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04・めっちゃ気になりますけど

( ・ω・)2周年目の今回、この小説の本質―――

衝撃の事実が明かされる!!(大ウソ)



日本・とある都心のマンションの一室―――


そこで、部屋の主と思われる少女が正座し、

ペットと思われる猫と向き合っていた。


「アタシがヒロインのこの小説も―――

 今回で2周年を迎えます」


「ヒロイン? それはどこに?」


「0.5秒以内に第1フェーズで否定すんな。

 話続かないでしょ」


女神・フィオナの話に、お目付け役・ナヴィは

上半身を起こし、前足を揃えて座る。


「アタシはですね。

 この前、このような事を耳にしたんです」


「何でしょうか?」


彼女は真っすぐに視線を合わせると、

彼の方もまた姿勢を正す。


「ある小説なのですが―――

 タイトルや説明欄に『女子中学生』と入れた

 ところ、PV数が一気に増えたと」


「ふむ。それで」


くだらない事だと瞬時に理解したナヴィは、

そのまま毛づくろいを始める。

それに構わず彼女は続けて―――


「そこで今回!

 2周年となった節目に!!

 この小説のタイトルを―――


 『■異世界と女神とアンカーと』から、

 『■異世界と美少女JK女神とアンカーと』に

 変更すれば!!

 PV数爆上げ間違いないってワケですよ!!」


「美少女JK女神って直訳すると、

 美少女女子高生女神になって女が3つ入って

 いるんですけど頭悪そう」


容赦の無い率直な感想で女神の提案を切り捨てる

お目付け役。

それに反発するフィオナは―――


「べ、別にいいじゃないですか!

 こういうのは勢いというか」


「いやだってそもそもフィオナ様は学校とか

 学園とか通ってないですし……

 それに人間の年齢で言えば100才なんてとっくに」


なおもナヴィによる無慈悲なツッコミは続き、


「だーかーらー!!

 何でそんなに水を差すような事ばかりしか

 言わないんですか!」


「落ち着いてください、フィオナ様。

 おかげで今回の茶番ノルマも達成出来ましたので、

 そろそろ本編スタートしましょう」


「ノルマだったのこの茶番!?」


淡々としゃべるナヴィとは対照的に、女神は

目を丸くして驚く。


「そりゃそうですよ。

 こんなクソ小説、最初の『つかみ』が無ければ

 読者がブラウザバックするでしょうし。

 それに本編がグダった時の保険でもあります」


「2周年目にして知る世知辛い驚愕の真実!!」


「さ、それじゃさっさと本編スタートしましょう」




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




「では、行ってくるでしゅよ」


アルプの義祖父母の屋敷で、ナヴィは身支度を

整える。


「留守はお任せください」


「俺もポーラと一緒にいるから、何かあった時は

 報せてくれ。

 神託の定期連絡の時はココにお邪魔していると

 思うから」


第三眷属と、第一・第二眷属の重要な取引先の

商人であるシモンは2人並んで見送る。


「馬車は用意しました。

 オリイヴ国まで直行してくれるはずです」


「気を付けてね。

 ナヴィ様も、リオネルさんも」


屋敷の主である老夫婦も、彼らを見送る。

そこで見送られる2人の一方は―――


「あの、ナヴィ様に来て頂く事になり、

 恐悦至極きょうえつしごくなのですが……


 女神・フィオナ様と離れて本当に大丈夫

 なのですか?」


獣人族の彼は、ナヴィに対して不安そうな視線を

向けるが、




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「だってぇ~……

 オリイヴ国に眷属いないんですもの……

 こればかりは仕方無いですよ」


神託が各国につながれており―――

アルプと母親のソニア、そして同行してきたメイが

困惑しながら見守る中で、

テーブルに顔を伏せながら女神は答える。




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「アタイとファジーも、バーレンシア侯爵様が

 この国に作ってくれたフルーツの加工工場の

 手伝いで、しばらく動けねーし」


「鉱山を任せているスタウトさんはさすがに

 いっぱいいっぱいですから……


 確かグラノーラさんやビューワー伯爵様も

 その関連で忙しいのでしょう?」


第二眷属の少年とその姉も、事情を伝え―――




│ ■ボガッド家屋敷      │




「アルプも、今は果樹園の植え付けや準備で

 手一杯でしょうからな」


「あの子には、神託を受ける役割もありますし」


第一眷属の義理の祖父母も、状況を補足する。


「ポーラさんも、神託を受けるためにバクシアに

 いてもらわないと困るでしゅからね。


 とゆーわけで―――

 サボるんじゃないでしゅよ、ダ女神」




│ ■アルプの家          │




「アタシの仕事ほんしょくは本来『果樹の豊穣』だっつーの!!

 サボるワケないでしょーが!!」


それを見てあたふたとアルプがなだめに入る。


「あ、あのっ、すいません!

