33・悪くはない……カウンター
( ・ω・)ネタが尽きたら、
・アルフリーダとユニシスの出会い編
・アルフリーダとナヴィの出会い編
でも書こうかな(メメタァ)
日本・とある都心のマンション―――
家主と思われる少女が、手で自分を仰ぎながら
リビングへと入ってきた。
「もー暑い暑い。
お目当ての店はいきなり改装工事とかで
やってなかったし―――
一時撤退して来たわー。
……ってアレ? ナヴィ?
どこにいるの?」
同じ部屋に住むお目付け役(猫Ver)を、周囲へ
目を向けて探すが、どこにもいない。
そして耳に、同居人が出す情報が入ってくる。
それはリビングに直結した廊下の向こう、
浴室から聞こえる、シャワーの音―――
(「え? お風呂?
しかもシャワー使ってるって事は人間Verで
入っているんだよね?
そっかーいつもこうやってアタシの留守の時に
入ってたのかー。
今回はアクシデント発生で早く帰ってきたから、
こうして出る前にアタシが来ちゃったと」)
そして、彼女の脳内に黒い何かが浮かび上がる。
それは姿形はフィオナに似ているものの―――
黒を基調とした衣装を身にまとい、
(フィオナ……
何を迷う事があるのです?)
「(はっ! 心の中の葛藤っぽいの!)」
そのままフィオナは、脳内の黒い自分と会話を始める。
(これは千載一遇のチャンス……
『もしかしてナヴィなの?』と何気なく乱入
するのです……)
そこへ、脳内にもう一人―――
白いドレスのような衣装をまとったフィオナが
出現する。
(だめです。のぞきなんていけません。
第一彼はトラップを仕掛けているはず……
初期の頃(1章12話)を忘れたのですか?)
すると黒フィオナは反論に転じ、
(いやいや……
あの時はすでに脱衣所から出ている時―――
いくら何でもお風呂場の中にまで仕掛けては
いないでしょう。
なので、奇襲をかければ勝機はあります……!)
白フィオナも負けてはおらず、
(何を言うのです!
確かに浴室の中は無防備かも知れませんが、
安心しきっているところを襲うなんて……!
そんな事をしたら、信頼関係にヒビが入りますよ!)
しかし、黒フィオナも一歩も引かず、
(それは若さゆえの過ちで誤魔化せます!
そもそも、お目付け役が油断するのが
悪いのです!)
白フィオナも即座に反応して言い返す。
(確かに、最初の一回は成功するかも知れません……
ですが今後、警戒レベルは跳ね上がり彼は二度と
失態を繰り返さないでしょう……)
「(ぐむむむむ……)」
文字通り白黒つかず、互いの言い分にフィオナ本体は
右往左往する。
(これが最初で最後のチャンスだとしたら?
もしそうだとしたら貴女は、後悔してもし切れない
事になるわ……!)
まだ煽る黒フィオナに、白フィオナも対抗し、
(ダメです!
ここはひとつ大人になって流しておけば、
やがて警戒を解く日が来るはず……!)
そして話し合いが白熱する事10分―――
本体はひとつの結論に達した。
「(そこに桃源郷があるのなら……
そこにチャンスがあるのなら……
後の事は、考えません……っ!)」
そして脳内の白黒フィオナは顔を見合わせ、
(そこまでの覚悟があるのでしたら、
もう何も言いません……!)
(さあ、本懐を果たすのです……!
骨は拾って差し上げましょう)
「あのーフィオナ様?」
いざ、と我に返ると目的の少年が彼女の前に
立っていた。
すでに寝間着らしき服に着替え、濡れた髪を
拭きながら不思議そうにフィオナを見つめる。
「あっ、えっ?
もう出たんですか?」
「ご覧の通りでしゅ。
でもどうしたんでしゅか?
