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25・恐らく耳が腐りましゅよ

( ・ω・)腐女子ネタが絡むと微妙にPV数が

上がるのは気のせいだと思いたい今日この頃。



日本・とある都心のマンションの一室―――


そこで家主と思われる少女と、ペットと思われる

一匹の猫が向かい合って座っていた。


「さて、前回の茶番―――

 何か言い訳はありますか?」


「何でいきなり尋問じんもんスタートしてるんですか?

 アタシ何かしましたっけ?」


ナヴィはフー……と長いため息をついてから、


「その罪、わからぬと申すか。

 ならばそれが二つ目の罪だ」


「罪って何!?

 いやホントに何したのかわからないん

 ですけど!?」


困惑して大声を上げるフィオナに、

静かにお目付け役は語り―――


「前回の茶番でフィオナ様は……

 バレンタインチョコを手作りして

 おられましたね?」


「そ、そうですけど……

 それが何か?


 そりゃ多少のトラブルはありましたけど、

 無事に終わって―――」


心当たりを必死で探す女神に、ナヴィは

体勢を不動にしたまま、


「お忘れではありませんか?」


「わ、忘れていたって、何を?」


フィオナが質問を返し、それに対し彼は

即答はせず―――

10秒ほど沈黙の時間が流れる。


「調理をしていたというのに……

 『残酷な描写あり』というタグを

 入れ忘れたでしょう」


「アタシの手料理ってR15なの!?


 いやそれよりタグはアタシの仕事じゃ

 ねーですよ!!」


反発する女神に、お目付け役はしばし

黙り込み、


「んー……

 確かにそうかも知れませんね」


「でしょでしょ!?

 だから別にアタシ悪くないでしょ!


 あ、でも……♪

 『今年のチョコはア・タ・シ♪』とか

 やったら一気にR18に……♪」


調子に乗るフィオナに対し、ナヴィは

両目を閉じて、


「どうせアルプ君の前に行ったら行ったで

 何も出来なくなるクセに」


「そそそそそそんな事ありませんよ!?

 アアアアタシとアルプは一心同体、

 いいいいつでも自然体で……!」


『ああ、今年もダメだこりゃ』という目で

ナヴィは聞き流し、


「それじゃ、そろそろ本編スタート

 しますね」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「う~ん……」


アルプ家のリビングで、マルゴットが

テーブルの上に突っ伏すようにしてうなり、


「まあ、そうなりますよね……」


「……意外と……

 調達……困難……!」


シンデリンとベルティーユが、姉妹揃って

苦境を口にする。


「まさか、こんな落とし穴があったとはねー」


「絵だから、絵描きさんさえいれば、何とか

 なると思ったんだけど」


女神母娘も現状確認と同時に、その困難な状況を

認識する。


「絵描きはその、いるにはいるのですが」


ソニアが言いよどむように語り―――


「ほとんど男性ですからね」


「わたくしたちが望むモノを、描いてもらえる

 かと言うと~……」


ポーラとメイもその難しさを話す。


文明が中世レベルのこの世界において―――

芸術はそれなりに発達しているものの、

男女同権とかはまだまだ先の話であり、


ましてやそれが、芸術性イコールお金が

かかり、商売相手は貴族や地位の高い人間に

限られているとなると……

条件は相当厳しいものであった。


「わたくしも肖像画を描いてもらった事が

 ありますけど……

 その時の画家はやはり男性でしたし。


 女性の画家―――

 この世界にいるのでしょうか」


貴族であるレイシェンの言葉が、

その難題の重さに拍車をかける。


「とにかく、次善策を講じましょう。

 原本はある事ですし」


「じゃ、じゃあアタシ、アルプとファジーを

 呼んできまーす」


アルフリーダの後にフィオナが席を立つが、

同時にメイとミモザも立ち上がり―――

その後、夕方の定期連絡である神託の時間まで

待機する事になった。




│ ■オリイヴ国 市街地・メルリア屋敷  │




同じ頃―――

『枠外の者』の屋敷で、そこの女主人は男爵位の

男性と対峙していた。


「その話、本当ですか?」


「ほっほっほ。

 間もなく、お前さんの手の者からも

 同じ報告が届くはずじゃよ」


白髪がほとんどを占める髪をぽんぽんと

叩きながら、老人は話す。


「あの伯爵様が……ねえ。

 『枠外の者』と敵対しているのは事実だけど、

 方々の貴族に―――


 だけど何でそんな無駄な事を?

 こんな弱小国、ワタシの息がかかっていない

 貴族なんて皆無なのに」


ピンクの長髪を手でこよりのように

ねじりながら、メルリアは考え込む。


「それが、どうも―――

 貴族当人ではなく、奥方に贈り物をして

 気を引いているようじゃな」


同室にいた獣人族の少年と少女が、ピク、と

耳を立てて反応する。


「あの人が?

