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30・商売的な意味で

(;・∀・)5章も、もう30話目かー。

1章は14話だったのがウソのよう。




日本・とある都心のマンションの一室―――


そこでペットと思われる猫が一匹、室内の時計を

見上げながら、シッポを左右に揺らしていた。


「んみゅ。

 帰りが遅いですね……


 フィオナ様はともかくとして、アルフリーダ様が

 ついておられるのですから、トラブル等は無いと

 思うのですが」


ウイルスによる自粛要請が解禁され、それまで

買い物などのガマンを強いられていた彼の主人は、

娘を連れて外出し―――

ナヴィは留守番を任されていた。


そして把握している予定よりも帰宅が遅れている事で、

彼はその事について推測する。


「まさか、何か事件でも起こして―――

 みゅ?」


その時、室内の携帯端末が鳴り響き、ナヴィは

猫から人間の姿になって応答ボタンを押す。


「はい、ナヴィでしゅ」


『もしもーし? 今何かこっちが事件を起こしたとか

 考えてなかった?

 事件に巻き込まれて、じゃなくて』


自分の主人からの電話と正確な推理にも動じる事なく、

彼は会話を進める。


「何でそこまでわかるんでしゅか?

 そこまで間違いなく文句無しに当てて良い

 レベルではないでしゅのに。


 そんな事より、どうして遅れているんでしゅか」


『あー、えっとね。

 お目当ての店がまだ自粛してたり、それで

 代わりのお店とか探していたら遅れちゃって』


そこで声が変わり、母親から娘へバトンタッチ

した事がわかる。


『あ、ナヴィ。そろそろ帰るから。


 留守だからって、アタシの服とか下着とか

 クンカクンカしてないでしょーね』


「それやった事あるのフィオナ様でしゅよね?

 (4章23話)


 バカな事を言ってないで早く帰ってきて

 くだしゃい」


『は、はぁ~い』


お目付け役はフィオナをたしなめると、応答ボタンを

押して電源を切った。


「ふー。

 しょれではそろそろ、本編スタートしましゅよ」




│ ■温泉宿メイスン・最上級客室『光の間』  │

│ ■シンデリン一行宿泊部屋         │




―――夕刻後。


シンデリン・ベルティーユ姉妹が目を覚ました後、

予定より遅れながらも神託は行われ……


いつも通り連絡・相談が終わり、現実に他国との

実時間でのやり取りが可能と知った彼女たちは、

さすがに驚きを隠せないでいた。


「貴女……本当に神様だったのね」


「そーですよ! 見直しましたか!?」


ここぞとばかりに胸を張り、フィオナは

女神としての威光を示そうとする。


「ナヴィさ……ナヴィ様。

 知らぬ事とはいえ、ご無礼を」


ネーブルが深々と頭を下げると、さらに女神は

無い胸を張って天井を見上げるように、


「そーですよ!

 全く、最初からこうしていればよぱぶっ!?」


増長する女神にお目付け役はヘッドロックを極め、

頭を下げさせる。


「いえもう、しょんな大層なものじゃ

 ありましぇんので。

 今まで通りの対応で結構でしゅよ」


何とか技から逃れると、フィオナは改めて

シンデリンに向き直り―――


「と、とにかく!

 アタシが神様だという事がわかったのであれば、

 奉公労働者の約束とか取り消して……」


その神様の言葉に対し、シンデリンは

ビジネスモードに入って、


「え? ヤダ。

 だって国家間でロスタイム無しで連絡が

 出来るのなら―――

 それだけでめっちゃ商売の幅が広がるじゃないの

 こんなの絶対もらう」


「やぶへび!?」


即答するシンデリンに女神は怯み、そこへ

第一眷属と子爵令嬢からも恐る恐る正論が

語られる。


「あの、フィオナ様……

 一応約束でもありますので」


「人間の身との取り決めとはいえ、

 約定やくじょうを違えるのは……」


これ以上は無いほどの道理を注意され―――

さすがにお目付け役がフォローに入る。


「我々の身を案じての事なのはわかりましゅが、

 公私はわきまえないといけましぇんよ、

 フィオナ様」


「うぅ、アタシとした事が……

 ごめんなさい、アルプ、レイシェンさん」


2人に過ちを詫び、室内の空気がようやく落ち着く。


「まあね?

 別に今回の件が不調に終わっても、

 敵対しようってつもりも無いのよ?


 むしろこれだけの事が出来るのなら―――

 友好的な関係を結んでもいいくらいだわ。


 商売的な意味で! 商売的な意味で!!」


胸の前で握りこぶしを作るシンデリンに、

トニックとソルトも納得した面持ちでうなづく。


「まあ、確かに神託こんなのを見せつけられりゃ、な」


「喉から手が出るほど欲しいところは、たくさん

 あるだろうよ。

 確かに財閥としても、手を組んでおいて

 損はねーな」


そこへ、ベルティーユがふらりとフィオナの前に

歩み出て―――


「……それに貴女と……私……

 ……シンデリンお姉さまと伯爵さまは……


 あの戦場おふろばで共に( 鼻 )血を流した仲間……!

