39・なので諦めてください、貴方が
( ・ω・)次で5章ラスト(予定)
6章ネタはこれからだけど、5章も何とか
なったし・・・(願望)
日本・とある都心のマンションの一室―――
台所から、母親と思われる声がリビングの娘に
呼びかけられる。
「フィオナちゃん、お昼出来たわよ。
ナヴィも一緒に食べるから、人間の姿に
なりなさい」
「はぁ~い、ママ」
「わかりました、アルフリーダ様」
そして台所から料理を持ってきた彼女は、テーブルの
上にそれらを並べて―――
少女と少年の着席を促す。
そして3人で昼食を食べ始め―――
2人は母親・主人の作った手料理に舌鼓を打つ。
「んん~……
ママの料理は相変わらず最高ですね」
「ちょっと練習すれば、フィオナちゃんもこれくらい
出来るようになるわよ。
そういえばアルプって眷属のコ?
あのコのためにも料理を覚えるって言ってたけど、
そのコとはどれくらい進んでいるの?」
母親の質問に、娘はモゴモゴと答えにくくなり……
「ま、まあ……
尊敬はされているようなんですけど、その……
まだ恋愛感情ではないよーな?
す、好かれているとは思うんですよ!
でもそれが、愛情と呼べるかとゆーとー……」
同居人が困っている状況に、ナヴィは助け船を出す。
「しょういえばユニシス様は―――
お話を聞きましゅに、ほとんど最初の頃から、
アルフリーダ様に傾倒と言いましゅか、しょういう
感情を抱いていたと思われるのでしゅが……
アルプ君との違いはいったい何でしょうか?」
自分の伴侶に話を振られた女神は、スプーンを
くわえたまま、んー、と考え込み、
「パパのいた世界は、ちょっとレベルというか
ハードルが高かったからねー。
そこで私のサポートがあったとはいえ、その世界の
救世主、神にまで上り詰めたんだから……
そりゃあ燃え上がるってモンよ!
あの時のパパ、本当に格好よかったのよー♪」
話がノロケに方向転換し、長くなりそうだと判断した
娘は、すかさず元へと引き戻す。
「そ、そうですねっ!
一緒に困難に立ち向かうほど、強い絆が生まれるって
言いますしー」
フィオナの答えに、アルフリーダは一息ついて、
「まあでも私の場合は、初めての信仰地域で、
初めての眷属で―――
その上、難易度が高くても何とかなった、って
ケースだからね。
あんまり参考にならないわよ。
第一、あのアルプってコ?
『フィオナ様の敵は皆〇しです!』ってタイプの
キャラじゃないでしょー?」
まあ確かに、と少年少女は顔を見合わせてうなづき、
「今そっちは別に戦争状態ってわけでもないんだから、
焦らないでゆっくりやりなさい。
それじゃそろそろ、本編スタートするわね」
│ ■マービィ国・某所 │
│ ■飲食店 │
「……このような場所にお呼びになるなんて。
少しは女性のエスコートの仕方を覚えましたか?」
大国とは比べ物にならないが、女性と同伴で入るには
かろうじて『合格点』といった店で―――
レイシェンはかつての婚約者と対峙する。
「あのボロ宿で別れを告げるには……
少々味気ない気がしてな」
マイヤー伯爵は彼女を目前にして―――
両目を閉じ、無表情と思える様子で語る。
「今回は―――
わたくしの勝ち、ですね?」
「奇跡に勝つ方法など私は知らないからな。
それに、バーレンシア侯爵様か。
クルーク豆がブランド化されたのは、彼の
提案によるものと聞いているが。
私と別れてから―――
ずいぶんと有能な男を見つけたようだ」
彼の回答に、彼女はクスリと笑い、
「……貴方が有能ではないと、思った事など
ありません。
ただ、バーレンシア侯爵様の方が優秀だった
だけですわ」
「そうか。君にそこまで言わせるとは―――
一度会ってみたいものだ」
│ ■フラール国・バクシア国代官館(改) │
「何か僕の知らないところで、また必要以上に
評価が上がっている気がする!!」
遠い異国の地でバーレンシア侯爵は何かを感じ取り、
誰もいない室内で一人、彼は叫ぶように声を上げた。
│ ■フィオナ一行宿泊部屋 │
「ただ今戻りました、フィオナ様」
「あ、シッカ伯爵様。お帰りなさい」
「お帰りでしゅ」
それから30分ほどして―――
レイシェンが宿泊している部屋に戻ると、眷属と
お目付け役の少年2人が出迎えた。
「留守にして悪かった、アルプ殿、ナヴィ殿。
それで、わたくしがいない間……
何かありましたか?」
護衛としての質問を発すると、女神が片手を上げ、
「別に何もありませんでしたが―――
シンデリンさんが、レイシェンさんに用がある
そうですよ?
