24・ですよね! まずそこですよね!!
( ・ω・)仕事はソシャゲーのシナリオ
なので、時々自分の小説と登場人物や
ギャグが混ざる(危険)
日本・とある都心のマンションの一室―――
そこには少女が、20才くらいの青年男性に
手料理を振る舞う姿があった。
「ガキン、バキン、ベキ……ッ。
おかしいな、チョコレートってこんな
歯応えあったっけ?」
「ウン!」
軍神の疑問に、女神は即答し―――
そこへ通りかかったお目付け役(猫Ver)が、
思わずツッコミを入れる。
「ユニシス様。
そういう時は胸ぐらをつかむんです。
フィオナ様もフィオナ様で―――
躊躇なく息をするようにウソつくんじゃ
ありません」
ナヴィの登場に、2人とも視線をそちらへ向け、
「い、いやいや……
そもそも試食なんだし、失敗した事に対して
怒るわけにはいかないよ」
「……まあ、見たところ素材も市販の物を
使っているみたいですし。
また異形の物でも生み出すよりは進歩して
いるとは思いますが」
(5章15話参照)
男性陣は、かつてバレンタインで―――
フィオナがカカオ豆から作った植物型の
モンスターに思いを馳せる。
「ア、アタシだってしょっちゅう
生命を創造しているワケでは無いんですよ!
それにアレだって、結果的には役に立ったで
しょーが!」
「まあアレほど、怪我の功名という表現が
ピッタリくる物はありませんでしたからね。
……そういえば家の冷蔵庫に、まだアレ
保存してましたっけ?」
その言葉に、彼女は天井を見上げて、
「んー、どうでしょう?
ウチの冷蔵庫結構大きいですし、奥に
しまっちゃったままになっているかも」
「ママがフィオナに作り置きするようになって、
大きいのに変えたからね」
と、まず娘が立ち上がって冷蔵庫に向かい、
その後ろに父親と猫が続く。
「確か冷凍庫に……えーっと」
フィオナが上の冷凍庫のドアを開けて
中をのぞき、
「…………」
無言で何事も無かったかのように閉めた。
「……フィオナ、中はどうなっていたんだい?」
「ハハハハ、別ニ何モアリマセンデシタヨー?」
汗びっしょりのフィオナを、いつの間にか
人間Verになったナヴィが取り押さえ、
「目が泳ぎまくっているでしゅね。
ユニシス様、お願いしましゅ」
「ああ」
それまでのサラリーマンのようなYシャツから、
彼は戦闘モードの鎧の姿になる。
「いやー!! 本当に何でもないのー!!
お願いママには内緒でー!!」
「しょんな事よりまずこの地球の心配を
するでしゅよ!!」
暴れる女神、抑えるお目付け役、その彼らの前で
『戦闘』は10秒ほどで終了し―――
5分後には、両手に異形の物の束を抱えた
ユニシスがいた。
「じゃあ僕はこれ持って天界に戻るから……
もちろんママには言わないでおくよ」
「ありがとうパパ~!!」
「本当に娘には甘いんでしゅから……
しょれではそろそろ、本編スタートしましゅ」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
アルプ・ファジーの少年2人が部屋を去り、
残されたのは女性陣のみ―――
そして彼女たちは女神が持ちんだ本を
食い入るよう読んでいた。
「え? こんなふうになってるの?」
byマルゴット
「おふぅ……これは……♪」byポーラ
「ポーラ姉さま、その本も早く♪」byメイ
「いや待て……ファジーのはもう少し」
byミモザ
「そ、そうよね……
この大きさは誇張されているのよね!?」
byシンデリン
「で、でもアルプのは……
あの人に似ているのだとしたら、将来……」
byソニア
「……足りない……
もっと……ハードなものを……!」
byベルティーユ
「こ、この絵の表現……!
これが神の領域……!」
byレイシェン
それを側らで見ていた女神の母娘は
小声で話し込む。
「(いやアレ、ママが聖地で買い漁った
薄いBL本ですよね?)」
「(何?
私の厳選したお宝に文句でもあるの?)」
「(むしろママの選択にハズレは無いから
そこは信頼度MAXなんですけど……
あの、そういうのって確か……
別世界から持ち込んじゃいけないって
話じゃ)」
自分の担当する地域・世界でもあり、珍しく
正論で心配するフィオナに、
「(もちろん、そのままこの世界で売ったり、
大量に持ち込んだりしたら問題だけど……
例えば私たちの衣服だってそのままでしょ?
