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14・あんなのでも一応残念な事に

( ・ω・)投稿直前でキーラとリオネルを

素で間違えていた事に気付く。



日本・とある都心のマンションの一室―――


ベッドに横たわる家主の少女の前に、

お目付け役(人間Ver)が座り……

心配そうに顔をのぞきこむ。


「……熱は落ち着いたみたいでしゅけど、

 顔の赤みがなかなか取れましぇんね」


「不思議ですねー(棒

 どうしてですかねー(棒」


不思議そうに問いかけるナヴィに、半ば投げやりな

感じでフィオナは返す。


「それにしても、人間の薬がそのまま効くとは」


「神様モードを切っているアタシって、ただの

 美少女だしー」


いつもの調子で返してくる女神に、お目付け役は

半ば呆れ、半分は安心する。


「よーし、こうなったらアタシ、いろいろな薬を

 試してみようかしら」


「ハイハイ、治してからにしてくだしゃい。


 しかし、今回のは粉薬でしたけど……

 液体の物とか、病院だと注射までいろいろある

 みたいでしゅねえ。


 変わったところだと、座薬とか」


そこでフィオナの耳がピク、と動き


「ざやく??」


「直腸……お尻から直接入れるタイプのお薬が

 あるんでしゅよ。

 熱が酷い時とか、まだ子供の患者しゃんに

 使われるらしいでしゅ」


すると、彼女の口元が歪み―――


「そっそおですかぁ、熱が酷い時に……

 こいつはまた素敵な情報ありがとうございますぅ♪」


「急に元気になりやがりましゅたね」


「アタシの半分はやらしさで出来ています」


「後の半分はやましさですねわかりましゅ。

 ていうか開き直りゅな。


 そりぇではそろそろ、本編スタートしましゅ」




│ ■オリイヴ国 市街地・メルリア屋敷  │




「何言ってるのか全然わかんない。

 いい加減、もったいぶってないで話してよ」


『枠外の者』の一員の屋敷で、その主人を前に、

獣人族の少年が、ふてくされた態度を隠そうとも

せずに話す。


「神サマのお話、信じてる?」


聞き返すメルリアに、キーラはふるふると首を振る。


「そうよねえ。それがフツーの感覚だわ。


 けれど―――

 そうとしか思えない事をあちらはしてきた。


 奇跡の果実を生み出し、廃れた鉱山を回復させ、

 最近じゃマービィ国で仕掛けたクルーク豆の

 暴落を食い止めるどころか逆転させた。


 ・・・・・・・・

 ありがたい事にね」


銀髪の巻き髪を少し揺らし、キーラは首を傾げる。


「それって、メルリアのお仲間が被害受けたんじゃ

 ないの?

 それがどうしてありがたいのさ」


隣り同士、ソファに座っていたメルリアは、

少年の方を向くと同時に、倒れ込むようにして

膝を枕に仰向けになる。


足はソファの肘枠に投げ、キーラを見上げながら

彼女は話を続ける。


「どんなカラクリかわからないし―――

 本当に神サマかも知れない。


 だけど、起きた事は『事実』。


 それを聞いた信者や信奉者たちは……

 どんな期待や希望を持つと思う?」


「…………」


「でもこの事は、逆に弱点にもなる。


 神サマだから、勝ち続ける。

 神サマだから、解決して当たり前。

 もしそれがどこかで、一度でも―――」


メルリアを見下ろしながら、キーラは先を促す。


「……つまり?」


「情・報・戦♪


 今までの『枠外の者』や『新貴族』とは―――

 違うやり方でワタシはやるわ。

 特等席で見ていてね、キーラ」


そう言うと彼女は手を上げて、少年の頬を撫でた。




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │

│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




「―――以上の事から、ナヴィ様が危惧されている

 通り、誇張もしくはかなり神聖化されて伝わって

 しまっているかと」


翌日、ナヴィは滞在先である彼の家で、この国における

女神・フィオナの評判を改めて聞いていた。


「あれでもあんなのでも一応残念な事に神様だから、

 神聖化はいいんでしゅけど―――


 でもそうなりゅと、失望した時のダメージは

 計り知れないでしゅよ」


「失望など、そんな!

 今回もまたこうして、『枠外の者』たちの計画を

 阻止するために動いてくださっておりますのに。


 全面的に、我々も協力いたしますし」


ガルパンの言葉に、ナヴィは眉間にシワを寄せて、


「でも、相手の動きは見えないんでしゅよね?

