27・あれは健全な光景です
( ・ω・)今週は、素で祝日があるのを
忘れていたので、返ってマイペースで
執筆出来た(ガチボケ)
日本・とある都心のマンションの一室―――
お風呂上りと思われる少女が、年下の少年に
髪を拭きながら声をかける。
「出たわよー、ナヴィ。
貴方も入ってらっしゃい」
「そうでしゅね。それでは……」
女神の言葉に、お目付け役(人間Ver)は
イスから立ち上がる。
脱衣所へ向かう彼をフィオナは目で追いかけ、
それに気付いたナヴィは問いかける。
「何でしゅか? フィオナ様」
「あ、いえ何というか……
ナヴィって元猫だったんですよね?
それでフツーにお風呂に入るのが何ていうか」
上着を脱ぎつつ、彼は女神に向き直り、
「子供の頃から、アルフリーダ様にお風呂に
入れられていたからかも知れません」
「そっかー。
あれ? でも軍神は何も言わなかったの?」
父親が母にベタ惚れで―――
嫉妬ではないが、他の異性の気配に敏感なのを
知っている娘は疑問を口にする。
「基本的に、お風呂はユニシス様も一緒に
入っておられましゅたよ。
というかあの2人、家にいる時はほとんど
一緒じゃないでしゅか。
あと、ちょうどフィオナ様が神様の修行で
神殿を空けていた時期でしゅたので……
ご主人様は元より、ユニシス様にも
実の子同然に可愛がられていましゅた」
「あー、アタシも小さかった頃はそんなん
でしたね。
よく3人で入っていた記憶が」
ウンウンとうなずく彼女とは対照的に、
彼は遠い目をして、
「まあしょの後、いろいろと2人揃って
着せ替え……
もとい様々な水着を試されたものでしゅが」
「それじゃキレイに落ちが付いたところで―――
本編スタートしましょう」
│ ■オリイヴ国 ガルバン家 │
│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点 │
「ただいま戻りました」
「お疲れ様でしゅ、バートレットさん」
リオネル・キーラの妹であるカガミに対し、
何とかアルプ・ファジーを交渉させるという
方針が決まった翌日……
女神の指令を受け動いていた伯爵を、
その従僕が出迎えた。
「お疲れ様です、ビューワー伯爵様。
ナヴィ様も今戻られたばかりですので……
お話は落ち着かれた後で」
家主であるガルパンが彼らを気遣うが、
「いえ、それほど疲れてはいませんので」
「私もでしゅ。
取り敢えず、得た情報の報告だけでも―――」
そこで彼らは奥へと移動し、ひとまず情報共有
する事にした。
「まず、私からですが……
貴族階級との交流、特に女性を中心とした
ものですが―――
順調にいっていると言って差し支えないかと。
今のフラール国とほぼ変わらない国力なので、
数もそれほど多くありませんし」
ビューワー伯爵が話を始め―――
そこで一息入れる。
「……ですが、あのグローマー男爵が相手では、
けん制にすらならないと思われます。
男爵とはいえシフド国の名門―――
オリイヴ国の貴族にしてみれば、下手をすれば
王族以上の力の差がありますから」
悲観的ではあるが、彼は冷静に分析しつつ語る。
「まあしょのへんはけん制というより……
あくまでも女性層を味方に付けておく、という
考えでしょうね。
どうせろくでもな……
お考えは別のところにあるでしょうから、
気にしないでいいと思いましゅ」
とても従僕らしからぬ言葉が出てきたが、
2人は意図を読めずスルーして先を急ぐ。
「で、ではナヴィ様の方は?
何か新たな情報は」
ガルパンが恐る恐る聞くと、
「あのメルリアしゃんとかいう『枠外の者』に
ついてでしゅが―――
どうやら奉公労働者のオークション会場を
確保したようでしゅ。
後は周囲の『枠外の者』を、グローマー男爵が
抑えれば……」
ナヴィの報告に、2人の顔色がサッと変わる。
「時間はあまり無いようですね」
「す、すぐに国内の『女神の導き』のメンバーに
連絡を……!」
焦る2人に、ナヴィは追加で報告する。
「しょれともう1つでしゅが……
獣人族が捕らえられている―――
というより、集まっている場所を
見つけましゅた。
メルリアしゃんの屋敷から少し離れた、
小高い山があるのでしゅが、どうもしょこと
隠し通路か何かで繋がっているみたいでしゅ。
洞窟か地下施設かまではわからなかった
でしゅが、彼らはしょこにいましゅ」
「何と……!」
「確かにここは、住宅地より少し離れただけで
自然が豊富にありますからね。
ド田舎とも言いますが……
それはともかく、場所が割れたのは
大きいです!」
こうして情報が共有され―――
まずはナヴィからアルフリーダに、そして
夕方には神託を繋ぐ運びになった。
一通り話し合いが終わったところで、
ガルパンが周囲を見渡し、
「そういえば……
リオネルさんはどうしたのでしょうか?
