22・それは宇宙の法則すら乱しまくる
( ・ω・)ここでの一言を考えるのに、
結構時間がかかる事がある(無能)
日本・とある都心のマンションの一室―――
家主と思われる少女が端末を手に真剣に
集中する中―――
ペットと思われる猫が部屋に入ってきた。
「はぁ、はぁ……
あ、あと1時間、1時間で季節限定イベが
終わる……」
「まだやっていたんですかソレ。
ていうかもはやライフワークですね。
何というか、エサより遊びに夢中な
実験マウスのようです」
ソシャゲーのイベントをこなしているのであろう
女神を見て……
お目付け役(猫Ver)は諦め気味に語る。
「何を言っているんですか……
食事はしないでも死にませんけど、
コレやんなかったら死んでしまいます」
「もはや生命維持装置ですね……
ていうか、今やっているそれって
いわゆる乙女ゲーですよね?
アルフリーダ様にも言える事なのですが、
そういうのって浮気というか―――
相手(候補含む)がいるのにいいんですか?」
するとフィオナは、勝ち誇ったような
表情になり、
「ふっふっふ……
わかっていませんね、ナヴィ。
確かに乙女ゲーとは逆ハーレム世界……
いかにイケメンイケオジ美少年と仲良く
なれるかを疑似体験するもの……!
しかし、視点を変えれば事実は一つでは
無いように―――
別の側面を持っているのです」
「ほう、それはどのような?」
ナヴィの問いに、女神は鼻息を荒くして
詰め寄り、彼の胴体を持ち上げて、
「これだけの美形さんが揃っている中でですね
誰と誰を組み合わせるかという妄想の材料を
提供してくれているのですよそれはもう一体
何通りのシチュが楽しめるかというそのため
にキャラの攻略というものを」
「申し訳ありません私が悪かったです。
本当に勘弁してください。
それではそろそろ、本編スタートしますね」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「あ、あの……
初めまして、アルフリーダ様」
「こんな狭い場所で申し訳ありません」
フィオナの第一眷属の少年とその母が恐縮
しながら、その女性を前に頭を下げる。
腰まで伸ばされたロングヘアーの金髪、
豊満な肉付きのボディでありながら、ウエスト
ラインの曲線は細く―――
身に付けている衣装は暖色系で地味だが、
それすら引き立たせる魅力を全身から
漂わせていた。
「ン。まあそこまで緊張しないでください。
私は娘の頼みに応じて来ただけですから」
│ ■女神:アルフリーダ・ルールー │
│ ■時と成長を司り、見守る女神 │
フィオナの母であり、同じく女神である
アルフリーダは、彼らの挨拶に対し返礼として
軽く会釈する。
そして同室にいたもう一人―――
メイの方に視線を向けると、
「あなたがフィオナちゃんのお友達で、
アルプを取り合っている恋敵のメイちゃんね?」
「いっ、いえそんな!
取り合うなんて」
女神であり母である彼女のプレッシャーに
押されてか、メイは思わず否定するも、
「いいのよ♪
神様だって人間だって、そこは関係ないわ。
遠慮なく奪い合いなさい。
それなくして、愛は勝ち取れないのよ!
でもウチのフィオナちゃん、土壇場で
ヘタれる子なのよねー。
もーちょっと積極的にならないと……」
グッと拳を握り締めて力説するアルフリーダに、
娘がおずおずと先を促す。
「あ、あの、アタシの恋愛は置いておいて
ですねっ。
……そういえばママ、ずいぶんとその、
静かな登場の仕方でしたけど」
アルフリーダが降臨を引き受けた後―――
日時と場所を指定し、次の日にはアルプの家を
訪ねて来たのだが……
普通にドアをノックして訪問してきた彼女に、
誰もが拍子抜けしたような表情を浮かべた。
「ン?
空から降ってきた方が良かったかしら?
ま、それは冗談だけど……
ただでさえフィオナちゃんが天界に
目を付けられているんだもの」
苦笑しながら話すアルフリーダは、娘である
フィオナに目配せする。
「(まあだから―――
あんまり派手に動けないのよねー)」
「(は、反省してまーす……)」
しかし人間側は、神側とは微妙に違う認識で、
「(そうだ、確かフィオナ様は―――
信者のため、僕たちのために……)」
「(天界から目を付けられてもなお、
必要以上に介入して……)」
「(身近にいるから神様っぽくないと
思ってしまうんだけど……
実際はとんでもない重責に耐えて
いるのよね……)」
神と人間の食い違う状況把握の中、
アルフリーダは手を軽く上げると―――
指をパチンと鳴らし、
「さ、始めましょうか」
その途端、神託に集まった関係者全員の
耳に、彼女の声が届いた。
│ ■オリイヴ国 ガルバン家 │
│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点 │
「……えっ!?
