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17・その神様目線はちょっと

( ・ω・)この小説書き始めて、

もう3度目の冬なんだなあ(遠い目)



日本・とある都心のマンションの一室―――


そのリビングで、ペットと思しき猫が、

ソワソワしながら室内を歩く。


それを見つけた飼い主と思われる少女が、

声をかける。


「?? どうしたんですか、ナヴィ。

 トイレ?

 それならアタシが一緒に―――」


「ナチュラルに下ネタとセクハラの

 ハイブリッド技をかますな。


 いえ、今年もそろそろあれを出しても

 いい頃だと思うのですが」


女神に対してお目付け役は下から見上げ、

例年の提案をする。


「アレ?

 ……ああ、コタツですね」


「そうですそうです!

 かなり寒くなってきましたし、もう設置しても

 いい頃なのではないかと」


ナヴィの要望に、フィオナは口元に人差し指を

あてて、んー、と考え、


「でもウチのマンション、エアコン完備ですよ?

 そんなに極端に暑くなったり寒くなったりは

 しないんじゃ……」


「わかっておりませんね。

 あれは猫に取って神器とも呼ぶべきもの……


 それにフィオナ様も、一度コタツに

 入ったら―――

 なかなか出てこれなくなったじゃ

 ないですか」


彼の指摘に、女神は少し反発し、


「いや、ナヴィと一緒にしないでください。

 少なくともアタシはフツーに過ごせますよ?」


「ほう?

 それなら、実際にしてみたらいかが

 でしょうか?」


挑発するようなお目付け役に、彼女はそれに

乗って、コタツを用意した。


「さ、準備出来ましたよ。

 入りましょう、ナヴィ」


「望むところです!」




―――3時間後―――




「……もういい加減出てきませんか?

 水分補給くらいしませんと」


そこには、うつ伏せで首までコタツに入る

フィオナと、それと向き合うナヴィの姿が

あった。


さすがに長時間コタツから出てこない

女神に、彼は心配して声をかける。


「えぇ~……

 でも水分取らなきゃトイレ行かなくても

 いいし」


「どうしてそう全力で後ろ向きなんですか。

 というかお約束過ぎて、もう」


完全にダメになっているフィオナに、

ナヴィはやれやれというように、

人間の姿になる。


「お? どうしたのナヴィ、

 人間の姿になって。

 その姿のままコタツ入ったら密着するから

 さっさとこちらへさあ早く」


「本当にブレないでしゅね……

 今、飲み物を持ってきましゅから、

 しょれ飲んだらコタツから出て

 くだしゃいね。


 しょれではそろそろ、本編スタートしましゅよ」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「わかった、話すよ。

 情報屋に取って、『カウンター』ってのが

 どういう事か―――」


情報屋・ミモザの言葉に女神・フィオナは

耳を傾ける。


「カウンターって単純に言っても、いろいろ

 あるんだ。

 シンプルにカウンターって言うのなら、噂を

 誤魔化す・もしくは否定するパターンだな」


「……単純に、そんな事はないって言うだけじゃ

 ダメなの?」


第二眷属であるファジーが、姉の言う事に

疑問を持つ。


「否定すると返って疑うのが人間ってものさ。


 あれだけ必死に否定しているのは、やましい

 事があるからだ―――


 否定しなければならない何かがあるのだ。


 何せ噂ってのは根拠の無い事だからな。

 完全否定は返って傷を広げる場合が

 あるんだよ」


まだ子供のファジーにはわからないのか、

首を傾げるが、彼女はそれに構わず続ける。


「もうひとつ―――

 多分こっちの方が有効だ。


 別の噂をでっち上げる事」


それを聞いて、弟は息を飲んだまま姉を

見上げた。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「フム。つまり……


 単に噂を否定するのではなく、

 『そんな事は起きてませんよー』的な

 新しい噂を流す、という事ですか」


フィオナは第一眷属の家の寝室で一人、

ミモザの考えを理解し、返答する。




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「そういうこった。


 もともと噂なんてのは根も葉もないから

 噂なんだ。

 あっちがでっち上げるなら、こっちも

 やって悪い事はねえ。


 もっと言えば―――

 相手の噂に便乗して、さらに膨れ上がらせて

 無効化させるって手もある」


ミモザのその話に、フィオナはさらに

食い入るように聞く。


(膨れ上がらせる?

 そんな事、どうやって―――)


「例えが悪いけれど―――

 ナヴィ様がさ、


 『大貴族の屋敷に潜入して、金庫から

 何らかの書類を持ってくる』なら……

 可能だと思えるかも知れない。


 でも、『王家の宝物殿に忍び込んで、

 誰にも気付かれずにお宝を盗んでくる』

 までいっちゃうと、さすがに話が大き過ぎて

 信憑性が薄れるってワケよ」




│ ■アルプの家          │




「あーでも、ナヴィならそれくらいは

 出来そうな気が」


(いや、その神様うえから目線はちょっと

 置いといてくれ。

 あくまでも例えだから……)


女神の感想に人間の情報屋がツッコみ―――

話を続ける。




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「まあ要は、でっち上げにはでっち上げを……

 それも相手を上回るような事をしろって

 いうのが、情報戦でいうところの

 『カウンター』さ。


 ただ……」


ミモザは、それ以上の言葉を飲み込み―――

ファジーも両目を閉じて黙っていた。




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │

│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




「ふぅ、ただいまでしゅ」


一通りの調査を終えたナヴィは、ひとまず

拠点であるガルパンの家へと帰ってきた。


「お帰りなさいませ、ナヴィ様」


「何か動きはありましたか?」


まず家の主、そしてマルゴットが出迎え―――

彼はその場にいないメンバーに気付く。


「あれ?