上の階の部屋で待っているって言ってました」
「?? 彼女がわたくしに……ですか?」
伯爵令嬢は首を傾げるも、同室にいる他のメンバーも
理由はよくわからないらしく―――
「事はすでに決しましたので、たいした用では
無いと思われますが……
取り敢えず行ってきます」
彼女は、女神一行に断りを入れると―――
トーリ家姉妹の待つ部屋へと向かう事にした。
│ ■温泉宿メイスン・最上級客室『光の間』 │
│ ■シンデリン一行宿泊部屋 │
「お待ちしておりました」
「お邪魔する―――
……!」
ノックをし、名を名乗り、従者であるネーブルに
室内に通された彼女は、予想外の客がいる事に驚きを
隠せなかった。
「やあ、伯爵令嬢様」
「ラムキュール……殿。
どうしてここへ?」
かつて知ったる顔ではあったものの―――
少なくとも味方ではない存在に、不快感たっぷりに
目的をたずねる。
「まあそんな顔をしないでくれ。
今回、私も儲けさせてもらったから、その
お礼に……ね」
「ほう?
女神様を信じていたとでも?
貴方にそんな殊勝な心掛けがあったとは
知らなかった」
その会話を見ていた部屋の主が口を挟み、
「ねー、人の部屋でそういうやり取りは
止めてくれないかしら?
要はアレでしょ?
結果として儲かったけど、決して女神様の
側に付いたわけじゃないって、アピールしに
来たんでしょ?」
ラムキュールの意図を余さず口に出し―――
レイシェンは呆れたような、ラムキュールは
安心したような表情になる。
「そう言う貴女は残念でしたね。
せっかく女神の眷属を奴隷に出来そうな
機会を……」
「……人聞きの……悪い……
あれはあくまで……奉公労働者……」
『枠外の者』の男の言葉に、今度は妹である
ベルティーユが答える。
そして、姉もそれに続く。
「それを言うのなら貴方も、でしょう?
今回の目的はマービィ国の経済破壊―――
それに伴う、奉公労働者のオークションだったはず」
「それがまぁ、イキのいい若者を手に入れまして。
ファーバ君でしたかね?」
それに対し、伯爵令嬢が微妙な顔になる。
「ファーバといえば―――
マービィ国の『枠外の者』ではないか?
それをどうして貴方が?」
「何、今後―――
私の手足となって働いてもらうつもりですよ。
少々生意気なところがありましたが、それは
おいおい、調教して大人しくさせましょう。
思い通りに動いてもらうために、ね」
あくまでもラムキュールは、同じ『枠外の者』の
先輩として、調子に乗った後輩を懲らしめる程度の
意向として言ったのだが、それを聞いた女性3名は
「イキのいい若者……」byシンデリン
「生意気……調教……」byレイシェン
「大人しく……させる……!」byベルティーユ
「思い通り……!」byフィオナ
そして誰からともなく円陣を組み、女性陣は
男性陣にはわからない会話を始める。
「ん? あれ?
いつの間にか1人増えていないか?
