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09・慣れたら病み付きになる

( ・ω・)仕事が忙しくなるとエンジンがかかって、

小説の方にも波及する説。



日本・とある都心のマンションの一室―――


買い物から帰ってきた家主の少女を、ペットと

思われる猫が出迎える。


「ただいまー、ナヴィ」


「お帰りなさいませ、フィオナ様」


お目付け役(猫Ver)はトコトコと、

リビングへ向かう女神の後をついていく。


荷物を置くと、彼女はそのまま部屋の片隅にある

大きな姿見の前まで行って、


「う~ん……」


「?? どうかしたんですか?」


鏡を前にうなるフィオナに、ナヴィは不思議そうに

たずねる。


「えっとね、ナヴィ。

 確かにアタシ、黒髪黒目でこの国の人っぽい

 感じだと思うんだけどぉ~……

 顔立ちは外国人っぽいですよね?」


「まあ、髪と目はお父様ユニシス似ですが、それ以外は

 確かにお母様アルフリーダ似だと思います」


するとクルッと女神は鏡から振り向いて、


「でも何かねえ~、最近、どこに行っても自然って

 いうか、目立たないっていうか……

 もうちょっと注目されてもいいんじゃないかなって」


「今時、この国で海外の人なんて珍しくも

 何ともないでしょうに。

 むしろ六本木や上野とかに行ったら、フィオナ様が

 一般レベルになるんじゃないですか?」


うむむむむ、とさらにうなる彼女は思いついたように、


「確かにそうですねえ……

 今のこの国で目立つくらいになるには……


 最低でも、秋葉原で人目を引くくらいにならないと」


「あれ?

 あのワールドっていつの間に日本に編入されて

 いましたっけ?」


ナヴィの答えに、フィオナはしばし考え、


「そういえばあそこは別世界だったわね」


「いつから日本だと錯覚していた?


 ま、そろそろ本編スタートしましょう」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




各国に神託が繋げられ、フィオナは『アンカー』を

使うようにナヴィから促された。


そしてその結果……

グロッキーになりながら、汗をじっとりとにじませる

女神の姿が―――


「あ、あの、フィオナ様……

 大丈夫ですか?」


「ずいぶんとお疲れのようですが……」


さすがに心配になったアルプとマルゴットが、

彼女に声をかける。


「……取り敢えず、ナヴィと相談してから

 考えを話す事にします。


 ナヴィは引き続きオリイヴ国で情報収集を―――

 他の方々も今の活動を継続してください」




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │

│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




女神の指示に、ナヴィとガルバンは頭を下げ、


「わかったでしゅ」


「お言葉のままに」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「スタウトさん、バーレンシア侯爵様の工場の

 主要メンバーにも、情報共有しておきます」


「こっちも、オリイヴ国絡みで何か噂があったら

 記録しておくよ」


第二眷属の少年とその姉も答え―――




│ ■ボガッド家屋敷      │




「ワシも、この前ミイト国との『つなぎ』を

 作っておきましたゆえ、探りを入れておきます」


「あと、バーレンシア侯爵様との新事業については

 滞りなくやっておくから」


「心置きなく、オリイヴ国の件に集中して

 ください」


ボガッド家当主と、アルプ・ファジーの取引先の

少年、そして第三眷属の少女も別れのあいさつを行う。




│ ■アルプの家          │




「ポーラ姉さま。

 女神様とアルプ君の身の回りは、わたくしに

 任せてください」


第三眷属の少女の妹も力強く答え、


「それでは、私はバーレンシア侯爵様、

 ビューワー伯爵様にこの事を伝えますので、

 これで失礼します」


そして、各地に静寂が戻ってきた。




その深夜―――


女神・フィオナに割り当てられた部屋で、

密かにオリイヴ国・フラール国間で、神託が

繋がれた。


「あーあー、ナヴィ聞こえますか?

 どーぞー」


「(聞こえてましゅよ、まったく。

 しょれで、『アンカー』の結果がダメダメ

 だったんでしゅね?)」


「き、貴様なぜそれを!?

 その情報はトップシークレットのはず……!」




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │




「何とか格好良く切り替えそうとしないで

 いいでしゅ。


 だいたい、効果的な解決策があったら、

 喜んで演説しゅるように話しているでしょ。

 フィオナ様の性格からしゅて」


「(失礼ね! するけど!)」


自信満々に答える女神に、ナヴィは状況を

把握するため、詳細を聞き出す。


「しょれで、結局どうなったんでしゅか?」


「(そ~れ~が~……)」




―――女神回想中―――




「それで、今こういう状況なんですけどぉ」


フラールから地球・自分の部屋のPCと意識を繋ぎ、

質問を書き込むフィオナ。

そしてその返答は……



【 あ~……いや、まあ? 】


【 つか、情報が決定的に足りな過ぎる。今までにも

 こんだけ情報が少ない事はあったけど 】


【 そんで『これからどうしましょう?』って

 言われてもなあ 】



・オリイヴ国で、獣人族が行方不明になっている事。

・裏には『新貴族』が絡んでいる事。

・さらに獣人族にも裏切り者がいる可能性―――


さすがに状況や判断材料が少な過ぎる中、

『アンカー』たちの誰もが提案も意見も

出せないでいた。



「な、何か無いんですか?

