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10・これさえ無ければ

( ・ω・)プロットは考えていないが、

書いているうちに何とかなる不思議(ダメ人間)



日本・とある都心のマンションの一室―――




そこのリビングで一人の女性が猫を膝に乗せながら、

娘と思われる少女と向き合って座っていた。


「それでねー、パパって部下にすっごくしたわれて

 いるみたいなんだけどー、神殿ウチに対する評判が

 ヘンなのよー。


 『地元のひとでさえ恐れて近付かない神殿いえ』って―――」


「えー?

 ウチってそんな噂があったんだ」


母子の会話に、膝で撫でられていた猫が伸びを

しながら姿勢を直し、


「もはや神殿というより心霊スポットですね。

 しかし何でまたそんな噂が……」


「アタシは一人暮らし始めてからずいぶんと

 経つからわからないけど―――

 心当たりはある? ママ?」


ナヴィとフィオナがアルフリーダの顔に同時に

視線を集中させると、


「そんな事言われてもねえ。

 ちゃんとお客さんはもてなしているつもりだし……」


首を傾げるアルフリーダに、ナヴィはある事を

思い出し、


「そういえばユニシス様って指導役でもありますから、

 部下には若い神々がいると思うんですけど―――

 (5章27話参照)


 能力というか格が違い過ぎて、彼らに怖がられて

 いるなんて事は」


「それはちょっとマズいわねー。

 私も仕事上関わる事があるし。


 でも、怖がられてはいないと思うんだけど。

 対応もフツーだし」


眉間にシワを寄せながら彼女は答え、


「でもママって女神の中じゃ、顔も体も

 結構上の部類だと思うし……

 若いコを食べちゃうとか思われてるんじゃ

 無いのゲフゲフゲフ♪」


「何でいきなりエロ親父っぽくなるのよ。

 それに私は未来永劫パパ一筋だってば。


 あーでも……」


娘をたしなめるように母親は返して、

ふと気付いたように続ける。


「パパに色目使いそうな小娘に対しては、

 “ちょっと”厳しくなっちゃうかも♪」


急激にトーンダウンした声に少女と猫は抱き合い、

震えながら、


「ななな何かスゲー冷たい声がしたんですけど……

 今のママ?」


「と、凍死するかと思いましたよ。

 理由というか純度100%でそれが原因では?」


あちゃー、という顔でアルフリーダは

娘と従僕を見つつ、


「まあ何だ……

 原因がわかって何よりです。

 ちょっとやり過ぎだったかな? と思わなくもない。

 そして反省は絶対にしない。

 でも今後ちょっと気を付けたいと思います。


 それじゃそろそろ、本編スタートしましょう」




│ ■オリイヴ国・獣人族の長老の家     │




「お恥ずかしい話……

 実は、その弟が行方不明になった一人目なのです」


突然の告白とも言える情報に驚くが、ナヴィは

記憶の糸を手繰る。




『やはり、キーラのヤツだろう。

 アイツが一番最初に行方不明になっているし……』


『開拓派の中でも、誰もついていけないくらいの

 過激派だったからな』




「……では、弟しゃん―――

 キーラしゃんが『裏切り者』だと?

 妹しゃんの方は?」


「妹……カガミはまだ幼く、反対でも賛成でも

 無いかと思われます。


 わたしめは消極的賛成派です。

 条件さえ合えば考えなくはないのですが……」


ふーむ、といったんナヴィはうなずき、


「リオネルしゃんは消極的賛成という事でしゅが、

 しょれはどれくらいの範囲で?」


「―――実際、人族の生活レベルは付き合いが

 あるので、ある程度わかっています。


 交通を便利にする、道を切り開くくらいの

 開拓ならば反対はしません。


 しかしキーラのヤツは……」




│ ■オリイヴ国 市街地・某所  │




ナヴィとリオネルが話し合っている頃、

同じ国内、『枠外の者』の拠点で―――

妙齢の女性と少年が言葉を交わしていた。


「えっとねえ、キーラ……

 あの森の開拓計画なんだけど、そこまでの

 変更は無理っぽいのよ」


眼鏡をクイ、と上げて、銀髪の巻き毛を持つ

少年へたしなめるように語り掛ける。


「何で?

 更地にすればいいじゃないか。

 『枠外の者』の力を持ってすれば、それくらい

 出来るんじゃないの?」


「いやいやいやいや……


 あんなに美しい自然と緑を残す森って、

 そうそう無いのよ。

 特にワタシのシフド国は海が中心の土地だから

 むしろうらやましいくらいっていうか」


それに対し、少年は遠い目をしながら、


「ねえ知ってる?

 ああいうのは緑や自然が残っているって

 言わないんだよ?

 いさぎく『緑と自然しか無い』って言わないと。


 メルリアの言うシフド国だってすごい都会

 だったじゃない。

 あんなの見たら、もう村になんて戻れないよ」


それを聞いてメルリアは腕組みしながら考え込む。


「(このコ、気に入ったから一度シフド国まで

 連れて行った事があるんだけど、それが間違い

 だったようだわ……

 完全に都会に憧れる田舎の子供ね。

 『都会が来い』とまで言い出すとは思わなかったわ。


 これさえ無ければいいコなんだけど)」


難しい表情をする彼女に何か察したのか、彼は

話の方向を変える。


「そういえば―――仲間は?

