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31・いったい何してくれてんでましゃ

( ・ω・)煮詰まっている時に限って、

仕事のイベント2つがリテイクを

食らう(自己責任)



日本・とある都心のマンションの一室―――


端末を握り締めたまま、うつぶせに倒れている

少女が一人―――

そこへ、ペットと思われる猫が通りかかる。


「どうしました、フィオナ様?

 何か良くない報せでも……」


お目付け役(猫Ver)の問いに、彼女はゴロンと

仰向けになり、


「あー……うん、別に何でも無いわ。

 ただイベントのラッシュでちょっと

 疲れただけよ」


「イベントってゲームのイベントですか。

 少し間を空けるとか、休むとか出来ないん

 ですか?」


呆れ気味に返すナヴィに、フィオナはガバッと

起き上がり、


「それが出来れば苦労しませんよ!

 てゆーか、年末年始ってホントにイベント

 多いんですよ!

 クリスマスにお正月、バレンタインに

 ホワイトデー、節分にひな祭り……!」


「よくもまあ地球こちら日本くにに対応したものですね。

 でもそれなら―――

 今は一段落ついている、という事ですか?」


するとフィオナはまた仰向けに寝転がって、


「そ~ゆ~ことー……

 しばらくは平穏な時間が過ごせるわ」


そんな主筋を見ながら、ナヴィはふぅ、と

軽くため息をつくが、室内に響き渡る声が

1人と1匹を神経を同時に集中させた。


『甘い……甘いわフィオナちゃん……』


「この声は……ママ!?」


「アルフリーダ様……!

 いったい何事でしょうか」


母親と主人の突然の言葉に、彼らは身構えるが、


『フィオナちゃん……

 休むにはまだ……早いわ……』


「へ?? と言うと?」


天井を見上げつつ聞き返す娘に、母親は


『次はお花見イベントがあるわ……!

 一息付くのはそれからよ……』


「そ、そうか……!

 それが終われば後は、水着イベまで

 修羅場は無くなるはず……!」


気合いを入れ直す母娘に対し、彼は後ろ足で

頭をかき、


「えーとじゃあそろそろ次行っても

 いいですかね返事は聞いてない。


 というわけで本編スタートしましょう」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




前回のあらすじ―――


フィオナの眷属2名がオークションに

出品された―――


「いやちょい待ってよママン!

 いったい何してくれてんでましゃ!?」


フィオナは母・アルフリーダの肩を両手で

つかみ、ガクガクと揺らす。


「えーと、わざとじゃないんだけどぉ~、

 強いていえばお約束の展開を予想出来なかった

 フィオナちゃんのせいかしら♪」


「え!? アタシのせい!?」


女神である母娘のやり取りに、返って周囲は

冷静となり―――


「と、とにかくアルプに状況の確認を……!」


「そうだ!

 ファジーにも聞いてくれ!

 今どうなってる!?」


身内であるソニアとミモザが、現状を伝えるよう

神託をお願いする。


「そ、そうです! アルフリーダ様!」


「とにかく今、どうなっているかを確認

 しなければ……!」


マルゴットとレイシェンも、後押しするように

2人に続く。


「ちょっと待ってね。


 あーあー、アルプ君ファジー君。

 今どんな感じになってるかしら?」




│ ■奉公労働者オークション会場内  │

│ ■メイン舞台           │




アルフリーダからの神託に、2人は

抱き合いながらも周囲を見渡して、


「(ど、どうやら……

 オークションの最中だったみたいですが)」


「(あちらに取っても予想外の事だったのか、

 戸惑っているようです。

 今なら逃げられるかも……!)」


彼らの言う通り―――

会場を運営する側も、招待客も、突然目の前で

起きた事に戸惑っているようだった。


(んー、それはちょっとマズイわねえ。

 侵入者ですって自分でバラしてしまうような

 ものだし。


 取り敢えず司会とか、オークションを

 主催する側の人っている?

 アクシデントなら、何らかの対応をして

 くれるかも)


と、アルフリーダが考えを伝えたところ、


「金貨1000枚!!」


客席の方から一人の、男らしき手が上がり、


「あ、あのお客様!

 落ち着いてください!

 彼ら? 彼女らは―――」


「1100枚!!