確かナヴィ様と一緒に行動していたのでは」
「彼なら、獣人族のいる場所に張り付いて
もらっているでしゅ。
私はここの土地勘ないでしゅし―――
詳しい地点を把握してもらうという事で」
そこでひとまず話は終わり、伯爵とガルパンは
他の『女神の導き』のメンバーへ説明と連絡へ、
ナヴィは自分の主人と連絡を取る事にした。
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「ん? ナヴィ?
何かわかった?
……ほうほう。
奉公労働者のオークション会場が
押さえられたのと―――
獣人族のいる場所が判明したと。
情報収集はなかなか順調のようね。
わかったわ。
夕方、また各国と神託を繋ぐから」
まるで電話連絡のように情報共有を済ませると、
アルフリーダは娘のところへと向かう。
「フィオナちゃん?
今ナヴィから連絡が来て……」
と、そこで見た光景は―――
アルプとファジーが密着するようにその体を
押し付け合い、その周囲には娘とポーラ・メイ、
シンデリン・ベルティーユと二組の姉妹……
そしてミモザとソニア、レイシェンが遠巻きに
それを見守っていた。
「あ、あのっ、フィオナ様?
もっとですか?」
「アルプ兄ちゃ……ちょっと苦し……」
少年2人が抱き合いながらフィオナに質問し、
「恐らくあなた方はママの転移を受ける事に
なりますが……
正確な転移をするため、それは必要なのです。
もし転移中に何かあれば―――
離れ離れになったり、もしかしたら思いも
知らない場所へ飛んでしまうかも知れません。
なので、2人ともお互いを離さないように
してください!」
アルフリーダは『またアホな事を考えたな』と
生温かい目で見つつも―――
状況そのものは非常に好ましいものなので、
黙っている事にした。
「ハァハァ……
ふ、二人とも恥ずかしがらないで。
大丈夫、大丈夫だから……」
「……これは、正当な理由あっての事……
決して邪な考えはあらず……!」
シンデリン・ベルティーユ姉妹にもう1組の
姉妹も続き、
「て、転移ですから……
か、体を軽くした方が、いい、かも?」
「そ、そうですわポーラ姉さま。
もっと露出の多い……もとい、布地の
少ない衣装を……!」
第二眷属の姉であるミモザも口を開き、
「し、しかし……?
いやでもだけど必要なら……
それに、ファジーはアルプさんと一緒に
行動するのは初めてじゃねーし……」
アルフリーダは『そもそもあんたらも2人一緒に
転移させたはず』と冷静に思い出しつつも―――
その光景自体は大好物なので口を挟まない
事にした。
ふと、第一眷属の母、そしてミイト国の伯爵令嬢と
目が合い―――
「(ん~……母としては……
でも女性とくっついているわけじゃ
ないし~……)」
「(あれは健全な光景です。
やましいと思う人は心がやましいのです)」
と、それぞれの正当化する意見を聞いて、
否定も肯定もせず―――
ただウンウンとうなずいた。
│ ■オリイヴ国 市街地・メルリア屋敷 │
「やれやれ。
骨が折れたわい」
『新貴族』の一人、グローマー男爵は、
屋敷の女主人を前に一息ついていた。
「『説得』は上手くいったようですね。
そもそも、この国の貴族相手なら反論すら
無かったでしょうけど」
メルリアが自らお茶を注いで―――
男爵を労う。
「ほっほっ。
まあそういじめてやるな」
彼の反応に、彼女はそのピンクの長髪を
手ですかしながら、
「シフド国の、それも名家と言われる
男爵家―――
彼らにしてみれば、王族以上の権威でしょう。
ビューワー伯爵様もそれは理解しているはず。
なのに、どうして?」
力関係を分析した上で、それでもバートレットの
行動の真意がわからずに、彼女は疑問を口にする。
「わかった上で、勝負を仕掛けてきて
おるのだとしたら?
何か奥の手があるのかも知れんのう。
ほっほっほっ」
楽しむように笑うグローマー男爵とは対照的に、
メルリアは眉をしかめて苦笑した。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5323名―――