、うなだれる

女神に、フィオナは改めて問い質す。


「ていうか他の女って誰?

 アタシたちも知っている人?」


「て、天界市役所の~……

 移転や滞在申請をする課の人でぇ、確か……」


そこまで主人の話を聞いていたナヴィは首を傾げ、


「私も代行でその課の窓口にはよく

 行きますけど……

 ユニシス様のお相手になるくらいの

 地位の女神ひとといいますと―――


 かなりのご年配だったような。

 この前、何人目かのお孫さんが生まれたとかで、

 私もよく長話に付き合わされました」


従僕の説明を聞いたアルフリーダは

思い出しながら、


「そ、そういえばパパ……

 そんな事を言っていたような気がするわ。


 こうしちゃいられません!

 すぐに帰って『仲直り』するわよー!!」


そう叫ぶと同時に彼女は走り出し、ベランダの

窓扉を開け、上空へと飛び立っていった。


それを見送るフィオナとナヴィは、ふぅ、と

一息ついた後―――

少女は窓を閉め、猫はテーブルの上を片付け、

お茶を2人分用意する。


人間Verに戻った従僕と2人……

女神と彼はそれぞれお茶を一口付けた後、


「じゃあそろそろ……」


「本編スタートしましゅか」




│ ■シフド国 メルリア本屋敷  │




「ふーみゅ……

 というと、印刷技術―――

 大量に本を作る事は可能という事でしゅね」


「メルリアと一緒に話を聞いていたけど、

 あまり細かい絵は無理だって言ってた。

 だから、絵・文章・絵・文章って具合に

 なるんじゃないかって」


女神の従僕と、獣人族である少年2人が話し込み、

現状確認と情報の共有を行う。


「識字率―――

 文字を読める人って多いんでしゅかね?」


「僕はすぐ覚えたけど……

 読めるだけなら少なくないんじゃないかな。


 ただ、読み書きまで出来る人はそうは

 いないって言ってた」


「ふみゅう。

 しょれなら、売るだけなら問題は―――」


ナヴィが意見を聞こうと、主筋であるフィオナの

方へ視線を向けると、


「だからまずフィオナ様は、女子力を見せつける

 方向で動くべきだと思います。


 洗濯とか掃除とか家庭的な、それこそ料理でも」


「え~……

 でもアタシ、何かうかつに作ると動き出すから」


「動く?」


そこには、フィオナ・メルリア・カガミと女性陣が

何事か話し合い―――

それを従僕と知人・兄の2人が見守る。


「何話し合ってるの、アレ」


「どうも私に対する攻略というか懐柔と

 いいましゅか……」


前回から引き続き、恐らく自分との仲が何ら

進展していない女神に対し―――

同性から厳しいアドバイスと方針・方法の

議論が交わされていた。


「実際のところ……

 ナヴィ様の事はどれだけ知って

 おられるのですか?」


「え? えーと……

 身体的特徴なら1km先でも判別可能、

 後はその場からいなくなっても1時間以内なら

 匂いでわかるくらいには」


「フィオナ様って獣人族だっけ?」


目を線にして悟ったような表情になるナヴィ。

微妙な顔になりながら流すキーラ。


そのまま女性陣の会話は継続され、


「……まあ、本能レベルで存在は把握して

 いるのですね。


 それなら今度は、生活習慣といいますか、

 一日の生活の流れを覚える事をオススメ

 します」


「と言いますと?」


「どんな感じで一日を過ごしてるかって事?」


女神と獣人族の少女の問いに、この屋敷の

女主人はゆっくりとうなずく。


「例えば、いつ起きていつ寝るか―――

 食事の好みや外出、趣味、嗜好など、

 知っていて損はありません」


「ムムム……確かに。

 今まではママに任せっぱなしで、そこまで

 気付きませんでした」


「あーソレ、確かに重要かも!