 ……同士……!!」


事情を知らないレンティルはその光景を見つめながら、


「いったい……彼女たちとの間に何が?」


「知らなくていいでしゅ。

 いろいろと腐りましゅよ」


「く、腐る!?」


ナヴィとのやり取りに混乱する彼、苦笑する女性陣と

眷属、事情を知らない情報屋―――

それを仕切り直すように異質の声が室内に響く。


「シテ、話ヲ元ニ戻スガ……


 神託デ我ガ言ッタ要望―――

 許可シテ頂ケルカ?」


フラール・バクシアとの神託で、話の最中、

ミモザとシンデリンが言い争いになった事は

のぞいて、これといった動きや案や策は出ず……


パックの、『しばらく自分を自由にして欲しい』

という提案を、女神に一任する事にしたのである。


「し、しかしですねえ~……」


「こういう時のための『アンカー』でしゅよ。

 とにかく相談してみればいいんじゃないでしゅか?」


戸惑い迷うフィオナにナヴィは『アンカーを』

勧めるが……


「いやアタシにはわかっているんですよ!

 絶対全員一致でOKって言うに決まっているじゃ

 ないですかアイツら!!

 100人中120人はそう言いいますよ!」


「まあそう決めつけないでやってみるでしゅ」


「決まっています!」


「いやワンチャンあると思って」


しつこく勧めてくるお目付け役に根負けしたのか、

彼女は地球あちらの自分の部屋のPCを通じて、

『アンカー』たちへ語り掛け……




―――5分後―――




「ナヴィ」


「何でしゅ?」


「OKだったわ」


「でしょうね♪」


そのやり取りをどんな顔をしたらいいかわからず

見ている面々を、スルーしながら2人の会話は

続けられる。


「だってねえ!

 それっぽい理由も付けてくるんですよ!

 拒否出来ないじゃないですかヤダー!!」




※『アンカー』返信例


【 代案が無けりゃ、断る理由は無くね? 】


【 どーせ相場も落ちるところまで落ちてんだろ。

 これ以上損はしないわけだし 】


【 そもそも、噂のオバケと女神様が一緒に

 いるのは、マズくねーか? 】




それを聞いたナヴィは、パックへ向き直り、


「一つ聞かせてもらえないでしゅか?

 ―――どうして自由行動を?」


「そ、そうです!

 それに、噂に便乗する、とも言ってましたけど」


真意を知りたがるアルプの言葉に、さすがに彼を

主と認める異形は答えないわけにもいかず、

少年ににじり寄る。


アルジヨ、オ耳ヲ拝借……」


ひそひそと耳打ちするパックの言葉を聞いて、

アルプはしゃがんだ状態から飛び上がるほどに

立ち上がって驚く。


「で、でもそれは……!

 それにパックさんが……!」


何を話したのかと、全員の視線がパックに集中し、


「……以前、オ聞キシタ事ガアッタハズ。

 ドンナ手段モ使ウ覚悟……

 ソノ意思……


 主ニ有リヤ? ト……」


「…………」


アルプは沈黙し―――

そして、パックはそれを肯定と受け取った。


「い、いったい何を話したんですか?」


アルプと主従関係である女神が、全員の代わりに

その意図を問う。


「……デハ、我ハコノ辺デ消エルトシヨウ。


 れんてぃる殿、スマヌガ―――

 農業特区ノ場所ヲ教エテクレヌカ?」


「は、はい」


パックの言葉に不安気にフィオナを見つめ、

そして彼女は第一眷属の少年へ視線を移し、

彼はコクッ、と意を決したように頷いた。


一人の青年と植物が退室し、残りは改めて

アルプに質問を浴びせる。


「アルプ殿、そ、その―――

 パック殿は何をするつもりなのですか?」


「多分、特殊な攻撃方法や害は無いでしゅから、

 何かに危害を加える事は無いと思いましゅが」


レイシェン・ナヴィの問いにも、彼は首を左右に

振って、


「……ごめんなさい。

 今は言えません。


 ただ、その時が来たらお話しいたします」


今度は、トーリ財閥の姉妹の姉が質問する。


「それは、先物取引のスポンサーである私たちにも

 言えない事なの?」


「……すいません。

 ただ……」


「……??

 ……ただ……何……?」


妹も続けて聞き返し、それに彼は―――


「なるべく、クルーク豆を多く買ってくださるよう

 お願いします。


 もし、パックさんの策の通りになれば……

 決して損にはならないかと」


その言葉に、全員がますますわけがわからない、

というように、顔を見合わせた。




│ ■マービィ国・農業特区  │




深夜になって、厳重に警備された農業特区の近くに、

一人の人影が現れた。

そしてその足元には―――


「ココラ辺デイイダロウ。

 案内ニ感謝スル。


 貴殿ハココラデ引キ返スガイイ」


「わ、わかりました……

 しかし、一体何をしようというのですか?」


不安を隠せないレンティルに、パックは

背を向けて、


「何……

 セッカク、おばけト噂ニナッテイルノダ……


 コノ悪名あくみょう、利用セヌ手ハ無イト思ッテナ」


そして、格子状になった門の隙間からスルスルと中へ

入ると―――

見送るレンティルの前で、その姿は闇に溶けていった。




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




シンデリンの部屋から戻ったフィオナ一行は、

精神的な疲れが濃く、その身を休めていた。


そんな中―――

一行の指導者として、女神が少年に声をかける。


「ねえ、アルプ。

 パックとの事、話せないのはわかるけど……


 何か準備する事とか、備えておく事は

 ないのかしら?」


「実は、その事なんですけど―――


 クルーク豆を、ですね……」


その名称を聞いて、情報屋2人は反応し、


「んあ? クルーク豆?」


「そういえばあのお嬢さんにも、大量に買っておくよう

 言っていたが―――

 それが?」


その疑問に対するアルプの説明に―――

全員が聞き入った。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在3248名―――



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