23・絶対に振り返るんじゃないぞ
( ・ω・)現在、週3本連載しているけど、
金曜日までに帰宅後の作業で仕上げて、
土日はゆっくりと更新だけやる、
という夢を見たんだ。
日本・とある都心のマンションの一室―――
ペットと思われる猫を前に、一人の少女が
向かい合って座っていた。
「ですからね?
人の意識って、一つしか無いじゃないですか。
地球の世界の最新の研究では……
同時にいくつもの事を出来る人って、
それは一緒に処理しているのではなくて―――
高速で意識の切り替えを行っている
らしいんですよ」
神妙な顔つきで説明するフィオナに、
お目付け役(猫Ver)のナヴィはふむふむと
うなずき、
「つまり、処理出来るのはあくまでも
基本的に一つの事だけなんです。
ましてやそれが、自然現象という突発的な
事態まで加わった時―――
処理能力を超えるのは仕方が無い事だと
アタシは思うんです」
一通り女神の話を聞いた後、ナヴィは
話を頭の中で整理し、
「えーとですね、それが―――
お出かけする際に……
まず雨が降ってきたからと傘を持ち出し、
その後サイフを忘れたからと言って取りに
戻ってきた後―――
今度は傘を忘れ、それを持って行ったと
思ったら、最後に家のカギを忘れたと言って
戻ってきた理由でしょうか」
「気付いただけエラいと思いません?」
フィオナの言葉に、彼は軽く一息ついて、
「何度も出たり入ったりするので、何事かと
思いましたよ。
物忘れって老化現象の一つですから、
気を付けてくださいね」
「もー、そこまでイジワルそうに言わなくても
いいじゃないですか!
何とか目的は達成出来たわけですし」
毒舌のお目付け役に、女神は抗議して返す。
「まあいいです。
無事に用事も済んだのであれば―――
……さすがに何かまだ忘れていませんよね?」
「ハハハ何言っているんですか!
課金用の電子マネーだって買ってきたし
まさかこれ以上……
あ、ヤベ。
ママから言われていた、マンションの
契約更新の書類出し忘れた」
それに対し、ナヴィは大きくため息をついて、
「相変わらず優先順位が本能というか欲望に
忠実ですね……
これ以上言い訳なんか聞きたくねえって
感じで、とっとと本編スタートしましょう」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「フンフン、新しい物好きと……
それなら何とかなるかも知れないわね」
リオネルの意見を聞いたアルフリーダは、
神託を繋いでいる各国へ呼びかけ、
「ちょっと若い女性陣に来てもらいたいん
ですけど、大丈夫かしら?」
│ ■オリイヴ国 ガルバン家 │
│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点 │
女神の突然の申し出に、マルゴットが
焦りながら、
「あの、でも私は今……」
「(あー大丈夫大丈夫。
深く考えないで答えてくれればいいから)」
「は、はい。
お呼びとあらばすぐにでも」
「(んじゃ次はポーラさん?)」
│ ■バクシア国・首都ブラン │
│ ■ボガッド家屋敷 │
いきなり話を振られた第二眷属の少女は、
「え!? えーと―――
シモン君と一緒……はお仕事でダメよね?」
「いや女性って言ってるだろ」
若い男女が戸惑っていると、初老の女性が
口を開き、
「あの、集まるのでしたら―――
こちらのお屋敷を提供しても」
「(あ、場所は基本的にどこでもいいん
ですけど、取り敢えずアルプ君の家に
集まってもらおうかと)」
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
そして第二眷属の姉は―――
「いや行ってもいいけどさ。
ファジーは連れてくよ?」
「ミ、ミモザ姉!
わがままを言っちゃ」
それに対する答えはすぐに返ってきて、
「(別にいーわよ?
100人や200人で無ければ)」
その答えを聞いて、姉弟は口をポカンと開け、
│ ■アルプの家 │
「あとついでだから、あの姉妹さんと
『ミイト国の剣姫』さんだったかしら?
素質のある人も呼んでおきましょうか」
と、今度はフラール・ルコルア・バクシア以外の
国へ女神は神託を飛ばす。
│ ■ミイト国・首都ポルト │
│ ■シンデリン(トーリ)家屋敷 │
「(ねぇちょっと。
今ヒマかしら?)」
「ぶべっ!?」
「……!?」
「……直接、頭の中に??」
いきなりアルフリーダから神託を受け取った
姉妹と従者の少年は、周囲を見渡す。
「(あ、ごめんなさい。
私、フィオナの母、アルフリーダといいます。
ちょっと協力して欲しい事がありまして。
お時間頂けるかしら?)」
シンデリンは吹き出したお茶をぬぐいながら、
「神託ってスゲェな! じゃなくて、
突然そんな事言われましても。
こちらも多忙な身でありますゆえに?」
すると神託は今度はネーブルに向けられ、
「(少年よそれは本当でしょうか?)」
「しばらくは私だけでも大丈夫でしょう。
基本的な事務処理は自分がやってましたから」
「(ん、じゃあ―――
シンデリンさん、ベルティーユさんには
来て頂くとして……
ネーブル君、1日1回は神託を繋いで
様子を知らせるから)」
「……えーと?」
話がうまく飲み込めない彼を置いて―――
彼女は今、自分がいる国に神託を飛ばす。
│ ■フラール国・バクシア国代官館(改2) │
「(レイシェンさん、聞こえます?)」
「えっ!?