 カガミもキーラにいやリオネルにいが絶対何しても

 起きない時間知ってるし」


彼女の言葉に、フィオナとメルリアは

同時に視線を集中させ、


「ほう、それはそれは……」


「それでどのような事を?」


カガミは『んー』と考えた後、


「その間だけ布団入ったり服着替えさせたりー、

 あとは化粧させてみたり」


「おおーイイデスネ。

 でもナヴィってそういうの敏感ですし。

 あ、でも着替えはともかく化粧くらいなら

 出来るかも」


「ね、カガミちゃん。

 そのキーラの『絶対何しても起きない時間』、

 教えてくれないかしら。

 多分恐らく絶対に何もしないから大丈夫大丈夫」


それを聞いていた男性陣は目を合わせて、


「いい加減、そろそろ止めましゅか」


「だね」


ナヴィとキーラは立ち上がり、女性陣の会話を

強制終了させた。




「申し訳ありません、ナヴィ」


「悪かったわよ、キーラ」


改めて全員で大きめのテーブルに座り直し、

女神と女主人は頭を下げる。


「で、何だっけ?

 悪い事するんだっけ?」


「どこからそういう結論に至ったんだよ」


妹に対し、キーラは呆れながら答える。


「え?

 じゃあキーラ兄にいろんな事していーの?」


「いい加減その話から離れろ!

 あと悪い事って自覚あるならやめなさい!!」


兄妹のやり取りに出鼻をくじかれつつも、

女神の従僕が話を元に戻す。


「……しょれで、キーラ君からだいたいの

 お話を伺いましゅたが―――


 実際、どこらへんまで進んでいるのでしゅか?」


ピンクのロングヘアーの女性が、眼鏡をクイッと

直してビジネスモードの表情になり、


「絵がモノになり次第、順次それを職人に

 渡して―――

 印刷する手はずになっています。


 文章は活字としてすでに完成しておりますので、

 それはいつでも作成出来ますが……」


「?? 出来ます、が……?」


フィオナが聞き返すと、メルリアは両手を組んで、


「正直なところ、商売としてどの程度の規模に

 するのか、まだ算段が出来ておりません。


 老若男女問わず、という物ではありませんし、

 女性限定でかつ『そういう方々』向けの商品と

 なりますと。


 いっそ上流階級向けに、出版数を抑えて

 貴重な高額本にしてしまうのも手かと思って

 おります」


一通り話を聞いたナヴィは天井を見上げ、


「でも、これはそもそも―――

 『女神・フィオナ様』が絡んでいる事としゅて

 『枠外の者』に利益を提供する材料となって

 おりましゅ。


 いわばフィオナ様の信者獲得、布教も兼ねて

 いましゅので、少数しか相手にしないというのは

 ちょっと違うと言いましゅか」


「まあそれを言ったら―――

 『果樹の豊穣を司る優しき女神』と何の

 関係があるのかという話にも」


「しょんなの今さらでしゅ」


切り捨てるようなナヴィの言い方に、人間・

獣人組は微妙な表情になるが、


「じゃあさー、こういうのは?」


と、赤茶のツインテールの獣人族の少女が

手を上げてきた。


「カガミがキーラ兄に見せられるのと

 見せられない絵を描いているように、

 まずそれを分けたら」


「なるほど。

 優しい路線とガチ路線という事ですね」


女神は納得してうなずぐものの、


「だからちょっと待てカガミ」


続く兄の抗議に構わず妹は、


「字が読めない人もいるとして、

 絵だけでもわかるような―――


 後は、子供にも見せていいのと

 いけないのとで分けて」


「ふむ、それなら……

 女性限定にして低年齢層から取り込む事も

 可能そうですね」


財閥の商人の顔になった女性が、ビジョンを

補足するが、


「その『子供に見せてはいけない絵』を、

 お前は描いているのか?」


というキーラの意見はもはや無視され―――

会議が終わる頃には、焦燥しょうそうし切った獣人族の

少年がいた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5537名―――


( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。

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