こ、これは……」
「ア、アルフリーダ様、なのですか?
でも私たちは眷属でも無いのに」
オリイヴ国にいた、バートレットと
マルゴットが驚きの声を上げ、
「私にも聞こえます。
これは―――」
「わたしめにも……!
これがナヴィ様の主人であられる、
アルフリーダ様の声、そして力……!」
ガルパンとリオネルも同様に、驚きと感動の
声を漏らす。
これまでは―――
あくまでも眷属を通してでしか、フィオナや
ナヴィの言う事は伝えられなかった。
それが、直接そのまま伝えられるという事を
眷属以外が経験・実感し―――
「アルフリーダ様―――
全員に神託を繋げたのでしゅか。
まあ、あの方ですからこの程度は、普通に
出来てしまうのでしょうが」
従僕であるナヴィも、改めて主人の能力を
思い知っていた。
│ ■バクシア国・首都ブラン │
│ ■ボガッド家屋敷 │
「ちょ、直接お声が頭の中に……」
「私までいいのかしら……?」
ボガッド夫妻がうろたえていると、
アルフリーダがさらに続けて、
「(構いません。特にご夫妻には、
ウチの娘の眷属が―――
すごくお世話になっているのを知って
おりますので。
あとポーラさん、だったかしら。
活躍は娘から聞いております。
これからもフィオナを支えてあげて
くださいね)」
女神の母親から名指しされ、第三眷属の
少女は思わず立ち上がる。
「ははは、はいっ!
仰せのままに!」
「神託ってこういう事か……
実際に頭の中に声を届くってスゲェ……」
シモンが興奮気味に語る中、今度はまた
別の国へ神託が届けられる。
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
「うわ、これが神託ってヤツか」
「ボクはフィオナ様やナヴィ様で慣れて
いるけど……
ミモザ姉は初めてだもんね」
第二眷属であるファジーとその姉は、
アルフリーダからの神託を聞いて感想を交わす。
「(あなたたちの事も娘から聞いています。
ミモザさん、幼い弟のためによく頑張って
きましたね。
フィオナに取られないよう、これからも
頑張ってね♪)」
「え? ええ??
い、いやー……はい」
アルフリーダからの突然の言葉に、ミモザは
否定せず、ファジーは顔を真っ赤にして押し
黙った。
│ ■アルプの家 │
「さて、あいさつはこれくらいにして……
本題は、カガミちゃんの事だったわね?
リオネルさん、キーラさんの妹だという―――
そのお嬢さんをどうやったら大人しく
させられるか……
フィオナを教育した私にアドバイスして
欲しいと」
全員がただコクコクとうなずく中、娘だけは
不安そうに母を見つめる。
「(……な~によぅ。
『アンカー』だか何だか知らないけど、
呼んだのはフィオナちゃんでしょう?)」
「(そ、それはそうなんですけどぉ……
出来れば穏便にっていうかぁ)」
娘とのアイコンタクトを済ませると、
アルフリーダは人間サイドに向かって、
「でもまあ、お子様だし。
好きな物で釣るとか、それとも罰として
禁止するとか―――
いろいろ手はあると思うわよ」
「そ、そういうものなんでしょうか」
アルプの母ソニアが、きょとんとして
聞き返す。
「その辺は人間も神様も獣人も同じよ。
自分の子供の時を思い出してみれば
わかるでしょ?
そうね―――
例えばフィオナちゃんだと確か……」
みんなが興味津々で耳に神経を集中させると、
「えっと、男の人の『NOOOOOO!!』」
「それとアダルト『キイエエエエエエ!!』」
「あとコスプレ『だらっしゃああああ!!』」
アルフリーダが何か話そうとする度に、
フィオナの雄たけびが聞こえ―――
それは神託を繋いでいる人全員に直撃した。
「ちょっとー何よフィオナちゃん。
もう、さっきから大きな声出して」
「あ、アタシの個人情報は死んでも死守する……!
それは宇宙の法則すら乱しまくる覚悟」
母娘の何やら壮絶な争いの嵐が過ぎた後、
アルフリーダは話の方向を変える。
「まあいいわ。
でね、リオネルさん。
カガミちゃんの好きそうな物って
わかるかしら」
│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点 │
妹の事を聞かれた兄は、少し困った表情となり、
「うぅ~ん……
アイツは昔から好奇心のカタマリで―――
ある意味、何にでも興味は示すのですが、
飽きるのも早いんですよ。
ですので、常に新しい物を求めてどこかへ
勝手に行ったりするので……」
「(フンフン、新しい物好きと……
それなら何とかなるかも知れないわね)」
各国の人間は彼女の次の言葉に注目するため、
その耳に改めて神経を集中させた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5280名―――