34・きょうもおしごとがんばるかー
( ・ω・)今回の題名は私に効く
(仕事で本格的にリテイク食らったから)
日本・とある都心のマンションの一室―――
家主と思われる少女が、一匹のペットらしき
猫を前に仰向けに寝転がる。
「ふ~……
最近、暖かくなったと思ったら、また急に
寒くなったりしてますねえ」
「確かにそうですね。
マンションですから、エアコンさえつけていれば
不便は感じませんが……
油断して消して寝たりすると、朝方すごく
寒くなったりしてびっくりするんですよね」
フィオナの話に、相づちを打ちながらナヴィは
窓の外を見る。
「そーですねえ冷えるのはいけませんよさあ
一緒に抱き合って温まれば万事解決!
さらに人間の姿になってもらえれば効果抜群!
あ、でもちょっと汗をかき過ぎる事になるかも
知れないけど―――」
「スキあらばセクハラをかますな。
本当にブレないですね貴女は。
ていうか普通なら、立場が逆というか
こういうのは男性から女性へするものでは……」
お目付け役の言葉に女神はふと考え込み、
「ナヴィがセクハラ……
つまり美少年がセクハラ―――
アタシが常日頃から妄想している事が
受け攻めが逆になっていきなりそんな
あわびゅっ!!」
「あ、ヤバい病気が悪化する方向の
スイッチ押した」
冷静に分析するナヴィの前で、女神は体中の体液を
まき散らし―――
幸せそうな顔でその場で失神した。
『自らの妄想に耐え切れなくなって気絶とは……
私のレベルにまで上がってきたようね、
フィオナちゃん』
そこへ母親であるアルフリーダの声が室内に響き、
「この場合のレベルは、落ちてきたというんじゃ
ないでしょうか。
まあ―――
そろそろ本編スタートしましょう」
│ ■オリイヴ国 │
│ ■奉公労働者オークション会場内・控室 │
「フム……
それで、レンタルは出来るけど譲渡は難しいと」
ピンクのロングヘアーの毛先をつまみながら、
その女性は知的さを思わせる眼鏡の奥から
視線を貴族の青年へと向ける。
「はい。
そもそもそれは別世界の物らしく、
この世界に留めておく事は出来ない―――
そう聞いております」
ビューワー伯爵の答えに、グローマー男爵も
本に目をやりながら、
「確かに、見た事も無い技術と素材である事は
わかる。
表紙だけでも、まるでガラスを薄く伸ばした
ような光沢と質感じゃ」
コート紙、もしくはビニールクロスの類だが、
当然こちらの世界には無いもので―――
それだけでも別次元の物だという事を伺わせた。
「ですので、ええと……
貸すのに当たってまずは」
「それを模倣出来る、が、画家もしくは絵師の
確保―――
それも女性に限って、でしょうか」
伯爵はともかく、眷属の少年2人は女性陣からの
獲物を狙う獣のような熱視線にさらされ……
ぎこちなく対応する。
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「あーアルプにファジー。
彼女たちの視線は気にしなくていいわ。
実害は無いから」
「その本を女性陣は読むとそうなる―――
自然現象のような物だと思ってもらえれば」
不安になる眷属たちへ、女神の母娘は神託で
アドバイスを告げる。
「でも、ようやく交渉には乗ってきて
くれましたけど……」
「落としどころはどこだ? って事だよなあ」
眷属の身内であるソニアとミモザが、
そもそもの目的を口にし、話を元に戻す。
│ ■奉公労働者オークション会場内・控室 │
「そうね。
女流画家を見つけるのは難しいかも
知れないけど―――
我がカトゥ財閥の力を持ってすれば、
一人や二人、すぐ取り掛からせる事が
出来るでしょう」
「しかしのう。そちらの条件……
確か、今回すでに行ってしまった、
『奉公労働者オークション』の話じゃな?
だが、客はもう招待してこの国にこうして
来ておるのじゃし、どうやって噂を防ぐ
つもりなのだ?」
『枠外の者』の財閥令嬢と、『新貴族』の男爵の
問いにフィオナサイドの男性陣は顔を見合わせる。
│ ■アルプの家 │
「ん~……
そこまでこちらで考えないとダメ?」
「……あちらに条件は提示した……
それと引き換えに考えるのは……
向こうの責務……!」
シンデリン・ベルティーユ姉妹が難色を示すも、
「まあ、そう身も蓋も無い事を言わないで」
「せっかく交渉に応じるところまで来たのだから、
こっちでも方法を案じてみましょう」
ポーラ・メイ姉妹がフォローして、
各自考え始める。
「とは言いましても、すでに招待客も
オリイヴ国入りしているわけですし」
「分散させて帰らせたとしても……
隠し通せるものではないな」
マルゴットとレイシェンも現状把握から、
ネガティブな意見になり―――
そこへナヴィが神託へ割り込んで来た。
│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点 │
「何をやっているでしゅかフィオナ様。
こういう時こそ出番でしょうに」
「(ええ!?
