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23・『しゃま』の破壊力

(;・ω・)何かPV数がここ最近、18禁も含めて

上がっているんですが、テレワークの影響?


日本・とある都心のマンションの一室―――


「う~ん、困りましたねえ」


「?? 何がですか?」


家主である女神の悩む声に、お目付け役(猫Ver)が

何気なく聞き返す。


「いえ、外出自粛要請が出ているじゃないですか。

 だからいろいろと不便で……」


「普段から地球こちらでは引きこもりまくっている貴女が、

 何を仰っているんですかね?」


フィオナの言葉を容赦の無いカウンターを叩きこむ

ナヴィ。

しかし彼女はなおも引き下がらずに―――


「い、いえ……それですね?

 世間では『てれわーく』なるものが流行っている

 みたいですし。


 それが異世界あちらでも使えたら楽になるかなーとか

 思ったり思わなかったり?」


「ふむ。例えば?」


否定も肯定もせず、お目付け役は聞き役に徹する。


「えーっと、神託であちらに指示を出して

 動いてもらうとか……」


「最初の頃はそれしか出来なかったのを

 忘れたんですか?」


正確に急所を突くような返しを繰り出す彼に、

女神は―――


「い、今は状況が違うじゃないですか!

 アルプだって眷属としての力を発揮していますし、

 いざとなったらアタシが降臨出来るんです!

 この違いは大きいですよ!


 だいたい、アタシが行ったところであんまり

 活躍の場が無いっていうか」


「…………」


それまで即答していたお目付け役は、その言葉に対し

5秒ほど考えた後、


「そんな事はありませんよ。

 フィオナ様も尽力なさっておられるじゃないですか」


「今結構間がありませんでしたか?」


今度は女神がツッコミに回り、ナヴィがその

釈明に追われる。


「いえ、そのような事は決して……

 確かにフィオナ様は降臨でやらかしたり、

 余計な事をしたり、こじれさせたりは

 しますが―――

 結果的には解決しておりますので、まあ

 出番のためにもあちらにいた方がよろしいかと」


「弁明する・けなす・成果を認める・現実を

 突きつけるのを、複数同時発動させるの

 止めてもらえません?」


「そう思うのでしたら、普段からツッコミどころを

 減らして頂けると助かるんですけどねえ。


 それではそろそろ、本編スタートしましょう」




│ ■マービィ国・温泉街    │

│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「? ネーブルしゃん、どうかしましゅたか?」


トニックとソルトが合流した翌日の昼過ぎ―――

部屋を訪ねてきた彼をナヴィが対応し、同室の

メンバーはそれを見て警戒を解く。


現在、部屋にいるのはフィオナ・ナヴィ・アルプ・

レイシェンの4人で、情報屋2名はレンティルに

連れられ、『女神の導き』と情報交換のため

出かけていた。


「お嬢様から、ナヴィさんに―――

 部屋まで来て欲しいとの事です」


「お嬢様って……シンデリンさんから?」


女神は首を傾げ、当人も疑問を口にする。


「しょれは構いましぇんが、何か問題でも?」


拘束権があるとはいえ、個人的に険悪という

わけではなく―――

応答は普通に行われる。


「今、ラムキュール氏が部屋に来ているんです。

 それで、貴方に同行して欲しいと」


その名前が出た途端、ピク、と元『新貴族』の

レイシェンが反応する。


「何事でしょうか。

 まさか、こちらとの協力の件で……?


 それとも、『新貴族』・『枠外の者』の間で

 何か動きが」


彼女は当然の心配をするが、ネーブルにも

それ以上の事はわからないらしく、首を横に振る。


「まあ、とにかく行ってくるでしゅ。

 しょれで何かわかるかもしれましぇんし」


出掛けようとするナヴィを、後ろから眷属の少年と

主人の女神が声をかけ、


「が、がんばってください! ナヴィ様!」


「そういえばそのままの格好でいいの?

