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20・そこまでの要求はしてないでしょ

( ・ω・)そういえば年越しネタを書くのも

3回目ですが、年期を重ねると、前年や

通年と比較するネタが使えるという

メリットが発生します。


日本・とある都心のマンションの一室―――


女神・フィオナのお目付け役であるナヴィが、

珍しく人間Verの姿で、大量の手紙や小包を

前に奮闘していた。


「ふー、さすがにこれだけあると

 疲れましゅね……」


「ん? なになに?

 どーしたのこの荷物」


そこへ主筋であるフィオナが部屋に入り、

彼の様子をたずねる。


「天界市役所や、ルールー家関連の方々から

 送られてきた物でしゅよ」


「これ全部ナヴィ宛なの?

 でもどうして」


女神の疑問にお目付け役はフー、と一息ついて、


「私の神様昇格のお話があった時以来……

 挨拶やらお祝いやらで―――

 いろいろ来るんでしゅよ。

 (3章25・26話参照)


 まあ将来を見越して、今のうちに

 つながりを持っておこうとしている

 だけかも知れましぇんが」


「へー。

 ね、アタシには何か来てませんか?」


「どうでしょうか。

 まだ分別はしていましぇんが……

 私宛以外の物もいくつか見ましゅたよ」


そこでフィオナはナヴィと一緒に、

荷物の仕分けをしてみると―――


「おお!

 これはアタシが発注した推しキャラの……!

 あと応募したのもいくつか当たってます!!

 こいつぁ新年早々幸先いいぜ!」


「まあそんな事だろうと思いましゅたけど。


 しょれと市役所から―――

 『なるべくフィオナ様を大人しくさせて

 おいてください』

 と遠回しの文面が来ているので、

 こりぇからもきちんと見ていきましゅよ。


 しょれではそろそろ、本編スタートしましゅ」




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │

│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




「えーと、つまりリオネルさんの弟、

 キーラ様よりも……」


「その妹、カガミさんの方が問題、と

 いう事でしょうか」


バートレットとマルゴットとは、複雑そうな

表情で獣人族の少年に問い質す。


「今まで全く騒ぎになっていなかったのは、

 恐らく自分を売りさばく時を待っている

 だけでしょうね……


 アイツに取って人間の人さらいとは、

 『見知らぬ土地に勝手に連れて行って

 くれる道具』に過ぎませんから」


あまりの言い様に、その場にいたリオネル以外が

顔を見合わせる。


「でしゅが―――

 連れて行かれて、しょれで大丈夫

 なんでしゅか?」


「キーラさんに会った事はありますが、

 さらにそれより年下となると―――

 しかも女の子の身で、遠い土地で……」


当然の疑問をナヴィとガルパンは口にするが、

リオネルは首を左右に振り、


「獣人族特有の帰巣本能がありますから、

 どこに連れて行かれても戻って来ます。


 今までその、言えなかったのですが……

 今回捕まったのはわざとで、ただキーラの

 後をついて行っただけではないかと」


被害者とばかり思っていた獣人族に、

とんでもない爆弾が混ざっていた事に―――

4人はしばらく両目を閉じてうなっていた。




│ ■オリイヴ国 市街地・メルリア屋敷  │




「どうして出てきたんだ!?

 ていうか、他の獣人族が見張っていた

 はずなのに……


 まさかそこも壁やドアを破壊してきた

 ワケじゃないだろうな」


キーラは妹であるカガミを前に叱るように

質問するが、


「そんな事してないよー。


 ただ天井に小さな窓があったから、

 そこから出てきただけー」


金色を薄くしたような色のツインテールを

ふるふると左右に振りながら、彼女は答える。


「確かに、天井に明り取り用の小窓は

 あったと思うけど……

 どれだけの高さがあると思って」


額に手をあてて、ハー……とメルリアは

ため息をつく。


「ほっほっ。

 元気なお嬢ちゃんじゃのう」


グローマー男爵は、カガミの前で彼女の

目線と同じになるように足を曲げる。


「カガミはいつでも元気だよー♪

 ねー、おじいちゃんはどこか連れてって

 くれるのー?」


「来てもいいが……

 大人しくしてくれるかのう?」


そこでカガミは腕組をしながら両目を閉じ、


「え? カガミに死ねって言ってるの?」


その瞬間、ダッシュでメルリアが彼女を抱え、

別の場所までラグビーのタッチダウンのように

運ぶ。


「そこまでの要求はしてないでしょ!!

 何なのこの子!?」


さらに部屋に何人かの獣人族が入ってきて、


「あ! カガミ、やっぱりここにいたのか!」


「頼むから隠れ場所に戻って!