 いつ情報を出すの?


 『女神様とその一行』とやらをおびき出すための

 手なんだろう?」


「えーだってどうせ全員ワタシが買うんだしー。

 下手に買い手がつくのもイヤじゃない?

 この世の全てのモフモフはワタシの物なんだから」


肩を小刻みに揺らしながら、ケラケラと笑い出す

メルリアを見て、


「(メルリアも、これさえ無ければ完璧美人

 なんだけどなあ)」


と、お互いに似たような感情と感想を抱きながら、

会話を切り上げた。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「う~ん……

 そんな事になっていたのね。

 それはまあ何とゆーか」


獣人族の村で情報収集をした後、ナヴィは

フィオナと神託を取り―――

事情を説明していた。


「(しょれで、私はもう少し『枠外の者』周辺を

 調べてみましょうので……

 この事をルコルアやバクシアと共有して欲しいん

 でしゅ)」




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │

│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




「(?? それは別にいいんだけど……

 いつもの定期連絡の時じゃダメなの?)」


女神の疑問に、ナヴィは少しうつむき、


「今回は対応を考えたり相談するんじゃなく、

 事前情報として知っておいて欲しいだけ

 でしゅからね。


 定期連絡の時はちゃんと参加しましゅよ。

 あと、トニック・ソルトさんの2人にも

 待機しておいてと伝えてくだしゃい」


こうして、『女神の導き』リーダー・ガルバンの

家から、彼は神託をいったん閉じた。


「お疲れ様でした、ナヴィ様」


一通りの話が終わったと判断した家の主が、

労をねぎらう。


「ガルバンさんにも迷惑をかけましゅ。


 ただ、情報の共有だけはしておいた方が

 いいと思いましゅて」


「心得ております。

 すでに、国内の『女神の導き』の元へ、

 通達は出しました。


 我々としても、獣人族と事を荒立てたくは

 ないですからね」


するとナヴィは立ち上がり、


「? どうしました、ナヴィ様」


「一応、『枠外の者』の拠点は把握しているでしゅ。


 今一番情報が得られしょうなのはあそこでしゅ

 からね。

 ちょっと見張ってみるでしゅよ」


言うが早いか、彼の体は―――

風のようにそこから消え去った。




│ ■フラール国・バクシア国代官館(改2)  │




ところ変わって―――

『野戦病院』から何度かのリニューアルを果たした

バーレンシア侯爵の施設で、貴族3名と商人1名の

話し合いが行われていた。


「……まず、フラールから―――

 というのは無理だよね」


気弱そうに、館の主であるバーレンシア侯爵が

感想のように述べる。


「今回のリーディル様・フラウア様のご成婚の儀……

 連合国家内でも、融和と平和を象徴するイベントと

 なります。


 なので、用意する品もそれなりに考慮しなければ」


続いて、地元のビューワー伯爵が難色を示し、


「いっそ、フラール・バクシア両国では手に入らない

 物の方が良さそうです。


 出来れば、見た事のないような品物がベストですね」


マルゴットが補足するように語る。


「そうなのですか?

 お恥ずかしながらわたくし、貴族でありながら、

 そのような儀礼にはうとくて―――」


「そんなの僕だって同じだよ。

 結婚なんて一生にそう何度もあるものじゃないし。


 たいていはその家の格や身分差で決まるからね。

 今回は二国間だから悩んでいるわけで」


レイシェン伯爵令嬢をカバーするように、侯爵様が

答える。


「そう、ですね……

 しかし、誰も見た事の無い物となると―――」


ポツリ、とレイシェンがつぶやくと、それに呼応

するかのように、彼女以外の3人組が頭をガックリと

下げて、


「それが―――」


「問題……」


「ですよねえ」


と、息ピッタリに一つの文になる。


「すまないね、僕の関連事業も手伝ってもらって

 いるのに……


 そういえばさ、女神様って今何してるの?」


侯爵様の問いにバートレットは頭を上げて、


「今度はオリイヴ国で『枠外の者』が暗躍

 しているらしく……」


「今回は動いてもらうのは、その……

 難しいかと」


マルゴットも意図を察したのか、否定的な

意見を出す。


「いや、別にそういうわけじゃない。

 ただせっかくこの国にいらっしゃるのに、

 僕たちが忙し過ぎて、女神様への対応とか

 おろそかにしてもいいものなのか、と……」


侯爵様の返答に、彼らは頭を再び下げ、


「失礼いたしました」


「フィオナ様は、あくまでもそれぞれの生活を

 第一に考えるように、と仰っておりますので、

 杞憂かと思いますが―――


 時間が取れ次第、お顔を拝見しに参りましょう」


そしてをれを羨望の眼差しでレイシェンが見つめ、

再び婚約の儀についての話し合いが始まった。





カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5147名―――



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