 バートレットしゃんはどこへ」


「ビューワー伯爵様なら、この地の貴族へ

 挨拶回り……

 という名の聞き込みに出かけております」


それを聞いたナヴィは、口元に手をあてて

少し考え、


「ふみゅ。

 しょれなら、情報の裏が取れるかも

 しれましぇんね」


「―――!

 という事は、何かあったのですか?」


そこでナヴィは、まずこの地の『枠外の者』の

屋敷で拾った情報について共有し始めた。




│ ■オリイヴ国 市街地・メルリア屋敷  │




「あーもー、あーもう」


わかりやすくイライラしている屋敷の主が、

室内をうろつき回り、それを獣人族の少年が

注意する。


「……何してるのさ、メルリア。


 さっき来た連中の言ってた事?

 ただのお客さんじゃないの?」


キーラが軽い感じで聞くと、キッとした目つきを

眼鏡の奥からのぞかせ、彼と対峙する。


「『新貴族』が絡んできたのよ、今頃……


 今回ばかりはワタシが、『枠外の者』

 だけで事を運ぼうと思ってたのに。


 下手に協力関係にあるだけに、

 無下に断れないのよ~……」


近場のイスに座り、そのままぐったりと

上半身をテーブルの上に伏せる。


「??

 協力関係にあるのに、何で困ってるのさ?」


「大人の世界には、いろいろあるのよ」


彼女の言っている事が理解出来ない少年は

きょとんとしたまま、屋敷の主をながめていた。




│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




1時間ほどして―――

ビューワー伯爵が、ガルパン家へと戻り

4人は合流した。


そしてナヴィは、フラールにいる女神へと

神託を要請し、ここにいるメンバーだけで

いったんすり合わせを行う事になった。


「……やっぱり、伯爵様の話からしゅると」


「シフド国からグローマー男爵が来ているとの

 事です。

 『新貴族』と見て間違いないでしょう」


その話に、ガルパンは考え込む。


「しかし―――

 これまで情報網には、『新貴族』は

 引っ掛かりませんでした。


 それがなぜ今になって……?

 メルリア令嬢が呼び寄せたのでしょうか」


すると伯爵が片手をスッと前に差し出し、


「いや、メルリアの財閥がどうこう出来る

 相手では無いと思う。


 グローマーは男爵位ではあるが―――

 シフドではもう何代も続く名門中の名門……」


「でもそうだとすると、貴族の中では

 伝統保守……

 急進的な『新貴族』とは無関係では

 ないかと思われますが」


マルゴットが疑問を挟むと、今度はナヴィが、


「メルリアしゃんのお屋敷を調べてきたの

 でしゅが―――

 どうも彼女に取っても、突発的な出来事

 だったらしいのでしゅよ。


 むしろ、どんな目的で来たのか……

 まじゅはそこを知る事が先決だと思いましゅ。


 ……ところでフィオナ様。

 そちらの話はどうなりましゅたか?」




│ ■アルプの家          │




「え? あ? だ、大丈夫ですよこの商談

 何としてでも契約までこぎつけますから」


急に話を振られた女神はあたふたと

挙動不審になり、それを流れるように

お目付け役はスルーして、


(どこの営業だお前は。


 聞いてなかったようで何よりでしゅ。

 しょれで、『アンカー』に意見を

 求めたんでしょう?

 どうなりましゅた?)


そこでフィオナは、ミモザから聞いた事も

含めて、彼らに説明した。




│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




一通り女神から話を聞いた彼らの反応は―――


「しかし、その」


「女神様にそのような事をさせるのは、

 恐れ多いと申しますか」


ガルパン、バートレットが消極的に意見を

語る中、フィオナは―――


(確かに、卑怯と言う人もいるでしょう。

 汚いと言えるかも知れません。


 でも信者に取っては、例えどんな手段を

 使ってでも―――

 守ってくれる神の方がありがたいでしょう。


 それを汚名と言うのであれば、アタシは

 一向に構いません)


「フィオナ様……」


マルゴットが祈りを捧げるようにひざまづくと、

他の男性2人も同様に両ひざを床に付けた。




│ ■アルプの家          │




しかし、そこへナヴィが直接フィオナの心へ

語り掛け、


(……お前はこれ以上どうやって汚れると)


「だまらっしゃあっっっ!!!」


最後に、フィオナの叫び声が響き―――

いったん神託は閉じられ、夕刻の定期連絡を

待つ事になった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5230名―――



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