ずいぶんと早いお帰りだったようでしゅが」
ナヴィは冷蔵庫までスタスタと歩いていき、
中から2人分の飲み物を取り出す。
「あ、えっと……
何か改装しているとかで、お休みしてて」
「ふみゅ。
そうなりましゅと、結構前に帰ってきて
いたんでしゅか。
……よくのぞきに来ませんでしゅたね?
まあ脱衣所にトラップを仕掛けてあったん
でしゅけど」
彼はテーブルの上に飲み物を置くと、一方を
彼女の方へと差し出し―――
フィオナもそれをおずおずと受け取る。
「い、いくら何でもお風呂イコールのぞこうとか
考えませんよ!
お店がやっていなかったのだって、想定外だったん
ですから」
「ふみゅう、しょれは失礼を……
フィオナ様も、だんだんと成長して落ち着いて
きているのでしゅね。
疑ってしまい、申し訳ないでしゅ」
感慨深そうにするナヴィを前に、フィオナは出された
飲み物を飲み干してから、
「わ、わかればいいんですよっ。
そそそそれでは本編、すっスタートしますね!」
「?? 何で動揺するんでしゅかね?」
│ ■温泉宿メイスン・大部屋 │
│ ■フィオナ一行宿泊部屋 │
「は? 複数って?」
昼食時―――
フィオナは、情報収集から戻って来たトニックと
ソルトの報告を受けて、困惑していた。
「調査ってほどでもないですが、何つーか……」
「町中、その噂で持ち切りって感じッスね」
昨夜、フラール・バクシア両国とも『まっちぽんぷ』の
共有をした翌日―――
パックの行動と噂がどれだけ広まっているか、
彼らに調べてもらう事にしたのだが、午前中で
2人とレンティルが収集、持ち帰ってきた情報に
眷属の少年と警護の令嬢も驚きを隠せない。
「パックさんって一人? でしたよね?」
「植物だから増える事は考えられるが……
それとも、他にパック殿のような者が現れたの
だろうか?」
考え込む2人を横目に、フィオナは改めて情報屋に
確認する。
「それって、その~……
見間違いとかでは?」
するとトニックは首を左右に振って、
「特徴は一致してるんスよ。
クチバシのような葉、両腕のような茎、
根っこを動かして歩く……」
ソルトも続いて、
「マービィ国内にある複数の農業特区で同じような
話が出ているようですから」
今度は救いを求めるように、女神は眷属の少年の方へ
視線を移す。
「こ、こんな事をするってパックが言ってたんですか?
アルプ?」
「さ、騒ぎを大々的に起こすとしか……
こんな事が出来るなんて聞いてませんし」
アルプも詳細は聞かされていなかったらしく、
動揺しながら答える。
「……問題は、クルーク豆の評価というか評判が
最悪になりつつある、という事でしょうか。
もちろん、『まっちぽんぷ』の事は聞いて
おりますが―――
それだけでこれを覆せるものなのでしょうか?」
レンティルが不安そうにたずね、そして周囲の
視線も女神に集中し、思わずフィオナは助けを
求めた。
そう、『アンカー』に―――
彼女は地球の自分の部屋のPCを通じ、
『アンカー』たちへ緊急要請する。
【 いやそもそも、マッチポンプ作戦の事を
聞いてねーぞ? 】
【 自由行動って言ってたけど、今そんな事に
なってんのか 】
【 どうするって、もうそうするしかねーだろ 】
「(いえ確かに情報共有を怠った事は認めますが
今はそれどころじゃないんで何とかこの通り
何でもいいから切り抜ける策を教えろ教えて
くださいお願いします!!)」
女神の必死の懇願に、『アンカー』たちは呆れつつも
返信する。
【 しゃーねーなあ……取り合えず茶を濁すか? 】
【 まあ何か行動がねーと不安だろうしな 】
【 とにかく動くべ 】
「(とにかく早急にお願いします!!
では久しぶりに『アンカー』を!
『アンカー』は今のスレで……400!
聞きたい事は―――
『どう動くか』!
