35・……大・改・造……!
( ・ω・)現状、週に50kbほど書いていますが、
先に『■異世界~』を終わらせた後、『私には常識~』
を書いています。
天界・フィオナの神殿―――
高級そうな調度品が、部屋の上品さを損なわない程度に
数少なく置かれる中―――
テーブルを囲んで、ユニシスとアルフリーダが娘、
そしてお目付け役(猫Ver)と語り合っていた。
「でね、ママ。
いよいよマービィ国でも、最後のシメっていうか
最終段階に突入するのよ!」
「そうした後、どう動くはまだ想定が出来ませんが……
フィオナ様の名を知らしめる事にはなるかと」
フィオナとナヴィの報告を聞いて、母親は一口、
飲み物に口を付けると、
「ええ、フィオナちゃん。
思う存分八つ裂きにしてらっしゃい♪」
「言葉選んでママ!!
そういう話じゃなかったよね!?」
父親は慌てて妻の発言にフォローを入れる。
「しかし、今までは人知れず裏で何とか
解決してきた……って感じだったけど―――
今回は! 初めて! 神様として!!
大々的にあっぴーる出来るというわけですよ!」
「まあそれが無いと、ただの植物のオバケを放って
混乱と、さらなる市場崩壊の加速を招いただけに
なるわけですが」
テンションを上げる彼女に、お目付け役は液体窒素を
ぶっかけるレベルで急速冷凍する。
「いやその、終わり良ければ総て良しって事で……」
場を取り繕うようにユニシスが口を開き、そして
アルフリーダが続ける。
「そういえばパック? でしたっけ。
そのコはどうするの?
ぱんつぁーふぁうすとのように後で回収する?」
「そうだねえ。
一応、そっちの世界でフィオナが作った
物だけど、そのままにするとお役所の人の胃に
穴が開くかもしれないし……
事が済んだら、どこか一ヶ所で大人しく
しておくように伝えてくれ」
父親の提案に、フィオナとナヴィはそれぞれ
頭を下げ、
「わかったわ、パパ」
「ではそのように……
それではそろそろ、本編スタートしましょう」
│ ■温泉宿メイスン・大部屋 │
│ ■フィオナ一行宿泊部屋 │
「……それでは、決行は本日夕刻。
日の入り前という事で。
『女神の導き』のメンバーには情報を
前もって知らせてありますゆえ」
レンティルはフィオナ一行を前に、地図を広げ
最後の確認をする。
突然出現した異形の植物の化け物―――
それらを女神が退治、追い払うという筋書きで、
作戦計画は進み、実行の時を待っていた。
「それはわかるんですけどねえ……」
地図を囲む一行の外側で、ネーブルが不満とは
いかずとも複雑そうな表情で佇む。
「だって、農業特区は4ヶ所あるんでしょ?
レンティルさん」
「……フィオナ様、ナヴィ様、アルプさん……
……1人、足りない……」
フラール、バクシア両国、そして『女神の導き』に
伝えられた作戦では、それぞれの特区に『女神』が
赴き、混乱を解決する手はずとなっていた。
「だからって、何で私がまた……
女神様の役ならば、お嬢様やベルティーユ様だって」
「だって私は商人としてクルーク豆を扱っちゃって
いるし……
先物取引をする女神様ってのもねえ」
「……私は……シンデリンお姉さまと……
ネーブルお兄ちゃんのお手伝い……
……裏方に徹する……!」
異議を唱えるネーブルに、姉妹は両側から挟み込む
ようにしてそれを封じる。
「それに、他の素材も大変よろしいのよねぇ~♪」
彼女がアルプとナヴィの2名に目を向けると、
眷属の少年は下を向き、女神の従僕は困ったように
目を閉じた。
「ま、まあ……その、ナヴィ様の方は、この目で
確かめた事もありますし(5章1話)……
あの時は女神様が二人いらっしゃったのかと
勘違いしたくらいですから」
「いえ……ナヴィ様の『あの』お姿を初めて
見た人は、致し方ないかと」
レンティルはフラールでの降臨を思い出し、
言いにくそうに同意する。
そしてレイシェンも彼に続いて追認した。
そして姉妹は、『素材』の顔を一人一人―――
ネーブル、ナヴィ、アルプと、肌触りを確かめる
ように触れていき、
「んっふふふ~……
これだけ元が極上なら、きっとお化粧のノリも
違うわぁ……♪」
「……ん……多分……
最低限で済む……はず……」
そのまま順番に回るようにして、フィオナの前に
位置取り、姉妹は彼女の顔を撫でまわすと、
「これは……
財力と技術を総動員させないと難しいかも……」
「……大・改・造……!」
「ウ”ォイッ!?