あの少女、どこかで会ったような……」
室内に突然出現し、しれっと女性陣の会話に混ざる
女神・フィオナを前に―――
彼は記憶と現状の間を行き来する。
│ ■フィオナ一行宿泊部屋 │
同じ頃―――
突然、自分の主筋である少女が消えた事に、眷属の
少年は困惑していた。
「あ、あれ? フィオナ様、どちらへ?」
そこへ、飲み物を持ってきたナヴィも異変に気付く。
「んん? フィオナ様がいない……
ちょっと待ってくだしゃい、今、神託を繋いで
みましゅから」
そう言うと彼は意識を集中させ―――
フィオナとの神託を開いた。
│ ■シンデリン一行宿泊部屋 │
「これはアレですよ、今回の件で一番の爆弾と
言いますか」
部屋の主の意見に、伯爵令嬢も参加し、
「思わぬ伏兵がいたものだ……
このわたくしの目を持ってしても見抜けなかった」
続いてベルティーユが、そしてフィオナも―――
「……この展開……熱い……!
上下関係……!? 下剋上アリ……!?」
「仕事上とプライベートのギャップが……
グフフ……♪」
自分を圏外に置いて話し始めた4人を見つめながら、
ラムキュールは同室の同性であるネーブルに視線を
移すが、
「ああ、あれは病気が再発しているだけですから」
「病気!?」
思ってもいないワードを返された事で、彼はさらに
混乱するも、
「なので諦めてください、貴方が」
「私が!? 何を!?」
と、困惑を極める彼をよそに―――
貴腐人たちの話は盛り上がっていった。
│ ■フィオナ一行宿泊部屋 │
一方で下の階では―――
両目を閉じて無言になるナヴィを、アルプが心配そうに
見つめていた。
「ナ、ナヴィ様。
どうですか?
フィオナ様は見つかりましたか?」
その質問に、彼はゆっくりと目を開けて、
「あー……上の階にいましゅね」
「?? 上の階と言いますと……
シンデリンさんの部屋?
でもどうしてそんなところへ」
眷属の少年の問いに、お目付け役はふー、と
ため息をついて、
「まあ何と言いましゅか……
腐った者同士は惹かれ合う……
とでも言っておきましゅ」
「?? 腐った?」
ナヴィの言葉を理解出来ず―――
アルプはただひたすら、懸命にその意味を
模索した。
│ ■マービィ国・ファーバ邸 │
それから1時間ほどした後―――
マービィ国の『枠外の者』の拠点に、マイヤー伯爵が
訪問していた。
「それで、どうなったのかね?」
「……ラムキュール殿が現物を回してくれたおかげで、
何とか首の皮一枚つながりました。
高い勉強代になりましたよ」
ファーバはヤケ酒のようにグラスをあおると、さすがに
貴族の前で乱暴な振る舞いは控え、静かにテーブルの
上に置く。
そこへノックがされ、話にあったもう一人の
『枠外の者』が顔を出す。
「どこへ行っておったのだ?
ラムキュール」
「これはマイヤー伯爵様。
いえ、この国での事が済みましたので……
同じくマービィ国へ来ている『枠外の者』へ
あいさつを、と。
そうそう、あの伯爵令嬢もおりましたが……」
そこで彼の言葉は止まり―――
屋敷の主と伯爵は、その先を疑問と共に促す。
「?? おりましたが……何です?」
「彼女がどうかしたのか?」
しかし、当のラムキュール本人自身、どう説明したら
いいのかわからず、状況のみを伝える。
「いや、私がトーリ嬢に同じ『枠外の者』として、
ファーバを傘下に置いた、と報告したら……
妹や他の女性たちと何やら話し合って……
内容はよくわからなかったが、なぜか
盛り上がっていたと思う」
それを聞いてファーバは首を傾げるが、
マイヤー伯爵は、
「彼女も、それさえ無ければなあ……」
そう言って深いため息を付き―――
『枠外の者』2人は、意図がわからずに
佇んでいた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在3901名―――