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08・今やろうと思ってたんです

( ・ω・)1章を振り返ると『アンカー』の出番って

多いなあ(白目)



日本・とある都心のマンションの一室―――


家主と思われる少女が、手元のスマホを操作しつつ、

寝そべりながら独り言のようにつぶやく。


「ああ……尊い。

 やっぱりお嬢様と執事のシチュは鉄板……!」


そこへ、のそりとペットらしき飼い猫が姿を現し、


「また二次元で妄想を満たしているんですか。

 というより、眷属にしたアルプ君もファジー君も、

 そういうタイプではないでしょうに。

 ていうか2人とも年下ですし」


「い、いいじゃないですか別に!

 主従関係というのは間違いでは無いですし!」


出て来た瞬間にバッサリ切り捨てるナヴィに対し、

フィオナは仰向けになって反論する。


「それにホラ、シンデリンさんとネーブルさんの

 例もありますし―――

 年下でもお嬢様と使用人という主従関係は

 築けるんです!」


「あのような関係がお望みなのですか?」


と、彼の問いに女神はふと我に返り、


「……アレはちょっと……

 ま、まあ無くはない、かも?」


「口元思いっきり引きつってますよ女神様」


そこでフィオナは上半身を起こしてナヴィと

向き合い、


「だいたい、アンタだってママの従僕なんだから、

 アタシが主筋じゃないの。

 だったらそういう関係にもなれるでしょ」


「してみますか?」


突然の提案に、彼女は目を丸くして、


「え? いいの?

 マジでいいの?

 本気にしますよ?」


そこでナヴィは猫Verから人間Verになり、


「では、やってみましゅよ。

 お嬢しゃま、どうぞこちらへ」


「は、ハハイ!

 よろしくお願いしますでございます!」


促されるままに女神はリビングへ移動し、

テーブルに座って待っていると、


「……お嬢しゃま、お茶でしゅ」


「―――ありがとう、ナヴィ」


当初は戸惑っていたフィオナも、お望みの

シチュエーションを堪能する。


「ねえナヴィ、今日の予定はどうなっていたかしら?」


「本日のお嬢しゃまのご予定は―――


 午前中はこの地球で購買された本の読書、

 午後はローキックの対処をマスターしゅる事に

 なっておりましゅ」


その言葉に、お嬢様はゆっくりとティーカップを

テーブルの上に戻し、


「あのアタシ、総合のリングに上がる目標とか

 持ってなかったんですけど。

 てゆーかお嬢様としても女神としてもそれを

 マスターするのっておかしくない?」


「いえ重要な事だと思いましゅよ?