 こっちは金貨1100枚だ!!」


「こっちは1300枚よ!!」


と、彼らのオークションが始まってしまい、

会場は異様な熱気に包まれた。




│ ■奉公労働者オークション会場内・控室 │




その頃―――

『枠外の者』、『新貴族』、そして獣人族が

控えている部屋でも、メイン舞台での異常な

雰囲気は伝わっていた。


「何か騒がしいわね……」


ピンクのロングヘアーを指に絡めながら、

メルリアは部屋の外の騒動を察知する。


「……侵入者かの?」


グローマー男爵は扉に目を向けるが、獣人族の

少女は窓の外に目をやり、


「どーだろー?

 周辺に変な気配はあったけど」


「うん、それは移動してないし。

 ただ……」


カガミとキーラの兄妹は耳をピン!

と逆立て、様子を探る。


恐らくバートレット、リオネルの存在にすでに

気付いていたのだろうが……


「ただ?

 ただ、どうしたの? キーラ」


メルリアが、言葉の先が気になって質問する。


「今、この建物のは人がいっぱいいるから、

 勘違いかも知れないんだけど―――

 いきなり、気配が増えた気がしたんだ」


さすがに突然出現した存在は感知しても、それを

説明する事は出来ず、言葉を濁す。


そこへ、オークションのメイン舞台にいた、

司会らしき男が駆け込んできた。


「メ、メルリア様!!」


「―――!

 落ち着きなさい、どうしたの?」


冷静に努めようとする彼女に、男は続けて、


「あ、あのう……

 獣人族のオークションに入る前に、

 特別な演出で、誰か追加登場させたり

 しませんでしたか?」


もちろんそんな事は覚えが無く―――

彼女は立ち上がり、


「どういう事?」


「出品される人間を立たせる舞台の上に、

 いきなり現れたのです。

 私にも何が何だか」


情報量の多さに、メルリアは確認のため

現場へと向かう事にした。




│ ■奉公労働者オークション会場内  │

│ ■メイン舞台           │




「に、2000枚!」


「こっちは金貨2300枚!

 持ってきた全額と引き換えにしてでも

 手に入れるわよ!!」


メルリアの後に男爵が続き、さらに獣人族の

兄妹もメイン舞台のある会場に入り、遅れて

司会役の男も入る。


次々と値段が上がっていく、その『商品』を

見て確かめるために、舞台上へと視線を移し―――


「……んん?

 立っているのは、両方とも女の子かの?」


「髪は短いですけど」


グローマー男爵とキーラ、男性陣は、

アルプとファジーの性別について把握

出来ないでいるも、


「2人とも男の子ね」


「間違いない。

 カガミにはわかる……!」


男には無い判断基準があるのか、一目見ただけで

性別を理解し、そして―――


「3000枚!!」


メルリアは勢いよく手を上げると、自らが

主催するオークションに参加する。


「キーラ兄!! 一生のお願いアレ獲って!!

 今度からお肉もちゃんと食べるからー!!」


「お前肉大好きだろう!!

 少し落ち着け!」


妹が兄に懇願し、混乱しながらもなだめる中、

一番の年長者である男爵が、一番年上である

女性の肩を小突き、


「こりゃ!

 主催者が乱入してどうするんじゃ!

 まずはいったんこの場を収めい!」


その言葉にメルリアはハッとなって、


「み、皆様!

 彼らは商品ではございません!」


彼女の言葉に、会場はざわつきながらも

トーンダウンする。


「商品じゃない?」


「じゃあ、いったい何なの?」


当然の疑問が口々にささやかれる中、

舞台の上の2人がおずおずと語り始めた。


「あ、あのう……

 僕たちは女神・フィオナ様の眷属です」


「今回は、そ、その―――

 話し合いにこの国へ来たんです」


アルプとファジーの自己紹介と目的の言葉の後、

会場は一瞬静まり返り、


「め、女神……だと?」


「でも、確かに―――

 現れる前に神々しい光と音楽が……」


「まさか、ほ、本物の神の御使い……!?」


「わ、我々は何て事を……!」


畏怖いふにも似た雰囲気が形成されつつある中、

眷属の少年2人は舞台から降りる。


それを見た客層の人間は身分関係無く、

一直線に道を開けた。


「落ち着いてください。

 僕たちはあくまでも話し合いに来たんです」


アルプの後にファジーは、奥にいたピンクの

ロングヘアーの女性を見つけ、


「……貴女がメルリアさんですね?


 お話がありますが、よろしいでしょうか」


名指しされた彼女は一瞬強張った表情になるも、

すぐに平静な態度となり、


「神様が……ですか。


 ここでは何ですから、こちらへどうぞ」


彼女の案内で、アルプとファジーは舞台のある

部屋から去り―――

後から男爵と獣人族の兄妹も同行した。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5349名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。

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