36・いっそ一から育ててみる
( ・ω・)次で6章終わりですー(予定)
7章に続きますが、舞台はシフド国
かなあ(未定)
日本・とある都心のマンションの一室―――
そこでペットと思しき猫の前で、飼い主であろう
少女が正座していた。
「人とは、人間とは―――
誰しも心が弱い部分があると思うんですよ」
「そうですか。それで―――」
お目付け役(猫Ver)は、女神に向かって
話の先を促す。
「例えば、ギャンブルなんかがそう。
後少しで勝てる、もう1回で、と賭け続けて
破滅する。
いくら心の中で、もうダメ、もう終わりに
しないと、そう思っていても―――
続けてしまう……」
「……まあ、わかります」
フィオナの神妙な物言いに、ナヴィも静かに
相づちを打つ。
「それはどうしてだと思いますか?
答えはシンプルです。
そこに、甘美な誘惑があるからです。
そう、見返り・ご褒美という誘惑が……!」
「ふむ。それで……」
聞き役に徹するお目付け役に対し、女神は
話をいったん収束させる方向に動く。
「ですので、今回起きてしまった悲劇―――
それは、アタシの心の弱さが原因……
誘惑に負けてしまうような、強い心を持って
いなかった事が……!」
「冷静な自己分析と状況判断お疲れ様です。
それで、他に何か言う事は?」
ナヴィの足元には、小型カメラのような
装置があり、それをちょいちょいと手で
つつきながら回答を待つ。
「本当に申し訳ありませんでした!
てか開始10秒以内で見つけるの
早くありません!?
大体お風呂ってもっとリラックスして
無防備で入るものでしょーが!
アタシがどれだけ苦労したと思って」
ナヴィは器用に両手で装置をつかむと、
フィオナの頭に一撃を入れる。
「やかましい。
お前はまず盗撮しようとした事を反省しろ。
ホントーにこういう事だけは後ろ向きに
全力なんですから」
頭をおさえてうずくまる女神を見下ろして、
呆れながらお目付け役はため息をつく。
「く、くおおぉおお……!
せめて道具は止めて……!
あ、でも夜の道具なら―――」
その言葉が終わるか終わらないかの内に、
ナヴィはもう一撃を女神に入れて黙らせた。
「まったくもう……
どこまでも欲望に忠実なんですから。
はぁ、それでは本編スタートしましょう」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「え? ママ? ちょ」
と、フィオナが止める間も無く―――
アルフリーダはその姿を消した。
そこにいた女性陣はしばらく茫然としていたが、
マルゴットから我に返り、
「メルリアを『同志』になりそうと仰って
おられましたが……
大丈夫でしょうか」
彼女の不安に、他の女性陣の視線はそのまま
娘である女神に向かう。
「まあ……ママの事ですからね。
たいていの事は何とかするでしょう。
ハッキリ言って、アタシなんかよりも
ずっと上位の神様ですから。
あと、アルプやファジー君、
伯爵様も連れて帰ってくるんじゃ
ないでしょーか」
その言葉に、姉妹2組と眷属の身内、
伯爵令嬢は安堵の表情となり―――
経緯を見守る事となった。
│ ■オリイヴ国 市街地・メルリア屋敷 │
奉公労働者のオークション会場から引き上げてきた
『枠外の者』、『新貴族』―――
そして獣人族の兄妹は、顔を見合わせて一息
付いていた。
「何名か、会場から同行してきたようだが……
あれはお前さんの指示かの?」
グローマー男爵がメルリアに問うと、彼女は
額に人差し指をあてて、
「あれはその~……
『本』の内容を目に焼き付けようと
ついてきた方々で……」
「わかるー」
同性のカガミが同調し、それを理解出来ない、
という目でキーラが見つめる。
「それで、獣人族の……
キーラ君とカガミちゃん、だったかの?
お主らはどうするのだ?」
少年は、屋敷の主である彼女に目を向け、
「神様まで絡んできたんじゃ、都市開発は
進められないよ。
出来れば、メルリアと一緒にシフド国まで……」
と、そこまで話した時点で周囲が光輝き―――
「なっ、何!?」
「わーキレイ♪」
室内にいた4人が目を覆うと、やがて光は
収束していき……
目を開けると、そこには一人の女性が立っていた。
金色のロングヘアーを波立たせ―――
そのプロポーションは、メルリアに勝るとも
劣らず、異性・同性を問わず息を飲む。
「ん~……
ナヴィやリオネル君の記憶だと、建物の外見しか
無かったから、室内はカンで入ったけど。
もしかしてちょうど良かったかしら?」
「……女神様、かのう?」
男爵が問うと、アルフリーダはニコリと笑って、
「ご心配なく。
少なくともこの世界の神様ではありませんわ。
娘が気になったので来てみただけです。
それで、貴女がメルリアさんね?」
と、女主人の方へ視線を向けると同時に、
一人足りない事に気付く。
「あら? 確かカガミちゃんという子が―――
のわああぁああああ!?」
疑問の声がすぐに絶叫に代わる。
アルフリーダの豊満な胸は、後ろから小さな手で
揉みしだかれ……
「いいオッパイ見っけー!!」
同時にキーラが飛び出し、妹をラグビーの
タックルのようにして女神から引き離す。
「バカかお前ー!!