 方向性とかー、見通しとかー」



【 マービィ国の時はまだ、やるべき事はハッキリ

 していたけどなー 】


【 『新貴族』の邪魔、奉公労働者の

 オークションの阻止とかさ 】


【 ……そういえばさ、この当事者というか被害者は

 『獣人族』なんだよな? 】



ふと毛色の違う発言に、フィオナは注目する。



「どゆことですか?」



【 そもそも、獣人族はどういう解決を

 望んでいるんだ? って事 】


【 そういえばそうだな。てか、獣人族の中にも

 開拓派ってのがいるんだろ? 】


【 徹底抗戦なのか、それとも妥協の余地は

 あるのか…… 】




―――少女回想終了―――




「(とゆーわけでしてねえ。

 どうにもこうにも)」


半ば諦め気味に語る女神にナヴィは、


「いや、確かにその通りでしゅね。


 獣人族としての方針もきちんと、確かめておく

 べきでしゅた。


 ある程度は人間側に譲る意思があるのか、

 しょれとも妥協は一切しないのか……」




│ ■アルプの家          │




「そそそ、そーなんですよ!

 だからまず第一は!

 彼らの意思統一とその確認って事です!」


形勢逆転したかのように、女神は早口になる。


「(しかしでしゅねえ……

 『アンカー』たちの事なんでしゅが)」


「?? 『アンカー』がどうかしたの?」


急な方向転換の質問を受け、フィオナは聞き返す。


「(いえ―――

 今回ばかりは仕方無いかも知れましぇんが……

 何ていうか、貢献度が初期よりも下がって

 来ているといいましゅか……


 フィオナ様の力も比べ物にならないくらいに

 強くなりましゅたし―――

 いやまあ自分で提案しておいて何でしゅが)」


言外に、もうあまり頼らずともいいのでは?

と彼は女神に伝えると、




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │




「(いやねえ、でも……

 それを言ったらこの小説のタイトルに関わって

 しまう事なんでぇ)」


「メタりゅな。

 てゆーか何て身も蓋もない」


ツッコミを返されても、彼女はさらに続け―――


「(それに、その……

 この予想外の無軌道さ・時々無力感は、

 慣れたら病み付きになるっていうか)」


「そんな心の病にかかりたくないでしゅよ。

 フィオナ様がいいのならしょれでいいでしゅけど。


 まあ獣人族の意思統一、方針を待ってという

 意見には同意しましゅ。

 明日にでも確認してきましゅね」


こうして、女神と従属の神託は切られ―――

それぞれがようやく眠りについた。




―――翌朝。


ナヴィは『女神の導き』・リーダー、ガルバンに

獣人族の拠点へ行く事を告げる。


「そうですね……

 以前も言いましたが、彼らと人族側との全面的な

 争いは、避けて欲しいところ―――


 妥協点があるのであれば、その範囲は条件に

 ついて、詰めてきて頂けると助かります」


こうしてナヴィは理由と目的を説明した後、

獣人族のリオネル・長老ファルーガに会うため、

彼らの森へと走った。




│ ■オリイヴ国・獣人族の長老の家     │




走って1時間もすると―――

ナヴィの姿は、すでに長老の家の前にあった。


「ナヴィ様!」


「お話は、どうなりましたでしょうか?」


気配を察していたのか、獣人族の少年と長老は

外でナヴィを出迎える。


「と、これは失礼―――

 とにかく中へお入りくだされ」


「はい、お邪魔しましゅ。

 しょこで改めて話を―――」


彼らに促され、ナヴィは家の玄関にあたる入口を

くぐった。




「我らの方針、ですか……

 確かにそうでしたな」


「こちらが意思統一出来ていませんのに、

 協力をお願いするなど、出来るはずも」


彼らの言葉に、ナヴィは片手を軽く左右に振って、


「いえ、しょこまでの事ではないでしゅ。


 ただ、そちらにも譲れない一線というのは

 あるでしょうし―――

 しょの範囲を教えて頂けりぇば。


 『これは絶対にダメ』

 『ここまでなら考えられる』……

 その程度でいいでしゅから」


そこで長老は、開拓派、反対派の主力メンバーを

呼び、話し合いをさせる事になった。


そうなると年少者であるリオネルは会議の場から

外され、ナヴィの接待に専念する。


外見的に年が近いからか―――

リオネルは礼儀こそ崩さないものの、ややくだけた

事にも答えるようになっていった。


「―――ふみゅ。

 今回行方不明になったリオネルしゃんの

 身内は、弟しゃんと妹しゃんなのでしゅか」


「お恥ずかしい話……

 実は、その弟が行方不明になった一人目なのです」


リオネルは吐き出すように答えると、しばしの

沈黙が2人の間に訪れた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5142名―――




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