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21・ちょっと『アンカー』ってきますね

( ・ω・)前回までのあらすじ―――


歌って踊れて、さらに可変翼戦闘機まで

操縦出来るアイドル目指して頑張る

フィオナの母・アルフリーダだったが―――!?



日本・とある都心のマンションの一室―――


お目付け役であるナヴィ(猫Ver)は、覚えのある

香りの中、ソファの上で目を覚ました。


「……? アルフリーダ様?」


胸の圧迫感から逃れるように身を起こすと、

横になったままの自分の主人にたずねる。


「あれ? ママ来てたの?」


フィオナの声に上半身を起き上がらせると、アルフリーダは

髪を撫でながらソファに座り直す。


「おはよー。

 いい天気だから、つい眠くなっちゃって」


大きく伸びをしながら、彼女は娘と従僕に

あいさつする。


「?? しかし、いつこちらへ……

 カギが開いたら、私が気付くはず」


元・猫でもあるナヴィは首を傾げ、


「え? 開いてたわよ? ベランダのは」


「ここ最上階なんですけど?」


母娘の会話に、まあ神様だしなあ……と半ば

諦め気味に納得するナヴィは、次の質問に移る。


「しかし、どうされたのですか?

 何か緊急の要件でも」


「だとしたらのんびり寝てないわよ。

 ホラ、これ持ってきたの」


と、アルフリーダは紙袋を指差し―――


「何コレ? ママ」


「何って、マスクと食料よ」


今度はフィオナが首を傾げ、


「?? 食料はともかくとして―――

 アタシもナヴィも神界の者だから、マスクとか

 いらないんじゃ」


「ダメよ、地球こちらでは一応人間って事に

 なっているんだから。

 ちゃんとそれらしくしておかないと。


 ココでは、神様って事は隠しておかないと

 ダメなんですからね?」


母の気遣いに、女神とお目付け役は深々と頭を下げる。


「あ、ありがとうママ」


「私も、その辺りはすっかり失念しておりました。

 今後気をつけます」


娘と従僕の言葉に、アルフリーダはひらひらと

手を振って、


「まあ、用件はそれだけだから。

 それじゃーね」


と、ベランダのガラス戸に手をかける彼女に、

フィオナは後ろから声をかけ、


「すいませんママ、人間らしく玄関から帰って

 頂けませんでしょーか?」


アルフリーダを止めるフィオナを見ながら、

ナヴィは軽くため息を付き―――


「(やっぱりこういうところは母娘ですね)


 さてと……

 そろそろ本編スタートしましょうか」




│ ■マービィ国・温泉街           │

│ ■温泉宿メイスン・最上級客室『光の間』  │

│ ■シンデリン一行宿泊部屋         │




定期の神託れんらくから明けて翌朝―――

朝食後、フィオナとアルプ、そしてナヴィは

シンデリンの部屋を訪れていた。


・担保の件(アルプ、ファジー、ナヴィ)の了承

・引き渡しの時期

・クルーク豆の相場2/3買い取り宣言の時期


について詰めるためである。


「昨日の今日よ?

 それにファジー君、マービィ国に来てないでしょ。

 事後承諾って事?」


自らが提示した条件ではあるが、展開の早さに

シンデリンは戸惑いつつ聞き返す。


「ま、まあ。

 それについては、きちんと確認が

 取れてますので……」


実際にその通りなのだが、『神託使ってます』とは

言えず、女神は説明し辛そうに目を反らす。


「……そっちがそれでいいのならいいんだけど。

 そこまで事情を考慮する義務はこちらには無いしね。


 ん~じゃあ、取り合えずアルプ君とナヴィさん、

 お2人をどうするか……」


「え!? い、今すぐですか?」


目を白黒させるフィオナに、姉の代わりに妹が答える。


「……担保、なのだから……

 それくらいは……当然……」


「とはいえ、契約書も宣誓書もまだ取ってない

 状態ですから」


ネーブルが異論を唱えると、シンデリンは眉間に

シワを寄せて―――


「それなんだけどねえ……

 書類作っちゃうと証拠っていうか、密約が確定

 しちゃうっていうか。

 ただでさえ『枠外の者』に疑われているのに、

 それはそれでどうかと」


「え? 今さらでしゅか?」


「昨日さんざん、『利益を出せば文句は言わせない』

 とか自信満々に仰っていたのに?」


シンデリンの悩みにそれぞれのお目付け役と従者が

タッグを組んでツッコむ。


「え? い、いやちょっとね。

 あと2・3日はかかるかなーって思っていたら、

 突然来るんだもの。

 ちょっと心の準備っていうか」


それを見て、妹・従者・女神のお目付け役は―――


「……ヘタレた……」


「わかってはいましたけど、お嬢様……

 こういう土壇場で、ホント弱いですね」


「あー……いざという時、こうなる人って

 いるんでしゅよね。

 私のしゅごく身近なところにも一人……」


さらに追加でその反応を見ながら、暖かな目で状況を

見守る女神が彼女の肩をポン、と叩く。


「あああああもう何その『同類を見つけた』

 ような目はすごくムカツク!!

 違うからね!?