裸で来るわけにはいかないんだし。
そしてその服を見て、こちらの世界の人が
真似したり作ったりするのはOKなのよ)」
フィオナとアルフリーダが小さな声で
話し合うのが気になったのか、マルゴットが
2人の方へ振り向き、
「あ、あの……
大変良く出来た本だと思うのですが……
これを私たちに見せた理由は何でしょうか?」
「ですよね! まずそこですよね!!」
フィオナが同様の疑問を持つ同士を見つけた
かのように、同意の言葉を述べる。
「そうですね。
まずは直接見てもらった方が早かったと
いう事と……
私の考えを聞いてください―――」
アルフリーダの言葉に、同室の同性の視線が
一気に集まった。
│ ■オリイヴ国 ガルバン家 │
│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点 │
一方その頃―――
自分の主である女神から指示を受け取った
ナヴィは、リオネルと共に行動を開始しようと
していた。
「ナヴィ様、女神様のご指示は何と?」
明らかに外出の準備をする2人に、バートレットは
声をかける。
「情報の精度を高める、でしゅね。
もし奉公労働者のオークションを行う日時を
知れたら、即座に連絡出来るように―――
また、カガミしゃんともいつでも接触
出来るようにと言っておりましゅた」
「そういえば、カガミにはまだ直接会って
なかったんでしたっけ。
まずはアイツや他の獣人族が待機……
もとい、捕まっている場所を探しましょう」
身支度を整える彼らに、伯爵が近付き
「私に対しての指示はありませんでしたか?」
「『女神の導き』も―――
助力を惜しみません!」
そう胸を張るガルパンに対し、
「ビューワー伯爵様は貴族として、
『枠外の者』の動きを……
それと出来れば女性の人脈を確認しておいて
欲しいとの事でしゅ。
『女神の導き』も―――
女性陣にいつでも動けるよう、声をかけて
おいて欲しいと」
奇妙な注文に、2人は一瞬顔を見合わせるも、
「わかりました」
「仰せのままに」
こうして―――
それぞれが行動を開始した。
│ ■オリイヴ国 市街地・メルリア屋敷 │
「ふー……」
「疲れた顔してるね、メルリア」
屋敷の主人である女性に、獣人族の少年が
心配そうに声をかける。
「やっとオークション会場押さえたと
思ったら……
『枠外の者』の連中がやれ詳しい情報を
教えろだの、目玉商品は何だのと……」
「……お疲れ様」
メルリアはソファの背もたれに背中を押し付け、
天井を見上げるようにしながら、
「そ~思っているんならぁ~……
ちょっとお願い聞いてくれない?
『メルリア様、ボクが貴女の癒しに
なりますので』―――
とか言いながら優しくギュッてしてくれたら、
疲れも吹っ飛ぶと思うのよ」
「…………」
ちょうどその頃、彼らの部屋を訪ねる影が一つ。
彼女は室外の廊下で何か大きな音がしたのを
確認すると、慌ててドアを開けた。
「キーラ兄?
何か今、でっけー音が聞こえたような。
……で、何でこのおねーちゃんがソファで
仰向けに倒れてるの?
しかも何か幸せそうな表情で」
「いや、ボクにも何が何だか……
こうしてってお願いされた事を、
その通りにしただけだよ?」
嬉しそうに気を失ったメルリアを見ながら、
兄妹は首を傾げた。
│ ■アルプの家 │
同時刻―――
アルフリーダから説明を受けた女性陣は、
改めて渡されたBL本に目を通していた。
「文字はわかりませんが、挿絵のみで構成
されているような物ですから―――
それに、これだけ種類が豊富であれば、
何かに引っかかる可能性はありますね」
レイシェンがいったん本を閉じ、他の人間の
女性たちもうなづく。
アルフリーダが話した事とは―――
カガミの嗜好に合う薄い本を提供し、
それで兄であるキーラと獣人族を懐柔、
少なくともオークションから彼らを切り離す、
という作戦であった。
だが、フィオナは額に人差し指をあて、
「ただ問題は―――
この本を直接、貴女たちやカガミさんに
渡す事は出来ないの。
本来、別世界の物を持ち込む事自体、
神々のルールに抵触するのですから」
「っ、じゃあどうしてこの本をあたいらに
見せたんだ?」
反発するミモザに、アルフリーダが視線を向け、
「落ち着いてください。
確かに、持ち込む事も渡す事も本来は
出来ないのですが―――
こうして見た物を、こちらの世界で再現させる
事までは禁じられていません。
もしそうなら、神々の像や絵も描けない事に
なります」
すると、商人組であるマルゴット、シンデリン、
ベルティーユが立ち上がり、
「つ、つまり……」
「この絵を模倣、そして」
「……量産、させれば……?」
次いでポーラとメイも、
「カガミさんに対して絵は必要ですが、
一定以上の教育、そして文字を読める客
相手ならば―――」
「物語という体裁を取って、小説として……!」
すると、家の主であるソニアも話に加わり、
「植樹でいうところの種……
つまり原本が必要ですね。
まずはこちらにある本をそっくり、
複製する事から始めましょう」
そして神・人間問わずうなずき―――
意思の統一が成された。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5291名―――