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05・あの時の事はもういいでしゅよ

( ・ω・)仕事に行っている方が

シナリオがはかどる……

どうやら強制的にエンジンをかけられないと

いけない体質らしい(ダメ人間)



日本・とある都心のマンションの一室―――


ベランダで外の景色を前に、家主と思われる少女が

正座しながら不思議な踊りを踊っていた。

そこへペットと思われる飼い猫がドアの隙間から現れ、


「何をしているんですかフィオナ様。

 新しい宗教ですか?」


「女神を前にしてよくも言えたなお前。


 いえまあ……

 最近ちょっと天候不順と言いますか、曇りがちじゃ

 ないですか。

 雨もポツポツ振るし」


彼女の言葉に、ナヴィがベランダ・ガラス戸越しに

外を見ると、どんよりとした厚い雲が見える。


「なるほど。

 それで、晴れるようにお祈りでもしていたって

 ところですか」


「そーなんですよ。

 何ていうかこう、傘持っていくかどうかわからない

 中途半端な天気ってイヤなんですよね」


すると、じーっとナヴィはフィオナの顔を

見上げるようにして見つめ、


「な、何ですかナヴィ?

 アタシの顔が何か」


「……いえ、以前私が雨の日にだるくて前後不覚に

 おちいった(5章34話目)のを再現しようと狙って

 いたのでは―――

 と思っていたのですが」


すると女神は立ち上がって両手を腰につけ、

胸を張るように、


「そうか、その手があったか!!

 (何を考えているんですか、そんな事思いも

 しませんでしたよ!)」


「驚くほどに本音と建て前が真逆ですね。

 そこまでいくといっそ清々しいです」


お目付け役(猫Ver)のツッコミを受け、女神は

うずくまり―――


「し……しまった……

 アタシの心の奥底にしまわれた深淵しんえんが、

 こんな形で」


「深淵普段から結構ダダ漏れというか垂れ流しだと

 思うんですけどね。


 それじゃそろそろ、本編スタートしましょう」




│ ■オリイヴ国 ガルバン家     │

│ ■『女神の導き』オリイヴ国拠点  │




「ようこそおいでくださいました、ナヴィ様」


極端に短くした前髪を前に垂らすように―――

ガルバンは片膝を付いて敬意を表す。


「お久しぶりでしゅ、ガルバンさん。

 頭を上げてくだしゃい、ここではお世話になると

 思いましゅから」


初対面ではない二人はそれぞれの立場で挨拶を交わし、

すぐに向き合う。


「とても女神様の御使いを迎える場所では

 ありませんが―――

 どうかおくつろぎください」


それを見ていたリオネルは2人を交互に見て、


「ガルバン殿が女神様やその一行の見知りおきなのは

 知っておりましたが……

 よく会われるのですか?」


その質問に、ガルバンは首を左右に振って、


「いえ、以前フラール国で一度だけ……

 その節は大変な失礼をしてしまいまして。


 普段はそのようなご衣装なのでしょうか」


彼の視線にナヴィは苦笑しながら、


「あの時(5章1話目)の事はもういいでしゅよ。

 降臨しゅる事がわかっていましゅたのに、

 しょの用意をしてなかったこちらも悪いん

 でしゅから」


「えっと、それはどういう……」


会話に入れないリオネルはおずおずとたずねる。


「ああ、えーと……

 私とレンティルが初めてフィオナ様とナヴィ様に

 お目にかかかった時の事なのですが―――


 女神様が2人降臨してきたと勘違いを……」


「??」


それからしばらく、ガルバンとナヴィとで―――

当時の状況を彼に説明する事になった。




時を同じくして、ガルバン家の周囲に不審な人影が

現れ始めた。


「入っていったか」


「一人は間違いなく獣人族だったぜ。

 もう一人の少年はアレか、例の女神様のお仲間か」


内容からして、友好的ではないやり取り。

だが荒くれ者というより、スレンダーな体付きを

しており―――

隠密行動に特化した『役割』を思わせる。


「ようやく動けるってワケだ。


 獣人族の集落を探る―――

 それには、『住人』に案内してもらうのが

 一番だからな」


「獣人族の身体能力には追い付けまいが、

 普通の人間、ましてや子供が一緒なら遅れを取る

 事はないだろう。


 『枠外の者』の情報通り―――

 ノコノコと出て来てくれて、有難い話だぜ」


そして彼らは、対象が出てくるまで物陰に身を潜めた。




「ではナヴィ様、ひとまず我らの住処まで案内を……」


そのリオネルの言葉を、片腕を上げてガルバンが

中断させる。


「?? どうしたんでしゅか?」


「……それはしばらく、延期した方がいいかも

 知れません」


彼の申し出に、ナヴィは聞き返す。


「しょれはどうして?」


「トニックさんとソルトさんが調べてきてくれた

 情報なのですが―――

 お2人が言ってたんです。


 『今回は楽だった』、『すぐにわかった』と……


 それでちょっと違和感が」


リオネルが不安そうな表情になり、


「もしかして、敵がわざと?」


「あのお2人の能力を疑っているわけではありません。


 ですが、それだけに―――

 彼らの言葉が引っ掛かりました。


 『違法』ではないので、知られてもいいと思っている

 可能性もありますが」


さすがに組織のリーダーであるガルバンは、楽観的に

物事をとらえない。

そして、それを認めるようにナヴィも答える。


「まあ、しょれは正しいでしゅね。


 ココ―――

 見張られているでしゅよ」


その言葉にガルバンは身構え、リオネルは気を逆立てて

周囲の気配を鼻で伺う。


「……!