いいいいやだって―――
これ以上は神様から手出ししちゃいけないって
ママも言っておられますゆえに)」
お目付け役の言葉に女神は反論するも、
「だから思い出しぇ。
16話・17話で『アンカー』とミモザさんから
教えてもらった事を―――
(16話「どんな汚れ仕事でも」
17話「その神様目線はちょっと」参照)」
│ ■アルプの家 │
「え!? え~と……アレは確か、
相手の噂に対しカウンターを取るって事で……
・別の噂をでっち上げる
・相手の噂に便乗して噂を大きくする
でしたっけ」
フィオナの確認に、提案者の一人である
ミモザが応じ、
「いやでもなあ……
噂も何もホントーにやっちまった後じゃ」
全員が黙り込んで考え込む中―――
アルフリーダが口を開く。
「そういえば、マービィ国での一件だけど……
クルーク豆をブランド化して解決したのよね?
アレは誰の案だったのかしら」
「知勇兼備の士、バーレンシア侯爵様です!!」
そこで力一杯叫ぶようにレイシェンが答え―――
「おっけー。
じゃあちょっと聞いてみるわ」
女神が直接、彼に神託を繋げた。
│ ■フラール国・バクシア国代官館(改2) │
「(ちょっといいかしら?)」
「―――ッ!?」
いきなり頭の中に響く声に、彼は身構える。
「あ、ああ……
女神様のお母様、アルフリーダ様ですか」
落ち着きを取り戻した侯爵に、彼女は
事の次第を説明する。
「……噂に関するカウンターですか。
それも、すでに実行されている事に対して」
「(無茶振りなのは承知の上なんだけど、
何かいいアイデアは無いかしらと思って。
あ、失敗してもリセット出来るから、
何でもいいので言ってみて)」
りせっと? と理解不能なワードに戸惑うが、
他国の王族や財閥ときて、さらに神様のその
母親からの頼みに、『もうどうにでもなーれ♪』
状態に入った彼は
「ならばいっそ―――
もう堂々としてもらえばいいのでは
ないでしょうか?
招待客の方々も、バラバラで帰るのではなく、
団体様で目立つように動いてもらって……
『奉公労働者のオークションに来たんですよ』
くらいあちこちで公言してもらうんです。
それくらいやれば、誰も信じないのでは」
「(なるほど……
中途半端に隠すより、いっそ突き抜けて
しまえばいいワケね。
よし! それでいきましょう!!)」
そこで神託は閉じられ、バーレンシア侯爵は
しばし放心していたが……
「さて、きょうもおしごとがんばるかー」
と心を白紙にして、現実逃避のために
机に向かった。
│ ■奉公労働者オークション会場内・控室 │
「……というのはいかがでしょうか」
神託を経由し、フラール国からアドバイスを
受けたビューワー伯爵は、妙齢の女性と
老人に提案する。
「なかなか思い切った事をしますのね」
「じゃが、悪い手では無い。
下手に隠すから事実はバレるのだ。
方々で声高に放言して歩けば―――
それは何の価値も無い情報に成り下がる。
誰にも本気で相手にされないくらいにはのう。
そちらにはなかなかの知恵者がおるようじゃな」
メルリアは女性陣の方へ振り返り、
「―――という事で、ご協力頂けますか?」
その問いに、彼女たちは顔を見合わせるが、
「あ、あのっ!」
「ボ、ボクたちからも是非お願いしますっ」
アルプとファジーが駆け寄って膝を付き、
上目づかいで声をかけ、
「わたしどもからも、どうかお願いします」
「獣人族も―――
人間との衝突を望んでいるわけでは
ありませんので」
次いでリオネル・キーラ組の兄弟も
近寄って次々に手を取って―――
「これで貴女方を罪に問おうとか、
どうこうする事は考えておりません。
このバートレット・ビューワー伯爵―――
己と女神様の名にかけて誓います」
最後に深々と伯爵が頭を下げる。
眷属に貴族、獣人族といった、美少年・
美青年の懇願を立て続けに食らい……
彼女たちはブンブンと首を千切らんばかりに
縦に振って、同意という名の撃沈判定を食らった。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5365名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
基本、土曜日の午前1時更新です。
休日のお供にどうぞ。