 その上、奉公労働者のオークションという情報だけは

 出回っている。


 私の考えに間違いが無ければ……

 ちょっと厄介な事になりそうでしゅ。


 ……獣人族の方は、もう意思統一は

 出来ましゅたかね」


ナヴィはガルパンに獣人族のところへ行くと言って、

彼の家を後にした。




│ ■フラール国・バクシア国代官館(改2)  │




同時刻―――

バーレンシア侯爵の施設で、貴族3人と商人1人が

テーブルを囲んでお茶を飲んでいた。


「ハー……ありがとう、みんな。

 これで大方の準備は出来たかな」


侯爵が感謝の言葉を述べると、

ビューワー(バートレット)伯爵も

一息ついて、


「いいえ、そんな……

 しかしこれだけやってもまだ『準備段階』と

 いうのが」


「本番前の手続きが終わっただけですからね。

 まだまだ気合いを入れませんと」


シッカ(レイシェン)伯爵令嬢も、両腕に力を

込めるようにして元気に答える。


「そういえばグラノーラ(マルゴット)令嬢。

 最近の女神様の動きは?」


彼が話を振ると、商人の娘はカップを置き、


「ナヴィ様とボガット家の主が、どうも

 懸念を抱いているようなのですが―――」


と、ここ数日の内の『神託』内容を共有する。


話を聞いていたバーレンシア侯爵は両目を閉じ、


「う~ん……」


「?? どうかしましたか、侯爵様。

 何か気になる事でも?」


レイシェンが疑問を口にすると、彼は目を見開いて

バートレット・マルゴットの方へ向き、


「ちょーっとマズい事になるかも……」


そう返し、彼らに自分の懸念を説明し始めた。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




その夜、定期連絡である神託が開かれる事に

なり、第一眷属の家には、フィオナを始めとして

母親であるソニア、第三眷属の妹メイ、そして

バートレットとマルゴットも参加した。


「それでは、そろそろよろしいでしょうか?」


女神の言葉に一同うなずき、各国と神託が繋がる。




│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




「こちらも大丈夫でしゅ。

 しょれと、獣人族の方は消極的賛成で

 一応意見が……


 みゅ? どうしましゅた?」


神託に入ったナヴィは、フラールのただならぬ

雰囲気に、質問を返す。




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「ど、どうかしたんですか?

 ……バーレンシア侯爵様が?」


「?? いったい何が起きてんだ、ファジー?」


第二眷属とその姉も、戸惑いながら状況の把握に

努める。




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




「……落ち着いてください、伯爵様。

 グラノーラさんも。


 ……そうですか、つまり……

 バーレンシア侯爵様も、同じ結論に達したと」


ローン・ボガッドの言葉に、第三眷属の少女と

隣りに座る少年も不安の色を隠せない。


「な、何があったんですか?」


「もしかして、ナヴィ様が推測してたってヤツか?」




│ ■アルプの家          │




「し、失礼しました。

 興奮してしまって……」


「ですが、事は一刻を争います。


 バーレンシア侯爵様の言う通りであれば、

 すぐにでも対抗策を立てなければ」


それを見て、フィオナとメイは手を取り合い、


「「どゆこと??」」


アルプとその母親も、2人を何とかなだめ、


「あの、もう一度ご説明お願いします」


「バーレンシア侯爵様が、何とおっしゃったん

 でしょうか?」


そこで改めて―――

彼らの口から説明がなされた。


「つまり、彼らにしてみれば―――

 『奉公労働者のオークションを行った』

 『女神とその一行はそれを阻止出来なかった』


 という事でさえあればいいのです」


「それが、事実かどうかは関係なく……」




│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




「ふみゅ、つまり―――

 彼らの狙いは、奉公労働者のオークションでも

 獣人族の売買でも無く……


 こちらの敗北、その既成事実化……

 という事でしゅね」


ナヴィの受け答えを聞き、ガルパンが困惑した

表情になる。


「し、しかし―――

 今まで一度も、『枠外の者』『新貴族』と

 相対して、彼らの計画を阻止出来なかった事は

 ありませんでした。


 それをどうやって……?」


そこに、情報屋をやっていたミモザの声が入る。




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「あー……

 あり得るかも知れねーな、そりゃ」


「ミモザ姉?」


ファジーも姉の、同意するような言葉に戸惑う。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「……事実でなくともよい……って」


「そんな事出来んのか?」


ポーラとシモンが疑問をそのまま口にする中、

屋敷の主が肯定する。


「連中に取っては、それだけで十分なのじゃろう。


 恐らく獣人族の件は本命ではなく、我々を

 おびき寄せるためのエサ―――

 もしくは目くらまし。


 奉公労働者のオークションは実際にやるだろう。

 しかし、やるだけじゃ。


 その後で、『女神様が来たが、オークションは

 止められなかった―――』

 という噂を流せば完了、というワケだ」


その場にいた彼の妻も含め、つばを飲み込む音が

室内に小さく、しかしハッキリと響いた。




│ ■アルプの家          │




「で、でも……

 そんな事が一度くらい、あっただけで、

 フィオナ様への信仰が揺らぐ事なんて」


第一眷属の少年が否定するも、彼の義祖父が

それをさえぎるように答える。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「残念だが、人間とは、そして大衆とは―――

 酷く我儘わがままで勝手なものなのじゃ。


 フィオナ様の身近にいる我々ならば違うと

 言い切れるが、他国の、事情をよくわかって

 いない人間にしてみれば……」


彼の言葉に、そこにいた少年少女は重苦しい

空気にふさがれたように、沈黙する。




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




しかし、それに対抗するかのように―――

ファジーとミモザの姉弟が口を開いた。


「それで、バーレンシア侯爵様が言っていた事は

 それだけですか?」


「あ、ああそうだ!

 あの侯爵様の事だ、何らかの指示を出して

 いるんじゃねーのか?」




│ ■アルプの家          │




「そっそうですよ!」


「彼の事ですきっと何かあるのでしょうそうに

 違いないそうに決まった!」


メイ、そしてフィオナがそれに食いつくように

答えて、アルプとソニアも伯爵と商人を見つめる。


「はい。彼は―――

 私とマルゴットに」


「共にオリイヴ国へ行き―――

 ナヴィ様の手伝いをしてくれ、とおっしゃいました」


2人の言葉に、各国の人間の注目が集まった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5199名―――



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