07・コイツは強敵よ、いろんな意味で
( ・ω・)時々、フィオナの出番を忘れる。
ヒロイン()
天界・フィオナの神殿―――
そこで一匹の猫が主人である女神を前に、
前足を揃えて座っていた。
「―――というワケでアルフリーダ様……
今度はあちらの世界で、オリイヴ国を中心に
活動する事になりそうです」
「定期連絡ご苦労様。
どちらかというと、貴方の方が負担が大きそう
だけど、大丈夫?」
リオネルや獣人族救出の案件で、一通り報告を
していたナヴィは、主人であるアルフリーダから
労いの言葉をかけられる。
「まあ実際のところ、自分でやった方が確実と
いう事もありますし。
そもそもフィオナ様は『果樹の豊穣の女神』
なんですから、本業に専念する時があっても
いいかと」
それを聞いた女神はテーブルの上のお茶に口を付け、
「それはそれでいいとして―――」
「では報告は終わりましたのでコレで」
反転して帰ろうとするナヴィのしっぽを、
アルフリーダは身を乗り出してガッシリ捕まえ、
「まあまあ聞いてよぉ~♪
前回のハロウィンでのパパとのプレイなんけどね、
これがもう限界突破の可愛さでぇ♪」
「そういう身内の話は聞きたくないっていうか、
フィオナ様としてくださいよ」
しっぽをつかまれながらも抗議するナヴィ。
それに対し女神はきょとんとして、
「あら、もうフィオナちゃんとは共有したわよ?
『よしコレを来年、ナヴィと眷属に』って気合い
入ってたけど」
「この母子は……
ちなみにどんな事を?
対抗策……じゃなくて、後学のために
聞いておきたいのですが」
するとアルフリーダの顔は少し赤くなり、
「え、えっとね。
おねだりモードにするまでが―――
まずは嫌がりながらも快楽の波に」
「あ、スイマセンやっぱりそれ以上の説明は
結構です。
それでは今すぐ本編スタートしましょう」
│ ■オリイヴ国 獣人族の村 │
│ ■長老の家 │
「獣人族が人間に囚われるなど……
本来、考えられない事なのです」
長老のファルーガが重たい口を開く。
「ふみゅ。しょの意味しゅるところは……
『裏切者』がいる、という事でいいでしゅか?」
同席していた獣人族の少年と老人は、
コクリとうなずく。
「先ほども言いましたが―――
身体能力は、普通の人間をはるかに
凌駕しております。
完全に拘束するにしても……
我々の力に力に耐え得るだけの施設や道具を
用意しなければなりませんし―――
移動時だろうが何だろうが、少しでもスキを
見せればそこで終わります」
リオネルが説明し、少しくだけた様子で老人が
それを引き継ぐ。
「つまり、割に合わないという事ですな。
常に厳重で逃げられない施設が必要で―――
そうまでして拘束する理由があるかどうか、
という事ですじゃ。
奴隷扱いしようものなら、それこそ……
気の抜けない生活を強いられるようなもの」
ふむふむ、と情報を収集、共有し続けるナヴィは、
とある疑問を口にする。
「しかし―――
しょれでは、今までさらわれたり、行方不明に
なった獣人族は、全員帰ってきたのでしゅか?
ただの一人も例外なく?」
それに対し、リオネルが先に口を開き、
「当人が望んだ場合は、帰って来ないケースも
あったと聞いております。
相手の人間が気に入ったとか、
恋仲になったとか……」
「ふみゅ??
他の種族との恋愛とか結婚はいいんでしゅか?」
その疑問に長老は、困ったような戸惑うような
表情になり、
「ウチはその辺り、結構緩いと言いますか。
そもそも人間で我々の生活スタイルについてこれる
者は少なくて……
アリっちゃアリと言いますか、相手がいいのなら
別に、という感じですのう」
しょういえば、同じ獣人族っぽい外見になるとはいえ、
自分が入ってきたあたりから、女性陣がそわそわして
いましゅたねえ……
と、心に思ってもナヴィは口には出せず。
「しかし―――
それでしゅと、今回……
戻って来ない者がいるのは、裏切者がいるからだと
見ている理由は何でしゅか?」
それを聞いた長老は、静かに、重そうに息を吐き、
「別に、個人的に人間と仲良くしたり、この村を
出て行ったりするのは自由じゃ。
咎められる事ではない―――
ただ、この森がかかっているとなれば問題です」
「最近、この村の中でも―――
人間と手を組んで、もっと森の中を開拓する
べきだと、主張する者もおります。
最初に行方不明になった一人も、そういった
者でした」
リオネルの話にナヴィは首を横にして、んー、
と口を一文字にし、
「でも、しょれだけで裏切り者がいるというのは」
「最初のそ奴を除き―――
行方不明になった者は、開拓に反対する者や保守派の
身内なのですじゃ。
それも年少者ばかり……」
間髪入れずに答えた長老の言葉に、ナヴィは思わず
息を飲む。
「しょれは……
無関係と思うのは楽観的過ぎましゅね。
一応、話をすり合わせておきましょう。
私が入手した情報では、やはり『枠外の者』と
呼ばれる組織が―――」
そして今度はナヴィから、自分が調べてきた情報に
ついて語り始めた。
│ ■ミイト国・首都ポルト │
│ ■シンデリン(トーリ)家屋敷 │
「シンデリンお嬢様。
どうぞ―――」
「ありがとう、ネーブル。
それで、今日の予定はどうなっているかしら」
この世界では珍しい黒髪と黒目―――
短髪にしては少し伸ばし過ぎと思える髪を流しながら、
従者の少年は主人である女性にお茶を差し出す。
少年とは対照的な、バイオレットのロングヘアーを
風になびかせるように、お茶を受け取る。
「本日のご予定は―――
午後から例の『奇跡のクルーク豆』について
在庫の確認と取引先の貴族様への振り分けで」
「連合国に所属している国家群相手だから、
もうほとんど残りが無いのよねー……
嬉しい反面、頭が痛いわ。
ところでネーブル、あなたの予定は?」
自分の都合を聞かれた事で、少年は首を傾げ、
「私の予定、ですか?