相手神様だって言ってるだろ!!
死にたいのか!?」
「命が惜しくて乳が揉めるか!!
熱くなれ私! MOTTOMOTTO!!」
突然目の前で起きた光景に、降臨でも冷静さを
崩さなかったグローマー男爵が目を白黒させる。
「ワタシも初見でやられましたから……
止めるのが遅れて申し訳ありません」
「な、なかなか強烈なコね。
それで、改めて―――メルリアさん。
『あの本』、どう?
……個人的、に……!」
その問いに、彼女は男爵の方をチラチラと
見つめる。
「ワシがいては話し辛い事もあるじゃろう。
利益を提供してくれれば何の問題も無い。
心ゆくまで話し合ってくれ」
そこで老人は退室し、女性同士の話し合いが
行われる運びとなった。
「……女性の協力者ならいくらでも得られると
思います。
有力者、それこそ貴族まで。
ですがやはり、絵描きの獲得がネックで
しょうか。
このような技法は我が国はおろか、見た事も
ありませんので……」
「その事なんだけど、いっそ一から育てて
みるっていうのは?」
熱心に話し込む2人の側で、キーラが
カガミを押さえつけていたが……
その彼女が声を上げる。
「はーい! それならカガミがやるー!」
カガミの提案に、アルフリーダとメルリアは
顔を見合わせる。
そして視線はそのまま兄の方へ向き、
「キーラ。カガミちゃんって……」
「絵が得意なの?」
その質問に、キーラはひとまずうなずき、
「昔から、カガミは手先が器用でした。
絵も、地面に落書きする程度ですが―――
他の者より上手でしたし。
兄としてひいき目無しでも、それは
確かだと思います」
「とにかく描かせてみて!
それを見てからでもいーでしょ?」
それもそうか、と女神と女主人は同意し、
試してみる事にした。
「うーん……」
「これはなかなか……」
『例の本』を見ながら描かせてみると、
カガミはそっくりにそれを描き上げた。
「妙な絵だな……
でも、上手いと思うぞ」
「キーラ兄は見ちゃダメ!」
「ああ、悪い悪い。
男は見てはいけないんだっけ」
慌てて目をそらすキーラに、女神は声をかける。
「別に、写したものなら問題は無いわ。
込み入ってくるとさすがに見せられないけど」
「は、はあ」
次にメルリアがカガミに声をかけ、
「いいじゃない、なかなかイケるわよ♪
ね、カガミちゃん。
ワタシと一緒にシフド国まで来ない?
お金も弾むし、要望は可能な限り
受け入れるわよー♪」
すると、獣人族の少女の目が妖しく光り―――
「ほぉお。要望、ねえ……
それじゃカガミ、お願いがあるんだけど。
確か絵って『もでる』が必要なんだよね?」
ゆらり、とカガミは兄の方へと振り向き、
「?? 何だ、カガミ?」
それを聞いていたアルフリーダ・メルリアにも、
目に同じ光が宿った。
│ ■オリイヴ国 ガルバン家 │
│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点 │
「……んみゅ?
アルフリーダ様でしゅか?
こちらはもう帰る準備は万端で―――
え? 『枠外の者』の屋敷まで来て欲しい。
何でまた」
自分の主人から神託を受けたナヴィは、
その要請の意図がわからず聞き返すも、
「アルフリーダ様ですか?」
「あ、あれ?
足元から光が……」
アルプとファジーが、体に起きている異変に
気付き、
「! これは―――
転送される時の……!」
「み、みなさん!?」
そして3人の姿は、ガルパンの見ている前で
同時に光に包まれ―――やがて消えた。
│ ■アルプの家 │
同じ頃―――
フラール国にいる女神にも、母親から
神託が繋がり……
「……アレ? ママ?
え? もう少し時間がかかるって?
ちょっと男性陣にやってもらう事がある?
あの、それはどういう……
ママ? ママ!?」
フィオナを見守る女性陣に対し、彼女は
一応説明を試みた。
「あ、あの―――
ママから連絡があったんですけど。
絵描きのタマゴが見つかったのと、
アルプたちにはしてもらう事が出来たから、
まだちょっと時間が掛かるそーです」
それを聞いた室内の人間は全員首を傾げ、
また女神が説明を再開する。
「え? ママ?
はい? やっぱりあなたも来なさいって?
それはどういう―――」
戸惑いながら女神は女性陣の前で姿を消し、
残された彼女たちは、ただ茫然とその状況を
見つめていた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5377名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
基本、土曜日の午前1時更新です。
休日のお供にどうぞ。