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19・むしろアイツが一番の危険物

( ・ω・)明けましておめでとうございます!

本年も皆さまに取って良いお年であります

ように・・・



日本・とある都心のマンションの一室―――


そこで家主と思われる少女と、そのペットで

あろう猫が向き合って座っていた。


「今年の年末年始は―――

 というか年始はいつ神殿じっかに帰るんですか?

 フィオナ様」


お目付け役(猫Ver)は、首を傾げながら

主筋であるフィオナに話しかける。


「んー、まあね。

 それに年末年始って言っても地球こちらの世界の

 事だし……

 あんまり天界には関係無いっていうか」


「それは確かに」


ペロペロと毛づくろいを始めるナヴィに、

フィオナはフー、とため息をつき、


「あと、

 『聖戦の日と年末年始は帰ってくんな』って

 ママに言われてるし」


「ろくでもない日本文化を順調に導入して

 いますね」


それを聞いた女神はごろん、と横になり、


「まー仲悪いよりはマシだと思うしか

 無いよねー」


「そうですねえ。

 ……ン?」


自身の持つ端末の振動を感じたナヴィは、

人間Verになって、メールの受信を

確認する。


そこには―――

『差出人:ユニシス

 件名:お願い

 内容:どんな理由でもいいので4日には

 帰ってきて体がもたない』


 という文面があった。


「?? どうかしたの、ナヴィ」


フィオナの質問に彼は顔を上げると、


「あ、いえ。

 お世話になっている天界市役所の

 方かりゃのメールでしゅた。


 しょれではそろそろ、本編スタート

 しましゅ」




│ ■オリイヴ国 市街地・メルリア屋敷  │




『枠外の者』の拠点―――


そこで女主人は自国の男爵を交え、フラール国の

伯爵と会談を行っていた。


「バートレット・ビューワー伯爵……

 だったかのう。


 名はシフド国にまで知れ渡っておるよ。

 バーレンシア侯爵と共に」


「これはどうも……

 しかし伯爵とはいえ下位国の貴族。


 グローマー男爵殿の足元にも及びません」


まずは貴族同士が互いに挨拶を交わす。


「それで?

 別に世間話をしに来たわけじゃ

 ないでしょう?」


『枠外の者』であるワタシの屋敷に、

わざわざ来たんだから―――

という言葉をメルリアは飲み込む。


「……まあ、確かに―――

 私がくつろげる場所ではなさそう

 ですけどね」


「ほっほっほ。そうかの?


 だが世の中というものは、表と裏が

 ぐるぐる変わる。


 いろいろな事を知っておいて、

 損は無いぞ?」


好好爺こうこうやのように屈託なく笑う男爵に―――

伯爵の方はそのポーカーフェイスを崩さず。


「それで……

 さっきから部屋の向こう側に、こちらを

 伺う気配があるのですが」


「……!」


メルリアはその言葉に思わず扉へ振り返る。

するとノブが回され、獣人族の少年が姿を

現した。


「気配は消していたつもりだったんだけどねー。

 なかなかヤルじゃない、おにーさん。


 それに、ちょっと前に屋敷に来たおにーさんの

 匂いもするね。

 宿泊場所が同じなのかな?」


ナヴィが何度かここを調査した事があるのを

知っていた彼は、驚くそぶりも見せず、


「確かに、彼と同じ場所を拠点としています。


 ……恐らく、こことは対極―――

 いえ、真逆のところに。

 ・・・・・

 そういう事だと覚えておいてください」


遠回しに、しかしハッキリと敵対する事を

匂わせ、伯爵は席を立つ。


「ほっほっ。お手並み拝見といこうかのう」


それを男爵は微笑で―――

メルリアとキーラは愛想笑いで見送った。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「それであの、先日のナヴィ様のご用件は

 どんなものだったのでしょうか」


「昨夜の神託の時も、特に触れられた

 ご様子は無かったので……」


仕事が一段落した後のリビングで、家の主である

母子がそれぞれフィオナに話しかける。


「え!?

