表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/402

11・どこかで人種を超えた同士が現れた

( ・ω・)下手に祝日とかあると曜日感覚が

ズレてしまう。



日本・とある都心のマンションの一室―――


住人と思われる少女が、スマホをにらみながら

うなり声を上げていた。


「うあぁああぁあああ……!

 ダメ、どーやってもわかんない……」


「どうかしましたか?

 また男同士のカップル展開を乙女ゲーで

 探しているのですか?

 攻略サイトに無ければ諦めるようにと

 いつも言っているでしょう」


そこにお目付け役(猫Ver)がのそりと現れ、

ツッコミという名の現実を突き付ける。


「それは受け入れつつも可能性はゼロでは……

 いや今回は違うんですよ?


 ちょっとご無沙汰していたサイトがあったん

 ですけど、そこの暗証番号を忘れてしまって」


「まあ最近は番号も長いですからね」


「あ、そのサイト古いんで、

 4ケタのままなんだけど……」


それを聞いたナヴィは呆れながらため息をつき、


「それでどうして忘れるんですかねえ」


「仕方ないでしょう!

 暗証番号なんてめったに使わないのに

 覚えていられますか!?」


「前提は合ってますが本質が間違っています。

 ていうか、フツーに再設定とかすればいいのでは」


お目付け役の提案に、今度は女神がハァ、

と一息ついて、


「仕方ないですねー。

 面倒くさいけどそうしますか。


 再設定はナヴィの手足の数で……」


「4本しかねぇだろ。

 どうするんだよソレで」


当然のツッコミを入れられる中、フィオナは

スマホをポチポチと操作していき、


「あ、今は6ケタになっているみたいですね……

 再設定はそれなりに数が並んでいるものにしないと」


「当たり前ですよ、もう。


 それと、また忘れたら面倒ですから、覚えやすい、

 忘れられない数字にした方がいいですよ」


忠告を受けて、フィオナはしばし考え―――


「んー、じゃあナヴィのシッポ部分の

 体毛の数にするわ。

 この前ちょうど数えたし」


「数えたのかよ。

 逆にスゴイなそれ。


 それではそろそろ、本編スタートしましょう」




│ ■オリイヴ国 市街地・某所  │




「ここでしゅが……

 以前来た時、獣人族の気配は無かったでしゅねえ」


『枠外の者』の拠点と思われる、三階建ての屋敷に

到着したナヴィは―――

まず屋根の上から、室内の様子を探る。


「リオネルしゃんの弟は元より―――

 捕らえられている獣人族の気配すら

 無いんでしゅよねえ……


 しょれとも、どこか別の場所にいるんで

 しょうか」


一人思考を巡らせていると、ふと背後に気配が

出現した。


「―――!」


ナヴィが珍しく慌てて振り返る。

そこには、首まで伸ばした銀髪が特徴的な、

巻き髪の少年がいた。


「……ん?

 ボクたちと同じ獣人族と思ったんだけど、

 違うのかな?


 それにしても、気付かれるなんて思わなかった。

 ずいぶんとカンがいいんだね、おにーさん」


「……キーラしゃん、でしゅか?」


その名前を聞くと、彼はハァ、とため息をついて、


「リオネル兄さんに言われて来たの?

 言っておくけど、ボクとメルリアの邪魔を

 するようなら―――

 タダじゃすまないよ?」


ナヴィはフィオナの軍神パパから訓練を受けており、

相手の実力もそれなりに見抜ける。


ハッキリ言って、自分の敵ではない。

それだけの実力差はある。


しかし、それにしてはあっさりと背後を

取られた事が―――

戦闘に入る事を躊躇ちゅうちょさせた。


「確かに、リオネルしゃんには頼まれて

 いましゅけど―――

 別に無理強いとかしゅるつもりはないでしゅよ。


 でも、個人的には……

 妹しゃんまで巻き込むのは感心しないでしゅ」


「アレは勝手にボクについてきたんであってむしろ

 連れ帰って欲しいっていうか……」


彼の話にナヴィが首をかしげると、キーラは

首をブンブンと振って、


「ウン何でもない何でもない。

 で、仲間を連れ戻すのが目的?


 アレはねー、エサなんだよねー。

 今話題の『女神様』? を呼び寄せるためのさー」


「ふみゅ。

 しょれなら目的は、半分は達成されていると

 思いましゅよ?」


すると今度は、キーラがバックステップで距離を取る。


「へえ。おにーさんかと思ってたんだけど、

 本当はおねーさん?」


「私は男でしゅよ。

 女の格好をさせられる事が多いでしゅが。

 私は男でしゅよ。

 女装ネタはお腹いっぱいでしゅが」


ナヴィの言葉に、キーラの片眉がピク、と

吊り上がり、


「……あー、もしかして……

 おにーさんもいろいろ着替えさせられた経験が?」


「……ム。

 という事はキーラしゃんも?」


何かを共感・共有した2人は行動を止める。




│ ■ミイト国・首都ポルト      │

│ ■シンデリン(トーリ)家屋敷   │




「―――ハッ!」


「どうしたの、ネーブル?」


遠い国の主従、バイオレットのロングヘアーの

女性が、それとは対照的な黒髪・黒目の使用人である

少年に声をかける。


何かを察したかのように反応した少年は主人に、


「いえ、今―――

 どこかで人種を超えた同士が現れたような

 気がしまして」


「?? ヤケに具体的ねえ……」


と、気のせいという事で短く会話を切り上げる。




│ ■オリイヴ国 市街地・某所  │




一方で、にらみ合いとも取れない対峙を、

キーラとナヴィは続け―――

そこに、『枠外の者』が地上から声で参加してきた。


「何してるの、キーラ?