アタシは生物学上、最初から女なんですけど!?」
3人のやり取りに、他の一行は困惑しながらも
どうしていいかわらかないまま、その光景を見守る。
するとシンデリンはフィオナの体をくるっと回らせて、
ネーブル・ナヴィ・アルプの方を向かせる。
「でも……こう言っちゃ何だけど、あなたの対抗馬、
こちらの方々よ?」
彼ら3人の顔をフィオナはじっと見つめ―――
「あーうん。
ちょっと染色体の減数分裂からやり直さないと
勝てるレベルじゃないッスね」
「……現状……把握……
OK……?」
その光景をまた、他の一行は何も口に出せないまま
見つめ―――
その沈黙をレイシェンが破った。
「そ、そういえばフィオナ様、例の件ですが……
別行動はいいとしても、どう動くかお決めに
なられたでしょうか?」
「あー、それね。
う~ん……」
『例の件』とは―――
この国の農業特区は4ヶ所あり、『女神』4人が
それぞれ、分担して行く事になったのだが……
「農業特区までは『女神の導き』メンバーがご案内
いたしますが、我々に、あまり武力に長けた者は
おりませんので……」
レンティルが重そうに口を開き―――
それについて『女神』担当者の2名が続く。
「私とナヴィ様は、単独行動でも構いませんが」
「問題はフィオナ様とアルプ君なんでしゅよねえ……
アルプ君にはレイシェンしゃんを護衛に付けるから
いいとしても―――」
「あり? アタシはノーガード前提?」
フィオナは抗議の言葉すら出ずに目を白丸にして
無表情になるが、さすがにそこへナヴィから提案が
追加される。
「こういう時こそ『アンカー』に頼ってみては?
多分、ここで使うのも最後と思われるでしゅし」
「そ、そうね……!
ちょっと相談してみるわ」
そして彼女は精神を集中し、地球の自分の部屋の
PCを通じて―――
『アンカー』たちへ状況を伝える。
「(とゆーわけでして……
アタシが農業特区に向かう時、どうしたら
いいのかなー、なんて?)」
【 で、スキルは果実を実らせる事だけ? 】
【 鉢植えでも持って行けばどうだ? 】
【 もし襲われても、目の前で花でも咲かせれば
時間稼ぎ出来るかも…… 】
と、あまり楽観的な答えは返って来ず―――
「(む、無理に戦う方向で考えなくても
いいですからっ!
一応、『女神の導き』のメンバーの手引きも
ありますし!)」
そう話すと、掲示板内の反応はまた違ったものになり、
【 あー……
それなら、目立たなく侵入すれば何とか? 】
【 でもまだ明るい内に片付けるんだろ? 】
【 う~ん……ちょっとレンティルとやらに
聞いてもいいか? 】
そこで彼女は、マービィ国へ意識を戻し、
指名された彼に質問をつなぐ。
「えっと、レンティルさん。
農業特区内にまで入り込んでいる、
『女神の導き』のメンバーはいます?」
「え? は、はあ……
内部にまで、というのは……
あ! いえ、1つだけあります。
ゴミ出しや雑用のため、1日に数回裏口へ
出入りする者がいるのですが。
そこからならば、入れるかも知れません」
その答えを聞いて、さっそく女神は地球にあるPC、
そして掲示板を通して『アンカー』たちに報告する。
【 ふむ。それなら何とかなりそうか 】
【 まあ手段選んじゃいられないし 】
好感触を得たフィオナは、答えを求めてさらに
語り掛ける。
「(話はまとまったようですね……!
では久しぶりに『アンカー』を!
『アンカー』は今のスレで……700!
聞きたい事は―――
『農業特区に入る場合、どうしたらいいか』!
―――さあ、アタシを導き給え……!!)」
>>700
【 裏門を開けてもらい、作業員か何かに
変装して紛れ込め 】
その答えを受け取ったフィオナは、マービィ国に
意識を戻して、
「超地味ィ!!!
