30・大人しくしてて。いやもう本当に
( ・ω・)健康診断で1日休んだので、
文章量が少しマイナス(決して増える
事は無い)
日本・とある都心のマンションの一室―――
家主と思われる少女がテーブルに座り、
足元ではペットと思われる猫が一緒に
食事を摂っていた。
自分の方の料理を食べ終えると、彼女は
足元の猫へ目をやり、
「んー、基本的にナヴィの食事って、
そんなに種類ありませんよね?
それだけで飽きないものなんですか?」
するとお目付け役は顔を上げて、
「野生動物ですと、毎回食べられるだけで
御の字ですからね。
それに私は時々、人間の姿になってフィオナ様と
一緒に、食事する事もありますし」
ふむふむ、と女神である少女はうなずき、
「でもナヴィって元々猫なんでしょう?
ママと暮らしてそれなりに長いわけですし、
そのローテーションでいいものなんですか?」
「主食であるカリカリや缶詰は、確かにそう
変わったりしませんけど―――
アルフリーダ様がオヤツにと買ってきて
くれる物は、結構種類もありますし
美味しいですよ」
フィオナはそれを聞いてふと思い出し、
「そうそう。
確かママがいくつか買い置きを……」
近くの棚へと移動し、下の扉を開けて
ナヴィの言っていたそれを取り出す。
「お、おお~……
本当に多いですね」
「焼きカツオ、ササミ、カニカマスライス、
ピューレスティックにシーフードバー、
サーモンスナック、まぐろタラバの
ドライフードその他、ですね」
その多種多様さに、ゴクリと彼女は喉を鳴らし、
「な、何かこう……
普通のオヤツとしても本当に美味しそう
ですね?」
「耐えてくださいっていうか、
それ食べたら神様としての尊厳どころか、
人として、女の子として守るべきラインを
大幅に超えますよ?
それじゃまだ理性のあるうちに、
本編スタートしましょうか」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「OH……」
『アンカー』たちとの会話が終わり―――
しばらく目を閉じていたフィオナは、キッと
見開くと第一眷属と第二眷属の少年に視線を送る。
「……アルプ、ファジー。
これから、貴方たち2人には―――
お母様の力でオリイヴ国まで行ってもらいます。
そして、その事についてですが」
2人だけでなく、周囲の人間も緊張しながら
女神の話の続きを待つ。
「正直、詳しい指示は出せません。
あまりにも急ですし、現場に言ってから
各自の判断で臨機応変に、としか……」
さすがにアルプとファジーも、えっ?
という表情になるが、彼女はさらに言葉を続け、
「ですが、眷属の責任はアタシの責任です。
2人は何も気にする事なく―――
心のままに行動してください。
(いざとなればママに土下座して
なかった事にするし!
ママに頼めばなかった事に出来るし!!)」
(フィオナちゃん。
私には心の声ダダ漏れよ?
まあ、本当にどうにもならなかった時は
そうするけど……)
アルフリーダは周囲に聞こえないよう、
娘に心に直接注意する。
「と、とにかくそうなれば―――
今後の行動のために、現状を把握して
おきましょう」
マルゴットが率先して口を開き、周囲も
同調して語り始める。
「オークション会場の施設には―――
先行してリオネルさんと」
「護衛としてビューワー伯爵様が行って
いるんですよね?」
ポーラ・メイ姉妹が確認も兼ねて質問する。
「現地に到着しているのは確実―――」
「……その『場所』への移転なら……
問題は……無い……」
シンデリン・ベルティーユ姉妹が後に続き、
「ただ、調整が出来ないんでしたっけ」
「つまり、細かい作戦は元より無理って
事だよな……」
ソニアとミモザも、改めて厳しい状況を把握する。
「フィオナ様、アルフリーダ様―――
わたくしも一緒に転移しては」
レイシェンの提案に、女神の母親は
首を縦に振らず、
「ここで作戦変更したところで、混乱する
だけだと思います。
どの道、もう確実に出来る事は何も
ありません。
それならば、流れに任せるのも手かと」
そう語りながら、アルフリーダはアルプと
ファジーに近付いて、
「まっ! なるようになるでしょう!
それに神様が責任取るって言ってるんだから、
思いっきりぶつかってきなさい!」
笑いながら少年2人の背中をパンパン、
と叩くと、彼らもつられて笑い出し、
「……はいっ!」
「やるだけやりましょう!
