35・どうやらこれで、今回も一件落着
( ・ω・)多分次かその次で6章終わり。
7章どうしようかな(無計画)
日本・とある都心のマンションの一室―――
ではなく、天界市役所の一室に、ルールー家の
娘のサポート兼お目付け役が、担当職員と相対
していた。
「はい。ではこれで神託地域および地球滞在用の
延長手続きは完了です。お疲れ様でした」
「こちらこそ、いつもお疲れ様でしゅ」
人間Verのナヴィは書類を受け取ると、
深々と頭を下げる。
「ところでナヴィさん。
本当に神への昇格試験は受けなくとも
いいのですか?」
「んー、ご主人様の意向もありましゅし……
ユニシス様も、私の希望通りでいいとは
言ってくれているのでしゅが」
すると職員である若い男性の顔はパァッと
明るくなって、
「それならばすぐにでも申請書を出せますよ!
今までの功績から考えますと―――
ほとんどノーチェックで通ると思います!」
「う~ん……
ただまあ、もう少し考えさせてくだしゃい」
消極的なナヴィの態度に、職員は肩を落とし、
「まあ、無理強いは出来ませんから……
でも我々市役所の人間としては、
ナヴィさんの存在はルールー家様との折衝に
大変助かっておりますので―――」
「確かに私が昇格しゅれば、ご主人様や
フィオナ様の突発的被害を最小限に
食い止める事が出来ましゅので、
しょれはユニシス様にも期待されている
ところではあるのでしゅが」
その言葉に、職員は身を乗り出して、
「そ、そうなんですよ!
身も蓋も無い話、我々としてはそうして
頂くと大変助かるといいますか―――
あの、それならばどうして?
今までの関係が違うものになる事を
恐れているとか、でしょうか」
「いえ、そんな事は無いと思いましゅ。
従僕とはいえアルフリーダ様もユニシス様も
両親同然、フィオナ様にも良くしてもらって
いましゅし―――
ただ……」
職員はゴクリと唾を飲み込み、その先を促す。
「た、ただ?
何でしょうか……?」
「ええと、しょの神様への昇格試験の間―――
私はフィオナ様の下を離れ、つまりその分
空白期間が出来るという事になりましゅ。
でしゅので、もししょの時何か起きたと
したら……」
一通り話を聞いた職員は、あらゆる角度へ
首を曲げて考え、
「ええと、本格的な話は一段落して
落ち着いた時に」
「それがいいと思いましゅ。
しょれではそろそろ、本編スタートしましゅね」
│ ■オリイヴ国 ガルバン家 │
│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点 │
「それで、話し合いの結果は……
いえ、話し合いが出来ただけでも予想外の
事なのですが」
家の主であるガルパンは、帰ってきたメンバーと
新たにやって来た眷属2名を前に―――
恐る恐る問い質す。
「奉公労働者のオークションは止める事が
出来ませんでしたが―――
招待客はバラバラに来た時とは違って、
堂々と御一行様で帰るとの事」
それを聞いた彼は首を傾げるが、アルプと
ファジーが話を続け、
「それで、あの……
方々で『奉公労働者のオークションに来た』
と話しながら帰ってくれるそうです」
「つ、つまり??」
「そこまで大っぴらに話していけば、誰も
却って本気にする事は無いだろうと」
そこまで聞いたガルパンは両腕を組んで
うなずき、
「―――なるほど。
確かにそこまですれば、『枠外の者』も
『新貴族』も……
自虐的に語っているだけだと思われる
でしょうね」
そこでナヴィとリオネルも補足するように
入り、
「人の噂に上っても、良くて自嘲、悪くても
負け惜しみ程度にしか取られないと思いましゅ」
「そこに被害者……
人間であれ獣人であれ、行方不明になった
者がいなければなおさら、でしょう」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「ふ、ふふふ……
どうやらこれで、今回も一件落着・
はっぴーえんどのようですね!」
ガッツポーズを取る女神を前に、一同の
女性陣は微妙な表情になるが、
「でもね、フィオナちゃん。
今回私は、特別に介入しただけですからね。
『アンカー』がどうこう言うから。
優秀な眷属や、周囲の方々に感謝しなさい」
「は、はぁ~い、ママ……」
しおらしくする娘を置いて、アルフリーダは今度は
レイシェンへと振り向き、
「そういえばレイシェンさん」
「は、はい。
何でしょうか?」
突然の問いに姿勢を正す彼女に対し、
アルフリーダは質問する。
「バーレンシア侯爵でしたっけ?