 あなたが暴れると獣人族と人間族の

 関係が……!」


複数の獣人族に説得&拘束され、ツインテールの

少女はしぶしぶ部屋を出て行った。


そして後には―――

嵐が過ぎ去ったのを確認するかのように、

3人のため息が残された。




│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




「では、キーラしゃん以外の獣人族の姿が

 見当たらなかったワケは……」


「恐らく他の獣人族が総出で、カガミのヤツを

 止めているんでしょう。


 人間族との極端な関係悪化は、どの獣人族も

 望むところではありませんので」


話を聞いていた、フラール国の伯爵と商人が

そこで割って入り、


「止めているって……

 獣人族の中でも、まだ幼い少女ですよね?」


「同じ獣人族の中にいれば、それほど問題に

 なる事はないのでは」


楽観的―――というよりも常識的な観点に

則って、2人は語る。


「人間族の方々から見れば、さほどの脅威は

 無いと考えるのも無理はありませんが……


 例えばですね。

 戦闘はともかくとして、ナヴィ様ほどの

 身体能力を持った『幼児』―――


 それが好き勝手に動き回るとしたら?」


例えに出された少年と、家の主はそれを聞いて

考え込む。


「たいていの建物や施設に取って―――

 警備は意味の無いものになるでしゅね」


「そ、それだけではありません。

 子供というのは、大人が想像もしないところに

 入り込んだり潜り込んだりするもの……


 獣人族並みの身体能力で体が小さいと

 いうのは、逆に選択肢を広げます」


リオネルは大きく息を吐きながら頭を下げ、


「それが興味本位と好奇心で動き回る

 ワケです。


 並みの人間の大人など―――

 相手にすらならない腕力を持って。


 ……普通の獣人族の子供は警戒心が強く、

 親元から離れようとはしないのですが、

 なぜかアイツだけは昔からやんちゃで、

 父も母も手を焼いていて」


バートレットとマルゴットも息を飲み、


「それはまた……」


「何と言いますか……」


それ以上2人の言葉は続かず―――


「しかし、しょんなダイナマイトが

 獣人族の中にいりゅとは……


 こりぇはちょっと、助けがいるかも

 知れましぇんね」


「助け、ですか?」


リオネルの問いに、ナヴィはうなずき、


「ちょっと、専門家の助けを借りて

 みるでしゅ」


彼はそう言うと―――

無言で神託を繋げ始めた。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




ぷるぷるぷるぷる……


「……お?」


アルプの家で待機していたフィオナの

髪の毛がまとめて数本直立して振動し―――

それに気付いて声を上げる。


「ハイもしもし、こちらフィオナです」


(いつからマナーモード搭載したんですか。

 便利でしゅね。


 ちょっとお話しゅたい事が

 ありましゅて―――)


「いいですよ。

 アルプとソニアさん、あとメイさんも

 呼んできますので、ちょっと待ってください」


そこでアルプの家にいる人間は一通り、

リオネル・キーラの妹であるカガミの説明を

受けた。


「……なかなか香ばしいキャラが

 いたもんですね」


(キャラ言うな。

 そこで、ソニアさんに質問なんでしゅけど)


「?? 私に、ナヴィ様が?」


第一眷属の母親は首を傾げ、聞き返す。


(いえ、ソニアしゃんにはすでにアルプ君という

 一子がおりましゅが……

 彼がワガママを言ったり、言う事を聞かない

 時はどうしてましゅたか?)


アルプは顔を赤らめて下を向き、それを見て

フィオナとメイはなぜか鼻息を荒くする。


「ええと……

 もともとアルプはそれほど手のかからない

 子でしたし―――


 父が亡くなってからは、よく手伝って

 くれましたので、むしろ母の私としては

 申し訳ないといいますか」


恥ずかし気にうつむくアルプを見て、少女2名は

お互いに肩を組んでガッツポーズを取る。


(そこ、遊んでいるんじゃないでしゅ。

 でも困りましゅたね……

 そもそもアルプ君は女の子でも無いし、

 当てはめるには無理がありましゅたか。


 ……メイさんはどうでしゅたか?

 自分がワガママした時とかは)


「あわびゅっ!?」


いきなり話を振られた彼女は、思わず

飲んでいたお茶を吹き出す。


「えええええいやーそのー、わたくしは

 姉とは違い品行方正で通っておりました

 のでねえ家もそれなりにお金ありましたし」


「ああ、確かお父様が徴税官の……

 お役人の家では、そこまで無茶なワガママは

 出来ないでしょうしね」


ソニアが助け船を出すように、メイに同調し、

ようやく立ち直ったアルプが口を開く。


「そ、それと―――

 お話を聞く限りでは、カガミさんのような

 デタラメっぷりの人は、そうそういないかと」


(ふーみゅ、言われてみりぇば……


 でも女の子で、人間外の力や常識を超えた

 力で、幼少時代を送ってきた人としょの

 母親となりましゅと……)


ナヴィが悩み、みんながそれを共有する中、

あ、とアルプが頭を上げる。


「……ン?

 どうしたんですか、アルプ?」


そこで、フィオナ以外の視線が―――

彼女に集まった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5258名―――



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