表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/402

06・ハイさっさと終わらせますよぉ

( ・ω・)今回の茶番は3回目のハロウィンネタ。

無駄に長いと過去のイベントも利用出来ますw



日本・とある都心のマンションの一室―――


「トリック・オア・トリート!!」


リビングにナヴィ(猫Ver)が入ると、

女神・フィオナが彼に向かって叫ぶように声をかける。


「どうしたんですかフィオナ様。

 ……あ、そういえばハロウィンの季節ですね」


去年・一昨年と日本でのイベントを経験している

お目付け役は、今年もまたその季節が巡ってきたの

かと、しみじみと思いを馳せる。

(2章13話・4章32話)


「それで、今年はフィオナ様がお菓子を

 もらう方になったのですか?」


すると女神は満面の笑顔になって―――


「トリック・オア・トリート!!

 お菓子をくれてもイタズラします!!」


「いやそれ私がお菓子あげる意味ねーだろ」


突然の女神の申し出を0.5秒で彼は切り捨てる。


「じゃ、じゃあナヴィが言ってくださいよ。

 ホラ、トリック・オア・トリート?」


その言葉に、ナヴィはしぶしぶながら人間の姿になり、


「トリック・オア・トリート。

 これでいいでしゅか?」


「はい。じゃあ、コレ」


と、用意していたであろうお菓子をナヴィに

差し出す。


「結局、ハロウィンをやりたかったんでしゅね?

 こんな回りくどい事をしなくても―――」


「受け取りましたね!?

 お菓子をあげたんですからイタズラさせて

 ください!!」


両手を上げて飛び掛かる女神へ、彼は片手で

アイアンクローを極めて、


「だからもうしょれルールの変更でしゅよね?

 勝手に趣旨を変えないでくだしゃい」


彼女を解放し、しばらくして落ち着いた後―――

改めてナヴィは反省を促すように語る。


「はぁ、もう……

 普段は引きこもり体質のクセに、こういう時だけは

 アグレッシブなんでしゅから」


「いやーだって今年はパパとこういうプレイで

 挑むってママがー」


「遺伝子に何の問題も無いでしゅね。

 まったく母子そろって……


 しょれではそろそろ、本編スタートしましゅ」




│ ■オリイヴ国 市街地・某所  │




平屋建てが多い中、ひと際大きな三階建ての屋敷―――

その最上階の部屋で、細身の男がひざまずいて報告を

していた。


「―――というわけで……

 その森に入った時には、俺しか標的に

 ついて行けず……」


リオネル・ナヴィを追跡していた連中の代表と

思われる男は、雇い主である主人へ恐る恐る

経緯を説明する。


「『女神』の一行の少年―――

 その足に追いつけなかったと?」


「屋根から屋根、木から木へと飛び移って

 いたんです!

 共にいた獣人族と同等か、それ以上の身体能力だと

 推察できます……!」


とがめるような雇い主の言葉に、反発するように

彼は答える。


「……確か、『女神』が『眷属』と認めるのは、

 果樹園の子供から、ボガッド家跡継ぎとなった

 少年―――」


「それと職人の息子、徴税官の娘……

 確認が取れているのはその3名。


 獣人族の従者は『噂』としてはあったが―――

 それが来たというのか?」


今度は雇い主同士で話し合う。

そこへ、唯一と思われる異性の声が割り込んできた。


「―――ねえ、その『少年』……

 本当に『男性』だったの?」


その問いに、報告者の男は眉間にシワを寄せ、


「いくら何でも、性別を見間違える事は

 無いかと思いますが」


「わからないわよぉ?


 男が女に化けるのは―――

 よほどの美形でもない限り難題だけれど、

 女が男に化けるのはそれほど難しくはないのよ。


 それが年少者ならなおさら、ねぇ♪」


それを聞いて、男は自分が見た『少年』の顔を

記憶から引っ張り出して精査する。


「……確かに、少年の格好・衣装を着ておりましたが、

 顔立ちは―――」


「すると、眷属の一人―――

 ポーラとかいう小娘が来たというのか?」


同格の男が彼女に問い質すと、女は首を左右に振り、


「あの少女に、そんな身体能力があるという

 報告は入ってないわ。


 どうやら、最初から大物を釣り上げたようね」


その予想に、室内の全員がざわめく。


「まさか『女神』自らが……!?

 いや、それならばあの速さも……

 本当に、神……!?」


「まあ、まだ推測の段階に過ぎないけどね。

 あちらもわざわざ、いきなりトップを投入するとは

 思えないし。


 でも、もし何もかも知っての上で、やって来たと

 したら―――」


同格の男の一人が、ゴクリと喉を鳴らす。


「……だ、だとしたら?」


「よほどの自信があって、乗り込んできたと

 いう事でしょうねえ♪


 『枠外の者』が仕掛けた罠だと知って―――

 その罠ごと食い破りに来たって感じ?」


彼女の言葉に、『枠外の者』とその手の者は、

動揺と緊張を隠せずにいた。


そして、その光景を―――

渦中の当人に聞かれているとは、誰一人

気付いておらず……


「(ふーみゅ。

 やっぱり『枠外の者』が絡んでいたんでしゅねえ。


 でも、『新貴族』の名が出て来ないという事は……

 彼らの独断なのでしょうか。


 一応、留意しておきましゅか)」


屋根裏に忍び込んだナヴィは自分なりに考えをまとめ、

次に脱出の機会を待つ事にした。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「―――ハッ。


 何かどこかで、アタシの評価が上がっているような

 決してそうでないような」


オリイヴ国での出来事を察したかのように、フィオナは

思わず顔を上げる。


「勝手に自分を持ち上げて即座に否定しないで

 くれます?


