37・イイデスヨーその調子です!
( ・ω・)6章終わり、次から7章です!
(初めて前の章より話数が少なかった)
日本・とある都心のマンションの一室―――
家主と思われる少女が独り言のように、
空間へ向けて話しかけていた。
「とまあ、今の状況はこんな感じでして……」
豊穣の女神・フィオナと、時と成長を司り、
見守る女神・アルフリーダは、神として、
そして母子として神託を通し言葉を交わしていた。
『それはそれとしてフィオナちゃん―――
せっかくのGWだったのに、誰かと予定とか
無かったの?』
「あるわけねえだろ嫌味か、ぶっ殺すぞ♪」
室内の女神は、自らの母親の問いに悪態をつく。
『何でそんな瞬間湯沸かし殺意MAXなのよ。
ていうかねえ、そろそろ誰かと親密になっても
いい気がするんだけど……』
「だ、だって仕方無いじゃありませんか!
神としての仕事だってあるんですし、
こっちの世界に眷属を呼ぶ事も
出来ませんし……!」
言い訳のように早口で語る娘に、やれやれ、
といった感じでアルフリーダはため息をつき、
『だいたい、元猫の従者とはいえ、人間としては
トップクラスの美少年と一つ屋根の下、
どれだけ健全な生活を送ってるのよアナタは』
「彼のガードが固いんですー!
固過ぎるんですー!!
てゆーかママだってナヴィには警戒させて
いたじゃないですかー!!」
反論するフィオナに母である女神は、
『だってアナタにはそれくらいがちょうどいいと
思ったから……
それにね、このままってのも考えものよ?
地球に恋敵がいないとは限らないからね?』
「ほへ?
いやーだってこっちには……」
そこへインターホンが押され、話し合いの渦中の
人物が帰ってきた。
「何をしているんでしゅかフィオナ様。
あ、アルフリーダ様、こんにちはでしゅ」
状況を察した彼は、主人である女神にも
あいさつする。
『どこ行ってたの、ナヴィ。
また絡まれなかった?』
「?? また? 絡まれる?」
母の言っている事が理解出来ず、娘は聞き返す。
「今日はサキュバスでしゅたね……
まあ、返り討ちにしましゅたが」
「どゆこと??」
意味を飲み込めない彼女は再度問い直し、
『ナヴィねー、人外なのを嗅ぎ付けて彼に
言い寄ってくるのがいるのよ。
サキュバスは元より、堕天使とか邪神とか……
今月はもうどれくらいだっけ?』
「今日で10人目でしゅね。
しつこく来ているのを抜かせば、合計で―――
67人になりましゅか」
それを聞いたフィオナは驚きと感心を半々にして、
「おおー、
ナヴィって人外にモテモテなんですねー」
「微妙な言い方をしゅるな。
あとお前も人外だからな?」
そのやり取りを聞いていた母親は―――
『(はあ……こりゃまだまだ先は遠そうだわ)
それじゃそろそろ、本編スタートしましょう』
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「お疲れ様でした、ビューワー伯爵様」
結局、彼らが本国へ戻るのは翌日と
なったのだが―――
まずマルゴットがバートレットの苦労を労り、
「アルプもお疲れ様」
「よくやったぞ、ファジー」
それぞれの眷属の身内が、彼らの健闘を称える。
「でも―――
何があったのですか?」
「伯爵様やアルプ君、ファジー君の他、
あの獣人族の兄弟もアルフリーダ様の御力に
よって呼ばれたと聞いておりますが」
ポーラ・メイ姉妹の質問に、女神母子は
顔を見合わせ、
「まー、ちょっとね」
「ほ、本の中身自体は見ていないから、
何も問題は無かったのですが……
あ、後で本人から聞いてくださいっ」
その答えに女性陣は首を傾げ―――
男性陣もきょとんとした表情になった。
―――男性陣回想中―――
│ ■オリイヴ国 市街地・メルリア屋敷 │
「はーいそのポーズいいよーいいよー♪
あ、伯爵様はもうちょっと服をはだけてー♪」
セレブや身分の高い女性陣が円を作って囲む中、
中央にはアルプとファジーが抱き合うような形で、
その隣りにはビューワー伯爵が、上着を脱いで
胸の露出を多くするようにカガミから指示を
受けていた。
リオネルとキーラはそれを遠巻きに見つめて
いたが、すぐにメルリアも矢継ぎ早に、
「ちょっと!