 ローキックがさかんな信者とか出来たら

 どうしゅるおつもりでしゅか?」


「ローキックがさかんな信者!?」


困惑するフィオナ、それを涼し気な表情で

見守るナヴィ、というシュールな光景が

持続され……

やがて根負けしたかのように、フィオナの方から

口を開く。


「はあぁああ~……

 結局、こんな事だろーとは思いましたけど」


「この茶番に真面目な展開を望む方が間違って

 いましゅ。


 しょれではそろそろ、本編スタートしましゅね」




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │

│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




獣人族の村で聞いた話を共有し、また今後の方針を

決めるため―――

ナヴィは一度、ガルバンの家へと戻ってきていた。


「なるほど……

 そうなると、獣人族の方も一方的な被害者、

 というには微妙になるわけですね」


「開拓派というんでしゅか―――

 しょれが『枠外の者』と組んで、仲間を

 裏切っている可能性があるんでしゅよ。


 こりぇばかりは、もう少し調べてみないと

 わからないでしゅ」


ナヴィの話を聞いて、ガルバンはフゥ、と一息入れ、


「しかし、今後どう動くか……

 すでに当初の状況とは異なっておりますが」


「夕方くらいに神託を通して、女神様や他の

 眷属の方々とも相談しようと思ってましゅ。


 『女神の導き』のリーダーであるガルバンしゃん

 には悪いんでしゅけど、しょれまで一緒にいて

 頂ければと」


それを聞くと、彼は深々と頭を下げて、


「―――もちろん、異論はありません。

 そもそもがこちらが持ち込んだ話……


 また、他国でどのような動きや情報があるか、

 それを聞いてから方針を決めた方が良いでしょう」


こうして2人は―――

定期連絡しんたくまで待機する事になった。




│ ■オリイヴ国 獣人族の村  │

│ ■長老の家         │




一方、獣人族の方は……

『裏切り者』についての話し合いが行われていた。


「やはり、キーラのヤツだろう。

 アイツが一番最初に行方不明になっているし……」


「開拓派の中でも、誰もついていけないくらいの

 過激派だったからな」


集まった面々が思いを口々にする中―――

リオネルと長老が場を沈める。


「落ち着いて。

 まだそうだと決まったわけではありません」


「もし仮にそうだとしても……

 同族相手に手荒な事はしないじゃろう。


 何とか交渉で仲間の返還を目指そう。

 同族同士で争うのは、人間に付け込まれる

 だけじゃ」


『だが』、『いや、それでは舐められる』、

『アイツはもう同族ではない』―――

異論、反論が噴出する中、確たる解決策は

誰も出せず、


「……とにかく、ここはナヴィ様を待ちましょう。

 今後の方針について、女神様と話し合ってくる

 との事ですので」


というリオネルの一言で、ひとまず場は落ち着いた。




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




「……では、そろそろだと思われますので……

 皆様、準備はよろしいですか?」


夕刻になり、第三眷属である少女の呼びかけで、

屋敷の主であるローン、その妻クレア、そして

ポーラの隣りが定位置となったシモンが答える。


「大丈夫だ」


「ええ、こちらも」


「いつでもいいぜ」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




同時刻、第一眷属の家でも―――

女神が両目を閉じて、


「……アルプ、準備が出来たら―――

 ナヴィと神託を繋ぎます」


その言葉に少年は元気良く答える。


「お母さん、メイさん、マルゴットさん。

 そろそろですっ」


「わかっているわ」


「バッチリですよ!」


「伯爵様、侯爵様は予定が合わず来られませんが、

 私が後で共有いたします」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




そして第二眷属の家でも、姉弟がスタンバイしていた。


「ミモザ姉、始まるみたいだよ」


「ん、りょーかい」


そして、各国に神託かいせんが繋がれた。




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │




「……というわけでしゅて。

 獣人族も一枚岩というわけではなく……

 むしろ『枠外の者』に加担している者が

 いる可能性が―――」


それを聞いて、まずローンが反応を示す。




│ ■ボガッド家屋敷      │




「獣人族が、ですか。

 救出ではなく、敵対の可能性まで考えると、

 少し厄介ですのう」


「とはいえ裏切り者は一人なんだろ?

 ナヴィ様、何とかならねーのか?」


男性陣2人が、まず戦力差についてたずねる。




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │




「一人だけなら、私でも大丈夫だと思いましゅ。

 しょれに、リオネルしゃん、獣人族の方々も

 いざとなれば加勢すると思いましゅし……


 ただしょうなると、人間対獣人族という事に

 発展しかねましぇん」


「……オリイヴ国はわずかながらに獣人族と

 つながりを持っておりますが―――

 そこは慎重に動いてくださると助かります」


女神の従者と『女神の導き』リーダーの考えは

各国に伝えられ、今度はフラール国の商人が

口を開く。




│ ■アルプの家          │




「それに関して、気になる事が一つあるんです」


「マルゴットさん?」


「どういう事ですか?」


彼女の申し出に、フィオナとアルプは顔を向ける。


「獣人族を誘拐している目的は、オークションの

 ためなんでしょうけど―――


 ソルト・トニックの2人に調べさせても、

 『目玉商品』であるはずの彼ら情報が、全く

 出てこないのです」


「?? どゆこと?」


メルが疑問をそのまま口にすると、今度は

ルコルア国の情報屋が―――




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「そいつは妙だな……

 けど、もし獣人族が貴重品、最高級の類だと

 したら―――」


「だとしたら……?」


不安そうに弟がたずねる。

それに対し彼女は続け、


「格上の秘密になっているかも知れねえ。

 つまり―――

 特別な顧客、貴族様や王族向け、とか」




│ ■ボガッド家屋敷      │




それを聞いていた豪商の老人も、同意するように

推測を引き継ぐ。


「ベリーニ(ミモザ)さんの言う通りですな。

 いわゆる上客、それも身元を明らかにしたくない

 相手ならば―――


 厳重に情報統制している事も……

 それこそ取引相手が『新貴族』ならば」




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │




だが、それに対しガルバンは―――


「う~ん……

 ですが、当初あっさりとオークションの事が

 判明したのは、女神様やそのメンバーを

 おびきだすためだと思っていたのですが。


 何かこう、ちぐはぐしているような気が……」


「確かにそうでしゅねえ……

 獣人族の事だけ隠しても、オークションそのものは

 隠せてないわけでしゅから」




│ ■アルプの家          │




そこで女神がまとめるように、


「どちらにしろ、まだ情報収集が必要という

 事ですね」


「(てゆーかお前も何か意見を述べろ女神。

 『アンカー』使ってでも何でもいいから)」


「い、今やろうと思ってたんですー!!

 それくらい考えていたんですー!!」


その光景を、第一眷属の少年と第三眷属の妹は

戸惑いながら―――

ソニアは微笑みながら見守っていた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5136名―――



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