 それよりわたくしの仕事を手伝ってください」


一緒にいたメイが果物の仕分け作業をしながら

ツッコミを入れる。

それに対する女神の答えは―――


「えぇ~? アタシは女神ですよ?

 め・が・み♪

 そんな事は人間の貴女がするべき事でぇ~」


「そーですねえ。人間で何とかしないと」


フィオナの答えを聞いたメイは、部屋の外へ

向かって―――


「アルプくぅ~ん♪

 お仕事手伝ってくださらない?

 このままじゃ終わらなくてぇ♪」


「ハイさっさと終わらせますよぉメイさん!

 アルプの手をわずらわせるまでもありません!!」


と、作業に女神が加わり―――

瞬く間に仕分けが進んでいった。




│ ■オリイヴ国 獣人族の住処のある森  │




「しゃてと。

 ここを真っすぐ、と確か言っていたでしゅね」


うっそうと茂る森の中―――

ナヴィは木々の枝を足場にして、軽々と宙を

飛ぶように移動していく。


一通り、尾行・潜入・情報収集を済ませた彼は、

約束通り、リオネルと別れた森に戻ってきていた。


「…………

 獣の匂いがだんだんと強くなってきたでしゅね。

 そろそろ近くに―――」


「ナヴィ様っ!」


その声に視線を下へ落とすと、リオネルが地上で

手を振っていた。


すぐに彼も地上へ降りると、迎えに来た

獣人族の少年と合流する。


「尾行は成功したでしゅ。

 場所も突き止めましゅた」


「あ、ありがとうございます!

 まずはどうか我々の住処まで。

 みんなお待ちしておりますので……」


そして彼の案内で―――

ナヴィは獣人族の住処に足を踏み入れた。




│ ■オリイヴ国 獣人族の村  │




「ようこそ獣人族の住処へ……

 我ら一同、心より歓迎いたします」


「女神・フィオナの従者、ナヴィでしゅ。

 よろしくお願いしましゅ」


長老らしき獣人が出迎え、その後ろには住人であろう

集団が控える。

彼らを前に、ナヴィは深々と頭を下げた。


「詳しい話はワシの家で―――

 こちらへおいでください」


ナヴィは老人の後ろについていく。

それにリオネルも続こうとするが、いつの間にか

女性陣に囲まれ、


「ね、ね。

 あの人って男……だよね?」


「?? そうだけど……」


その答えに静かに、しかし一気に歓声が広がり―――

彼女たちの黄色い声をバックに、ナヴィはひとつの家に

入っていった。


家―――というよりも、少し大きめな木製の

バンガローのような建物に入った彼は、遅れて

入ってきたリオネルと一緒に、出迎えた老人と

対峙して座る。


そしてなぜか、老人の背後は妙齢の女性陣が

ところ狭しと集まっていた。


「自己紹介が遅れましたな。


 ワシがこの獣人族の村の長老―――

 ファルーガと申します」


改めてお互いに一礼する。

だが、ナヴィは長老を通り越して、後ろの光景に

視線をやり、


「……しょれで、その後ろの方々は」


さすがに異性の異様な視線にさらされ、

その意図を質問せざるを得なくなる。


「あ、あのっ、私たちと同じ獣人族と

 伺ったのですがっ」


女性の一人が、片手を上げて質問に入る。


「いえ、獣人族ではありましぇんが―――

 多分この姿を勘違いされたのかと」


ナヴィは半獣人化し、リオネルとほぼ同等の

姿になってみせた。


すると室内は獣の咆哮のような声で包まれ―――

激怒した長老が彼女たちを叩き出すまで、その

喧騒は続いたのだった。




―――10分後。

改めて長老・リオネル・ナヴィとで話し合いが

再開された。


「しかし、しょの……

 仲間が誘拐されているというのに、

 みなしゃんマイペースといいましゅか」


それを聞いた長老は手ぬぐいで汗をぬぐい、


「楽観的な者が多いのは事実です。

 何せ獣人族は、一般的な人種族より

 身体能力ばずば抜けておりますからのう」


「むしろ人種族に捕まっているとわかれば、

 『じゃあいつか帰ってくるだろう』に変わるかと。


 実際、鎖で縛ろうが縛っている先を破壊して

 戻ってきたり、重りであればその重りごと

 帰ってきた記録もあるくらいですから」


リオネルが補足するように話すが、ナヴィは首を傾げ、


「しかし、リオネルしゃん―――

 貴方が助けを求めに来た時はかなり焦燥しょうそうしている

 ように見えましゅたが」


彼の疑問に、獣人族の少年と老人は両目を閉じ、


「―――お話ししたい事があります。

 これは、我が村の恥とも呼べるのですが」


続いて、老人が口を開き、


「獣人族が人間に囚われるなど……


 本来、考えられない事なのです」




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5125名―――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