 確かに、敵意のある人間に囲まれています。

 数はおよそ4、5人……!」


「という事はやはり……!

 ナヴィ様、ここは行動を控えられた方が」


心配してナヴィに顔を向けるガルバンに、

女神の従僕は頬をかいて、


「しょうでしゅねえ……

 では、これからその住処へ行きましょうか」


「へ??」


「はい??」


ナヴィの返答にガルバンとリオネルは同時に声を上げ、

そして顔を見合わせた。




10分後、ナヴィは獣人族の少年と共に外へと出た。


「! オイ、出てきたぞ」


「くれぐれも見失うなよ。

 集落さえ突き止められれば、それでいいんだからな」


目の前に現れた『標的』を前に―――

彼らはそれぞれが色めき立つ。


そしてナヴィとリオネルは家の前で、屈伸や軽い

その場で軽くジャンプなどを始めた。


「……何の真似だ、ありゃ?」


「走るつもりかね。

 いくら何でも、ガキの足に置いていかれる

 なんて事は―――」


まずは様子見という事で、彼らは息を潜める。




「じゃあ、打ち合わせ通りにお願いしましゅ」


「は、はい」


見張っている連中の思惑をよそに、ナヴィとリオネルは

行動を開始した。


ボッ、という音がしたかと思うと、砂ぼこりが

舞い上がり―――

まず、獣人族の少年の姿が消える。




「は??」


「えっ?」


『標的』の速さは知っていたつもりだった彼らも、

目の当たりにしたその速度に驚きを隠せず―――


対象がどこに行ったのか周囲を見渡すと、一人が

仲間に小声で情報を伝える。


「……う、上だ!」


指摘通り、リオネルは少し離れた高い建物の上にいた。

しかし、それを確認したのもつかの間―――

再び、地面を蹴る音、そして砂ぼこりが舞った。


「……は、はあ!?」


「おい、見失うなよ!

 ……クソッ!!」


そして、リオネルが先導する形でそこにナヴィが

続き、それを見上げながら不審な一団が追いかける、

という構図になった。




「リオネルしゃん、ちょっとスピード落とすでしゅ。

 引き離しつつありましゅので」


「は、はい……!

 一人は付いて来させる、でしたね?」


ナヴィは、リオネルとガルバンにある事を

提案していた。


それは―――

あえて自分たちも、ある程度情報を流す事である。


十中八九、『枠外の者』か『新貴族』が絡んで

いるであろうが……

まずそれを突き止めなければならない。


なのでまず、調査をわざと進ませるようにして、

その連絡先をあぶり出す、という狙いがあった。


「住処まで案内する必要は無いでしゅ。

 そこまでしゅると危険でしゅから。


 少し離れたところまで誘導したら、しょこで

 振り切って―――

 しょの後、逆に見張るでしゅよ」


「わかりました。

 そこからは打ち合わせ通りに……!」


そしてスピードをコントロールしながら、

つかず離れず追手を尾行させ―――

やがて彼らの住処があると思われる、森へ到達した。




「クソッ!!

 獣人族はともかく、もう一人のあのガキは

 何なんだよ!?

 引き離されないようにするのが精一杯だ……!」


追手の一人は2人に続いて森の中に入るが、


「……はっ?」


足場を、高い建物から樹上へと変えた彼らは、

目の前で二手に別れた。


「ちっ!!

 オイ、俺は獣人族のガキを追う!

 お前らは―――」


と、彼が周囲へ声をかけようとした時、

そこでようやく仲間が誰一人ついて来ていない

事に気付いた。


「く……!

 ど、どうする!?

 どっちを追うべきか……?」


その一瞬の迷いが、否応無く彼の行動を決定した。


瞬く間に2人の姿は遠く小さくなり、そして視界から

完全に消える。


彼は『完全に見失った』という事実を確認すると

同時に、木々の間から見える狭い空を見上げ―――


「……まあいい。

 連中の集落がこの森にある事だけはわかった。


 まだ森の入口だし、いったん引き上げてから

 体勢を立て直すとしよう」


そしてくるりと方向転換すると、森の外へ向かって

歩き出した。




だが、彼の行動は―――

二手に別れたと思っていたナヴィ・リオネルに

監視されていた。


すでに合流した彼らは、取るべき次の手について

話し合う。


「引いて行きますね。

 ナヴィ様、これからどうすれば―――」


「リオネルしゃんはいったん住処へ戻って

 くだしゃい。

 彼は私が尾行して確認してきましゅ」


ナヴィの申し出に恐縮して、リオネルは

聞き返す。


「い、いえ。

 それはわたしめの役目では……」


「貴方は先に住処に戻って、『女神の導き』が

 女神とその一行に連絡が付いたと報告して

 欲しいんでしゅよ。


 きっと、調査の進展を知りたがっていると

 思いましゅから―――」


その言葉に、リオネルは深く頭を下げて、


「……わかりました。


 我々の住処はこの先です。

 近くまで来ましたら、すぐに迎えに上がり

 ますので」


「よろしくお願いしましゅ」


そして、リオネルと一緒にいた樹上から、

ナヴィの姿だけが消えた―――




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5120名―――




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