超現実的!!!」
いきなり叫び出したフィオナに周囲は驚き、
唯一驚かなかったナヴィがフィオナの顔面を
片手でつかむ。
「しょれで?
とにかく説明するでしゅ」
「あがががががわかりました今すぐ説明させて
頂きますでございますです」
そして解放されたフィオナは、『アンカー』たちから
提案された策を全員に話し始めた。
説明を聞き終わると、情報屋のトニックとソルトから
それについての感想のような言葉をもらす。
「ま、堅実っちゃ堅実かな」
「俺たちみてーに、忍び込む術とか持ってなきゃ
仕方ねーっていうか」
すると女神は神妙な面持ちになって、
「確かに、神様としてはあまりに人間っぽい
方法かも知れません。
ですが、なるべく人を傷付ける事や、被害を
出す事は避けたいのです。
これは、ナヴィやネーブルさん、アルプを
護衛するレイシェンさんにもお願いします」
女神の話を聞いた一行は、彼女の方を向いて
一同に跪き、頭を下げた。
「(……よくもまあ、突然こうまでご立派な女神に
変われるものでしゅね)」
「(イイ感じで誤魔化せそうなんですから、
そこでツッコミ入れないでくださいー!!)」
フィオナとナヴィが心の中で問答する中―――
一同は『その時』を待つ事にした。
│ ■農業特区・研究試験所 │
日輪の外殻が地平線に落ち始めた頃―――
異形の植物にして今回の作戦立案者であるパックは、
敏感に気配を感じ取る。
「……イヨイヨ、カ……
我ガ主ニ、フィオナ様、ナヴィ殿、アト一人……
各々ノ特区ニ向カッテイルヨウダナ。
者ドモ、手ハズ通リニ動クノダ……!!」
彼の号令に呼応するかのように、ざわざわと他の
異形の植物たちもまた移動し始めた。
(アルプ、聞こえますか?
ナヴィはすでに自分の担当の農業特区へ
到着したようです。
恐らくネーブルさんも、でしょう。
そちらに何か問題はありませんか?)
大きな壁に囲まれた施設を前にして―――
『女神』となった第一眷属の少年は、護衛の
レイシェンと共に、壁に立ち向かうようにして
立っていた。
「はい、僕たちも到着しています」
「アルプ殿、フィオナ様からですか?
こちらはいつでも……」
そうレイシェンが言いかけて止まり、壁の向こうへ
視線を刺すように送る。
「どうしました、レイシェンさん?」
「何やら騒がしいような……?
壁の向こうで、何かが起きているようです」
そして耳を澄ますと、確かに悲鳴や怒鳴り声のような
喧騒が、そのトーンを大きくしていく。
「多分、パック殿かその仲間の陽動作戦でしょう。
この機を逃す理由はありません。
行きましょう、アルプ殿!」
「は、はいっ!
ではフィオナ様、僕たち行きます!!」
女神役の少年と彼女は一緒に走り―――
そして、一番手近な通用門のような場所へ
たどり着く。
そこはかつて見た厳重な警備とはほど遠く、
無人のような光景が彼らの眼前にあった。
「よし、アルプ殿!
あそこから入りましょう!」
レイシェンが扉に手をかけると、カギもかけて
無かったのか、あっさりと開く。
そして中に駆け込むようにして入った途端、
先頭の彼女が急に足を止め、続いていたアルプは
背中にぶつかった。
「あたっ!
ど、どうしたんですか、レイシェンさん」
しかし、彼女は少年の問いには答えず、そして
振り返らず―――
言葉を前方へ向けて発した。
「よりによって……
貴方か……」
名指しされた彼は、剣を向けて彼女に返答する。
「作戦自体は悪くなかった。
だが、欺こうとした相手が悪かっただけだ」
2人に対して歩を進める男の外見は―――
細身にすら見える体から、露出している部分は
ぜい肉など見えず、戦闘以外の用途をそぎ落とした
ような印象を受ける。
「まさか……
貴方が話に聞いた、マイヤー伯爵様……!?」
「察しがよいお嬢さんですな。
いえ、『女神様』ですかな?
グレイン国伯爵、リーゾット・マイヤーです。
どうか御見知りおきを……」
彼はいったん剣を下げると、女神の第一眷属に
対し、うやうやしく頭を下げた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在3288名―――