 ただいっぺんに連れて来られると致死量を

 超える恐れがあってね!?」


無言の微笑みにシンデリンは猛反発するが、

フィオナは余裕を絶やさずにその姿勢を維持する。


「まあ、これでも一応多分恐らく神様でしゅので、

 約束は守りましゅよ」


「あ、あの……フィオナ様が約束を違えた事は

 一度もありません。

 ですので、書類なんかなくても大丈夫だと

 思います」


ナヴィとアルプが話を元に戻しつつ、女神を

擁護し―――

改めてシンデリンは要求を切り出す。


「……じゃあ、改めて―――

 今、他国にいるファジー君はともかくとして、

 アルプ君とナヴィさんは担保として確保するわ。


 ただ、正式な書面はおそらく一段落してから……

 なので、今のところはどちらかが私の元へ来て

 ください。

 どちらにするかは、そちらにお任せします。


 その間に、奉公労働者になった際のお仕事とかを

 ネーブルに教えてもらう、という事で」


彼女の提案に、女神一行は顔を見合わせ―――


「(ふにゅ。どうしましゅかフィオナ様?)」


「(ナヴィ様は貴重な戦力です。

 ここは僕が―――)」


二者択一を迫られた女神は、流れるように自分の

意思を放棄し、


「(ではちょっと『アンカー』ってきますね)」


「(ついに『アンカー』を動詞として活用し始めた

 でしゅね)」


そして、逃げ込むように答えを求めた先の掲示板では、




【 あ? ナヴィ 】


【 ナヴィでしょ 】


【 その2人のうちどちらかなら、ねえ 】




と、意見の一致を見て女神は、


「(いや、何なんですかナヴィの信頼性は)」




【 正直、彼なら何とでもなる気がする 】


【 ネーブルとも親しそうだしな 】


【 実際、第一眷属を引き渡すってのもなー…… 】




そうして、ほぼ揉める事なく地球あちらから意識を

戻した女神は―――


「では、ナヴィをよろしくお願いします」


「か、かしこまりましたことよ?」


フィオナの答えに、なぜか壊れたお嬢様言葉で

応じるシンデリン。

そして、女神は申し訳なさそうにお目付け役に

小声で謝る。


「(ごめんなさい、ナヴィ。

 でも少しの辛抱だと思いますから……)」


「(まー正直なところ、ネーブルしゃんがいるので

 アルプ君でも問題無いとは思いましゅけどね。

 しょれに、あの様子でしゅと)」


と、彼女の様子を追う2人の視線の先では―――


「では、あちらでネーブルに詳細を説明して

 もらって」


「……シンデリンお姉さま……

 そっち、トイレ……」


あーうん、という視線で姉妹を見送り―――

フィオナはアルプを連れて、ひとまず自分の

宿泊部屋まで戻る事にした。




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「ど、どうでしたか?」


部屋に入るとまず、レンティルが開口一番、心配そうに

状況を確認してきた。


「ナヴィが一応、『担保』として彼女の元にいる事に

 なりました。

 ただ、正式な書面等はこれからですので、ある程度

 自由は保障されているかと。


 何より、彼とアタシは神託で連絡を取り合えるので」


女神の答えに、取り合えずはそれほど悪い状況では

無い―――

という事を理解し、彼はホッと胸を撫で下ろす。


「……?

 アルプ殿も神託をお受けする事が出来たのでは」


「僕は神託を受けられても、ナヴィ様のように

 こちらからフィオナ様へ呼びかける事は

 出来ないんです」


「そうでしたか……」


レイシェンとアルプのやり取りを横目に、フィオナは

周囲を安心させるようにナヴィと神託を繋げ始める。


「―――もしもし、ナヴィ?

 こっちは説明したけど……

 今そっちはどんな感じ?」




│ ■シンデリン一行宿泊部屋         │




「ン? フィオナ様でしゅか?

 ちょうどそちらへ帰ろうと思って

 いたのでしゅが……」


シンデリンの部屋で、突然の神託にこれといった

反応もなく、自然体でナヴィは対応する。


(へ? いいんですか?

 だってついさっきの話でしょ?

 あの姉妹が心変わりでもしたの?)


「え~と……どう話したらいいものでしゅかね、

 こりぇは……」


と、ナヴィの視線の先にいるネーブルが

それに気付き、


「あ、今日のところはナヴィさんはお帰り頂いて

 問題ないかと……

 この2人は私が面倒見ておきますので」


ベッドの上に寝かせられたシンデリン・ベルティーユ

姉妹を介抱しながら、ネーブルはナヴィに頭を下げ、

それを見届けると彼は部屋を後にした。




│ ■フィオナ一行宿泊部屋   │




「あの、何があったのですか?

 要求してきたと思ったら、もう戻っても

 いいなんて」


レイシェンがナヴィを、困惑とも心配とも取れない

表情で出迎える。

それに対し、彼はポリポリと頬をかきながら、


「フィオナ様とアルプ君が出ていった後でしゅね、

 これで2人ずつベッドで寝れるはずとか、あの

 姉妹が言い出しましゅて……


 で、どっちが誰を、で揉めまくっていたので、

 『じゃあ私はネーブルしゃんと寝ましゅか?』と

 申し出たところ―――

 シンデリンしゃんとベルティーユしゃんが仲良く

 倒れてしまったんでしゅ」


その説明に、よくわからない、という体でアルプは

首を傾げながら


「……?

 ベッドが足りないとか?」


「いえ、そういう事ではないかと……」


言いにくそうにアルプの言葉をやんわりと

レンティルは否定し―――


「だ、大丈夫大丈夫……

 ここにはナヴィしかいないから、ネーブルさんは

 あっちだから……

 攻撃力は半減しているわまだ大丈夫」


「直撃ならぶっ壊れていました」


一方でフィオナとレイシェンは両手を取り合って、

お互いに倒れないよう、震えながら支え合い―――


「しまった。

 こっちも病人がいたという事を忘れていたでしゅ」


ナヴィはそれを見ながら、ふぅ、とため息をついた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在3168名―――




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