―――さあ、アタシを導き給え……!!)」
>>400
【 スポンサーと相談 】
フィオナの目はしばらくその文章に釘付けとなり、
そして我に戻った彼女は真意を問う。
「(すぽんさー……と言いますと?)」
【 だからトーリ財閥のあの姉妹 】
【 なんだかんだ言って、協力的だしな 】
【 悪いようにはしないんじゃねーか? 】
「(え”……でも、それだとマッチポンプ作戦の事も
話さなければならない事に)」
当然の疑問と心配を口にするも、『アンカー』からは
【 ここまで来たんだから、隠す事もねーだろ 】
【 あとあと面倒な事にならないためにも、
今のうちに話通しておくって事で 】
その答えに消極的ながらも、『アンカー』の出した
指示には従わなければならず―――
取り合えずフィオナは、メンバーに事情を説明して、
上の階にいるシンデリン姉妹に会いに行く事にした。
│ ■温泉宿メイスン・最上級客室『光の間』 │
│ ■シンデリン一行宿泊部屋 │
「……とゆー理由で来たんでしゅか」
奉公労働者として部屋に来ていたナヴィは、
主筋とその一行の訪問目的を聞いて、呆れながらも
出迎える。
神としては理由が理由なので―――
フィオナと同様の心配を抱いてシンデリンを見る
ナヴィだが、彼女は、
「あら? 別にいいんじゃない」
「……悪くはない……カウンター……」
いわば騙すような手法なのだが、それに対して
妹のベルティーユからも否定的な意見は出ない。
「あのう、神様としてはどうなのかなって、
アタシ自身も思っているんですけど」
おずおずと女神がたずねると、ネーブルが
ナヴィの隣りで口を開く。
「むしろ、神の身でありながら―――
人間レベルで行動している方が驚きです。
天変地異を起こすでもなく、
大勢の死者や天罰を与えるわけでもない。
あちらだって悪意を持って新農法を仕掛けて
きたのですから……
何ら問題は無いと判断します」
彼の答えに、それまで困惑、狼狽の色が隠せなかった
面々は、救いの言葉を得たように明るくなる。
「そ、そうですよねっ」
「確かに……
その気になれば不届き者など、一掃出来るほどの
力をお持ちのはず。
それが、こうまで抑えてくださっているのですから」
第一眷属と伯爵令嬢の納得に、他の情報屋2名と
『女神の導き』のメンバーもうなずく。
こうしていったんは落ち着いたかと思われた室内に、
否定するような声が響く。
「でも―――」
「……?? でも……?
シンデリンお姉さま……?」
声の主の姉妹の元へ視線が集中し、そしてシンデリンが
続けて話す。
「このままじゃ、少し―――
物足りないわ」
│ ■マービィ国・ファーバ邸 │
「おや、マイヤー伯爵様」
「急にこちらへ来られるとは―――
何があったのですか?」
『枠外の者』・ファーバとラムキュールは、
突然の来訪者を出迎え、その理由を問う。
「ここの王より内密に要請が下った。
『連合共同金融安定局』への申請は数日中に
まとまるらしい。
その根回しを、との事だ」
「おやおやぁ♪
こうなる事はわかり切っていたクセに、
密命とはわざわざ―――」
茶化すように話す屋敷の主を、伯爵は
手をかざして制す。
「周囲を納得させる必要もあるのだろう。
手はずはすでに終わっているのだからな」
「ここへ来られたのは、それが理由ですか?」
ラムキュールの質問に、マイヤーは少し顔をしかめて、
「それもあるが―――
例の『オバケ』の噂、どうなっている?」
「ああ、どうもあちこちで出現している
らしいですなぁ。
おかげで下落が止まりませんよ。
困った事に、ね」
ファーバの答えを聞いて、フー、と一息吐いた後、
マイヤーは彼の胸元を指差し、
「一応、警戒はしておけ。
実害は無いし、あくまでも噂に過ぎんが―――
他の農作物、果ては他国にまで波及すると厄介だ」
その指令に『枠外の者』2人は胸に手を当て―――
深々と一礼し、従う事を表明した。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在3270名―――