アルプ兄ちゃん!!」
元気の良い掛け声で覚悟を察し、フィオナが
母親に作戦決行を促す。
「ではお母様―――
『転移』をお願いします」
│ ■オリイヴ国 市内 │
│ ■奉公労働者オークション会場前 │
『転移』をする前に、最も現場に近い位置にいる
リオネル・バートレットに直接神託が繋がる。
「アルフリーダ様!」
「『転移』の準備は完了しましたか。
……はい。まだオークションは始まっていない
ようですが……」
そこで最後の状況確認と、最新の情報を
アップデートするために女神は問う。
「(内部情報は?
どんな感じかわかりますー?)」
それに対しリオネルが答え、
「連絡があるまで、可能な限り調べようと
しましたが……
警備が厳重で、近付く事は出来ましたが
内部までは。
それに、その……
情報をどのように申し上げればいいかと」
「(オーケーオーケー♪
貴方の記憶とリンクするわ。
それで『転移』先を指定するわね)」
こうしてアルフリーダはリオネルの記憶を
たどり、アルプとファジーを出現させる
場所の選定に入った。
│ ■奉公労働者オークション会場内・控室 │
一方その頃―――
控室では、商品であるはずの獣人族2名と、
『枠外の者』・『新貴族』が一緒にその時を
待っていた。
「ね、ね♪ キーラ兄♪
登場の仕方ってどういうのがいいかな?
やっぱり会場の後ろからダッシュで
舞台の上にピョーンって感じで」
「……何でそんなにノリノリなんだよ、
カガミ」
獣人族の少年はやる気満々の妹に困惑し、
「大人しくしてて。いやもう本当に」
「ほっほっ。
まあこれは行う事そのものが目的の
ようなものじゃし―――
少しくらい楽しんでもよかろう?」
メルリアが頭を抱える一方で、グローマー男爵が
カラカラと好好爺のように笑う。
そこへノックがされ、
「メルリア様。
準備が出来ましたが」
使用人であろう男が一人、室内に入って来て
オークションの開催を告げる。
「いいわ、始めてちょうだい。
最初は人間の優先権オークションから
行うけど、獣人族が目当てだから、
どうせ買い手はつかないでしょうけどね」
「つまり人間が終わったら、カガミの出番って
ワケだね!」
ガッツポーズのように構える少女を前に、
周囲は呆れと困惑の雰囲気に包まれた。
│ ■アルプの家 │
「ふむふむ。
多分こっちが入り口で……
大きな広間がありそうな空間があるわね。
ここなら2人いっぺんに転送させても
大丈夫かしら?」
リオネルの記憶を分析しつつ、アルフリーダは
『転移先』の候補を絞っていき、
「……よし!
じゃあ行くわよ、2人とも。
準備はいい?」
その言葉に、アルプとファジーはお互いに
抱き合い、
「この通り本も持ちました!
い、いつでもどうぞっ!」
「が、がんばりますっ!」
少年たちの声を合図のようにして―――
アルフリーダは『転移』を開始した。
│ ■奉公労働者オークション会場内 │
│ ■メイン舞台 │
「紳士淑女の皆さま!
大変長らくお待たせいたしました!
では、今回の目玉である……
獣人族のオークションを始めさせて頂きます!」
司会らしき人物の言葉に、来客はそれが目当てだと
いうように会場内が熱気にあふれる。
「おお、やはり本当であったか」
「こんな小国まで来たかいがありました」
「もし可愛いコがいたら……
文字通りペットにしたいわぁ♪」
そして、欲望の眼差しが舞台の上に注目すると、
「……ん?」
「何かしらアレ、霧?」
もくもくとスモークのような煙が舞台の下から
上がっていき―――
淡い光がその柔らかくその煙に反射する。
「オイ、何か聞こえないか?」
「何かしら……
聞いた事の無い、神々しい音楽が、
どこからか……」
そして舞台の上で、光のシャワーのような線が
何重にも降り注ぎ……
そしてその光が収まると―――
そこには、シースルーのような薄い布地の
衣装をまとった少年2人が、抱き合いながら
立っていた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5345名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
基本、土曜日の午前1時更新です。
休日のお供にどうぞ。