今回もまた、決め手となる解決策を出して
頂いたのですが―――
彼に対するお礼は何がいいでしょう?
貴女は貴族ですし、彼とも特別な間柄と
見たのですが」
「ととと、特別だなんてそんなっ!
ユイノーだってまだだし、それに式もっ!!」
いろいろとすっ飛ばして焦るレイシェンを
周囲が何とかなだめ……
落ち着いたところで、改めてレイシェンは
女神に答える。
「希望といえば―――
侯爵様は今、フラール国の王の嫡子・
フラウア様と、バクシア国の陛下の姪・
リーディル様のご成婚の準備に従事されて
おられまして……
確か、それで用意する品に頭を悩ませて
いらっしゃったかと」
と、そこまで聞いたところで、神託を繋げていた
オリイヴ国から少年の声が入った。
│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点 │
「話に割り込んですいません。
リオネルですが―――
もし何か珍しい品をお探しであれば、
獣人族の集落から何か提供出来るかも
知れません」
彼の提案にナヴィの興味が向き、
「ふみゅ。と言いましゅと?」
家の主のガルパンを始め、バートレット、
アルプ、ファジーも注目し、
「以前、お話した事があると思いますが、
獣人族の集落は人の目を欺く仕掛けを
施していると説明しました。
正確には、『良くない物から姿を隠す』、
『邪な存在を近付けない』樹木を、集落の
周りに植えているのです。
我々は『難除けの木』と呼んでおりますが、
その木で作った杖か加工物であれば、
今回の報酬としてお渡し出来ると思います」
│ ■アルプの家 │
「えー、という事なんですけど」
フィオナがレイシェンに視線を向けると、
「それは大変素晴らしい事だと思います!!
フラールとバクシアの友好と平和のため、
万難を排して獣人族の宝物を進呈された―――
それもバーレンシア侯爵様の功績として、
ああ……!!」
│ ■フラール国・バクシア国代官館(改2) │
伯爵令嬢が暴走する一方で、代官館の主である
侯爵は背筋に寒さを感じていた。
「何か僕の知らないところで、勝手に問題が
解決した上に僕の手柄になっているような
気がする……!」
もはや本能ともいうべきレベルで事態を
察知し、彼は深くイスに腰かけ直した。
│ ■アルプの家 │
舞い上がっている彼女を横目に、シンデリン・
ベルティーユ姉妹も目を付け、
「えーと、それって……
トーリ財閥にも売ってもらえたりしない?」
「……さすがシンデリンお姉さま……!
商人の神髄を……見た……!」
そこへもう一方の姉妹がそれぞれ頭に
手刀を入れてツッコみ、
「そんなところで商売っ気を出さないで
ください!」
「どうせ、あの『女性しか見れない本』が
作られたら―――
儲けはそれこそ予想も出来ないでしょう」
ポーラとメイが呆れながらため息をつくと、
ソニアとミモザが女神の母娘に向かって、
「あの、ではそろそろ……」
「一応、事は済んだようだし―――
アルプさんとファジーをこっちへ
戻してくれねーか?」
肉親の要求を聞いて、アルフリーダは
オリイヴ国へ神託を通して声をかけた。
│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点 │
「で、では僕たちはそろそろ戻りますっ」
「……あれ、そういえば……
キーラさんやカガミさんは?」
その問いにリオネルは首をすくめ、
「カガミは何ていうか、あのメルリアとかいう
人間の女性と意気投合したらしくて。
元々はキーラも開拓派として彼女と
気が合ったらしいから―――
しばらくは獣人族との連絡役、あと
利害調整役として滞在しているんだと
思います」
│ ■アルプの家 │
彼の説明にうんうん、と納得すると、
アルフリーダは少し考え、
「あ、でもその前に……
メルリアさんやグローマー男爵さんにも
一応、あいさつした方がいいかしら?」
「ええと、それはけん制と言いますか―――
く、釘を指すという事でしょうか?」
マルゴットが恐る恐るたずねると、彼女は
首を軽く左右に振って、
「別に深く考えなくていいですよ。
それにあのメルリアさんとやらは、
もしかすると『同志』……
いえ、味方になってくれそうですから。
と、いうわけで……
ちょっと行ってきまーす!」
「え? ママ? ちょ」
娘であるフィオナが戸惑う間に、アルフリーダは
その姿を消した。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5370名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
基本、土曜日の午前1時更新です。
休日のお供にどうぞ。