 女好きには見えなかったけどなあ」


「キーラにいは甘い!

 オスなんて、みんな女好きなんだからねー」


「お前何才だよカガミ……」


兄妹の会話を横目にしつつ―――

グローマー男爵は話を続ける。


「ただの女好きなら、まだ良いがのう」


「……どういう事ですか?」


メルリアの質問に、男爵はグラスに口を付け、


「あのご面相じゃ。

 頼み事をされたら、どんなご婦人でも

 断れないのではないかな?


 妻からのお願いに夫が弱いのは、どんな国でも

 同じ事じゃて」


「……!」


もちろん、ビューワー伯爵はそこまで考えて

おらず、ただ女神・アルフリーダからの指示に

従っているだけなのだが―――


そんな事を彼らが知る由もなく、ただ時間が

過ぎていった。




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │

│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




「ううむ……」


「何でしょうなあ」


夜半になり、定期連絡である神託が終わった後の

『女神の導き』の拠点では―――

バートレットとガルパンが揃って頭を抱えていた。


「男は一時、話し合いから外れて欲しいと

 言っておられましたが……

 一体、どのような事を考えているのでしょう?」


リオネルは、不審とまでは言わずとも困惑し、


「まあ、聞かない方がいいでしゅ。

 恐らく耳が腐りましゅよ」


「?? 腐る?」


ナヴィの答えを、男性陣は理解出来ず……

彼は続けて、


「まあ、今回の件は女性主導で行う事に

 なりそうでしゅので―――


 我々は、いつでもサポートに出れるように

 しましょう」


その言葉に、同じ室内の3人の男性は

頭を下げた。




│ ■アルプの家          │




夜半になって、アルプ家のリビングでは―――

2人の少年がようやく会話に参加していた。


「『女性しか見てはいけない本』ですか」


「神様の世界には、いろいろな神器が

 あるんですね」


アルプとファジーの純真無垢な感想に、

女神の母娘は目をそらし、


「いやいや、まあ―――

 見ちゃダメって事は無いんですけどぉ」


「ちょっとこっちの世界を見るのは、

 もう少し分別がついてからって事で」


アルフリーダとフィオナの説明に、2人の少年は

きょとんとした表情を見せる。


「あ、あの。それより解決策を探しませんと」


マルゴットが話を元に戻し、


「ボガット家にも頼みましたけど、女性限定で

 画家というのは難しいでしょうね」


「あたいも聞いた事ねーしなあ」


レイシェンとミモザも、天井を見ながら

呆れ気味に話す。


「トーリ家にも伝手が無いわけじゃないけど、

 ん~……」


「……かと言って、今から絵を勉強……

 現実的じゃない……」


シンデリンとベルティーユも難色を示す。


「お父さんのお仕事で一度聞いた事があるけど、

 たいていは貴族のお抱えだったし」


「職人でも女性って珍しいもんね」


メイとポーラも、その難易度をしみじみと語る。


「ですが、この本をこのまま使うわけにも

 いかないんですよね?


 最低でも、1冊分だけでも写す事が出来れば

 良いのですが」


ソニアがほぅ、と軽く息をつきながら本を

手にする。


「あれ?

 お母さんは読めるの、それ?」


「女性なら普通に持てるし、読む事も出来るわ。

 ただ、これはこの世界に置いていけないもの

 らしいから……」


母親から説明を聞いたアルプは口に手を当てて、


「フィオナ様。

 それ、貸してもらう事は出来ないんですか?」


「おぶぅえっ!?

 だ、だからアルプにはまだ早い―――

 じゃなくて見せられなくてっ」


突然の申し出に彼女は慌てふためくも、


「いえ、そうではなく―――

 この本の写しを用意したいんですよね?


 それならば、その……

 ただ単に『貸し出す』だけにするって

 いうのは?」


「あ、そうか。

 アルプ兄ちゃ……アルプさんが言いたいのは、

 あくまでもただ『見せるだけ』にして―――

 その場で返してもらえばいいって事だよね?」


続けてファジーもサポートするように語り、

それに対しフィオナは、


「天才ですか2人とも!?」


と絶賛した後、母親の方へと振り向く。

そのアルフリーダは両腕を組んで、


「んんん~……

 かなりイレギュラーになると思うけど……


 でもまあ、逃げ道としてはいけるわね。


 『たまたま』持ってきたBL本が、

 『偶然にも』誰かが読んでしまうという、

 『予想外の事が』あったとしても……」


両目を閉じ、真剣そうな表情で考え込む女神は、

数秒後に目を開くと、


「……アリね。

 最後の手段として取っておくわ。


 さすがはフィオナの第一眷属。

 本当に優秀よ、あなた。


 この件が片付いたら、いずれご褒美を

 差し上げないと……

 これからもフィオナをお願いするわね」


「は、はいっ!!」


こうして、最終手段が決まり―――

後に平行して、本の量産手段が協議された。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5295名―――



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