表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/402

25・言う事は一応まとも

(;・ω・)GW中、『勝手にランキング』が

ブーストしたような。

GW終わったらどうなる!?(切実)



日本・とある都心のマンションの一室―――


家主である女神とお目付け役(猫Ver)が、

いつも通りリビングでくつろいでいた。


少女の方は寝そべりながらスマホに興じ、

猫はその横で毛づくろいをしつつ、時折彼女に

撫でられる。


「そういえばフィオナ様―――

 あの話はどうなりましたか?」


「?? あの話って?」


お目付け役は伸びをしながら、話を続ける。


「前世の話ですよ。

 アルフリーダ様に前世を、アメの包み紙に

 されていたままでしょ。


 ちゃんと話さないと、そのままになるって

 前に一度話しましたよね(5章04話)?」


「あー、そういえばそんな事言ってたような……」


女神はスマホから視線は外さずに、頬を

ポリポリとかく。


「でも確かに、早く何とかした方がいいかもね。

 前世の事が思い出せなくなっているもの」


「それは結構マズいですね……

 ちなみに前世はどんな感じだったんですか?」


そこでフィオナはスマホから手を離し、んー、と

考え込み始め―――


「確かねえ……

 記憶によると、魔王を倒すべく立ち上がった

 勇者だったんだけど、魔王が意外とイケメン

 だったんで許して、毎年魔族の美少年を

 差し出させる事で和解したような気がするわ」


「もうそれ記憶戻らない方がいいんじゃね?


 それじゃそろそろ、本編スタートします」




│ ■温泉宿メイスン      │

│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「…………」


「えーと……」


“それ”を目の前にして、情報屋であるトニックと

ソルトが、どんな顔をしていいか悩んでいた。


「フィオナ様……

 あの、それに何の用件が」


おずおずと、『女神の導き』であるレンティルも

状況を把握出来ずにたずねる。


ただ、少年2名は黙り込むようにして、それを

ジッと見つめていた。

その空気に耐えかねたように、女神が口を開く。


「え、えーとですね、その。

 このコも、今回の件に絶対役立ってくれると

 思いまして……」


彼らの視線の先―――

そこには、元クルーク豆である異形の、

植物型モンスターがいた。


さすがにナヴィがひじでフィオナをつんつんと

つつき、真意を問い質す。


「(何をお考えでしゅか?

 ていうか、何でアレを参加させようと思ったの

 でしゅか?)」


「(し、仕方ないでしょう!

 『アンカー』が出した答えなんですから!)」


その返事に、お目付け役はふー、と軽く息を吐いて、


「(相変わらず最も期待に添えた結果をくれやがり

 ましゅねえ……


 しょれも最短距離で)」


それを見て不安になったのか、第一眷属であるアルプが

声をかける。


「あっ、あの……

 ルコルアでもそうでしたけど、フィオナ様は決して

 意味の無い事はなさりません。


 きっと何か理由があっての事です。

 必ず、このクルーク豆さんは必要になります!」


少年の説得にも、情報屋と『女神の導き』の3名は

微妙な表情になる。

だが、その空気を一変させるように、問題の“それ”が

口のように見える葉の部分を開いた。


「我ガアルジヨ……

 何ヲ望ムカ?


 事情ハ聞イテイルガ……

 並大抵ノ事デハ、コノ事態ハ収拾デキマイ。


 ソレコソ、ドンナ手段モ使ウ覚悟デナケレバ……

 ソノ意志、主ニ有リヤ?」


少年と植物が対峙し、周りが固唾かたずんで見守る。


「それが……

 フィオナ様のお考え、意志に沿うもので

 あるのなら―――


 どのような事でも……!!」


アルプの答えを聞くと、異形の植物は今度は女神へと

向き直り、


「……正直、コノヨウナ姿ニシタオヌシニ、

 恩義ハ感ジテオラヌ……


 ダガ我ガ主ガオ主ヲ女神トアガメテイルノデアレバ、

 我モソレニ従オウ……」


「ク、クルーク豆さん……!」


それを見て、周囲も評価が変化していき―――


「なあ、どう思うソルト?」


「見た目はともかくとして、言う事は一応

 まともと言うか筋が通っているというか」


そして、トニックとソルトに続いてレンティルも

態度を軟化させ、


「そうですね……

 女神であるフィオナ様が生み出した物で

 あるのならば―――

 姿形に意味は無いのかも知れません」


今回の件に参加させる事について、ようやく

全員の同意が得られたと思ったところで、

ナヴィが提案する。


「しかし、クルーク豆しゃん、ではちょっと

 呼びづらいでしゅね……


 正式にこれから関わるんでしゅたら、

 名前を付けましぇんか?」


すると、全員の視線が当然と言うべきか

フィオナの方へ集中し―――


「え”? アタシ?」


「元はいえば貴女がやらかし……

 もとい、新たな役目を与えし者なのでしゅから、

 しょれは妥当かと」


お目付け役ののツッコミにも似た指摘に、女神は

わたわたと周囲を見渡し、


「で、でわあるぷ……!

 かれはあなたのことをあるじとおもっているみたい

 ですから、あなたがなまえをつけてあげてください」


「(純度100%の丸投げでしゅね)」


それを見てナヴィは小声で主筋にささやく。

そして命名を言い渡された少年は―――


「ぼ、僕がですか?