 でもこの仕事は、フィオナ様あっての

 ものですから!」


すると今度はフィオナがあたふたとなり、


「い、いいんですよアルプ。

 あくまでも人間の生活が最優先―――

 その方針に変わりはありませんから。


 ではナヴィ……

 リオネルさん、そして獣人族の助けになるよう、

 よろしくお願いします」


そして、ひとまずはナヴィ、そしてリオネルが

オリイヴ国まで行ってガルバンと連絡を付ける

事になった。




│ ■ボガッド家所有馬車 車中  │




「……この馬車、ずいぶんと速いように感じますが」


「ローンしゃんが用意してくれた馬車でしゅ。

 緊急事態である事はわかっていると思うでしゅから」


速度を上げて走る馬車の中―――

ナヴィとリオネルは再確認も兼ねて、情報を交換

していた。


「―――で、リオネルしゃんの村というか、集落自体は

 大丈夫なんでしゅね?」


「はい。行方不明になったのは、あくまでも

 住処の外だと思われます。


 薬草や遊びに行った年少者が帰って来なくなった、

 という事で発覚しましたので。

 ですから今のところ、わたしめ以外の外出は

 禁じております」


「ふみゅ。賢明な判断でしゅ」


どちらにしろ、オリイヴ国に到着しなければ

始まらず―――

リオネルはだんだんと、事件以外の事も会話に

出すようになる。


「ところで、その……

 ナヴィ様は―――


 すいぶんとフィオナ様とはくだけた様子で

 お話ししているようですが、どのような

 ご関係なのでしょうか?」


「んー……

 私は本来はフィオナ様のお母様である、

 アルフリーダ様の従僕なんでしゅ。


 フィオナ様とは腐れ縁とでも思って

 頂ければ」


「腐れ縁!?」


ナヴィの説明にリオネルは思わず声を上げる。


「まあ、気にしないでいいでしゅ」


「気にしますけど!?

 めっちゃ気になりますけど!?」


「アレは、何もしない時はただのしゃべる石だとでも

 思っておけばいいでしゅから」


「女神様の扱い、結構酷い事になってませんか!?」


こうして、にぎやかな喧騒を乗せたまま―――

馬車はオリイヴ国を目指した。




│ ■オリイヴ国・某所   │




同じ頃―――

とある薄暗い一室で『枠外の者』たちが再び

集まっていた。


互いに表情が見えない中、声だけで性別、立場、

意図を識別し、会話を交わす。


「例のオークション―――

 『女神の導き』が、嗅ぎまわっているようだ」


男と思われるその言葉に、抑揚の無い異性の声が

答えを返す。


「という事は、かかったってワケね?」


「ああ。あえてスキを見せてやったのだが、

 まんまとエサに食らいついた」


嘲笑とも、微笑とも取れない笑いが室内に響き、

一瞬静寂が戻った後、やり取りが再開される。


「どのくらいのモノが釣れそう?」


「女神の従者の少年が一人―――

 獣人族と一緒にオリイヴ国へ向かっている、

 との事だ」


飲み物があるのか、陶器製のカップを置く音が

暗闇に木霊し、


「たったの2人か……

 偵察か、それとも先手さきてのつもりか」


「まあ、いいじゃない。


 その2人に何かあれば―――

 女神様とやらも、登場しないワケにはいかない

 でしょう?」


そこで、年配の男性のものと思われるため息が聞こえ、


「そう願いたいものだ。


 フラール、ルコルア、ミイトと来て―――

 マービィ国での儲け話も消えた。


 何としてでもここで、『対処』するのだ……!」


「今の我々の計画や行動に取って最大の障害は、

 間違いなくあの女神様とその一行……


 そして女神と称する者こそが、中枢であり

 精神的支柱でもある―――


 それさえ『対応』出来れば……!」




│ ■アルプの家          │




「ぶえっくしょい!!


 何かどこかでアタシの評価が両極端になっている

 ようなそうでないような」


何かを感じ取った女神は、第一眷属の家で

盛大なくしゃみと共につぶやく。


「あ、あのフィオナ様。

 今すごく大きなくしゃみが―――

 もしかして、果樹の豊穣のために力を使い過ぎて

 いるのでは?」


そこへアルプが現れ、彼女の身を気遣う。

すると女神は彼に見えないように0.1秒だけ

ニヤリと笑うと、すぐに表情を曇らせ、


「だ、大丈夫……です、アルプ。

 これが本来のアタシの仕事、です、から」


露骨に疲れた様子で振舞うと、少年は心配そうな

表情で駆け寄り、


「フ、フィオナ様っ!

 どうか今すぐお休みになられて……!」


「これは大変だーじゃあわたくしがフィオナ様を

 ベッドまで運びますので」


と、いつの間にか現れたメイがフィオナをお姫様

抱っこで持ち上げ―――

部屋の外へと消えた。


「(こんちくしょうがあぁああああ!!!)」


と、女神は心の中で叫んだが―――

当然それは誰にも聞こえなかった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在5103名―――



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