特にはありませんね……
いつもの通り屋敷内の見回りとか、鍛錬とか」
「あ、じゃあ―――
・メイド姿で屋敷内をねり歩く。
・上目使いで「ずっと好きでした……」と言う練習。
・毒見を兼ねた口移し。
に変更して」
「誰がやるか。
ていうか毒見を口移ししたら両方アウトでしょうに」
そこへ、妹のベルティーユが姿を現す。
「……相変わらず仲が良い……
お姉さま、これ……」
黒いロングヘアーに、人形のような無機質な表情をした
少女の手には、一通の封筒が指に挟まれて―――
「まぁた何かやらかしてるの?
あのお仲間たちは……」
「……今度はオリイヴ国で……
……獣人族も絡んだ案件……みたい……
それに……メルリア令嬢が絡んでいる……」
その言葉に、主従の女性と少年のが疲れたような
顔になり、
「あ~……アイツね。
モフモフスキーだし、獣人族絡みなら
当然かも」
「初対面でいきなり『着ぐるみ』を身に着ける
ようにと要求してきた人ですよね……」
取り敢えずシンデリンは妹から手紙を受け取り、
その中身に目を通す事にした。
│ ■オリイヴ国 市街地・『枠外の者』拠点 │
同じ頃―――
ナヴィが去った後の屋敷で、話し合う男女の姿が
あった。
女性の方は20代半ば、豊満な胸元をアピール
するような衣装に―――
それとは対照的な、知的さを感じさせる眼鏡の
奥から、鋭い眼光を宿す。
男性は彼女より身長は低く―――
ただし、首まで伸びた巻き毛の緑髪、口元の端から
飛び出た牙が、人間ではない事をわからせる。
「―――メルリア。
事は予定通りに進んでいるの?」
「もちろんよぉ♪
もしかしたら女神様が釣れちゃったみたい。
女神様にお仕えしている、獣人族の少年って
可能性もあるけど……
私としては、そっちの方がオイシイしねぇ」
薄く目を開けたような笑い方をする彼女に―――
さらに彼は質問を重ねる。
「……仲間は?
ちゃんと扱われている?」
「そりゃもう割れ物を扱うような丁寧さで♪
何も心配する事はないわ。
……『その時』が来るまで、無事でいて
もらわないと困るんだから♪」
それに対して獣人族の少年は無言で―――
情報の共有を終えた。
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
同時刻―――
他国に滞在していた女神は、お目付け役に向かって
神託を繋いでいた。
「もしもしナヴィ!?
ある種の危険が貴方の身に迫っている予感がするの!
コイツは強敵よ、いろんな意味で……!!」
(ご忠告感謝しましゅが―――
しょの前に貴女は何をしているんでしゅか?
ちゃんと手伝っていましゅ?)
「あ、当たり前でしょ!
せっかくアルプと一緒に仕事とか作業とか
出来るんですから……
少なくともあの小娘ごときに負けたりしません!」
│ ■オリイヴ国・獣人族の長老の家 │
一方、リオネルと長老は―――
フィオナから突然の神託を受けたナヴィを、
緊張しながら見守っていたが、
「い、今のは……
女神・フィオナ様からのご神託ですよね?」
「一体何が……
もしや、仲間に何かあったのでしょうか?」
彼らの心配するような視線と言葉に対し、
「あ、しゅみません。
くだらない事だったので即切りましゅた。
人生の時間を無駄にするのは嫌だったので」
そこでファルーガとリオネルはお互いに顔を
見合わせ、
「……は?」
「……え?」
目が点になる彼らを前に
「まあ気にする事ではないでしゅ。
しょれより、これらの事をこの国の『女神の導き』と
共有したいので、一度戻りたいのでしゅが―――」
と、ナヴィは今後の事を話し始めた―――
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在5131名―――