 ……しかし、適当な名前を付けるわけにも……

 あの、申し訳ありませんが、ひとつ聞いても

 よろしいでしょうか」


「な、何です?」


あくまでも神としての威厳を保とうと、動揺を隠して

彼女は聞き返す。


「フィオナ様の世界では―――

 このような植物の事を何とお呼びになって

 いるのでしょう?


 それを参考に、名前を付けたいと思います」


その質問に、女神はお目付け役に視線をやり、


「(どうしましょうかねえ。

 っていうかあんなの天界にも地球にも

 いねーですよ)」


「(いてたまりゅか。

 フィオナ様とアルフリーダ様が作ったのを

 除けば……


 でもまあしょれなら、適当でいいんじゃ

 ないでしゅか?

 マンガやアニメやゲームからでも、

 何か引っ張ってくりぇば―――)」


ナヴィの意見を取り入れて、フィオナは考え始める。


「(う~ん……

 ああいうのって確かどこかで見たような……)」


記憶を掘り出しているところ、不安そうにアルプが

見上げるような視線が、女神を直撃する。


「(ぐふっ、さすがアタシの第一眷属……

 見つめるだけでこの破壊力……!)


 ……ぱっくんふら……

 いえ、『パックン』です」


フィオナの答えに、アルプはしばし考えて、


「『パックン』ですか……


 じゃあクルーク豆さん。

 あなたの名は―――『パック』です。


 この名前でどうでしょうか?」


アルプの視線と共に声が異形の植物へかけられ、

周囲が反応を見守る。


「……『ぱっく』カ……


 コノ姿形ニフサワシイカハトモカク―――

 我ガ主ガ与エテクレタ名……

 不満ナドアロウハズモナイ。


 喜ンデソノ名ヲ名乗ロウ……!」


どうやら当人? もその名前を気に入ったようで、

アルプを始め周囲も安堵し、一段落した雰囲気が

室内に広がる。


ふと、その中で女神が周囲を見渡し、一人欠けて

いる事に気付いた。


「あれ?? そういえばレイシェンさんはどこに?」


「今頃気付いたんでしゅか。


 この話し合いの前に―――

 ちょっと私用があるとの事で、出掛けましゅたよ」


そうして―――

レイシェンが帰ってきたら『パック』がこの件に

参入した事、また定刻の神託で情報共有する事で

いったん話し合いは閉じられた。




│ ■マービィ国・某所    │

│ ■宿泊施設        │




「……こんなところに、連合国序列一位の

 伯爵様がお泊りになられている、なんてね」


安宿、というのもはばかられるような―――

ボロボロの木造の小屋のような建物で、レイシェンは

一人の男性に視線を向ける。


「公務で来てはいるが……

 堂々としていられる事でも無いからな。

 それに」


「休息と睡眠が取れれば場所はどうでもいい……

 でしたっけ?


 変わっておりませんのね、マイヤー伯爵様」


彼女の相手は、この国に来ていた『新貴族』であった。


歩く度にギシギシと音を立てる床を気にしながら、

彼女は返答を待つように沈黙する。


「よく来てくれたな、と言いたいところだが……

 何用だ?」


「呼び出したのは貴方じゃなくて?」


レイシェンの言葉に、彼は白髪混じりの頭に

手を当てて、


「そういえばそうだったな。

 本音を言えば、来てくれるとは思わなかった」


「わたくしもそうです。

 まさか貴方が今さら、この行為を悔いている

 わけではないでしょうに」


互いの間に、緊張とも皮肉とも言えない空気が

張り詰め―――

それは双方の軽いため息と共に解かれた。


「……それで、わたくしをここに呼んだ理由は?」


「―――絶望しか見い出せないものに、手を出さず

 見るだけにしておくというのは……

 今の私は未熟過ぎる」


マイヤー伯爵の言葉には応じず、彼女は無言で

先を促す。


「私がここに来た意味、そして結末はわかっている

 はずだ。策というものは―――」


「成功するかどうかわからないのはただの賭け……


 策というものは発動した時点で終わっている

 ものでなければならない……でしたね」


彼女の答えを聞いて、彼は満足そうにうなづく。


「覚えていてくれて嬉しいよ。

 だがそれならなぜ、手を引かない?」


マイヤー伯爵の問いに、レイシェンはいったん

間を置くようにして一呼吸し、


「これが戦場や謀略で、貴方が相手ならわたくしも

 引いていたでしょうね。

 でも、今回は違う。


 農作物は天の恵み。

 自然に絶対は無いし制御出来ない……

 そう教えてくれたのは、貴方ではなかったかしら?」


「……もう収穫量は決定しているのだがね。

 今からどうするのだ?

 まさか、片っ端から畑でも焼いて回るかね?」


その提案に彼女は首を左右に振り―――


「いいえ、ただ今回に限っては……

 可能性はある、という事です」


「奇跡は可能性に入らないとも教えたはずだが」


マイヤー伯爵の指摘に、レイシェンはフッ、と微笑み、


「ならばなおさらの事。

 今、こちらには―――

 『女神様』がいらっしゃるのですから。


 すでに貴方の想定外の事も起きていますわ」


今度は苦笑と同時に、マイヤー伯爵がため息をつき、


「お手並み拝見といこう」


それ以上は何も言わないでいいと、お互いが

認識しているかのように―――

彼を前にして、彼女はそのまま振り向き

宿屋を出て行った。


そして、自分の泊っている宿屋に戻った後―――

『パック』が今回の件に参加するという事を知らされ、


「えーと……これが奇跡? でしょうか……」


と、一人悩む事になった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在3213名―――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