 ホラこんなところにメイド服が」


どこから取り出したのか、フィオナがヒラヒラと

衣装を両手で見せびらかすように取り上げ、

それを冷ややかな視線でナヴィは返す。


「何でそんなものを常備してやがるでしゅ」


「あ、別のがいい?」


「女装から離れるでしゅ。

 ていうかいくつ持っているんでしゅか。


 とにかく、行ってきましゅよ」


お目付け役は女神を適当にあしらい―――

ネーブルと共に上の階へと向かう事にした。




│ ■温泉宿メイスン・最上級客室『光の間』  │

│ ■シンデリン一行宿泊部屋         │




「―――君はこの一件に消極的だったと聞いているが」


首より少し長めの髪を垂らしながら、その細面に

似つかわしくない眼光を、敵意を込めて放ってくる。


狂気の科学者を思わせるその目に、同じ『枠外の者』、

シンデリンは涼し気な表情でスルーし、


「何の事だかわかりませんわ、ラムキュールさん」


彼女への返答というように、黙して書類を向かい合った

中間、そのテーブルの上に置く。


「…………」


その光景を、妹であるベルティーユは少し離れた

ところにある小さなイスに座りながらジッと

見つめていた。


「これはトーリ家が先物取引に動いているという―――

 その情報を伝えるものだ。

 しかも、例年の相場の2/3を保証して、と。


 どういう事か、ご説明願おうか」


「どういう事も何も……

 『枠外の者』として、利益を得るために動いて

 いるだけよ?」


フー……とため息をつき、彼は眼前の彼女の

目を見つめ、


「今日、例の報告がマービィ国から発表される。

 新農法の導入と、今年度のクルーク豆の収穫量に

 ついてだ。


 例年の4倍を見込んでいる―――

 これが伝われば、価格は一気に暴落するだろう」


「あらそうなの?

 知らなかったわぁ、大損しちゃう♪」


それが何か? とでも言うような態度で接する彼女に、

段々とラムキュールは苛立ちの色を濃くする。


「……言うまでもなく、この狙いは―――

 この国での奉公労働者の大量発生だ。


 それを妨害するという事は、『枠外の者』と

 敵対する意思を固めたという事でいいのだな?」


すると今度はハァ……と彼女の方がため息をつき、


「利益を得ようとする事が―――

 どうして『枠外の者』と敵対する事になるの?


 じゃあ聞きますけど、ここ最近『枠外の者』として

 いい儲け話なんてあった?


 失敗の後片付けを押し付けられる事はあっても、

 全然利益なんて出てないじゃないの。

 いつもいつも裏目に出て―――」


「戻りました、お嬢様」


「お呼びでしゅか、『お嬢しゃま』?」


そこへ、ナヴィを連れてネーブルが戻って来た。


「……あ……ネーブルお兄ちゃん……

 ……ナヴィさんも……」


「ナヴィ……だと?

 そういえば、女神様と称する一行の中に、

 そんな名前の少年がいたような」


ベルティーユの反応に、目ざとくラムキュールは

自らの情報と照合するように、その鋭い目つきを

さらに険しくする。


「あー、しょういう認識でしゅか。

 えーと、確かにあのダ女神……じゃなくて

 あのバカのお目付け役というか見張り番というか

 まあしょういうものでしゅが」


「言い直してないですよナヴィさん!

 さらに本音むき出しになっています!」


少年2人のやり取りを不審に思うも、すぐに彼は

元の話し相手の方へ向き直り、


「これはどういう事だ!?