 あ、あの~別にたいした事では無かったと

 言いますか」


フィオナは目が泳ぎながらも、何とか受け答え、


「そ、そうでしたね。

 こちらに対する、何か変わった事は無いか

 みたいな感じでしたっ」


同時にメイも、フィオナとは正反対の方向へ

視線を泳がせながら話す。


「まあ、本格的な仕事の準備や仕込みも

 終わりましたし―――

 しばらくはいつでも動けるように、

 この農場で待機していてくださいませ」


アルプは2人のぎこちない態度が気になるが、

母のソニアは何かを察したかのように、話を

切り上げた。


母子が部屋を出ていくと、溶けるように

フィオナもメイもテーブルの上に上半身を

投げ出し、


「ふへえ……

 今後、アルプの作った、もしくはくれた物に

 関しては休戦しましょう」


「そーですねえ……

 まさかあれほどお説教されるとは

 思いませんでした……」


実は昨夜の神託の後―――

ナヴィはフィオナを通し、彼女とメイに

キツく説教をしたのである。


「しかし結構厳しい方だったんですね、

 ナヴィ様……」


「ウン。

 ママの従僕でアタシのお目付け役っていう

 側面もあるからねー……」


ここでメイは初めて、フィオナに同情にも似た

念を抱く。


「やっぱり神様ってのはスゴいんですね。

 ある意味尊敬しますよ、わたくし」


「でもまあアタシの場合は直接ナヴィの声で

 説教されていたから―――

 いわば美少年の生声で責められ続けていた

 ワケでハァハァ」


「前言撤回。

 わたくしの尊敬を返せ」


同年代の少女の話し合いは―――

母子が戻ってくる足音がするまで続けられた。




│ ■オリイヴ国 市街地・メルリア屋敷  │




ビューワー伯爵が屋敷を出た後―――


屋敷の主であるメルリア、そしてキーラ、

グローマー男爵の3人はまだ同じ部屋にいた。


「それで、男爵様。

 同業者の事はどうやって黙らせて

 くれますの?」


「焦りなさるな。

 取り敢えず、奉公労働者のオークション、

 まずはこれをやらねばなるまいて」


キーラも会話に参加し、


「そーいえばさ。

 獣人族はともかく―――

 人間の『商品』っていたっけ?」


彼の質問に、メルリアはアゴのラインに

指を添えて悩む。


「本当にやるとは思ってなかったのよ。

 場所は押さえてあるんだけど……


 人はお金さえ出せば、何人かエキストラ

 雇えるでしょ」


彼女の言葉を聞いて、男爵はトントン、と

テーブルを軽く人差し指で叩き、


「いや、こういうのに金に困った連中は

 使えんよ。

 たいていはそういうところからボロが

 出るからのう。


 獣人族は揃えておるんじゃろ?

 いざとなれば、彼らだけでオークションを

 行う事も考えておくがよい」


「えぇえ~……

 でもアレは売り物じゃないんですけど」


メルリアの答えを彼は理解出来ず、


「のう、そこの獣人族の少年。

 彼女はいったい何を言っておるのじゃ?」


「僕にも時々わかんないんだよねー」


同性同士、顔を見合わせ―――

彼女の悩む姿をただ黙って眺めた。




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │

│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




「今、戻りました」


「ビューワー伯爵様!

 それで……」


彼の帰還にまずガルパンが詰めより、


「メルリアの屋敷にグローマー男爵が

 おりました。


 あちら側、というのは間違いなさそうです」


彼の言葉に、マルゴットが眉間にシワを寄せて、


「代々続く名家で保守派として知られている

 はずなのに―――

 何かお考えあっての事でしょうか」


「それはこれからの動き次第でわかるでしょう。


 それと―――

 妹さん、カガミさんの姿は残念ながら

 確認出来ませんでした」


伯爵の視線の先には―――

キーラの兄である、リオネルの姿があった。


「そうでしたか……

 アイツ……大丈夫かな」


「ナヴィ様もおりますし、何よりフィオナ様の

 加護があるはずです。

 きっと無事に戻ってきますよ」


「私も何度か屋敷には行きましゅたが……

 おしょらくキーラしゃん以外の獣人族は、

 どこかにひとまとめにされている可能性が

 高いでしゅ。


 まずはしょこを突き止めましゅよ」


心配そうな顔をするリオネルに、マルゴットと

ナヴィは慰めるように声を掛けるが、


「いえ、アイツの身の心配は全く全然

 これっぽっちもしていません。

 むしろアイツが一番の危険物というか」


「「「「え?」」」」


リオネル以外の全員が、疑問の声を上げた。




│ ■オリイヴ国 市街地・メルリア屋敷  │




「事情はわかったが……

 別に、形だけでも獣人族に出てもらった方が

 いいと思うんじゃがの」


その頃―――

理由を聞いた男爵は、メルリアを説得していた。


「で、でも……

 形だけでもやって、それで本当に

 売れちゃったりしたら……


 せ、責任が……」


「責任?」


グローマー男爵に取って、予想外の単語が

出てきたと思うと同時に―――

部屋の中を轟音と振動が支配した。


「キーラにい! いるー!?


 アレ何だろこのドア。

 手前に引いたら壊れちゃったんだけど」


「そういう場合は押すんだバカ!

 これで何度目だカガミ!!」


突然現れた、まだ7、8才くらいの

ツインテールの少女に―――


メルリアは目を伏せ、男爵は目を丸くして

出迎えた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5251名―――




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