ははは、はいっ!?」
シッカ伯爵令嬢はバーレンシア侯爵の隣りで、
飛び上がらんばかりに驚いて声を上げる。
「ど、どうしたの?」
「あ、あの……」
どう説明したらいいものか困惑していると、
説明対象にも声が届き、
「(あ、バーレンシア侯爵さん?
いつもフィオナがお世話になっています。
母のアルフリーダといいます。
レイシェンさん借りて行きたいんですけど、
いいでしょうか?)」
すると彼は戸惑いながらも、
「えっと……神様の母上、でしょうか。
は、はあ……
あの、まずは彼女の意思確認を……」
そこでレイシェンの同意を取り付け、
また他国へ神託を繋ぐ。
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
「ええと、アルフリーダさんかい?
戸締りを済ませてから行くから……」
「(あ、いいんですよー。
すぐ『来て』もらいますから)」
「??」
その言葉に、ミモザとファジーが顔を
見合わせると……
「わっ!?」
「うわ……!」
彼らの体を―――
彼らだけではなく、アルフリーダが声をかけた
全員の体がまばゆい光に包まれた。
│ ■アルプの家 │
同時に、アルプの家のリビングが光輝き、
「あら?」byマルゴット
「え?」byポーラ
「はい?」byミモザ
「ここって……」byファジー
「ちょっと!?」byシンデリン
「……む……」byベルティーユ
「ここは!?」byレイシェン
5人の女性と1人の少年が状況を確認し、
その事実に気付いた順に困惑の声を上げた。
│ ■オリイヴ国 ガルバン家 │
│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点 │
「!?
グ、グラノーラ(マルゴット)さんが
消えた!?」
うろたえるビューワー伯爵を、ナヴィが
落ち着かせるために声をかける。
「マルゴットしゃんなら、アルフリーダ様に
呼び出されて―――
今、アルプ君の家にいましゅ。
ポーラしゃんや、トーリ財閥の姉妹も
いるみたいでしゅね」
「転移魔法、ですか……
遠く離れた地で言葉を交わすだけでも
想像を超えているのに―――」
ガルパンが、目の前で女性が消えたという
事実に、目を丸くして驚き、
「それで、その……
今後、わたしめどもはどのように動けば」
不安そうに語るリオネルに対し、ナヴィは
何かに気付いたように視線を上げて、
「んー、ちょっと待ってくだしゃい。
アルフリーダ様から指示が来てましゅ」
│ ■アルプの家 │
「あー、うん。それでね。
確か『新貴族』の新顔―――
グローマー男爵とやらが来ているのよね?
多分、その協力か調整で時間が多少かかると
私は見ているのよ。
で、ナヴィとリオネルさんに頼みたい事が
あって―――
オークションとやらをするには、少なくとも
場所を抑えなければいけないわ。
それがわかれば噂を流す時もわかる。
とにかくそれを調べて、分かり次第連絡を
ちょうだい」
突然、人を転移させた事に驚く面々を置いて、
まるで女社長かやり手のビジネスウーマンのように
アルフリーダはテキパキと伝達する。
「さて、と……」
一通り采配が終わったのか、今度は『呼び出した』
女性陣と娘に向き直り、
「貴女たちをここへ召喚したのは他でも
ありません。
女神でも何でもなく、同性として―――
協力して欲しい事があるからです」
すると彼女は、何も無い空中に手をかざすと、
そこから人差し指で曲線を描くようにして、
テーブルの上まで移動させる。
その指先に視線が集中している中―――
『物質』が出現した。
「……本……でしょうか」
「これはいったい―――」
と、マルゴットとポーラが手を伸ばそうとした
瞬間、フィオナが慌てて、
「ちょちょちょちょっと待ってママ!
あのあのっ、けけけ眷属に」
「あら、そういえばアルプ君とファジー君が
いたわね。
二人とも、別室へ行ってくれないかしら」
アルフリーダの言葉に、第三の眷属は首を傾げ、
「あのー、わたしも眷属なんですけど」
「えーっと……
正確には、女性以外が見てはいけない
性質の物なので。
いえ、見ても別に直接害は無いんですが」
アルフリーダも説明に困っているようで、
それを見たミモザがふと本を手にし、
「タダの本じゃ無いんですか?
おお、こりゃスゴい精巧な絵が……ん?」
数ページほどペラペラとめくっていくと、
彼女は静かに本を閉じ、ファジーに近付いて、
「?? 何、ミモザ姉?」
「ファジー、ちょっと部屋から出て行くんだ。
アルプさんも一緒に……
いいか!
絶対に振り返るんじゃないぞ! 絶対だぞ!」
「??」
意味を理解出来ず、ただ指示には従い少年2人は
部屋を退出し―――
後には、状況を飲み込めない女性陣が残された。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5286名―――