 屋根に上がって……」


「あ! メルリア!」


と、ナヴィがその方向へ視線をやる。

そこには、豊満な胸を誇るように、体のラインを

ピッタリを現すような衣装を身に付けた、眼鏡の

女性がいた。


するとキーラは屋根から飛び降り、メルリアと

呼ばれた女性の近くに着地する。

続けてナヴィも飛び降りると、彼女を守るようにして

ナヴィとメルリラの間に位置取った。


「獣人族……ではないみたいね。

 でも、『普通』のコとも違う……


 お目当てがやってきてくれたのかしら♪」


キーラがいる余裕からか、その身体能力を見ても

臆する事なくナヴィに話しかけてくる。


「ふみゅ、なるほど。

 貴女がメルリアしゃん……

 『枠外の者』というワケでしゅか」


「あら、ワタシの名前を知っているなんて光栄だわ。

 『枠外の者』の中では上位三ヵ国にいるんだし、

 知られていて当然かも知れないけど」


からかうような口調で語るメルリア。

それに対しナヴィは、


「いえ、貴女の事は今知ったばかりでしゅよ。

 えーと……


 キーラしゃんを着せ替えさせて遊んでいるとか?」


「ちょっ!?

 何でそんな事知ってるの!?」


うろたえる彼女に、さらにナヴィは続ける。


「いや、だってキーラしゃんが……」


「ま、待ってよ!

 ボクはメルリアが、いろいろな人族の女の子の

 服を無理やり着せようとしてくるとか、妹と

 一緒に組み合わせや着回しを考えているとか、

 そんな事は一言も言ってない!!」


彼は否定の言葉を述べるが、それに伴いダメージを

受けたかのように、メルリアのボディは衝撃を受ける。




│ ■シンデリン(トーリ)家屋敷   │




「―――ハッ!」


「またどうしたの、ネーブル?」


主従のうち、使用人の少年が再度何かに反応し、


「……いえ、何と言いますか……

 『自分がいじるのは構わないが、他人が

 手を出すのは許せない』

 という、複雑な心境になりまして」


「?? どゆこと? 何なのソレ?」


シンデリンには理解出来ない感想をネーブルは

述べたが―――

それ以上の追及は彼女からなく、自然に会話は

止まった。




│ ■オリイヴ国 市街地・某所  │




「それで結局、おにーさんは何しに来たのさ?

 敵情視察?」


「それもありましゅが……

 一応、獣人族の方針というか考えを伝えて

 おこうかと思いましゅて」


そこで、より形をハッキリさせるように、少年の

耳がピン! と直立する。


「反対派と賛成派の考えがまとまったとでも?」


「しょれはまだ詰める必要があるでしょうが……


 リオネルしゃんが消極的賛成―――

 つまり、あまり大々的な開発をするのでなければ

 別にいい、という感じでしゅね。


 他の獣人族も、そこらが妥協点だと思うでしゅ」


その言葉に、キーラはふぅ、と一息つくと、

ガックリと頭を下げて、


「それってさあ、結局何も決まってないって

 事じゃないか」


「……ひとつ言える事は、全面的な争いは望んで

 いないはずでしゅ。


 とにかく、いったん誘拐した人たちを戻せば

 あちらも」


そこまで言った時点で―――

さすがに異変に気付いたのか、警備にあたっていたと

思われる男たちが駆けつけてきた。


「! 貴様は!!」


以前、ガルバンの家から尾行した連中も混ざって

いたのか、ナヴィの顔を見て叫ぶ。


「今日はこれで失礼しましゅ。


 キーラしゃんも、考えた方がいいでしゅよ」


と、一瞬宙に身をひるがえしたかと思うと―――

影と、その余波の風だけを残してナヴィの姿は消えた。


「く、くそっ!!

 まだこの辺りに……!」


周辺へ探索に出ようとする彼らを、少年が呼び止める。


「やめておいた方がいいよ。

 あれだけの事が出来るんだし、たった一人で

 乗り込んでくるくらいの実力者なんだから―――

 もう近くにいるわけがない。


 もしいたとしたら、よほど腕に自信があって

 待ち構えているとしか思えないね」


「…………」


獣人族のキーラの言葉に、連中は黙り込む。

しばしの沈黙の後、リーダー格らしき男が口を開き、


「ですが、ココはもうバレました。

 メルリア様、場所を変えた方がいいのでは?」


「獣人族相手なら時間のムダよ。

 どこに行ったってすぐに見つかるわ。


 警戒をいっそう厳重にしてちょうだい。

 退路は確保しておくようにね」


「ははっ!!」


男が一礼すると、他の連中もいっせいに引き上げる。

残されたのは妙齢の女性と少年2人―――


「でもいいの? メルリア。

 このままで……」


「大丈夫よ。それに―――

 目的は半分達成されたようなものだしね」


「……?」


少年はきょとんとした表情を返すが、それに構わず

彼女は口元に微笑を浮かべた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5155名―――




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