何しているのよキーラ!
ホラ早くお兄さんのシッポを口にくわえて!
そして目線はこっちに!」
リオネルは意味不明の指示に戸惑い、弟に顔を
向けるも、
「キーラ、彼女はいったい何を?」
「普段から、ボクにもあんまりよくわからない事を
させるんだよね。
まあ危ない事はしないと思うし」
そして、それを眺めていただけのナヴィにも
矛先は向き、
「ちょっと!
ナヴィも早く! えーとえーと……
とにかく何かしてみるんです!」
「あ、ちょうど伯爵様がソロだから、
ナヴィ、背中を彼に預けるようにして。
伯爵様も後ろからナヴィを抱きしめる
ようにして……
イイデスヨーその調子です!」
女神母子の指示に、2人は戸惑いながらも
従い―――
「あの、ナヴィ様。
これにいったい何の意味があるのでしょうか」
「理解は諦めてくだしゃい。
しょれが貴方のためでしゅ」
そこで周囲でただ見ているだけだった、他の
女性陣も声を上げ、
「メ、メルリアさん!
私にもペンと紙をお貸し頂けるかしら!?」
「そ、それならわたくしもです!
このような尊い光景、書き残さなければ
一生の悔い……もとい恥……!」
我も我もと筆記具を争い出し―――
男性陣はただ茫然となり、次々と出される
指示に従い続けた。
―――男性陣回想終了―――
│ ■アルプの家 │
「まああのおかげで、絵描き候補が自発的に
増えてくれたのは嬉しいんだけど」
「未来や文化は欲望が切り開くんデスネー」
同性として思うところのある女神母子は、
目を線のようにして思い出していたところ、
「……ところで、先ほどからシッカ伯爵様の
お姿が見えないのですが」
「……あの……獣人族の兄弟も……
さっきまで……いたはず……!」
シンデリン・ベルティーユ姉妹の言葉に、
眷属の少年たちも周囲を見渡す。
「あれ? 本当だ」
「ボクたちと一緒に転移されて来ましたよね?」
するとマルゴットがアルプに近付き、
「シッカ伯爵様は今―――
リオネルとキーラの2人と一緒に、
バーレンシア侯爵様の代官館へ行っています。
例の、噂を打ち消す策を授けてもらった
お礼にと」
コホン、と彼女は姿勢を正し、それを聞いた
面々は代官館の惨状……もとい現状を正確に
予想していた。
│ ■フラール国・バクシア国代官館(改2) │
「えーと……
獣人族のコたちが、何でここへ?」
イスに座るバーレンシア侯爵の前に―――
リオネルとキーラが跪き、その後ろには
レイシェンが頭を低くして、前傾姿勢となる。
「お初にお目にかかります、侯爵様。
わたしめは獣人族のリオネルという者。
此度、人間族とのいさかいを収めて頂き、
一族を代表してお礼を申し上げに来ました」
続けて弟の方も顔を下げ、
「ん~……
まあ、おかげでカガミの暴走も止まったし、
メルリアも何か満足したみたいだから―――
一応お礼を言っておくよ」
「キーラ!」
兄が弟をたしなめるように叫ぶが、そのまま
レイシェンが話を先に進め、
「今回もまた、バーレンシア侯爵様のお知恵と
尽力により―――
『枠外の者』、『新貴族』の企みは潰え、
オリイヴ国及び獣人族は救われました。
その礼として、獣人族の者から捧げたい物が
あるそうですので、こうしてお目通りを
願った次第です」
「あ、そうなの?」
侯爵は話の展開についていけず、ただ適当に
相槌を打つ。
「そこで僭越ながら―――
人間族には渡した事の無い一品を作って
侯爵様に献上したいと考えております。
作成に一週間ほどかかりますが、
まずはお礼として、参上した次第……!」
「あ、うん。ありがとう。
でもね、僕自身としてはただ口を出した
だけだし、たいした事はしていないと
思うから……
シッカ伯爵令嬢も、そのあたりを踏まえて
あんまり大げさに吹聴しないようにね?」
彼の話を聞いたレイシェンは深々と頭を下げ、
「ハッ!!
仰せの通りに!!」
力強く答えた彼女の目には、妖しい光が
宿っていた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5391名―――
―――7章へ続く―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
基本、土曜日の午前1時更新です。
休日のお供にどうぞ。