 シンデリン・トー……」


そこには、天井を見るように背もたれに体を預け、

『お嬢しゃま……しゃまって……しゃまって……』

と、怪しげな呼吸と共にブツブツとつぶやく彼女が、

妹に介抱されていた。


「……思ったより……『しゃま』の破壊力が……

 強かった……みたい……」


「すまないが、私にわかる言葉でしゃべって

 もらえないだろうか?」


そして、シンデリンが正気を取り戻すまで会合は

中断され―――

しばらくして仕切り直しとなった。




「……お見苦しいところをお見せしました」


改めてシンデリンとラムキュールが対峙し、

まずは失礼を詫びる挨拶から入る。

彼も謝罪に対して形ばかりの返礼をし、


「いや、別段こちらは気にしていな―――」


「全くです」


「全くでしゅ」


「……2人に同意……」


「身内に対する当たりが強過ぎる気が

 するんですけれども!!」


ネーブル・ナヴィ・ベルティーユの波状攻撃に、

シンデリンは抗議の大声を上げる。

毒気を抜かれたようにラムキュールは額に手を

当てるが、すぐに視線を正面に戻し、


「身内……か。

 では、もう一度聞かねばなるまい。


 これはどういう事だ?

 シンデリン・トーリ。

 なぜ女神様一行とやらの一人と、行動を

 共にしている?」


「一人じゃないわ。

 後でもう2人来るんだから。


 アルプとファジー……

 ルコルアで、一時貴方の使用人になっていたコよ。

 覚えているかしら?


 そのどちらも、女神様の加護を受けている……

 って話ね」


その言葉に、ラムキュールはテーブルの上に置いた

片手に力を込める。


「自分が何を言っているか理解しているのか?」


「何がそんなにいけないのかしら?

 その3人を『担保』としてトーリ家が預かる事に

 なっているのに」


「……何?」


ふと、ビジネスらしい単語が出てきた事で、

彼の追求が弱まる。


「クルーク豆が暴落するであろう情報はこちらでも

 入手していたわ。


 でも、『女神様』はこれまでの『枠外の者』の

 行動をことごとくくつがえしてきた。

 それならむしろ、『枠外の者』とは逆に動いた方が

 利益の見込みがある。


 もちろんリスクは承知しているわ。

 だから『女神様』に『担保』を付けさせたの」


ラムキュールは側面にネーブルと一緒に立っている

ナヴィの方へ視線を向け、彼もまたそれを事実として

認める。


「シンデリンお嬢しゃまの言う通りでしゅよ。


 暴落を食い止める方法の一環として、こちらへ

 クルーク豆の先物取引を持ち掛けましゅた。


 その『担保』として―――

 損害を出した際、私と第一・第二眷属の3人が

 奉公労働者としてトーリ家へ行く約束でしゅ」


「……今は、ナヴィさん一人だけど……

 もし損害が出たら……2人も……」


反対側に立っていたベルティーユも追認の言葉を述べ、

そしてラムキュールは正面へ向き直す。

そんな彼を見てシンデリンは勝ち誇るように説明を

追加する。


「おわかりかしら?

 もしクルーク豆の暴落が止まるような事があれば

 それで良し―――


 損害が出たら『担保』として、ルコルアから

 目を付けていた2人を奉公労働者として手に入れる

 事が出来る。

 さらに女神様からお一人付けて頂いてね。


 どっちに転んでも私に『損』は無いわ♪」


「……いいだろう。

 どちらにしろ、『枠外の者』の正義は利益だ。


 有意義な情報、感謝する。

 それでは、私はこれで」


書類を残し、彼はそのまま振り向きもせずに、

決められていた動作のように一直線で部屋を

後にした。


「意外とあっさり引き下がりましたね?」


それを見届け終わると同時に、ネーブルが

感想を口にする。


「多分、彼が確認しに来たのは―――

 私が本気で女神様ご一行に肩入れする気が

 あるのかという事と……

 慈善事業でこの国に介入するつもりかという、

 その2つでしょうね。


 そのどちらでも無ければまあ、こんなものかしら」




シンデリンが彼についての考えをまとめているのと

同じ頃―――

その当人は宿屋の入口に向かいながら、頭を

目まぐるしく回転させていた。


「(……確かに、トーリ嬢の言う通りだ。

 今まで『枠外の者』のしてきた事は、

 女神様の一行の介入により覆されてきた。


 ならば今回の空売り―――

 関わるのは危険だ。


 ファーバ、マイヤー伯爵にも早くこの事を

 伝えなければ……!)」




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在3205名―――



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